相変わらず、ちゃんと寝ろと怒られる万太郎。
実際の牧野博士がこんな生活をしていたのかどうかは分からないけれど、そうだとしたら人間って案外、オーバーワークでも長生きするんだなって……。
牛久(住田隆)が真打ちとなり、長屋を出ていく日。竹雄(志尊淳)と綾(佐久間由衣)が高知を引き払い東京へやってきた。二人は屋台「土佐」を開業。竹雄は“いつか新しい酒を造る”という綾の夢を、一緒にかなえたいと考えていた。万太郎(神木隆之介)、寿恵子(浜辺美波)、波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)もかけつけてにぎやかな夜になる…
あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
連続テレビ小説「らんまん」第22週「ヤマモモ」第111話
感想
このドラマの脚本の本当に凄い所がテンコ盛りな日だった。
時は起きていても寝ていてもどんどん過ぎて行き、隣の子供はあっという間に大きくなる。
みんなが新しいステージへ進む準備をしている時。
万太郎は記録を残す。失わないために……。
時の流れ
牛久さんが、ついに真打となった!
この十徳長屋で、万太郎の子どもを孫のように育ててくれた優しい人。
さて……え~、こちら十徳長屋は東京随一の貧乏長屋。
あたしの部屋はね、雨が降りゃ雨漏りなんぞするんですがね。
漏れ出すのは雨ばかりじゃござんせんようで。
時の流れまでもがどっかへ漏れ出しちまうんだから。
ゴロ寝一つしてる間に、ついこの間来た若い衆が嫁様もらってすっかりご立派になられてね。かわいい子供らまでジャンと増えて。
今度はきっと、寝返りひとっつでこの子らが「嫁入りだ」「独り立ちだ」なんて言いだすんだよ。
これじゃ、おちおち昼寝もできやしない。
竹雄と綾さまが峰屋を片付け終わって土佐を出て来た日。
牛久さんは十徳長屋を旅立って行った。
年を取っても真打にはなれる。
老舗の大看板を畳んでも屋台からやり直すことはできる。
成長するのも旅立つのも子どもだけじゃない。
牛久さん、長い間、万太郎一家を見守ってくれてありがとう。
いつか失われるかも
さて、牛久さんが出て行ったら、なんともう丸っきり槙野研究所の体になって来た十徳長屋である。
それにしたち、研究部屋を分けたがじゃね。
と、長屋の様子に驚く綾さま。
そうなんですよ。
母屋はどうしても子供の時間に合わせますから。
私も、この子がいるともう眠くって。
お寿恵さんのお腹は大きい。お疲れさまです……。
ほうじゃね。生まれてからの眠さもすごいきね。私、歩きよっても眠りこけそうじゃったき。
フフッ!
万太郎が研究部屋に籠りっぱなしと聞いて「怒ってやろうか」と言う綾さま。
結婚したての頃は、万太郎さんが研究してるのさみしくも思いましたけど、2人でいるのにさみしいなんておかしいんじゃないかって。
でも違うんですよ。
孤独でいいんです。
万太郎さんの根っこはもっと違うとこにあるんですよね。
万太郎さんが植物と一緒にいる場所へは、私じゃたどりつけない。そばにいたいとか寄り添いたいとか、そんなものじゃ届かない。
深くて遠い澄み切った場所。
でも、そこから戻ってくると私たちのことが愛しくてたまらないって顔してるんですよ。
私、本当に思うんですよ。
万太郎さんがお仕事を成し遂げたら、それはきっと後の世まで色あせない。
竹雄もまた久しぶりに来た十徳長屋がすっかり槙野の館に変わっていること、万太郎が以前以上に植物のために尽くしていることに驚いていた。
ちゃんと寝ゆうがか?
こんだけ描いて体を壊したら…。
けんどのう…急がんと。
誰かと競いゆうがか?
うん。競いゆう。
人間の欲望と。
そうだったんだね。
台湾の戦場で、人だけではなく、動物も植物も、すっかり犠牲になっている様子を見た万太郎は危機感を覚えたらしい。
人と人との争いが自然よりも大きな力になっちょった。教授方には国から研究の費用をもらう者は軍人らあに盾つくなゆうて……。
格が劣った異人種だと差別を受けた屈辱を、植物の研究で見返したこと。泣いて喜んでいた教授。
弱い者いじめされた屈辱をもっと弱い者に返そうとしている現実も見た。
わしは早う日本中のfloraを解き明かさんといかん。
この国の全ての植物を標本にして保管する。
そして全ての植物の名前を解き明かして図鑑に永久に刻む。
万太郎がやりたかったことは、万太郎の焦りは、そういう事だったんだね。
声なき弱気植物たちの記録を永久に刻まなくてはならない。
けんど、戦争は軍人らあが外に出ていってやりゆうもんじゃろう?
この竹雄のセリフが、たぶん、この時代の民衆の「当たり前」で。
この時は誰も思ってもみなかったんだよ。
頭の上に爆弾が降って来る日が来るなんて……。
いつか、失われるかもしれんゆうがか?
先のことは誰にも分からん。
新しい商い
わしも急がんとのう。
峰屋を整理した金と高知で働いて作った金。
それからこっちでもしばらく稼ぐつもりじゃ。
ほいたら、もういっぺんだけ……もういっぺんだけ…挑めるかもしれんじゃろう?
やるがか?
当たり前じゃ。
わしじゃち…手綾さんの夢、まだ叶えちゃあせん。
そして、今日の晩飯は兄ちゃんが作っちゃるき。と言って竹雄が用意したのは屋台。
久しぶりに2人揃ってニコニコやって来た藤丸・波多野コンビも食事に参加。
波多野、藤丸、ついに竹雄がそばまで打てるようになったがよ。
ええ~っ!
酒と小鉢やったら私も出せるきね。
わしの姉ちゃんじゃ。
それじゃあ峰屋の?
うん。蔵元やったき。
けんどのう、峰屋の酒はまだ私の中にあるき。
夫と2人で商いしながらまた始めますき。
どんどん集まってきて、みんなで食事。……というのは、朝ドラのお馴染み風景だけれど、このドラマでは、何だか自然だ。
そして、どんな演出でも、みんなでご馳走を食べる人たちの笑顔には温かさがある。
みんなの笑顔を見ながら、お寿恵さんは、みえ叔母さんの言葉を思い出していた。
あんた、商売やんなさいよ。
何か始めるのに遅すぎることはないと、みんなにそう感じさせた回だったから……。
劇中のお寿恵さんはもっと体感しただろう。
善き旅立ちの風景を。
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らんまん キャストとスタッフ
キャスト
槙野万太郎 – 神木隆之介(子役期:森優理斗、9歳 – 12歳:小林優仁)
槙野寿恵子(西村) – 浜辺美波
槙野園子 – 斎藤羽結
井上竹雄 – 志尊淳
槙野綾 – 佐久間由衣
幸吉 – 笠松将
たま – 中村里帆
楠野喜江 – 島崎和歌子
池田蘭光 – 寺脇康文
槙野ヒサ – 広末涼子
槙野タキ – 松坂慶子
槙野豊治 – 菅原大吉
槙野伸治 – 坂口涼太郎
槙野紀平 – 清水伸
広瀬佑一郎 – 中村蒼
西村まつ – 牧瀬里穂
笠崎みえ – 宮澤エマ
笠崎大輔 – 遠山俊也
阿部文太 – 池内万作
倉木隼人 – 大東駿介
倉木えい – 成海璃子
及川福治 – 池田鉄洋
江口りん – 安藤玉恵
宇佐見ゆう – 山谷花純
天狗(坂本龍馬) – ディーン・フジオカ
早川逸馬 – 宮野真守
中濱万次郎 – 宇崎竜童
高藤雅修 – 伊礼彼方
山元虎鉄 – 寺田心 → 濱田龍臣
大畑義平 – 奥田瑛二
大畑イチ – 鶴田真由
野田基善 – 田辺誠一
里中芳生 – いとうせいこう
浜村義兵衛 – 三山ひろし
伊藤孝光 – 落合モトキ
田邊彰久 – 要潤
徳永政市 – 田中哲司
波多野泰久 – 前原滉
藤丸次郎 – 前原瑞樹
大窪昭三郎 – 今野浩喜
細田晃助 – 渋谷謙人
野宮朔太郎 – 亀田佳明
脇田伝助 – 小野まじめ
語り – 宮崎あおい
らんまん スタッフ
◆制作統括 : 松川博敬
◆プロデューサー : 板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
◆演出 : 渡邊良雄、津田温子、深川貴志
◆脚本 : 長田育恵
◆音楽 : 阿部海太郎
◆主題歌 : あいみょん「愛の花」
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