以前から時々書くけれど、朝ドラヒロインは別に正義ではないのだ。
だから、多数の視聴者がヒロインの言動を受け入れられなくても駄作ということではないし、ヒロインにずっと同調できる人が正義なわけでもおかしいわけでもないのよね。
私感では、寅子に全く同意できない2日間だった(笑)
栄二(中本ユリス)の心を開くことができない中、寅子(伊藤沙莉)は穂高(小林薫)が最高裁判事を退任することを知らされる。桂場(松山ケンイチ)に手伝ってくれと言われ、うっかり引き受けてしまった寅子。気まずい気持ちのまま退任記念の祝賀会に出席する。桂場、久藤(沢村一樹)、多岐川(滝藤賢一)らが集まる中、寅子は穂高の言葉に真っ向から意見する…(第69回)
祝賀会の翌日、穂高(小林薫)と寅子(伊藤沙莉)はお互いの立場から遠慮せずに想いをぶつけ合う。寅子は栄二(中本ユリス)に向き合い、彼の言葉を引き出そうとする。栄二は寅子の言葉をきっかけに、頼りたい人の存在を思い出す…(第70回)
あらすじ は 公式サイトより引用
連続テレビ小説「虎に翼」第14週「女房百日 馬二十日?」第69話 70話
感想
出かけていたので2日間まとめて(水曜の分も後で……)。しかも、短く。
一生に一度しかない式典(まぁ例えれば結婚式のようなもんだよ)に傷をつける大人、まぁまぁ面倒くさいし好きになれない。
でも、ちゃんと「ガキ!」と叱ってくれる人はいる。
退任記念祝賀会
多忙極める寅子は、また新たな仕事を頼まれる。
穂高先生の退任記念祝賀会?
うん。
どうしてもお体の調子がすぐれないらしくてね。
祝賀会の幹事は桂場君がやるんだ。どうだろう。サディも手伝ってくれないかな?
何だ君、断りたいのか?
名誉なことだから君が喜ぶと思ったんだがな。
ええ、是非。もちろんお引き受けしますとも。
あれ以来、寅子は穂高先生と気まずい。
(断りたい)
と思うのに頼まれると断れない。
これは、ちょっと私自身もアルアルなので責めることもできない……頼まれると断れないんだよね。
心理学的には良くない傾向らしい。
当日、寅子は穂高先生の挨拶演説後の花束贈呈係を担当することになった。
前最高裁長官、星朋彦先生はご自身と私のことを「出涸らし」とおっしゃった。
もう人生を頑張り尽くし、時代も変わって役目を終えた存在だと。
でも出涸らしにだからこそできる役目、若い者たちに残せることがあると。
こういう会を開いていただけるというのも出涸らしとして最後まで自分の役目を果たすことができたからなのかなと。
そう思おうと思った。
法律を一生の仕事と決めた時から旧民法に異を唱えご婦人や弱き者たちのために声を上げてきたつもりだった。
もっと何かできることがあったのではないのか。ご婦人の社会進出、新民法のうたう本当の意味での平等尊属殺の重罰規定の違憲性…。
出涸らしも何も昔から私は自分の役目なんぞ果たしていなかったのかもしれない。
結局、私は大岩に落ちた雨垂れの一滴にすぎなかった…。でもなにくそともうひとふんばりするには私は老い過ぎた。
諸君、あとのことはよろしく頼む。
本日は本当にありがとう。
「ご婦人の社会進出」のあたりから寅子の顔はどんどん白くなり、眼は血走って先生をじっと……いや、ガッっと見つめ、涙が頬を伝う異様な形相。
そして、演説が終わると、花束を
多岐川さん、お願いします!!
と多岐川さんに押し付け、どかどかと部屋を出て行ってしまう。
唖然とする多岐川さんと桂場さん。
では、これより穂高先生の教え子である佐田寅子君より花束の贈呈です。
とアナウンスしちゃうライアン。
多岐川さんは仕方なく、勢いよく穂高先生に花束を渡す……
先生!おめでとうございます!
一寸コメディのような一連の流れは役者さんのおかげで面白かったけれど、寅子の行いは社会人としてどうした……というもの。
寅子を追って部屋を出た桂場さんは怒りを持って怒鳴る。
ガキ!何を考えてるんだ!
桂場さんの表情も泣きそうである。松ケン、いい演技。
さらに、会場の外に出て来る穂高先生。
謝りませんよ、私は
佐田君!
と声をかける穂高先生を思い切り睨みながら寅子は言った。
謝りませんよ、私は。
先生のひと言で心が折れても、そのあと気まずくても、感謝と尊敬はしていました。
「世の中そういうもの」と流されるつらさを知る。それでも理想のために周りを納得させようとふんばる側の人だと思っていたから。
私は最後の最後で、花束で、あの日のことを「そういうものだ」と流せません。
先生に自分も雨垂れの一滴なんて言ってほしくありません!
戦前のあの日、寅子が弁護士をあきらめて去った日。
私が今ここで立ち止まれば婦人たちが法曹界に携わる道が途絶えることになってしまいます。
と言う寅子に、穂高先生は、
いやいや世の中そう簡単には変わらんよ。
「雨垂れ石を穿つ」だよ、佐田君。
君の犠牲は決して無駄にはならない。
また君の次の世代がきっと活躍を……。
と言った。
あの時の寅子は焦っていて、妊娠を周囲に隠し、倒れてもギリギリまで働こうとしていた。お腹の子どもどころか、自分のことも全く大切にしていなかった。
穂高先生の言葉は、そんな危険な寅子を抑えるためのものだったのでは?と私は思っている。
決して、健康な寅子に向けて放った言葉ではない。
でも穂高先生は健康な寅子に女は弁護士は無理だ、辞めろとは言ってない。結婚も妊娠も、妊娠してるのに隠して倒れたのも自分で、その結果が穂高先生のあの言葉。今、寅子が資格を持って働けているのは穂高先生のおかげで、それは感謝するべきでは #虎に翼
— くう🎞️ (@kukucoo) July 4, 2024
謝っても駄目、反省しても駄目、じゃあ私はどうすればいい!?
先生は別に反省しなくてもいいと思うのよ。
どうもできませんよ!
先生が女子部を作り、女性弁護士を誕生させた功績と同じように女子部の我々に「報われなくても一滴の雨垂れでいろ」と強いてその結果歴史にも記録にも残らない雨垂れを無数に生み出したことも、
だから私も先生に感謝はしますが許さない。
納得できない花束は渡さない!
「世の中そういうものだ」と流されない。それでいいじゃないですか!
寅子には「あきらめた全女性」を一人で背負っている悲壮感がある。
けれど、事情はそれぞれ。
みんな、寅子に背負ってくれと頼んだか?
一人で背負いきれないのに、寄り添ってくれた よねさんのことも無視して傷つけて仲違いになった。
そういう自爆の悲しさも全部勝手に穂高先生に擦り付けているようにしか見えないのよ。
しかも、先生はこれが長く長く真摯に活動された大切な法律のお仕事の最後を締めくくる日。
寅子のやったことは人生の仕事の最後に傷をつける行為だと思うの。
君もいつかは古くなる
翌日、穂高先生はわざわざ寅子の職場まで話をしに来てくれた。
すまなかったね、佐田君。
私は古い人間だ。
理想を口にしながら現実では既存の考えから抜け出すことができなかった。
だが君は違う。
君は既存の考えから飛び出して人々を救うことができる人間だ。
心から誇りに思う。
それを伝えたかった。
穂高先生の人間が出来すぎていて涙が出る。
私は先生が古い人間とは思いません。
尊属殺の最高裁判決先生の反対意見を読みました。
昨日のことは撤回はしませんが、先生の教え子であることは心から誇りに思っています。
頑なだな……。自分の非礼は詫びもしないんだ。驚くわ。
いや、花束贈呈をほっぽって出ていったことくらいは謝罪しませんか #虎に翼
— くう🎞️ (@kukucoo) July 5, 2024
私てっきり怒られるのだとばかり。
そんなことはせん。
これ以上嫌われたくない。
先生、私、別に先生のこと嫌いなわけじゃ…。
分かっとるよ、それなりに好いていてくれてるのは。
この会話で、先生が本当に、あと腐れなく自分の仕事から去っていくために寅子との穴を埋めに来たのだと分かったな。
私だったら、すっごく怒りながら、すっごく呪いながら退職することになりそう(笑)
穂高先生はすごく人間ができているし、人を客観的に見て公平に裁くことができるのはこういう人だよね。
寅子は本当に裁判官の資質があるのだろうか。
佐田くん、気を抜くな。
君もいつかは古くなる。
常に自分を疑い続け、時代の先を歩み、立派な出涸らしになってくれたまえ。
ここでこう言われるということは……
「君もいつか古くなる」を寅子が実感する日が来るのかしらね。
寅子は家裁の少年事件を1つ片付け、その後、穂高先生は永眠される。
そもそも体調が悪くて退任されたのだから、そう考えると寅子のやったことって本当に……。
竹もとで行われた寅子、桂場さん、ライアン、多岐川さん、4人の送る会。(たぶん告別式の二次会か個人的な集まりなのだろうけれど)
山盛りの餡子の皿を前に飲めない酒を飲む桂場さん。
4人は穂高先生の教え子だったんだよね……。
🐯 #トラつばプレイバック 🪽
— 朝ドラ「虎に翼」公式 (@asadora_nhk) July 5, 2024
竹もとで穂高を弔う寅子たち。
【司法の独立を守ること】が己の理想だという桂場が…
「法の秩序で守られた平等な社会を守る!つまり“穂高イズム”だろ!」#朝ドラ #虎に翼#伊藤沙莉 #沢村一樹 #滝藤賢一 #松山ケンイチ #小林薫 pic.twitter.com/HwktHCMewR
先生の教えはとうに俺たちに染み込んでいる!
周りに何と言われようと己の描く理想のために虎視眈々と突き進むしかない!だから泣いてる暇なぞない!
あの、桂場さんの理想とは?
司法の独立を守ることだ!
そして二度と権力好きのジジイどもに好き勝手にさせないこと!
法の秩序で守られた平等な社会を守る!
これが穂高イズム……らしい。
寅子が穂高先生の言葉に傷ついたとしても、法の世界に寅子を連れてきてくれたのは穂高先生だったのは間違いない。
寅子の父が逮捕されたときも、信じて救ってくれたのは穂高先生だった。
寅子はその感謝を述べないまま怒りだけをぶつけて先生を去らせてしまった。
割愛してしまったけれど、日本人男性とフランス人女性の離婚と、犯罪を犯した混血児の親権についての調停で、寅子は
栄二くんが頼る大人は親である必要はないの。
とにかくね、私はあなたがこれ以上苦しい思いをしないで済む道をあなたと探したいの。
と少年に言っている。
来週、そろそろ我が子が、叔母の娘になりたいと言い出すかもよ……。
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広告虎に翼 キャストとスタッフ
キャスト
佐田(猪爪)寅子 – 伊藤沙莉
星航一 – 岡田将生
猪爪直明 – 三山凌輝
猪爪(米谷)花江 – 森田望智
猪爪直人 – 琉人
猪爪直治 – 楠楓
佐田優未 – 竹澤咲子(子役期 : 山中天喜→三上ひめな→斎藤羽結→金井晶)
佐田優三 – 仲野太賀
猪爪直道 – 上川周作
猪爪はる – 石田ゆり子
猪爪直言 – 岡部たかし
山田よね – 土居志央梨
桜川涼子 – 桜井ユキ
大庭梅子 – 平岩紙
崔香淑(汐見香子) – ハ・ヨンス
轟太一 – 戸塚純貴
花岡悟 – 岩田剛典
小橋浩之 – 名村辰
稲垣雄二 – 松川尚瑠輝
桂場等一郎 – 松山ケンイチ
汐見圭 – 平埜生成
久藤頼安 – 沢村一樹
多岐川幸四郎 – 滝藤賢一
穂高重親 – 小林薫
桜川寿子 – 筒井真理子
桜川侑次郎 – 中村育二
笹山 – 田中要次
竹中次郎 – 高橋努
久保田聡子 – 小林涼子
中山千春 – 安藤輪子
雲野六郎 – 塚地武雅
増野 – 平山祐介
大庭徹男 – 飯田基祐
稲 – 田中真弓
壇 – ドンペイ
浦野 – 野添義弘
語り – 尾野真千子
虎に翼 スタッフ
◆放送期間 : 2024年4月1日 ~ 2024年9月 日(予定)(全120回)
◆制作 : NHK(AK)
◆平均視聴率 : %
◆制作統括 : 尾崎裕和
◆プロデューサー : 石澤かおる,舟橋哲男,徳田祥子
◆演出 : 梛川善郎,安藤大佑,橋本万葉
◆脚本 : 吉田恵里香
◆音楽 : 森優太
◆主題歌 : 米津玄師「さよーならまたいつか!」
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