直明が持っていた本、『問題児の心理』をそのまま体現するような父・直言、その最期だった。
こんな性質では隠し事が多くて、きっと無用な気苦労耐えない人生だっただろうな。
でも、愛情が深かったのはホント。
さようなら、直言さん。
直言(岡部たかし)は栄養失調と肺炎でもう長くはないと診断される。直言が大事なことを隠していたと知った寅子(伊藤沙莉)の様子がおかしいが、はる(石田ゆり子)や直明(三山凌輝)も声がかけられない。それから直言はみるみる衰弱。自分が長くないと悟った直言は家族を枕元に集める。直言の身勝手な言葉に怒った花江(森田望智)は寅子にきちんと怒って向き合ってほしいと頼む…
あらすじ は 公式サイトより引用
連続テレビ小説「虎に翼」第9週「男は度胸、女は愛嬌?」第43話
感想
直言さん、他の事は笑い事にしろ、娘婿の戦病死を半年も隠していたのは犯罪級の悪事だわ。
救われたのは、寅子が終始「すん」っという顔をしていたこと。
それでも、ずっと愛情かけて育ててくれた思い出は本物だから、憎むなんてできない。
父親との思い出の数は、圧倒的に優三さんより上。
勝てないね。
今する話、それじゃないです
優三さんの戦病死通知から半年。
それをずっと隠していたお父さん。
家族の反応は様子伺い。なんせ当人の寅子が酷く冷静で「すん」っとしているので。
そして当人の直言さんが、その後、どんどん病状が悪化してしまったので。
ある日、直言さんは、床の中から声をかけて皆を集めた。
起こしてくれ。みんなに話がある。
トラ。
はい。
質問がある。直道が亡くなっても花江ちゃんは猪爪家の人間でいられるんだよな?
はい。
よかったあ…。
花江ちゃん、君は猪爪家の人間だ。いつまでもこの家にいていい。でも、もしこの先に誰かいい人が現れた時はその人と幸せになりなさい。
大事なことを胡麻化すために他のことを持ち出す、典型的な虚言癖のあれ……。
寅子は無表情に「話は終わりましたか」と席を立とうとした。そりゃそうだ。
言いたいことを全部言ってくれたのは花江ちゃんだった。
終わりなわけがないでしょ?
お義父さん、今する話、それじゃないです。
トラちゃん、私ね、やっぱりお義父さんがやったことはとんでもなく酷いと思う。
優しくする必要なんてない。怒ってもいい。罵倒してもいい。トラちゃんはきちんと伝えるべきよ。
お義父さんとは生きてるうちにお別れできるんだから。
本当にそれだよね……。
まぁ……生きている内に憎しみを伝えるか、無駄だわとあきらめるか。
それも選択だけれど。
しかし、そこから直言さんが話し始めた「優三さんに関する話」は酷かった。
我が家が駄目になると思って
私はね、直言さんが優三さんの死を告げられなかったのは、娘が可哀想で可愛そうで……という理由だと思っていたんだよね。
しかし、直言さんの口から出た「隠していた理由」は、
優三君のことすぐ伝えられなくて、ごめん。
知らせが来てつい隠してしまった。
今、トラが倒れたら、うちは、我が家が駄目になると思って、そう思って言えなかった。
……な、…なにそれ……。
えっ。人の気持ちを考えたからではなく、自分と自分の家のため?
(笑)……じゃなくて怒りながら笑う人みたいな顔になっちゃう話だよね。
時間がたてばたつほど話しづらくなって…。トラの仕事が決まったらと思ってたけどなかなか決まらないし。
トラちゃんのせいにするんですか?
あ……落ち着いて。お父さんはそんなつもりじゃないと思うし。
直明は本当に優しいな……。あんた、あんたの戦死公報がこの時期に届いたとしても、父はきっと同じことしていたよ?
ああ……いや…。
俺はこのとおり弱い駄目な愚かな男なんだ。俺がもっともっとしっかりとした男だったら…。
ここから怒涛のクズ発言が始まる。
トラが結婚した時、正直、優三くんかあとは思った。
花岡君がいいなあって思ってた。だよな、はるさん。
はるさんを巻き込むんじゃないよ……。
共亜事件の時、寅子がしつこくて腹が立ったこともある。
はるさんが怖くて、残業って嘘ついて飲みに行ったりしたこともある。
直明が出来過ぎる子だから本当に俺の子なのかと疑ったこともある。
花江ちゃんがどんどん強くなって嫌だなと思ったこともある。うちの家族は女が強いから直道とこっそり寿司を食いに行って……ごめん。
寅子が見合いに最初に失敗した時嫁に行かないでくれてうれしく思ってしまってごめん。
優未を高い高いした時鴨居に頭をぶつけてしまったことを黙っていた。ごめん。
直道が死んだあと、闇市でこっそり一人で酒を買って飲んで…。
とめどなく続く懺悔を打ち切る寅子。
一旦やめてくれる?
まだ続く?
だってお前らにこんな苦労ばっかりかけて、役立たずで駄目でろくでもなくて申し訳なくて死にきれない。こんなお父さんでごめん。
自己満足の「ごめん」を散々繰り返す直言に、寅子は憐れみを掛けるように少し笑うのだった。
かわいいっていっぱい言ってくれたのは、お父さんだけ
でも、お父さんだけだったよ…。
家族で女子部に行ってもいいって言ってくれたのは。
女学校の先生の前でもお見合い相手の前でも、誰の前でもうちのトラはすごいって…。
どんな私になっても、私をかわいいかわいいっていっぱい言ってくれたのは、お父さんだけ。それは、この先も変わらないから。
そう。いつもいつも、寅子の話題が出るたびに新聞をスクラップしていた。
どんなに弱虫で嘘つきでも、愛情深かったのは本当。
その記憶だけはずっとこの家に蓄積されている。
ほんとうにズルい人だったよ、直言さん。
脚本、上手いなぁと思うのは、夫の死を隠蔽されていた寅子が泣き喚いたり、父の話で大笑いしたりしなかったこと。
いつも静かに「すん」っとしていた。
こういう虚言を繰り返す人間をこれからの仕事でたくさん相手にするだろう寅子。
冷静さがとても頼もしかった。そして最後に父を許したわけではないけれど「良い所がいっぱいあった」判決を言い渡した。
これは猪爪家の家族裁判。
「数日後、直言は静かに息を引き取りました」
自己満足な懺悔を残し、でも家族に呆れ笑いされながら逝ってしまった。
最後にやった大嘘は許されないレベルだったけれど、そのタイミングで死んでしまうのだから、ある意味幸せな人だと思う。
天国で優三さんに謝ってね。
寂しくなるねぇ……。
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広告虎に翼 キャストとスタッフ
キャスト
猪爪寅子 – 伊藤沙莉
猪爪はる – 石田ゆり子
猪爪直言 – 岡部たかし
猪爪直道 – 上川周作
猪爪直明 – 三山凌輝
猪爪(米谷)花江 – 森田望智
佐田優三 – 仲野太賀
山田よね – 土居志央梨
桜川涼子 – 桜井ユキ
大庭梅子 – 平岩紙
崔香淑 – ハ・ヨンス
轟太一 – 戸塚純貴
花岡悟 – 岩田剛典
小橋浩之 – 名村辰
桂場等一郎 – 松山ケンイチ
穂高重親 – 小林薫
桜川寿子 – 筒井真理子
桜川侑次郎 – 中村育二
笹山 – 田中要次
竹中次郎 – 高橋努
久保田聡子 – 小林涼子
中山千春 – 安藤輪子
雲野六郎 – 塚地武雅
増野 – 平山祐介
大庭徹男 – 飯田基祐
星航一 – 岡田将生
汐見圭 – 平埜生成
稲 – 田中真弓
久藤頼安 – 沢村一樹
多岐川幸四郎 – 滝藤賢一
語り – 尾野真千子
虎に翼 スタッフ
◆放送期間 : 2024年4月1日 ~ 2024年9月 日(予定)(全120回)
◆制作 : NHK(AK)
◆平均視聴率 : %
◆制作統括 : 尾崎裕和
◆プロデューサー : 石澤かおる,舟橋哲男,徳田祥子
◆演出 : 梛川善郎,安藤大佑,橋本万葉
◆脚本 : 吉田恵里香
◆音楽 : 森優太
◆主題歌 : 米津玄師「さよーならまたいつか!」
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