NHK大河ドラマ【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】第29回「夢のカリフォルニア」感想


ロス五輪が開幕。日本水泳チームの総監督として現地に乗り込んだ田畑政治(阿部サダヲ)は、広大な美しい選手村で各国の選手たちが交流する姿を見て、これぞスポーツの理想郷と感激する。しかし、一方で日系人差別も目の当たりにするなど複雑な思いも抱く。全種目制覇を絶対の目標とする田畑は、本戦に出場するメンバー選びで非情な決断を下し、高石勝男(斎藤工)ら選手との間にあつれきを生む。田畑の執念は身を結ぶのかー
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)

  2019年大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」感想

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いだてん~東京オリムピック噺(ばなし) 第29回 「夢のカリフォルニア」

1932年(昭和7年)7月。日本選手団は、ついにロサンゼルスに到着。

 

「6月23日。大型客船「龍田丸」は、日本選手団を乗せ出港します。

天皇陛下より贈られた恩賜の衣そろいのブレザーに身を包んだ選手131名、開催国アメリカに次いで2番目に多い大選手団です。

一行はハワイ、サンフランシスコを経由し、7月9日ロサンゼルスに到着。

ダウンタウンにあるリトルトーキョーでは、日系人から熱烈な歓迎を受けます。

歓迎パレードを終えた一行は、いざ選手村へ。」

 

「戦う」という言葉を負って出発してきた一行。

それぞれがそれぞれの戦いをするロスオリンピック回。

四三の時と全く違う待遇

折しも前年には満州事変が起こり、アメリカからの対日感情も悪くなっている時。有色人種に対する白人の偏見も大きかった。

このオリンピックでは、どんな扱いを受けるのだろうという心配ばかりしていたものの……。

選手村まで立派なバスでの送迎。歓迎する人々の群れ。美しい選手村。

 

これ、理想郷じゃんね~!

オリンピック、最高!
最高!
うわ~!
オリンピック、最高!

ミュージカルまで始まる始末~~。
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 ロス五輪選手村

 

「選手村」というものは、このオリンピックから正式に導入されたものらしい。この時は、女子は選手村には入れなかった。(しかし高級なホテルを用意されている)

 

なんと、時代は変わったよねぇ。

初めての日本人オリンピック選手として四三と弥彦が参加した、20年前のストックホルム。

時差に苦しみ、食事に苦しみ、言葉は分からず、奇異の目で見られ、トイレは背伸びしなきゃ使えない高さで、コーチもおらず、道も分からず、病の先生を負ぶって炎天下……。

たった2人で共有したからこそ、切なく甘く、でも何よりも大切な思い出だった。

あの経験があって学習したから、今があるんだよね。

日本人選手は131名。
言葉が通じず寂しいこともない。

コーチもガッツリ付いてくれている。
自分の映像をフィルムで確認してアドバイスを貰うこともできる。

女子は親善大使として大歓迎されたりもしている。着物、最強!!
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 ロスオリンピックの進み

 

待遇もメンタルも、本当に素晴らしく良くなったなぁ……。

後進と先輩と

対海外でのメンタル面が20年前よりも遥かに改善されている一方。

対国内でのプレッシャーが髙石や鶴田を苦しめた。

高石はすでに選手外通告を受けてここに来ているし、鶴田も後輩の練習台になれと言われて呼ばれた身。それでも、2人とももう一花咲かせたい。

けれども、まーちゃんの方針は「一種目も失うな!」

夜中にまでこっそり練習する2人に後輩も気づき、自分たちは4年後もあるから高石を出してくれと松澤に頼みこむ始末。

僕や小池君には4年後もあります。
でも、高石さんにはもう……。

高石さんが出ることはメダル以上の価値があります!

キャプテンとしてチームを引っ張ってきた高石さんが出場すれば、ほかの選手の士気高揚にもなります。
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 後輩たち

 

これは驕りだよなぁ。
スポーツ選手の4年後に「必ず」はない。

4年後には大横田たちだって後輩に追い抜かれて焦っているかも知れないし、ケガでもしてしまえばおしまいだ。

もちろん。
彼らにはまだ、その内、世界はオリンピックどころじゃなくなることも知らない。

とにかく。
約束された4年後なんてないことを分っているから、松澤はまーちゃんのやり方に不満はあっても、後輩たちを帰らせる。

 

俺たちの敵は宮崎・小池。
もはやアメリカじゃない。

そこまで追い詰められているかっちゃんも、可哀想。
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 後進に追われる身

 

スポーツ選手の宿命だね。
どこで引き際を決めるか……。

複雑な時代背景

到着時には歓迎ムードに見えたものの、やはり日本人は歓迎されるばかりではなかった。

プールは本来、白人専用のものだった。

英語が満足に分らないのをいいことに、ガシガシ踏み込むまーちゃん。ホント……強いよね(笑)

同じプールに入らず遠巻きに見ているアメリカ人に怯むことなく、

アメリカですね。 
日本人と同じ水に入りたくないってことですか?

いいじゃんね~!
貸し切りだ! 
存分に使わせてもらおう!行け。

 

ほんと、ソレよねぇ。
しかし、これも人数が多いからこそ堂々と行けることだよね。

ストックホルムの時のようにコーチも居らず選手が一人だったら、こういう時にどうしていいのか分からないよね……。

こうやって集団でズカズカ進んで行く図々しさも日本人を嫌悪させる一因だったのかも知れない。

アメリカだけではなく移民として海外に渡った日本人は決して好かれてはいなかった。「日本人が来たせいで現地の人たちの仕事が減る」とはカナダなどでも言われていたこと。
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 嫌われる日本

 

日系2世の女給に、

どっちに勝ってほしい? 
日本とアメリカ。

と訊ねるまーちゃん。

これも無神経。
この人たちは、その内、戦争が始まったら、何度もこんなことを尋問されなきゃならなくなるのよね。

しかし、

日本人、スポーツ勝てない。勝てるはずがない。

と言う女給に、まーちゃんは言うのだった。

なぜ勝てんと言い切る?
なぜ決めつける? 
分からんだろう!

食ってみなくちゃ分かんないキュウリの天ぷらと一緒だよ!

やってみなくちゃ分からんから面白いんじゃんね~!

 

まーちゃんのこのポジティブさは最高じゃんねぇ。

そして、目指すところはいつも「夢」ではなく「実現」。

なぜ勝たねばならぬのか

メダル一枚ぐらいくれてやったっていいじゃないか!

目標を持つのはいい。
だけど、これは違う!
強制……いや、暴力です!

なぜそんなにメダルにこだわるんですか!?

と詰め寄る松澤カクさんに、本音を語るまーちゃん。

笑うなよ。
日本を明るくするためだ。

ごめん、笑っちゃった!
だってそんな急に新聞記者みたいな顔して……。

新聞記者だよ、一応ね(笑)

 

犬養さんが撃たれてから新聞の紙面が暗い。
不況・失業・満州問題。
朝から暗澹たる気持ちになる。
これじゃ駄目だ。

言論の自由が奪われつつある今、誰かが明るいニュースを書かなきゃ駄目なんだよ!

…で、考えたんだ。
もし水泳が全種目制覇したらさ、オリンピックの期間だけでも明るいニュースを一面に持ってくることができるじゃんね。

号外が出るかもしれないね。
いやいや……いや、出るね。

スポーツが日本を明るくするんだよ!
たった数日間だけど、スポーツで国を変えることができるじゃんね!

 

ちゃんと至誠はあるじゃんね。

もう号外の記事も勝手に書いて酒井菊枝嬢に託してきたまーちゃん。(今週もセリフのない麻生さん)

「言霊」じゃんね。
言ってしまえば実現するんだよ。

ただメダルの亡者になっていたわけではなく、国策でもなく(ある意味、国策か)、お祭り好きなだけではなく……。

かっちゃん、ありがとう

この話を高石は聞いていた。

聞いていたからって予選で手を抜くわけではない。

ただ、「後進を育てて水泳界に貢献する」ことについて、考えたのだと思う。

みんなの応援の中、精いっぱい泳いだ。
ずっと人気者だったんだもんね。
 大河ドラマ『いだてん』第29回感想 かっちゃん、ありがとう

 

最後に、やっとまーちゃんは高石の手を取って言ったのである。

勝っちゃん!
ありがとう。お疲れ!

 

競技には出ない。
けれども、チームには貢献する。

新しい水泳界と、日本のために。

ラジオの取材でも、積極的にチーム全体について答える高石。

大河ドラマ『いだてん』第29回感想 かっちゃん、そしてリーダーになる

 

間もなく開幕ですが、コンディションはいかがですか?

すこぶるいいです。 
特に宮崎・小池ら若手らの伸びがすばらしい。
レース当日にピークを持っていけるよう調整を行っています。

頼もしいですな、総監督。

はい。
日本選手団の評判はあまりにすばらしく困るくらいです。

アメリカとて敵ではございません!

東京オリンピック宣言

IOC総会で、ついに日本招致の宣言をする嘉納先生。
大河ドラマ『いだてん』第29回感想 オリンピック日本招致

 

1940年に向けて……。

もちろん、現代に生きる私たちには、その頃世界がどうなっているのか、よく分かっている。

 

暗い時代だから明るいニュースを。

この発想がまーちゃんらしくて。
あらかじめ号外まで作って来ちゃうところが可愛くて。

この人、本当に子どものようだわぁ、と思う。

ラジオで「日本の勝利間違いなし」のニュースを聞いて、泣いて喜ぶ日系人。日本人。

 

ただ、これは……

「勝つことは間違いない」というニュースを流し続けて国民を扇動した時代の形、そのものでもあるのよね……。

暗いニュースをスポーツや芸能で打ち消そうという発想も危うくはある。

やはり、現代とリンクしているなぁ……。

このドラマについてひと言ふた事書きたい方はぜひどうぞ。

https://dramarevue.cinemarev.net/revue/idaten/

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※キャスト

田畑政治 … 阿部サダヲ
金栗四三 … 中村勘九郎

高石勝男 … 斎藤工
大横田勉 … 林遣都
野田一雄 … 三浦貴大
鶴田義行 … 大東駿介
河野一郎 … 桐谷健太
松澤初穂 … 木竜麻生
前畑秀子 … 上白石萌歌

マリー … 薬師丸ひろ子

松沢一鶴 … 皆川猿時
河西三省 … トータス松本
慶 … 深沢敦

平沢和重 … 星野源
岩田幸彰 … 松坂桃李
北原秀雄 … 岩井秀人
東龍太郎 … 松重豊

古今亭志ん生 … ビートたけし
美濃部孝蔵 … 森山未來
おりん … 池波志乃
美津子 … 小泉今日子
五りん … 神木隆之介

知恵 … 川栄李奈
今松 … 荒川良々
万朝 … 柄本時生

大隈重信 … 平泉成
田畑うら … 根岸季衣

嘉納治五郎 … 役所広司

永井道明 … 杉本哲太
大森兵蔵 … 竹野内豊
大森安仁子 … シャーロット・ケイト・フォックス

野口源三郎 … 永山絢斗
黒坂辛作 … ピエール瀧→三宅弘城
可児徳 … 古舘寛治
田島錦治 … ベンガル
内田定槌 … 井上肇
岸清一 … 岩松了
武田千代三郎 … 永島敏行
二階堂トクヨ … 寺島しのぶ

春野スヤ … 綾瀬はるか
池部幾江 … 大竹しのぶ
金栗実次 … 中村獅童
金栗信彦 … 田口トモロヲ
金栗シエ … 宮崎美子
金栗スマ … 大方斐紗子
春野先生 … 佐戸井けん太
美川秀信 … 勝地涼
池部重行 … 髙橋洋

三島弥彦 … 生田斗真
シマ … 杉咲花
三島弥太郎 … 小澤征悦
三島和歌子 … 白石加代子
吉岡信敬 … 満島真之介
中沢臨川 … 近藤公園
押川春浪 … 武井壮
本庄 … 山本美月

橘家圓喬 … 松尾スズキ
小梅 … 橋本愛
清さん … 峯田和伸

村田富江 … 黒島結菜
村田大作 … 板尾創路
人見絹枝 … 菅原小春

犬養毅 … 塩見三省

高橋是清 … 萩原健一

噺 … ビートたけし

※スタッフ

脚本 … 宮藤官九郎
原作 …
音楽 … 大友良英
題字 … 横尾忠則
制作統括 … 訓覇圭、清水拓哉
プロデューサー … 岡本伸三、吉岡和彦
演出 … 井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁、桑野智宏
時代考証 … 古川隆久
スポーツ史考証 … 真田久、大林太朗
落語・江戸ことば指導 … 古今亭菊之丞

【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】
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コメント

  1. 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』第29回

    「夢のカリフォルニア」内容昭和7年夏。田畑(阿部サダヲ)は、水泳チームの総監督として、ロサンゼルスに到着した。全種目制覇を目指す田畑は、選手選考も厳しくする。その一方で、人種差別も知ることに。だが、高石(斎藤工)を外したことで、選手達から反感を買うことに。ギクシャクする選手達。ついに松澤(皆川猿時)からも注意され、強硬な態度を問われた田畑は。。。敬称略演出は、西村武五郎さん“スポーツで国を変…

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