NHK大河ドラマ【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】第35回「民族の祭典」感想

1936年夏。ベルリンで4年後の次回大会の開催地を決めるIOC総会が始まり、嘉納治五郎(役所広司)は「日本で平和の祭典を!」と熱く訴える。その直後に開幕したベルリンオリンピックは政権を握るナチスが総力をあげて運営する大規模な大会となり、田畑政治(阿部サダヲ)を圧倒し当惑させる。マラソンでは金栗四三(中村勘九郎)と同じハリマヤ足袋を履くランナーが出場。水泳では前畑秀子(上白石萌歌)のレースが迫る。
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)

  2019年大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」感想

いだてん~東京オリムピック噺(ばなし) 第35回 「民族の祭典」


「プロパガンダ」とは、様々な活動に宣伝活動をさり気なく仕込んで、大衆が政治的な思惑にまんまと乗せられるように持って行くことをいう。

一部では、この大河ドラマは2020年の東京オリンピックを成功に持って行くためのプロパガンダだと評されているらしい。NHKですからっ。

もちろん、きちんと見ていれば、そんなことは言わないと思いますけれども。

今回だってさ、むしろ、「オリンピックそのもの」が政治活動だってことを。そのせいで辛い思いをしている選手たちがいるということを。時代に利用されているスポーツの祭典だってことを。

ガッツリ描いているじゃんねーー。


だから、毎回盛り上がって、感動して、涙しながら、一種切なさに似た複雑な気持ちを抱えて見終えることになるんだよ……。

金栗足袋



先週の予告で全視聴者がワクワクしたシマちゃん再登場。生きてた

……はずもなく、これは大方の予想通り、りくちゃんでした。
 大河ドラマ『いだてん』第35回感想 りくちゃん


まあ、私よりは多少妻に似てますかね。

と、増野さん。

いや、あんた、1%も入っとらんばい。

そう。100%杉咲花ちゃんだす。

りくちゃんは、今は播磨屋さんでお針子をしているのだそうで。

四三が連れてきた小松くんは、早くもホレてる感じ。

「韓国併合から26年。朝鮮出身のランナーがマラソン界を席けんしておりました。その代表格が孫基禎と南昇竜。

なんと、2人とも金栗足袋を履いてベルリンオリンピックに出場します。つまり、この店に来て作ったわけですな。」


ということで。
大流行りの播磨屋さんである。オリンピック選手も履いている足袋だなんて誇らしいね。

4年後に向けて負けられない戦いに早くも参戦する気満々な小松くんも足袋を依頼。


その前に。
ごりんの、「親父の顔は覚えていない」下りがあったんですけれどもね……。

TOKYO


さて。
「1936年7月31日。ベルリンオリンピック開幕の前日。ついに1940年のオリンピック開催都市が決まります。」

全ての民族、全ての国、全ての人に解放されるべきオリンピックにしなければならない。


という治五郎先生のスピーチに、中国の王正廷(おう せいてい)も一票入れてくれた。


「TOKYO !」

が高らかに叫ばれ、36票取った東京はオリンピック開催地に決定。アジア初のオリンピック開催地……。

みんなに握手して回る治五郎先生である。

同じアジア人として、私、東京を支持するしかなかった。スポーツと政治、関係ない。

と、言ってくれる王正廷さん。
 大河ドラマ『いだてん』第35回感想 TOKYO


ああ、良かった……。
治五郎先生のような垣根のない人は、やはり愛される。

スポーツは平等。
スポーツに国境はない。

それを体現しているからこそ、みんなの心が動くのよね……。

……と、感動している最中、ラトゥールに礼を言おうと近寄った まーちゃんは耳打ちされる。

「日本を代表してヒトラーにお礼を言いなさい」

えっ、えっ、えっ?お……俺が? ヒトラーに? 何で!?


ほらね、笑顔の影でもう、政治が動いているんだから……。

ハーケンクロイツのためのオリンピック



その答えは、現地に入ったまーちゃんたちには直ぐに理解できることだった。

街中にはためくオリンピック五輪の旗……と、ハーケンクロイツ。
 大河ドラマ『いだてん』第35回感想 ハイル

まーちゃんは、河野くんの言葉を思い出していた。

「ヒトラーだよ。ヒトラーがラトゥールに圧力をかけ、東京支持を要求し、日本に恩を売ったんじゃないかね?」

日独伊三国同盟はまだこの先だけれども、そういう思惑で動いているということよね。


選手は戦闘帽を被って開会式に出席する始末。

まーちゃんは一人、ロサンゼルスの帽子を被っていた。

浮かれて何が悪い!
俺はスポーツをやりに来たんだよ。
歩くのは戦場じゃない。競技場だ。



ハイル!の姿勢で動くドイツ人選手たち。軍事練習のような行進……。

それでも、映画のために常に撮影しているほど絢爛豪華。完璧な演出。

ラトゥールから、「ベルリンに張り合う事は無い。日本は日本でいいんだ。」と優しく言われる治五郎先生。


しかし、治五郎先生は王正廷のことを思い出していた。

私はね、副島くん。中国の委員が支持してくれたことを重く受け止めておるんだ。

ありえんだろう。昨今の日中関係の悪化を考えたら。

恐らく彼は祖国で非難の的になるでしょうな。

そこだよ、そこ。
スポーツに政治を介入させないという強い意志だ。

東京オリンピックはアジア共通の悲願なんだよ。

とことんプロパガンダ


日本人選手には隔離されたお部屋が与えられた。

何で日本人しかいないの?選手村なのに。

特別待遇だそうだよ。
西洋人に囲まれて気疲れしないように。


いやいやいや、あれがよかったじゃんね~~ロスは。

白人も黒人も一緒になって大騒ぎしてさ、ねっ?


選手たちの間では「ハイル!」が流行。隔離されてるからこそ、そんな変な遊びが出来るわけで、その気持ち悪さも まーちゃんをイラつかせる。

日本人寮の世話をする通訳のヤーコプはユダヤ人。

この時、ベルリンをボイコットしそうなアメリカやイギリスを繋ぎ止めるために、ヒトラーはユダヤ人への差別を緩和していた。だからこの期間を狙って海外に亡命したユダヤ人は多かったらしい。

ユダヤ人だけではなく、黒人差別の発言も控えていたとか。

期間限定、ご苦労なことです……。このオリンピックの後、ますますナチスのアーリア人至上主義が強まり、やがてはホロコーストへと……負の時代の前の見栄体裁のための最後の緩和。

日本、金メダル


いよいよマラソン。
このオリンピックの日本代表は、播磨屋で足袋を作った孫基禎選手と南昇竜選手。

ラジオの前に張り付き応援する播磨屋の四三。
大河ドラマ『いだてん』第35回感想 四三


思い出すのは自分が走ったストックホルム。

スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ……。

四三の気持ちはいつも選手の苦しい時間に寄り添っている。

そして、

「ついに拍手が起こっております。満場に拍手が起こっております。」

「孫君です! 孫君です!孫君1着! 孫君1着!あと50mでテープを切ります。やったぞ~~!」

「40m 30m 20m」「いけ!」「10m!」

「ついにテープを切りました!」


飛び跳ねて喜ぶラジオの前の日本人たち。

いや、一視聴者の身でも、思わず拍手して大喜びしてしまったわ…ドラマなのにドラマなのに……。


「続いて2着のハーパー。そして3着の南昇竜!」

「我が日本は苦節二十数年にして、堂々、今、孫君によりましてマラソンのテープは切って落とされたのであります!」



四三の時には叶わなかった夢。
孫くんによって、叶えられた日本の金メダル。

そりゃあ、嬉しいよ。嬉しいよ。

けれども……

嬉しいだけでは終わらせてくれなかった。

先ほども書いたように、というよりも、名前を見れば分かるように、金メダルの孫くんと銅メダルの南くんは2人とも朝鮮の人だった。

合併といえば聞こえはいいが、この時、朝鮮は日本の統治下にいたんですね。
 大河ドラマ『いだてん』第35回感想 表彰式


表彰台で揚げられたけられた日章旗も「君が代」も、孫選手にとっては屈辱だった。

ラジオは顔が映らない。
単純に大喜びする四三と、複雑な思いを察する小松くん。

その時、辛作さんが口を開くのだった。

俺はうれしいよ。

日本人だろうが朝鮮人だろうが、アメリカ人だろうがドイツ人だろうが。俺の作った足袋履いて走った選手はちゃんと応援するし、勝ったら嬉しい。

それじゃ駄目かね? 
金栗さん。



素敵だね。「何人だろうがオレの足袋を履いて走った選手の勝利は嬉しい」。

播磨屋の金メダルだね。

よかです。 
そっでよかです。
ハリマヤの金メダルたい!


靴は人種を選ばない。

スポーツも。
選ばないはずなのに。

この後、孫選手は「日本人としてメダルを喜ばなかった疑い」で特高から目を付けられ、陸上をやめてしまうのだった。(戦後、やっとコーチとして自分の国で活躍できることになる。)

平和な祭典でも何でもないよね。

「国」への忠誠の秤にされる祭典。


しかし、前畑は言うのだった。

私は好きになる。
このオリンピック。

今は嫌いやけど……。金メダル取ったらこのオリンピックのこと好きになれると思う。



どの選手も自分のために頑張って上へ上へ走り続けて良いのに。良いはずなのに。

その後ろに国の問題を抱える時代。

プレッシャー以上の闇だわ。


オリンピックは戦争じゃない。

ハッキリと、そう言える時代だろうか。今は。


このドラマについてひと言ふた事書きたい方はぜひどうぞ。

NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』◆放送期間 : 2019年1月6日 ~◆平均視聴率 : %◆脚本 : 宮藤官九郎◆原作 : ◆主演 : 中村勘九郎、阿部サダヲ◆出演 : 綾瀬はるか,生田斗真,星野源,松坂桃李,山本美月,竹野内豊,役所広司…


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※キャスト

田畑政治 … 阿部サダヲ
金栗四三 … 中村勘九郎

高石勝男 … 斎藤工
大横田勉 … 林遣都
野田一雄 … 三浦貴大
鶴田義行 … 大東駿介
河野一郎 … 桐谷健太
松澤初穂 … 木竜麻生
前畑秀子 … 上白石萌歌

酒井菊枝 … 麻生久美子
マリー … 薬師丸ひろ子

松沢一鶴 … 皆川猿時
河西三省 … トータス松本
慶 … 深沢敦

平沢和重 … 星野源
岩田幸彰 … 松坂桃李
北原秀雄 … 岩井秀人
東龍太郎 … 松重豊

古今亭志ん生 … ビートたけし
美濃部孝蔵 … 森山未來
おりん … 池波志乃
美津子 … 小泉今日子
五りん … 神木隆之介

知恵 … 川栄李奈
今松 … 荒川良々
万朝 … 柄本時生

大隈重信 … 平泉成
田畑うら … 根岸季衣
小松勝 … 仲野太賀

嘉納治五郎 … 役所広司

岸清一 … 岩松了
野口源三郎 … 永山絢斗
副島道正 … 塚本晋也
杉村陽太郎 … 加藤雅也
牛塚虎太郎 … きたろう
川島正次郎 … 浅野忠信

黒坂辛作 … ピエール瀧→三宅弘城
可児徳 … 古舘寛治
田島錦治 … ベンガル
内田定槌 … 井上肇
永井道明 … 杉本哲太
大森兵蔵 … 竹野内豊
大森安仁子 … シャーロット・ケイト・フォックス

武田千代三郎 … 永島敏行
二階堂トクヨ … 寺島しのぶ

春野スヤ … 綾瀬はるか
池部幾江 … 大竹しのぶ
金栗実次 … 中村獅童
金栗信彦 … 田口トモロヲ
金栗シエ … 宮崎美子
金栗スマ … 大方斐紗子
春野先生 … 佐戸井けん太
美川秀信 … 勝地涼
池部重行 … 髙橋洋

三島弥彦 … 生田斗真
シマ … 杉咲花
三島弥太郎 … 小澤征悦
三島和歌子 … 白石加代子
吉岡信敬 … 満島真之介
中沢臨川 … 近藤公園
押川春浪 … 武井壮
本庄 … 山本美月

橘家圓喬 … 松尾スズキ
小梅 … 橋本愛
清さん … 峯田和伸

村田富江 … 黒島結菜
村田大作 … 板尾創路
人見絹枝 … 菅原小春

犬養毅 … 塩見三省

高橋是清 … 萩原健一


噺 … ビートたけし

※スタッフ

脚本 … 宮藤官九郎
原作 …
音楽 … 大友良英
題字 … 横尾忠則
制作統括 … 訓覇圭、清水拓哉
プロデューサー … 岡本伸三、吉岡和彦
演出 … 井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁、桑野智宏
時代考証 … 古川隆久
スポーツ史考証 … 真田久、大林太朗
落語・江戸ことば指導 … 古今亭菊之丞









【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】
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コメントとトラックバック

  1. くう より:

    千早太夫さん
    >「りく役で再登場を!」みたいなことを書いた記憶がありますが、まさか本当にその予定だったとは、驚きです。

    要望が通りましたね(笑)すごい!

    >シマちゃんは、お手伝い→メイド→教師兼アスリート→妻→母 と成長を見せてくれましたが、りくちゃんはガラッと変わって10代のフレッシュなワーキングガール

    りくちゃんの方にも、これから小松くんと一緒になって五りんの母になって戦争を経て…と様々な苦労があるのでしょうね。

    杉咲花ちゃんの二役芝居は楽しみですが、起こる事は色々と辛そう……。

  2. 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』第35回

    「民族の祭典」内容昭和11年春。東京へ帰ってきた金栗四三(中村勘九郎)播磨屋で、シマの娘・りく(杉咲花)と再会。辛作(三宅弘城)増野(柄本佑)たちに、弟子の小松勝(仲野太賀)を紹介。そしてベルリンオリンピック開催前日。次回大会の開催地が決まろうとしていた。総会に出席した嘉納治五郎(役所広司)は、IOC委員達に働きかけ。そして総会で、日本での開催を訴えるのだった。投票が始まり3時間後。1940…

  3. 千早太夫 より:

    かつて、このコメント欄で杉咲さんについて「りく役で再登場を!」みたいなことを書いた記憶がありますが、まさか本当にその予定だったとは、驚きです。

    でも考えてみれば、りくが五りんの母だと判っているわけで、大人りくが登場することは予想がつくし、だとすれば杉咲さん以外の配役は考えられないですよね。

    シマちゃんは、お手伝い→メイド→教師兼アスリート→妻→母 と成長を見せてくれましたが、りくちゃんはガラッと変わって10代のフレッシュなワーキングガール。
    確かに母娘だけあって顔は瓜二つ(当たり前)ですが、完全に別人に見えます。女優さんの演じ分け力、スゴい。

    小松君とりくちゃんとの馴れ初めも、ホンワカしながら見てました。
    冒頭の古写真にりくちゃんの姿がないのは、彼女がカメラマンだったから…という種明かしも、つかみとして中々良かったです。

    ただ、確か五りんは両親を早くに亡くし、昭和36年にはもう2人ともいないです。と、いうことは…。これから戦争も本格的になるし…。

    ま、先のことは考えず、ドラマを楽しみましょう。 次回はいよいよ前畑ガンバレ!!