戦時中、『総力戦研究所』なる機関が実在したのも、航一さんのモデルである三淵乾太郎判事がここに所属していたのも史実である。
でも、こんな時代の中で、いくら優秀な存在だとしても国のトップにとっては虫けらの意見のようなものでしょ。
つまり……航一さんは全く悪くないでしょ。
判決後、涼子(桜井ユキ)の店で偶然一緒になった寅子(伊藤沙莉)らと杉田(高橋克実)たち。戦争で娘と孫を亡くした杉田。彼の「戦争を止めることはできなかった」という言葉をきっかけに、航一(岡田将生)は戦争中に経験した「ある秘密」を語り始める…
あらすじ は 公式サイトより引用
連続テレビ小説「虎に翼」第18週「七人の子は生すとも女に心許すな?」第90話
感想
虎つばは、正直、謝り過ぎだと私は思う。
特に猪爪家から傍若無人さを責められた後の寅子の「ごめんなさい」は多すぎる。
悪けりゃ謝るのは当然だけれど、どうにもならなかったことに謝る必要はないでしょ。航一さん。
前にも謝ってましたれね
星判事、前にも謝ってましたれね、兄に。
意味ありげで気になるろ?ねえ?
と、ずばり質問する杉田弟。
そりゃそうだ。視聴者だって気になるわ。こんなにごめんごめん言っていたら……。
裁判官も我々もたまたま戦争に行かねえで済んだ。
そらろも、もし徴兵されてたら若者が死なんで済んだかもしんねえ。
もしかしたら国を大事な人を守ることができたかもしんね。
でもそんげこと思ってもしょうがねんだて。我々は無力ら。
どうあがいたって戦争を止めらったわけじゃねんだっけ。
すると、またも意味ありげに
もし止められていたとしたら?
と言いだす航一さんである。
謝るしかできない
僕、総力戦研究所にいたんです。
と言い出す航一さんである。
申し訳ねえ、勉強不足で。
知らなくて当然です。
そこでのことを口外するなと禁じられていましたから。
昭和15年に設置された内閣総理大臣直轄の研究所です。
官界や民間組織から30代の優秀な人材が集められました。
研究所の目的は総力戦の本質を明らかにし、その運営の中枢人物たるに必要な能力を習得させること。そして大戦に向けて軍を国民を、指揮監督する人材を育成すること。
僕たち研究生は模擬内閣を発足させ机上演習を行いました。
検討を繰り返され、研究された机上演習の結果、どう見ても「日本は敗戦」その結果しか出なかった。
しかし報告しても戦争に向かう国の姿勢は変わらなかった。
でも彼らは言った。
「これは机上演習であって、実際の戦争とは全く異なる。研究に関する諸君らの努力は認めるがこの演習の結果は政府の方針とは何らの関係もない」。
僕らは口外を禁じられて解散となりました。
その後、戦争は机上演習をなぞるように進み、そして日本は敗戦した。
それで「ごめんなさい」なんですか。
戦争を阻止できなかった責任を感じて。
そんな、星さんのせいじゃございませんわ。
そうですよ。絶対に違う。
市民にできることなんかねかったんですよ。
もちろん僕一人が何ができたかなんてたかが知れてる。でも…佐田さんや杉田弁護士のように大事な人を失った人間が大勢いる。
妻も…。照子も…。
満足な治療を受けられず死んでいった。
その責任がみじんもないなんて自分は従ったまでなんて……どうしても僕は言えない。
その罪を僕は誰からも裁かれることなく生きている。
僕はそんな自分という人間を何も信じていない。
そんな人間が何かを変えられるとは思わない。
だから謝るしかできないんです。
杉田兄さんは言うのだった。
おめさんを恨めば、そうせば、ちったあ楽になるんでしょう。
そらろも誰を恨んだとこで娘も孫も帰ってこねえ。
おめさんはよっぱら苦しんだ…。
だけえ気に病むことはねえ。
へえ、謝らんなっていいって。
総力戦研究所
冒頭にも書いたけれど、『総力戦研究所』なる機関は実在したし、航一さんのモデルの人・三淵乾太郎判事がここに所属していたのも史実である。
『総力戦研究所』は1940年に開設された内閣直轄の機関。
目的やメンバーは航一さんの語り通りである。
けれどね、ほら、国は一般人の意見を聞くつもりがあったんじゃない?!一般人でも声を上げれば戦争を止められるってことじゃない!?
……というのは大きな間違いだ。
洗脳と脅迫の時代、楯突くものは国家反逆罪である。
国がこの機関を作った目的は効率よく勝てる手段を探るためのもので、言ってほしい言葉は耳障りの良い言葉だけだったに違いない。
航一さんが言っていた「この演習の結果は政府の方針とは何らの関係もない」は、かの東條英機の言葉だ。
彼らにとって戦争は始めなくてはならないものだったし、始めれば勝たなくてはならないものだった。
なぜなら、日本は勝てるつもりがなかった日露戦争に勝ってしまったから。
この結論の後、日本は真珠湾に攻め込んでいく。
何となく期待して集めてみた優秀な若者たちの結果は お気に召されず、イチかバチかで戦争は開始された。
選ばれし優秀な人材は、しょせん軍にとってはただの一般人。一般人の言葉はこんな時代には何も響かない。
航一さんは、もう謝らないでほしい。
自信を持って生きて欲しいわ。
へえ、謝らんなっていいって。だよ。
ところで「みるはち」では、あなたのベスト朝ドラ投票所 をリニューアル。よろしければぜひ。
このドラマのレビューを投稿してください
広告虎に翼 キャストとスタッフ
キャスト
佐田(猪爪)寅子 – 伊藤沙莉
星航一 – 岡田将生
猪爪直明 – 三山凌輝
猪爪(米谷)花江 – 森田望智
猪爪直人 – 琉人
猪爪直治 – 楠楓
佐田優未 – 毎田暖乃 ← 竹澤咲子(子役期 : 山中天喜→三上ひめな→斎藤羽結→金井晶)
佐田優三 – 仲野太賀
猪爪直道 – 上川周作
猪爪はる – 石田ゆり子
猪爪直言 – 岡部たかし
山田よね – 土居志央梨
桜川涼子 – 桜井ユキ
大庭梅子 – 平岩紙
崔香淑(汐見香子) – ハ・ヨンス
轟太一 – 戸塚純貴
花岡悟 – 岩田剛典
小橋浩之 – 名村辰
稲垣雄二 – 松川尚瑠輝
玉 – 羽瀬川なぎ
桂場等一郎 – 松山ケンイチ
汐見圭 – 平埜生成
久藤頼安 – 沢村一樹
多岐川幸四郎 – 滝藤賢一
杉田太郎 – 高橋克実
杉田次郎 – 田口浩正
高瀬雄三郎 – 望月歩
深田仁助 – 遠山俊也
小野知子 – 堺小春
入倉 – 岡部ひろき
森口美佐江 – 片岡凜
穂高重親 – 小林薫
星朋彦 – 平田満
星百合 – 余貴美子
桜川寿子 – 筒井真理子
桜川侑次郎 – 中村育二
笹山 – 田中要次
竹中次郎 – 高橋努
久保田聡子 – 小林涼子
中山千春 – 安藤輪子
雲野六郎 – 塚地武雅
増野 – 平山祐介
大庭徹男 – 飯田基祐
稲 – 田中真弓
壇 – ドンペイ
浦野 – 野添義弘
語り – 尾野真千子
虎に翼 スタッフ
◆放送期間 : 2024年4月1日 ~ 2024年9月 日(予定)(全120回)
◆制作 : NHK(AK)
◆平均視聴率 : %
◆制作統括 : 尾崎裕和
◆プロデューサー : 石澤かおる,舟橋哲男,徳田祥子
◆演出 : 梛川善郎,安藤大佑,橋本万葉
◆脚本 : 吉田恵里香
◆音楽 : 森優太
◆主題歌 : 米津玄師「さよーならまたいつか!」
『虎に翼』各回リンク
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10
11 12 13 14 15
16 17 18 19 20
21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
31 32 33 34 35
36 37 38 39 40
41 42 43 44 45
46 47 48 49 50
51 52 53 54 55
56 57 58 59 60
61 62 63 64 65
66 67 68 69・70
71 72 73 74 75
76 77 78 79 80
81 82 83 84 85
86 87 88 89 90