1932年、田畑(阿部サダヲ)率いる日本競泳陣はロスオリンピックで大旋風を巻き起こす。200m平泳ぎの前畑秀子(上白石萌歌)も空前のメダルラッシュに続こうとするが決勝レースは大混戦に。IOC会長ラトゥールは日本水泳の大躍進の秘密に強く興味を持つ。治五郎(役所広司)はその答えを見せようと日本泳法のエキシビションを思いつく。中学生のときに病気で競技をやめた田畑も、それ以来の水泳に挑戦することになる。
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)
いだてん~東京オリムピック噺(ばなし) 第31回 「トップ・オブ・ザ・ワールド」
先週もそうだったけれども、今週も、もう何を書けばいいのかよく分からなくて。
だって、テレビを見ながらずっと泣いたり拍手したり泣いたりバンザイしたり泣いたり……してたじゃんね~~!!
今週も、実感放送ドラマ回。
前畑がんばれ!
「ついにやって来ました。この日8月9日。ロサンゼルスは午後3時30分を回りました。澄み切った空には…」
河西アナウンサーの声が響く実感放送スタジオ。
「予選で前回オリンピック記録を抜く3分10秒7を出した日本の前畑秀子。しかしオーストラリアのクレア・デニス選手はそれを超える3分8秒を出しております。」
「更には3分3秒の世界記録を持つヤコブセンが相対します。さあ女子200m、決勝を見んものと集まった観衆は1万人超……。」
会場には、あのキューカンバー姉ちゃん・ナオミも来ていた。
「日本人、スポーツ。勝てるワケガナイ。」
けれども、前畑を見つめる目には光が見える。
勝て!
何が何でも勝ってくれ!
というまーちゃんのプレッシャーの中、スタート直前の前畑は、
どうしてもあがりそうな時はまーちゃんの顔、見て。河童のまーちゃんがキュウリ食べてるとこ想像して!
という一枝たちの言葉を思い出していた。
まーちゃんがくわえたタバコがキュウリに見える……。
ふふっ。
と笑った直後にスタート。
いけ、前畑! いけ、前畑!
例によってストップウォッチ片手にプールサイドを走りだそうとして係員に止められるまーちゃん。
前畑は4コース。3位に着けていいタイミングでターン。
ナオミはチケットを握りしめた。
やってみなくちゃ分からんだろう!
やってみなくちゃ分からんから面白いんじゃんね~!
勝つんだよ、俺たちは!
毛唐を倒すために日本から来たんだよ。
田畑はそう言っていた。
日本人が勝ったら、またアメリカ人に白い目で見られるのだろうか。
でも、そんなことは今、どうでもいい。
前畑は最後のターン。
「ヤコブ、デニス、前畑の順で最後のターン」「残り50m!あとは死力を尽くすのみです!場内は総立ち!」
ナオミはいつしか叫んでいた。
Go-------!!!
前畑はヤコブセンを捉えて、抜き……
残り10m……5m…………
「デニス、出た!頭を水に突っ込んだままの連続ストローーーーク!!……」
前畑が水面から顔を出した時。
辺りは静まり返り、音が消えていた。
耳から水を抜く。
と、
割れんばかりの歓声!!
やったぞ、前畑!
秀ちゃん!
3分6秒4よ!秀ちゃん!
うそ……。
ほんま!
ほんまにすごい!
「ほぼ同時であります!協議の結果、今、順位が決定しました。」
オーストラリアのプレースクレア・デニスが一着。3分6秒3。
前畑は二着だった。3分6秒4。
わずか10分の1秒差の銀メダル!
スタジオで前畑は語った。
私は夢遊病者のように何が何だか分からんかった。
今思い出しても私の力で泳いだとは思えない。
きっと神様が助けて下さったのです。
私の胸は嬉しさでいっぱいでした。
女子は外交目的での参加だと言われ、あまり期待もされていなかった。
お守りを食べた甲斐があったじゃん……。
ドラマなのに、ドラマだと分かっているのに、本気で応援してしまった。
おめでとう。鶴田
日本水泳チームの快進撃は続く。
8月12日。男子100m背泳ぎ。
日本選手は1着から3着までを占め、3色のメダルを独占した。
どうですか?嘉納さん。日の丸が3つも!
泣くな!
見苦しい。
しっかり立ちたまえ。
東京でこれをやったら感慨もひとしおでしょうな~。
東京オリンピック招致の夢は消えない。
会場には日系人の姿が増えてきた。みんなで君が代を歌う。
1500mでは、北村が金、牧野が銀を獲った。
そして、ついに200m平泳ぎの決勝。
「さあ、最終種目200m平泳ぎ決勝。日本人同士のメダル争いが期待されます。6コースは小池、準決勝を1位で通過。5コース鶴田。前回王者の意地を見せるか!?」
予選では同タイム。準決勝では鶴田は小池に負けていた。
元々、小池を引っ張り勝たせるために泳げと言われてきた鶴田である。
アムステルダムで優勝したのは過去の栄光。
今回ばかりは本当に来るんじゃなかったよ。
小池の練習台に、って言われたが、ついていけん。
かえって気を遣わせる始末だ。
4年前の金で有終の美を飾ればよかった。
後進に道を譲ることを余儀なくされた高石のかっちゃんだけに語れた本音。
そのかっちゃんは、今はチームのリーダーとしてプールサイドから試合を見つめている。
出られなかった かっちゃん。
まだ挑める鶴田。
水しぶき……
「飛び込んだ!鶴田!いいスタート、頭ひとつ出ております。続いて小池、更にフィリピンのイルデフォンソ。予選では小池が残り50mで抜く作戦で鶴田に勝利しました。さあ、決勝はどうだ!?50m……。練習どおり、小池、まだ出てこない。鶴田にぴったりついている。行け!行け!小池!行け!」
小池は鶴田の後ろについて、抜けずにいる。
「最後のターン!さあ、ここからが小池の真骨頂!小池、出てきた!残り25m、小池、迫る!鶴田に迫る!あとふたかき……いや、あとひとかき!鶴田逃げる!小池!小池!」
どうせ小池が勝つ。宮崎も勝つ。
日本の金メダルは安泰。気楽なもんさ。
かっちゃんにそう言われて。
やるか。
老体にムチ打って。
決心し、今ここにいる。
いけ~! いけ~!ツルさん!
かっちゃんの応援を受けて……
今日はいつもの鶴田じゃない!今日は鶴田が強い!3m2m……鶴田1着!小池2着!鶴田、2大会連続金メダルの快挙~~!
鶴田はゴールした。
2大会続けての金メダル。
小池君を助けて1等にすっとが私の役目でしたが……実を言うと、一日1本だけ彼に勝つ気で……本気で泳ぎました。
じゃれど、一度も勝てんかった。
今日は小池君が年寄りに気を遣ってくれたんでしょう。
もちろん、気なんか使うはずも無く。
執念と本気と情熱での金メダル。
誰よりも喜んでくれたのは、共に「老兵」を嘆いたかっちゃん。栄光の日。
日系人に力を与える
6種目中5種目で金を取った日本チームは、エキシビジョンでも大いに注目された。
Youたち、やっちゃいな、と嘉納先生に言われて披露する日本泳法。
まーちゃんも参加。
あの子どもの頃以来、泳いでいなかったとは思えない素晴らしさよ。
日本泳法の美しさはシンクロの基本みたい。
「Xth O L Y M P I A D」
アルファベットのカードを持ってのパフォーマンスが終了すると、各国の選手がプールに飛び込んでくる。
いいね……。
スポーツで繋がっているこの感じ。
スポーツの国際大会をテレビで見ると、いつもこういうシーンに感動する。それ、そのもの。
こんなに繋がっているのに。
みんなが笑顔なのに。
本当にこの後、この人たちと戦争するのか……。
8月15日。
帰国する日本選手団をアメリカ人も日系人もみんな見送ってくれた。
日本を祖国に持ったこと、私たち、恨んだ。
私たち日本人は白人社会に入れてもらえなかったんですよ。
日本人だというだけでどんなに肩身の狭い思いをしたことか。
それを君たちは勝った。
勝った!
そう…そう、勝った!
日本人、白人に決して負けない!
そのことを教えてくれた。
ナオミの通訳で、日系人みんなの気持ちを知る選手団。
俺は日本人だ!
俺は日本人だ~!
日本人だ!
日本人だ!
口々に叫ぶ人たちを見て。
誰よりも驚いた顔をしていたのは、政治部の記者であるはずのまーちゃんである。
記者のくせに水泳以外に何の関心も持っていなかったまーちゃんが、意図せずアメリカの人種問題に光を注ぐ存在になる。
この人は、本当に……
何か持っている人なんだよねぇ。
「変な声」って……
土産を持って日本に帰ったまーちゃんの心残りは大横田だった。
社に戻ると部内には誰もおらず、まーちゃんを写真を見ながらロサンゼルスを振り返る。
宮崎、よく撮れてるじゃない。ハハハ…鶴田、小池、いい顔だ。へえ~。
妙な感じだね、フフッ。
この目で見てきた光景なのに、こうして記事になるとまるで人ごとだよね。
前畑君……。
大横田…………。
誰も居なかったわけではなく。
この独り言をだまって聞いていた酒井菊枝は、突然、うめき出す まーちゃんに驚く。
すまん!大横田!
ああ……。
チクショー!悔しいな!
どうして気付いてやれなかったんだ…。
人一倍体調を気にしてたのに……なあ?
腹巻きしてセーター着て寝るようなやつなんだよ。
だから彼の落ち度じゃない!
全て俺の責任!
君は口が堅い人だから言うが、いつもどおり泳げば大横田は金だった、間違いなく!
一生悔やむのだろうな……俺は悔やむよ。
牛鍋なんて食わせなかったら……。
四三と弥彦は自らの負けを苦い甘い思い出として共有して生きてきたわけだけれども、「快挙」と言って間違いないロスオリンピックに同行したまーちゃんでも、やはり心に残るのは「負け」の方なのだ。
人間は後悔する生き物。
けれども、それもやがては甘い思い出に変わって行くのよね。
強い光よりも、陰を思いやれる人は優しい。
それは、クドカンのドラマなら、いつでも。何でも。
全部取らなくてよかったと思います、私は。
と酒井菊枝嬢。
全部取るなんて面白くないし、次の目標がなくなりますから。
1個残してきたのは田畑さんの……何というか……品格!そう、品格だと思います、私は。
麻生久美子が……喋ったぁぁぁぁぁぁ………!!
ついに。(笑)
変な声。
えっ。
えっ……!
せっかく語ってくれたのに、第一声の感想がそれかよ……。
そんな声だったっけ?君。
いやいや、そもそも聞いたことなかったな。君の声は。
え~…名前も忘れた。
酒井です。
酒井菊枝。
酒井君。
ありがとう。
品格……そんな気がしてきた。
お見合い写真の相手だYO!!
しかし、これで酒井菊枝嬢がやっとまーちゃんの脳にインプットされたのである。長かった(泣)
アメリカでは日系人を奮い立たせ、東京駅では出迎えの人の群れを感動させたロスオリンピック選手団。
西でも彼らに触発され、再び水を被っている男が居た。
四三である。
みんなが喜びを分かち合い興奮する……よく分かる。
だって、ドラマだと分っていても、この回に拳を握りしめて泣きながら見ている視聴者がたくさん居たと思うんだよ。(私だよ)
幸せだよね。
こういう時を分かち合えるのは幸せだよ。
力を貰えるよ。
そんな中。
力を得られれば、欲が出る人間も増えて行くわけで。
日本人は世界に勝てる。
そういう方向でこのオリンピックが利用される時がやがてやってくる……。
紀行で語られたバロン西
ドラマでは水泳にのみ焦点を当てていたけれども、このオリンピックでは他にも金メダル獲得者はいた。
中でも有名な、西竹一大佐(ロスオリンピック時は中尉)は、愛馬・ウラヌスと共に馬術大障害飛越競技で金メダルを獲得。世界から賞賛された。
西竹一は太平洋戦争の激戦地・硫黄島で最期を遂げる。遺体は見つかっていないという。
2006年に公開されたクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』では、 伊原剛志さんが西竹一大佐を演じている。
※キャスト
田畑政治 … 阿部サダヲ
金栗四三 … 中村勘九郎
高石勝男 … 斎藤工
大横田勉 … 林遣都
野田一雄 … 三浦貴大
鶴田義行 … 大東駿介
河野一郎 … 桐谷健太
松澤初穂 … 木竜麻生
前畑秀子 … 上白石萌歌
酒井菊枝 … 麻生久美子
マリー … 薬師丸ひろ子
松沢一鶴 … 皆川猿時
河西三省 … トータス松本
慶 … 深沢敦
平沢和重 … 星野源
岩田幸彰 … 松坂桃李
北原秀雄 … 岩井秀人
東龍太郎 … 松重豊
古今亭志ん生 … ビートたけし
美濃部孝蔵 … 森山未來
おりん … 池波志乃
美津子 … 小泉今日子
五りん … 神木隆之介
知恵 … 川栄李奈
今松 … 荒川良々
万朝 … 柄本時生
大隈重信 … 平泉成
田畑うら … 根岸季衣
嘉納治五郎 … 役所広司
永井道明 … 杉本哲太
大森兵蔵 … 竹野内豊
大森安仁子 … シャーロット・ケイト・フォックス
野口源三郎 … 永山絢斗
黒坂辛作 … ピエール瀧→三宅弘城
可児徳 … 古舘寛治
田島錦治 … ベンガル
内田定槌 … 井上肇
岸清一 … 岩松了
武田千代三郎 … 永島敏行
二階堂トクヨ … 寺島しのぶ
春野スヤ … 綾瀬はるか
池部幾江 … 大竹しのぶ
金栗実次 … 中村獅童
金栗信彦 … 田口トモロヲ
金栗シエ … 宮崎美子
金栗スマ … 大方斐紗子
春野先生 … 佐戸井けん太
美川秀信 … 勝地涼
池部重行 … 髙橋洋
三島弥彦 … 生田斗真
シマ … 杉咲花
三島弥太郎 … 小澤征悦
三島和歌子 … 白石加代子
吉岡信敬 … 満島真之介
中沢臨川 … 近藤公園
押川春浪 … 武井壮
本庄 … 山本美月
橘家圓喬 … 松尾スズキ
小梅 … 橋本愛
清さん … 峯田和伸
村田富江 … 黒島結菜
村田大作 … 板尾創路
人見絹枝 … 菅原小春
犬養毅 … 塩見三省
高橋是清 … 萩原健一
噺 … ビートたけし
※スタッフ
脚本 … 宮藤官九郎
原作 …
音楽 … 大友良英
題字 … 横尾忠則
制作統括 … 訓覇圭、清水拓哉
プロデューサー … 岡本伸三、吉岡和彦
演出 … 井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁、桑野智宏
時代考証 … 古川隆久
スポーツ史考証 … 真田久、大林太朗
落語・江戸ことば指導 … 古今亭菊之丞
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【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】
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コメント
千早太夫さん
>地元が「前畑選手を朝ドラに!」と盛り上がっているなか、大河ドラマで一時的とはいえ前畑選手がヒロイン的な扱いをされてしまい…
ああ、そういうことですか(笑)了解しました。
水泳選手の朝ドラは楽しそうですね。
前畑さんの場合は選手であり、結婚もしており、職業婦人であり…と、朝ドラヒロインには良い題材かも。
ただ朝ドラはセット撮りなので、オリンピックなんてナレスルーかショボいセットで終わりそうーー。題材にもならない方がいいかも~~。
>永田市長の暴言は、決して彼1人だけの思いではなかったようです。
永田市長は実際にはあんなヘラヘラして「どうして取らなかったんだ」と言ったわけではなく、悔し涙で語っていたようで。
ヘラヘラしながら言われるのも腹立たしいですが、本気で泣きながら言われるのもまた違うプレッシャーがありそうーー。
くうさん、記事アップの都度まるでストーカーのようにコメントをつけてすみません。
だいぶ前にも書きましたが、くうさんには意見の違いがあっても何だかシンパシーを感じるので…。
ところで、前回(30回)では判りにくいコメント、失礼しました。
朝ドラ云々の話は、上白石さん個人の話ではありません。
地元が「前畑選手を朝ドラに!」と盛り上がっているなか、大河ドラマで一時的とはいえ前畑選手がヒロイン的な扱いをされてしまい、前畑選手の朝ドラへの道は今後どうなるのかな?…という趣旨でした。
NHKとしては、「朝ドラに前畑さん?、大河でそれなりに扱ったじゃん。しばらくいいでしょ。」となるかも…という心配です。老爺心。
それはともかく、今回前畑さんは、河西アナの「次はもっと良い中継をします。」という発言に、「つ、次?」とキョトン状態です。
それもそのはず、何しろ彼女は、五輪で良い記録を出せてメダルも取れた、競泳はもう満足だから、国へ帰ったらお見合いして結婚しよ♪…が本心だったらしいので。
でも、当時の日本社会がそれを許さなかったんですね。永田市長の暴言は、決して彼1人だけの思いではなかったようです。
これが大差で2着だっら、前畑さんの運命も大きく変わっていて、「前畑ガンバレ」もなかったかもしれないのですから、人の運命は判らぬものです。
大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』第31回
『トップ・オブ・ザ・ワールド』内容ロサンゼルスオリンピックで、田畑(阿部サダヲ)率いる競泳陣は、快進撃を続けていた。そんななか、前畑秀子(上白石萌歌)が出場する200m平泳ぎの決勝となる。有力選手が出場するレースは、ゴール直前、大混戦に。そして。。。。オリンピックの東京招致に動いていた嘉納治五郎(役所広司)は、大躍進の競泳陣の理由が、日本独自の泳法にあると、IOC委員へのエキシビションを思い…