NHK朝ドラ『らんまん』感想 第128回 (第26週 水曜日)

謙遜と傲慢。

「先生」などという称号はただの権威欲の表れだと思っている風潮が現代にもあって。

しかし、謙遜すべきではないほどの努力や能力でその位置にいる人はたくさんおられる。

それを辞退することは、もう謙遜ではなく、教育への期待や応援を裏切ることになるのだという真理。

「先生」は「先生」であるべきだという話。

波多野(前原滉)、徳永(田中哲司)の推薦で、万太郎(神木隆之介)は理学博士になることに。寿恵子(浜辺美波)は心から喜ぶ…

あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
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連続テレビ小説「らんまん」第26週「スエコザサ」第128話

2023年上半期朝ドラ『らんまん』感想

感想

田邊教授から「植物を見つける才能」を嫉妬され、松永教授たち多くの先輩に憧れられながら、他人のそんな目や思惑など全く意に介さずに野山を飛び回って来た人。

大きな震災で標本を失っても、さらにまだ新種を見つけて分類している。

お父ちゃんはいつもただ、そこにいて植物を愛しているだけ。娘にもそう言われる。

そこには何の責任もない。

「先生」と呼ばれることは責任を伴うこと。

いつも静かな佇まいで穏やかに研究に没頭していた波多野くんが、ここまでの地位を築く決意。感動した。

この人はこういう人だったのだと、最終回前の今、初めて気づく。

傲慢だよ。


万さん 理学博士にならない?

波多野くんにそう言われ、戸惑う万太郎。

なれるの?

話をまるで聞かされずにここまで来たらしく、万太郎と同じレベルで驚いている藤丸くんである。らしい(笑)

今の学位令によればなれる。
大学や大学院を出ていなくても、論文の内容と本人の学識が大学院を終えたのと同等だと認められれば博士になれるんです。


帝国大学内のそれぞれの学部に審査機関があるんです。
徳永名誉教授が今でも面倒を見てる。


つまり、今なら徳永さんと波多野が万さんを推してくれる?

なんという……なんという素晴らしい同胞たち。

しかし万太郎は、乗り気になれない。

そこには、たぶん謙遜もあるだろうけれど、縛られたくない気持ちもあるのだろうね。

モデルの牧野富太郎博士は帝大の中で助手としてずっと自由に研究させてもらっていたが、教鞭も取っていた。

つまり、帝大に居る限りは帝大の学生の世話をするという「先生」としての役は果たしていたのである。

しかしドラマの中の万太郎先生は周囲の子どもたちや全国のペンフレンドの皆さんから「先生」と呼ばれつつも、大学への恩は返しているように見えなかった(笑)

本当に自由すぎるので……まぁ、ある程度は嫌味を言われても仕方ない風に見えなくはない。

ホンマにありがたい申し出じゃけんど、わしは頂くことはできん。


大学にはさんざん不義理をしてしもうた。


それにまだ成し遂げちゃあせん。


日本中の植物を明らかにして図鑑にする。
これはわしが二十歳の時に決めたわしの仕事じゃ。
けんど、その仕事さえ成し遂げちゃあせん。

固辞する万太郎に、ここでハッキリと波多野くんが言うのである。

傲慢だよ。

学問への貢献と責任

槙野万太郎は自分の意志でここまで来たと思ってるんでしょ?

槙野万太郎がここにいるのは時代なのか摂理なのか……そういうものに呼ばれてここにいるんだ。


この国の植物学の黎明期誰も植物なんて気に留めなかった時に槙野万太郎なんて変なやつが突然現れて。


その変なやつが一人で勝手に日本中の植物調査を始めたんだ。

NHK朝ドラ『らんまん』感想 第128回 (第26週 水曜日)


僕と野宮さんだってそうだ。
世紀の大発見をしたよ。
でも何でその役目が僕らだったのかは分からない。


けど僕は引き受けることにした。


称賛と引き換えに学問に貢献する立場と義務を!
理学博士になるんだ!槙野万太郎!

理学博士になるんだ、槙野万太郎!

植物学に尽くしたいんだろう?

だったら骨の髄まで尽くしなよ!

入れて欲しかったセリフだけれど、入っていなくても前原さんの演技から十分に伝わった気がする。

この波多野くんの覚悟を聞いて、本当に感動した。今日の放送。

権威だの名声だのは関係ない。「称賛と引き換えに学問に貢献する立場と義務を引き受ける」

学問の未来のために受ける博士号。

この穏やかな波多野君の中にこんなに強い、学問に対する決意があったとは……。

いつも穏やかに万太郎を受け入れていた波多野くん。

物語の端にいて、いつも微笑んでいた人。

この人が、槙野万太郎博士誕生のキーマンになるとは、思ってもいなかった。

ただのなれ合いや慰めの友では無く、人生の重大事にそこにいてくれた人。

こんな素晴らしい人が友で、万太郎、本当に良かった……。

先に理学博士になったら売れるじゃないですか!

そして、ずっと槙野家の出納係であり、万太郎の夢の書きつけ人であり、自身の冒険を重ねる同志である妻、お寿恵ちゃんは別のベクトルで万太郎を叱咤する。

そのとおりですよ!
万太郎さん、勘違いしてます。


図鑑を成し遂げてから?そんなの遅いですよ!


先に理学博士になったら、

売れるじゃないですか!


えっ?


理学博士が満を持して植物図鑑を出すとなったら、売れに売れて売り切れ御免の大増刷ですよ!

これは彼女一流の冗談なのかもしれないけれど(笑)

正直、もっともである。

名無しの植物好きが出す同人誌ではなく、「理学博士」が出した図鑑の方が売れて当然である。

そして、その名こそが寿恵子の滝沢馬琴。

万太郎さん、理学博士になってください。
そしたらこの国の植物学にあなたの名前が刻まれるでしょ?
あなたの名前が永遠に。

理学博士号の授与式。

そこには万太郎をここまで推して来てくれた松永「名誉教授」の姿があった。

最後まで世話が焼ける。

NHK朝ドラ『らんまん』感想 第128回 (第26週 水曜日)

この度は理学博士号の授与、まことにありがとうございます。


え~私は植物を追いかけてきました。
植物は…面白い!


一つとして同じものはなく、己という命を懸命に生きております。


植物と共に歩く中、私は学者として大きな発見をいたしました。


それは…あらゆる命には限りがある。
植物にも人にも。

視線の先には最愛の寿恵子の姿がある。

命の限り。

それが迫っている妻。

NHK朝ドラ『らんまん』感想 第128回 (第26週 水曜日)


ほんじゃき、出会えたことが奇跡で…今生きることがいとおしゅうてしかたないと。


改めまして、どんな時も私をそばで支えてくれた妻と皆様方に感謝申し上げます。


ありがとうございます。

そういうところだ……万太郎。

徳永教授にきちんとお礼を言ってね……。

と、ちょっと笑いつつ。

後2回。

本当に私はこの朝ドラが大好きだった。

お別れが心から寂しい。

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らんまん キャストとスタッフ

キャスト

槙野万太郎 – 神木隆之介(子役期:森優理斗、9歳 – 12歳:小林優仁)
槙野寿恵子(西村) – 浜辺美波

槙野園子 – 斎藤羽結
槙野千歳 – 遠藤さくら(子役期:入江美月←秋山加奈)
槙野百喜 – 松岡広大(子役期:石川誉←森本一之新)
槙野大喜 – 服部仁信
槙野千鶴 – 本田望結

井上竹雄 – 志尊淳
槙野綾 – 佐久間由衣
幸吉 – 笠松将
たま – 中村里帆
楠野喜江 – 島崎和歌子
池田蘭光 – 寺脇康文
槙野ヒサ – 広末涼子
槙野タキ – 松坂慶子

槙野豊治 – 菅原大吉
槙野伸治 – 坂口涼太郎
槙野紀平 – 清水伸

広瀬佑一郎 – 中村蒼


西村まつ – 牧瀬里穂
笠崎みえ – 宮澤エマ
笠崎大輔 – 遠山俊也
阿部文太 – 池内万作
倉木隼人 – 大東駿介
倉木えい – 成海璃子
及川福治 – 池田鉄洋
江口りん – 安藤玉恵
宇佐見ゆう – 山谷花純

天狗(坂本龍馬) – ディーン・フジオカ
早川逸馬 – 宮野真守
中濱万次郎 – 宇崎竜童
高藤雅修 – 伊礼彼方
永守徹 – 中川大志
山元虎鉄 – 寺田心 → 濱田龍臣

大畑義平 – 奥田瑛二
大畑イチ – 鶴田真由


野田基善 – 田辺誠一
里中芳生 – いとうせいこう
浜村義兵衛 – 三山ひろし
伊藤孝光 – 落合モトキ


田邊彰久 – 要潤
徳永政市 – 田中哲司
波多野泰久 – 前原滉
藤丸次郎 – 前原瑞樹
大窪昭三郎 – 今野浩喜
細田晃助 – 渋谷謙人
野宮朔太郎 – 亀田佳明
脇田伝助 – 小野まじめ

語り – 宮崎あおい

らんまん スタッフ


◆制作統括 : 松川博敬
◆プロデューサー : 板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
◆演出 : 渡邊良雄、津田温子、深川貴志

◆脚本 : 長田育恵

◆音楽 : 阿部海太郎
◆主題歌 : あいみょん「愛の花」


『らんまん』各回リンク

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