胡散臭い……と言われていたライアンの「思ったより謙虚」の意味がよく分った。
しかし寅子は今、バリバリ行けない。
弁護士への道を離脱した過去があるので。
なるほど、寅子らしくない。
久藤(沢村一樹)の後押しもあり、司法省で働くことになった寅子(伊藤沙莉)は民法の改正案を読み、かつて共に法律を学んだ仲間たちを思い出す。そこに現れた久藤から、これがGHQから突き返された案だと知らされ、「思ったより謙虚だ」と言われた寅子は、自分の認識が甘いことに悔しい思いをする。そこに、久藤を訪ねてGHQで働くホーナー(ブレイク・クロフォード)がやってくる…
あらすじ は 公式サイトより引用
連続テレビ小説「虎に翼」第10週「女の知恵は鼻の先?」第47話
感想
下の名前から呼び名を考えていたのに、何で「サディ」(佐田ィ)なんだよ(笑)……と昨日は笑ったけれど、「姓」に意味を持たせる話だったんだね。
寅子は「佐田」でいたい。姓名を強制されるのは嫌。
民法親族編および相続編の法改正
小橋の説明によると、寅子の仕事は
民法親族編および相続編の法改正だよ。
前々から時代物朝ドラの度に書いているように、戦後まで民法は明治時代に制定されたイエ制度を採用していた。
古き悪しき差別的制度が昭和に到っても存在していたのである。そこを改正しようと微塵も思わなかったのは、結局、ずっとずっと「戦時中」だったからだろう。
法制度は、「軍隊として国を守る」男を立てるように作られていた。
どう?随分と変わったでしょう?前の民法と。
と、ライアンは言う。
しみじみとする寅子。
さっきからこの喜びを分かち合いたかった人たちの顔が次々と浮かんできて。
彼女たちは今頃どうしているだろう。
新民法では家制度や戸主、家督相続の廃止、婚姻や相続の場面においても女性の地位向上が図られている。
ええ。それは十分。
憲法に書かれている「すべての国民は平等」というのはこういうことなのかと。
満足げにそういう寅子の顔をまじまじと見て、ライアンは言うのだった。
サディ。
君、思ったより謙虚なんだね。
ライアンの「はて」である。
心からそう思う?
新民法に対する不満はゼロ?
寅子はここで「この内容はおかしいです!」……と学生時代のように声を大にして言うことは無い。
弁護士を一度辞めて、今またここにいること。
それが寅子を臆病にしていた。
例えば名字の問題。
「夫婦は共に夫の氏を称す。ただし当事者が婚姻と同時に反対の意思を表示したる時は妻の氏を称す」これについてはどう思う?
新憲法にのっとってると思う?
妻の権利を考慮したすばらしい法改正かと。
でも、この草案はGHQに突き返されちゃったんだよね。
GHQはね、ご婦人が結婚することで相手側の家に隷属し、縛られる形を全て変えろというんだよ。
夫の名字が優先になってる時点でなまぬるいと。
なるほど。まあ、確かになまぬるい。
でも、こういう観点もある。GHQの言うとおりにすると夫に先立たれた妻は婚姻関係がなくなるため夫の名字を名乗ることができなくなってしまうんだよ。
えっ?
まさに「えっ?」だろ。君のように夫に先立たれたからといって名字を変えたくない人だっているのに。
夫の家族と「もう家族ではないです、バイバイ」とすることができない人だってたくさんいるだろう。
そういったご婦人方の気持ちを無視して、今、GHQの言う女性解放を進めるべきかどうか?
君はどう思う?
おりしも、今、この時。
日本中に「夫を失った妻」がいる状態。
もちろん、夫を失ったのだから婚家から解放されたい女性もいるかもしれない。
しかし、婚家を出されたら行くところが無くなる女性が大半だっただろう。今の今まで旧民法で生きていたのだから。
ライアン……。当たり前だけれど、ヘラヘラしているだけの男ではなかった。
寅子は、試されているのだ。「女性としての意見」を。
ライアンは、GHQのホーナーと共に部屋を出て行った。対アメリカ対応も任された凄い人材なのよね……。
仇の国の人
夕食の席で、そういう話をすると、
だって、トラちゃんが謙虚だと思ったことないよな。
うん。ない。
フフ…そうね。あなたが謙虚だなんて言われる日が来るとはね。
と、甥たちが大笑いし始める。
随分とまあ、口が達者になったなあ、直人と直治は
と、皆が笑い転げる中、花江の表情は暗かった。
台所で話を聞くと、
私はとてもじゃないけど笑えないわ。
直道さんの仇の国の人とトラちゃんが仕事して仲よくして。
と言う。
それは本当にそう。
優三さんはまだ病死だったので、寅子としては感覚が違うだろうけれど、花江の場合は明らかにアメリカの攻撃で夫は亡くなり、アメリカの爆撃で実家の両親を亡くした。
それは憎いだろう。
こういうことは、笑って忘れなさいよ、などと他人から言えることではない。
猪爪家には、夫を失った女が3人居り、誰も元の姓に戻したいとは思わない。
戦後を象徴する家であることは確か。
我が国の家族観
民事局に、桂場とライアンの恩師である東京帝大の神保衛彦教授がやって来る。
神保教授は現在、民法改正審議会の委員をしているのだとか。
ご婦人がいるだけで空気が華やぐね。
と、寅子に対してニコニコしつつ、教授は怒っているのだった。
おはよう久藤君。
どうされましたか?こんな朝早くに。
どうって君、あんなもの送っておいて。
民法の改正案だよ。
君たちは我が国の家族観を、いや、この国を破滅させる気かな?
古きよき美徳が失われれば敗戦で満身創痍のこの国にとどめを刺すことになりかねない。
家族と家族が手を取り合う必要がある今、家制度や戸主がなくなってしまったら大変なことになる。
これは……老害かな……?
まぁ、気持ちは分からなくもない。長年そこにあったものが無くなるのは、誰だって恐い。
そして、このようなご老人は令和の今も日本のあちこちに点在し、民法が明治から変わっても、変わらず家を継げ土地を継げ、長男が継げ……と言い続けているのだった。
君もそう思うだろ?
と、突然アンサーを求められる寅子。
桂場もライアンも、助けてくれる様子もなく、面白そうに寅子を見ている。
ムチャぶりです。
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広告虎に翼 キャストとスタッフ
キャスト
猪爪寅子 – 伊藤沙莉
猪爪はる – 石田ゆり子
猪爪直言 – 岡部たかし
猪爪直道 – 上川周作
猪爪直明 – 三山凌輝
猪爪(米谷)花江 – 森田望智
佐田優三 – 仲野太賀
山田よね – 土居志央梨
桜川涼子 – 桜井ユキ
大庭梅子 – 平岩紙
崔香淑 – ハ・ヨンス
轟太一 – 戸塚純貴
花岡悟 – 岩田剛典
小橋浩之 – 名村辰
桂場等一郎 – 松山ケンイチ
穂高重親 – 小林薫
桜川寿子 – 筒井真理子
桜川侑次郎 – 中村育二
笹山 – 田中要次
竹中次郎 – 高橋努
久保田聡子 – 小林涼子
中山千春 – 安藤輪子
雲野六郎 – 塚地武雅
増野 – 平山祐介
大庭徹男 – 飯田基祐
星航一 – 岡田将生
汐見圭 – 平埜生成
稲 – 田中真弓
久藤頼安 – 沢村一樹
多岐川幸四郎 – 滝藤賢一
語り – 尾野真千子
虎に翼 スタッフ
◆放送期間 : 2024年4月1日 ~ 2024年9月 日(予定)(全120回)
◆制作 : NHK(AK)
◆平均視聴率 : %
◆制作統括 : 尾崎裕和
◆プロデューサー : 石澤かおる,舟橋哲男,徳田祥子
◆演出 : 梛川善郎,安藤大佑,橋本万葉
◆脚本 : 吉田恵里香
◆音楽 : 森優太
◆主題歌 : 米津玄師「さよーならまたいつか!」
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