NHK朝ドラ『らんまん』感想 第106回 (第22週 月曜日)

万太郎が植物学教室を出されてから7年。7年は長いようであっという間である。

その間、お寿恵さんはずっと家計のやりくりに苦労していたんだねぇ……と、ドラマの中に姿のないお寿恵さんに思いを馳せる。

徳永教授(田中哲司)に正式な助手として迎えられた万太郎(神木隆之介)は7年ぶりに植物学教室に戻る。徳永からは教室内の標本を充実させることだけを命じられる。万太郎にとってはありがたい仕事だが、この時、徳永らが目指していたのは顕微鏡の奥の世界。万太郎の研究は古いと大窪(今野浩喜)にも言われてしまう…

あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
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連続テレビ小説「らんまん」第22週「オーギョーチ」第106話

2023年上半期朝ドラ『らんまん』感想

感想

ドイツと植物細胞研究……。

それはきっと人体の研究にも発展する基礎になるんだよね。植物学も戦争に向かう道具になっていくんだね。

時代はとっくに江戸を抜けて明治になっているわけだが、今、本当に文明開花したような気分になる回だった。

開花した文明国には化学が必要で、それは生命の役にも立てば、戦争やテロなど生命を奪う争いの道具にもなる。

万太郎はそういう時代に居合わせているのね。

7年ぶり

明治26年。
万太郎は7年ぶりに植物学教室へと戻ってきました。
教授となった徳永に正式に助手として迎えられたのです。

7年とは何と長い。小学生が入学して卒業して中学に入るまで、である。

「なんと長い」と言いつつ、あっという間でもあるんだよね。10年はひと昔……ふぅ。

7年ぶりに教室に足を踏み入れた万太郎。

当然、学生たちの顔ぶれは変わっている。みんなパリっとした白衣。

植物の検定は、大学院の学生に任されていて、教授の許可も取らずに名札を付けてしまっていいシステムらしい。

確かに葉の形はエビガライチゴに見えますけんど見分けるがやったら、ここです。もしこれがエビガライチゴだったら花序や枝に腺毛がようけ生えちょります。この腺毛が見られんがやったら、これはクロイチゴですき。

本を持って来させて間違いを正す万太郎。

再会した徳永教授の第一声はドイツ語、

Guten Morgen.

田邊教授より面倒くさい(知ってた)。

今日から植物分類学の助手として迎える槙野だ。


槙野万太郎と申します。よろしゅうお願いいたします。

NHK朝ドラ『らんまん』感想 第106回 (第22週 月曜日)

挨拶する万太郎に、


槙野さん……。もしかしてムジナモの?。

と訊ねる学生はたったの1人。

これは学生たちが不勉強なわけではなく、7年間の間に「新種に名前をつける」ことなど、もう特別ではなくなってしまったことを示しているのだと、後の展開で気づく。

名前の判定は、知識が十分ではない大学院の先輩の仕事。

「植物の名づけ」という一大イベントの凡庸化。

新しい顕微鏡の役割。

……ドイツが7年の間に日本にもたらせたものとは……。

7年経って、植物学教室のメンバーが変わっただけではなく、植物学そのものも、世相まで15分で察せられる脚本が凄い。

次の段階

徳永教授の話では、

これまでやってきたことをそのまま続けてくれればいい。

すなわちこの教室の標本を充実させること、そのために出張も自由に行ってくれて構わない。一律だが手当もつける。


それから今は標本の検定も大学院の学生に監督させている。収蔵済みの標本も確認してくれ。

お前の仕事は以上だ。

つまり万太郎にとっては不足ない話である。この7年間の間に家の中でもやってきたことだった。標本を増やし、分類し、鑑定し、名札を付け、あるいは名付ける。

その作業に今度は給金が付く。ありがたいことである。

しかし……

それは、もはや7年前の植物学の中心の作業だった。

つまり、万太郎は、他の学生や先生たちが忙しくて手が回らないアナログな作業を任されただけ。

いいか?お前のムジナモが世界で評価された最大の理由は、とにかく植物画がよかったからだ。


緻密さ観察眼、根気強さ。
ドイツで言われたよ。日本人は器用だと。


だが今やこの国の植物学はとっくに次の段階に入ろうとしている。


ちょうど今、日本人の特性が生かせる研究が注目を浴びている。


ドイツの植物学の中心は顕微鏡を使った解剖学にある。


植物を解剖し、その内部で何が起こっているのかを観察する学問だ。

ドイツのホフマイスターが立てた仮説

「シダ植物と被子植物の中間段階にあると見られる裸子植物の中には精子を作るものがあるのではないか」


世界中の植物学者が今、この研究に挑んでいるらしい。



もしイチョウとソテツに精子があると突き止められればこの研究で世界の頂点に立つのだ。

「競争」も「頂点」も、万太郎にはピンとこないものだったし、植物の解剖にも遺伝にも万太郎は十分に興味はあるが、それは「あの子を手に入れたい」という完成体そのものへの興味とは大きくかけ離れていた。

教授の部屋から出て、複雑な気持ちでいる万太郎に声をかけて来た大窪によると、野宮さんも今は助手だが、万太郎よりももっと給料を貰っているという。

田邊さんのことがあったき、野宮さんはどうなるがじゃろう思うて案じちょりました。そうですか……野宮さん、教室の画工になられたがですね。


違えよ。野宮はもう画工じゃない。

えっ?


あいつは波多野と組んできたからな。

あの時。

野宮さんは泣きながら波多野くんと同盟を組んだ。

植物の祖となる精子の謎まで研究したいと、以前から言っていた波多野くん。

時代の最先端を歩んでいた人。

大窪は万太郎に野宮さんが描いた画を見せる。

ツユクサだ。
ツユクサの気孔の周辺にある葉緑体。
野宮は今や、顕微鏡の奥倍率900倍の世界が描けるただ一人の画工・兼・植物学者だ。

NHK朝ドラ『らんまん』感想 第106回 (第22週 月曜日)

つまり。

野宮さんは今や、命令されて頼まれたものを描く下っ端の絵描きではなく「何を描いているのか」を知る植物学者になった。

それに引き換え、万太郎は学生たちのために標本を集める本当の意味での「助っ人」である。

だから、大窪は言うのだ。

お前…本当に何で戻ってきたんだ?お前見てるとこっちまで悲しくなってくる!


ただ尻尾振って標本採ってくるだけの犬じゃねえか。

なんと酷いことを言うのだろうと思ったけれど、大窪は実は万太郎と同じ段に立っている人だったんだね。

地べたはいずる植物学なんぞ終わったんだ。手間だけかかって見栄えもしない。もう見向きもされない。


本当に…人がせっかく忠告してやったのによ。
俺は切られたよ。

万太郎への酷い言い草は、自分自身に対する憐れみだったんだね。

7年前の、地べた這いずる植物学が大窪も好きだった。

でも切られた。

そこに愛はあったのだ……。

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らんまん キャストとスタッフ

キャスト

槙野万太郎 – 神木隆之介(子役期:森優理斗、9歳 – 12歳:小林優仁)
槙野寿恵子(西村) – 浜辺美波

槙野園子 – 斎藤羽結

井上竹雄 – 志尊淳
槙野綾 – 佐久間由衣
幸吉 – 笠松将
たま – 中村里帆
楠野喜江 – 島崎和歌子
池田蘭光 – 寺脇康文
槙野ヒサ – 広末涼子
槙野タキ – 松坂慶子

槙野豊治 – 菅原大吉
槙野伸治 – 坂口涼太郎
槙野紀平 – 清水伸

広瀬佑一郎 – 中村蒼


西村まつ – 牧瀬里穂
笠崎みえ – 宮澤エマ
笠崎大輔 – 遠山俊也
阿部文太 – 池内万作
倉木隼人 – 大東駿介
倉木えい – 成海璃子
及川福治 – 池田鉄洋
江口りん – 安藤玉恵
宇佐見ゆう – 山谷花純

天狗(坂本龍馬) – ディーン・フジオカ
早川逸馬 – 宮野真守
中濱万次郎 – 宇崎竜童
高藤雅修 – 伊礼彼方
山元虎鉄 – 寺田心

大畑義平 – 奥田瑛二
大畑イチ – 鶴田真由


野田基善 – 田辺誠一
里中芳生 – いとうせいこう
浜村義兵衛 – 三山ひろし
伊藤孝光 – 落合モトキ


田邊彰久 – 要潤
徳永政市 – 田中哲司
波多野泰久 – 前原滉
藤丸次郎 – 前原瑞樹
大窪昭三郎 – 今野浩喜
細田晃助 – 渋谷謙人
野宮朔太郎 – 亀田佳明
脇田伝助 – 小野まじめ

語り – 宮崎あおい

らんまん スタッフ


◆制作統括 : 松川博敬
◆プロデューサー : 板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
◆演出 : 渡邊良雄、津田温子、深川貴志

◆脚本 : 長田育恵

◆音楽 : 阿部海太郎
◆主題歌 : あいみょん「愛の花」


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