槙野万太郎……恐らくモデルの牧野富太郎博士にとっても人生で一番つらかったろう時期が今週一挙に訪れる。
視聴者は片目で見て……。
万太郎(神木隆之介)の書いたムジナモの論文に激怒した田邊(要潤)は、大学の出入りを禁ずる。大窪(今野浩喜)、波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)は、どうにか万太郎を許してほしいと懇願するが、田邊は追い打ちをかけるかのように、土佐の植物目録と標本500点を大学に寄贈するよう万太郎に命じる。とにかく論文を書き直そうと急いで帰った万太郎。話を聞いた寿恵子(浜辺美波)は納得がいかず…
あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
連続テレビ小説「らんまん」第18週「ヒメスミレ」第86話
感想
神木隆之介くんの演技が素晴らしいので辛さが倍増する。
あの、空気も流れも読めない無邪気な万太郎が、あんな死んだような表情をする日が来るとは。
たぶん、言われている事の半分も理解していないだろうし、田邊教授の本心も理解していないだろうなぁ。
土足で入ってきた泥棒
君は土足で入ってきた泥棒だよ。
伊藤家から「泥棒教授」と呼ばれていた田邊教授からこんな風に言われるなんて何という因縁。
「泥棒」という言葉は衝撃的よね。
大抵の人間は一生のうちにそんな風に呼ばれることは一度もないし、賛辞として使われることはない言葉だよね。
衝撃を受けすぎて死んだような表情の万太郎を見ていると、こっちのお腹が痛くなってくる。
なぜ指導を? うちの学生でもないのに?
万太郎を饒舌に責める言葉がどんどんキツくなっていく教授。
教授は……わ、わしのこと…憎んでおられるがですか?
ハハハッ! うぬぼれるな。憎む価値もない。
しかし……
「わたしのものになりなさい」
拒否から続く、自分を失恋させた者への処遇は本当に酷いのだけれど。それはともかく、教授の言っていることは尤もな部分もあり、万太郎の言っていることが的を射ていない部分もある。
だってさ……
冷静に考えたら現代だってそうでしょ。
普通に考えて、お金を払わずに大学や私立の学校に通っていることはあり得ないわけだし、もちろん特待生のような制度もあるけれども万太郎はそういう手続きを何も踏まずにここにいるわけだし……
それを許したのは田邊教授の鶴の一声だったわけだが、教授的には「大学の、そして私のためにもなるから許した」わけで。
なのに最終的には万太郎個人の名前だけが世界に駆け上っていく。「東京大学の学生」でも「田邊の教え子」でもない槙野万太郎。活動は当然個人。
でも、利用されているのは大学の資料。
田邊教授の一声で許された待遇が、今、田邊教授の一声で取り消されようとしている。
仕方のないこと。と言えてしまう部分も大きいのである。
だから「契約」は何に対しても必要なんだよね。
元々、君が来る以前からこの教室には既に3000もの標本があった。
全て開学から5年の間、私が指揮して集めたものだ。
多額の国費を費やし、世界各地から書籍を取り寄せたのも私だ。
私でなければこれだけの書籍を集めることはできなかった。
それも全てこの東京大学に植物学研究の礎を築くため。
もっとも、その3000点の標本は粗雑な状態で使い物にならず、万太郎が使えるように整理したんですけどね……。
まぁ……田邊教授に関しては私怨だけれど。
私怨じゃないとしても、特待する理由がなくなったから特待を止めた。
スポーツ推薦で入った学生が、学校が期待するような学校のための活躍をせずに勝手に芸能活動で名を上げ始めたので特待を止めますよ、お金返してね……、となるのと似たところではある。
清算
万太郎の田邊教授に対する返答や質問がまた……ものすごく怒りを増長させるものなので、ますますこうなるのである。
教授は……わ、わしのこと……憎んでおられるがですか?
いやいや……(そうだけど)図星をみんなの前で言っちゃダメだし、今はそういう精神論ではなくてもっと現実的な「契約」のような話をされているわけで。
し……失礼は、その、全ておわびいたします! その……けんど、出入りを禁じられたら研究を続けることができません。
いやいや、それはあんたの事情でしょ。その「研究」をここで続けるなと言われてるの。
可哀想だけれど、万太郎、今すごくツッコみ入れたくなるようなことばかり発言しているの。
そして最終的に最高に意地悪なことを言って教授は去っていく。
君の土佐植物目録と標本500点を大学に寄贈しなさい。もともと四国の標本がなかったから出入りを許しただけだろう? 君はこの教室のものを使って本まで出したんだから清算しなければ。
これは無いよねぇ……。
しかし、今までの授業料と、大学を使って得た個人的な収入は清算してね、と言われたら……確かにそうなのかもしれない。
だから……
何度も書くけれど、こういう話には契約書が必要なのよ。
徳永助教授がいれば
おかしいよ。論文は書き直せば済むだろう? 何かほかに心当たりは?
藤丸くんも波多野くんも怒り心頭。
「他に心当たり」
もちろん、ある。
「わたしの物になりなさい」を拒否したことである。
全てはここから始まっている。
万太郎はこの話を恐らく誰にも話していない。
はあ……徳永助教授がいれば……。
徳永助教授ならきっと教授を止めてくださった!
全視聴者が頷くところ!!
大窪さんの前で、それ言っちゃうんだ(笑)
とは思ったけれど……。
徳永助教授が、弁が立って、論理的に物事を見て話す力があって、教授を説き伏せる強さもあるから……
という以上に、
徳永助教授ならば、万太郎は世間に無知で、植物学に対して何の邪気も無く、ただただ夢中なだけで……そして可愛いだけ、ということを熟知しているから。
側に居て欲しかったんだけれど……。
禍福は糾える縄の如し
大窪さんもみんなも教授へのとりなしを約束してくれたけれども、そんなことではもう、事態は動かなそう。
第一、万太郎自身が
- 自分はおかしいことは何一つない
- 植物学のために大学を今と同じようにこのまま使いたい
- 「論文(そのもの)」がお気に召さなかった
と、思い込んでいるので、仕方がない。
先週、たっぷり語られていた「良いことの後には悪いことがやってくる」が、この後、万太郎の身の上に次々と襲いかかってくる(たぶん)。
万太郎が今まで行ってきた善行は、
自由に熱心に生きる自分の背中を見せることで、みんなに幸福感ややる気を与えて来た。
ということ。
そこを失いそうな今、みんながつらくなる。
視聴者もつらい……。
牧野先生が「#植物学雑誌」に発表したムジナモの図です。内容はリンクからPDFをダウンロードしてご覧ください。#朝ドラらんまん #らんまんhttps://t.co/4hEiEom5AB pic.twitter.com/OH7xOMjvub
— 日本植物学会 (@BSJ_pr) July 28, 2023
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らんまん キャストとスタッフ
キャスト
槙野万太郎 – 神木隆之介(子役期:森優理斗、9歳 – 12歳:小林優仁)
井上竹雄 – 志尊淳
槙野綾 – 佐久間由衣
幸吉 – 笠松将
たま – 中村里帆
楠野喜江 – 島崎和歌子
池田蘭光 – 寺脇康文
槙野ヒサ – 広末涼子
槙野タキ – 松坂慶子
槙野豊治 – 菅原大吉
槙野伸治 – 坂口涼太郎
槙野紀平 – 清水伸
広瀬佑一郎 – 中村蒼
西村寿恵子 – 浜辺美波
西村まつ – 牧瀬里穂
笠崎みえ – 宮澤エマ
阿部文太 – 池内万作
倉木隼人 – 大東駿介
倉木えい – 成海璃子
及川福治 – 池田鉄洋
江口りん – 安藤玉恵
宇佐見ゆう – 山谷花純
天狗(坂本龍馬) – ディーン・フジオカ
早川逸馬 – 宮野真守
中濱万次郎 – 宇崎竜童
高藤雅修 – 伊礼彼方
大畑義平 – 奥田瑛二
大畑イチ – 鶴田真由
野田基善 – 田辺誠一
里中芳生 – いとうせいこう
浜村義兵衛 – 三山ひろし
伊藤孝光 – 落合モトキ
田邊彰久 – 要潤
徳永政市 – 田中哲司
波多野泰久 – 前原滉
藤丸次郎 – 前原瑞樹
大窪昭三郎 – 今野浩喜
細田晃助 – 渋谷謙人
野宮朔太郎 – 亀田佳明
脇田伝助 – 小野まじめ
語り – 宮崎あおい
らんまん スタッフ
◆制作統括 : 松川博敬
◆プロデューサー : 板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
◆演出 : 渡邊良雄、津田温子、深川貴志
◆脚本 : 長田育恵
◆音楽 : 阿部海太郎
◆主題歌 : あいみょん「愛の花」
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