関東大震災により東京は壊滅状態に。治五郎(役所広司)が作った神宮スタジアムは避難所として人々を受け入れる。混乱に疲弊した四三(中村勘九郎)が熊本のスヤ(綾瀬はるか)の元に帰ると、幾江(大竹しのぶ)から思わぬ言葉をかけられる。四三は神宮スタジアムで復興運動会を開催し、スポーツで人々を元気づけるアイディアを思いつく。にぎやかな「復興節」が流れる中、孝蔵(森山未來)の落語が疲れた人々に笑いをもたらす。
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)
いだてん~東京オリムピック噺(ばなし) 第24回 「種まく人」
金栗四三パートの最終回。
絶望の果てに人間はどうなっていくのか。
そう、宮藤官九郎はいつだって、絶望を深く深く描き、それをそのままにはしない。
クドカン作品は信じているからだよ。
人間の強さを。
絶望する四三と善意の人々
「関東大震災。
突如起こったマグニチュード7.9の大地震により、東京は壊滅的な被害を受ける。」
「この震災で死者・行方不明者、約11万人。
全壊家屋11万棟。
火事で燃えた家21万棟。」
「有楽町の東京市庁舎も罹災し、外に張ったテント、青空市長室を震災対策本部として急場をしのぎました。」
壊滅的な状態の中で、視聴者にとって、たった1つの救い、それは小梅が生きていたこと。
先週はシマちゃんと共にラストまで姿が見えず、本当に心配したからねぇ。
生きていてくれただけで良かった。
いや、もちろん、小梅は「生きていてくれただけ」などではなかった。
ボロボロの町で元気に炊き出しを行っていた。
「丸焼屋」のすいとんだよ!
1杯目はタダだよ。
2杯目は5銭。
どんどん注いでくよ!はい!
小梅だけではなく、大量に必要となった仮設住宅(バラック)のために嘉納先生は神宮外苑を避難所として提供した。
東京市長の永田秀次郎を始め、寝る間も惜しんで被災した人たちのために働く人々。
崩壊した体協事務所から資料を掘り出す先生たち。
それぞれが人のために、自分の生活のために、必死な中……。
四三はシマちゃんが死んだのは自分のせいだと嘆き、全く前に進んでいなかった。
そして、小梅が増野さんへの慰めに
里に帰ったんじゃない?
里で身内に会えた人も多いって聞くよ。
金栗さんとこも、ご家族心配してるんじゃないの?
と言うと、一人熊本へ帰ってしまうのだった。
「さすがの金栗さんも熊本に帰りました。4年ぶりです。」
まぁ……携帯もない時代。
家族を安心させるのは大切なことだけれども……。
強い義母
熊本の池部へ戻ると、四三を案じていたスヤも兄の実次も当然大喜びした。
久しぶりに子どもたちとも会い、人心地つく四三。
そこで四三は新聞がデマを書きたてていることを知る。例の朝鮮人の陰謀説と自警団の活躍についての記事。
自警団が治安ば守っとっとだろ?
富士山の爆発して伊豆諸島が沈没すっとだろ?
はぁ……SNSがない分、デマの拡散力も遅いかも知れないが、否定を拡散する力も弱いので、一度耳に入った事はそのまま信じられてしまうね。
少なくとも俺が東京で見たとは、地震に屈せず助け合うて生きる人たちん姿ばい。
四三のその言葉に、お義母さんが噛みついた。
したら、な~し帰ってきた?
今まで何べん帰ってこいと言うたか知らん。
正明の生まれた時も政子の生まれた時も、いっちょん帰ってこんかった薄情者が。
な~し今、東京が大変な時に、な~し帰ってきた!?
言いたくなるのも分かる薄情っぷりよね、確かに(笑)これが4年ぶりとは。
逃げてきたとばい、こん男は。
東京ば捨てて。
そぎゃん男は熊本も捨てるけん、阿蘇が爆発したら真っ先に逃げるとだろ?こん意気地なしが。
そぎゃん時こそ東京に残ってふんばらんでどぎゃんする!
弱っとる人に手ば差し伸べんでどぎゃんする!
スヤさんは、四三はずっと東京でふんばって走って人を笑顔にしてきたと反論するが、まぁ、それは、好きで走ってきたことだから。
確かに、マラソンと体育の普及に尽くしてきたけれども、それは好きでやっていることの延長だから。
今こそ。
自分の「好き」のためではなくて、人のためになれとお義母さんは言うのよね。
逆らわずして勝つ。
大地震に立ち向かうとじゃのうて、そん力ば逆に利用して、最終的に人間が地震に勝てばよか!
あ~あ、思い上がっとったばい。
東京が大変か時に俺は何もできん。
我が無力ば痛感して勝手にしょげ返っとったばってん、そもそも人間は無力たい。
だけん、何も考えんで今までんどおり、バカんごつ走ればよか。
すぐに納得行く方向に行く素直さは四三の良い所。
どうせ走るならこれば持っていけ。
救援物資たい。
困った時はお互いさまばい。
気風が良くて、口が悪くとも心優しい義母である。
ぬしゃ、韋駄天が何の神様か知らんとか?
人々んために走って食いもんば集めて運んだ神様たい。
だけん、「ご馳走」て言うとばい。
荷運びのためにスヤさんも付けてくれた。
韋駄天が東京を救うために走る時が来た。
韋駄天は走る、孝蔵は噺す
初めは1人で物資を背負って走っていた四三にも限界はあり、やがて弟子たちを連れて共に走るようになる。
「大塚から春日通りを下って宮城前。日比谷公園、日本橋」
「神田、上野、浅草……」
避難所では女子学生が働いていた。
四三が育てた走りの弟子たちと、心を育てた学生たち。
四三の東京での足跡が各地にある。
一方、孝蔵も、こんな時だからこそ笑いを求めている人々がいることを、そして復興のために寄席を開いている仲間がいる事を知る。
笑顔が人を救う。
だから孝蔵も喋る。
走る、喋る、走る、喋る……2人の軌跡がここでまた交差する。
復興運動会
治五郎先生は、復興のために今こそ明るい目標を、と考えた。
いや、こんな時だからこそ私は次の3つを提案します。
1つ、来年パリで開催される第8回オリンピック大会に選手を派遣する。
2つ、全国陸上競技大会を開催し、これを予選とする。
3つ…
トクヨは反対したが、野口は大声で賛成する。
私は嘉納先生のご提案を支持します。
非常時こそ強国、日本!
屈しない東京を世界にアピールすべきです!
我々はスポーツマンです。
我々ができるのはスポーツによる復興だけです!
3つめの提案は被災した人たちみんなが参加できる運動会。
バラックの住民である清さんと小梅は反対したが、これは増野さんの願いで決行されることとなった。
やって頂けないでしょうか?
なるべく大々的に宣伝をして。
シマの耳に届けば、必ず駆けつけると思うんです。
運動会当日は晴れ。
清さんたちが反対した理由「悲しみに沈む人たちはそれどころじゃない」は杞憂に終わったようで、住民は、ことに子どもは、みんな笑顔で参加した。
子どもも、母親たちも、みんなスポーツを楽しんだ。
児童福祉施設で活動していた安仁子も施設の子どもたちを連れてやってきた。
可児先生のドッジボール、駆けっこ、綱引き……厳しいルールなんてフリーで。大森先生が伝えて、今や女子に人気のバレーボール。ここには大森先生もいるんだね。
そんな中、増野さんはシマちゃんを探し続けていた。
そして、シマちゃんではなく、シマちゃんの手紙を持った人が現れる。人見絹枝だ。
絹枝は、シマの行方不明を知らず、誘われて決意して、東京に出てきたのだった。
「女子スポーツの普及が今の私の生き甲斐です。」
「女子の陸上はまだ世界でも認められていません。」
「だけど、私はあなたの走る姿を世界中に見せたい。
私が金栗先生に憧れたように、あなたの走る姿を見て、あなたのようになりたいと願う女の子が一人でも現れたら、それこそが女子スポーツの未来を開くのです。」
絹枝は、あれから岡山の競技会に出て、走り幅跳びで日本新記録を出したのだという。
女子の徒競走に飛び入り参加した絹枝。
そこには、確かに女子スポーツの進展があった。
「女の走りはみっともない」
「女のスポーツは体を壊す」
「女は子どもを生むからスポーツは不要」
そう言われていたあの頃。
その一語一語と闘ってきたシマちゃん。
今、彼女が行ってきたその成果がここにある。
増野は会場の中に確かに妻の姿を認め……
少し笑って、そして泣いた。
そしてフィナーレへ
ラストはオリンピックの出場選手による徒競争。
僕が走らなきゃ締まらんだろう。
と、三島天狗がいつの間にか来てくれていた。
彼が現れれば会場は華やぎ、天狗の応援歌も始まる。
ここで走るのは、シマちゃんへのはなむけだね。
ねぇ……みんなが笑っている。
主要キャラクターの笑顔はもちろん、会場に居るみんなが笑っている。
増野さんも笑っている。
ここに妻が共にいることは、もう分っているから。
響く声援。天狗のエール。笑い声。
天国を見るようなこの多幸感。
熊本に1人の身体の弱い少年が居て。
走る事で丈夫になって行った。
「走る」という行為には「目的」以外の意義があることを知り、「走る」を「楽しさ」に変えていった。
苦しい事もあった。
けれども幸せは多かった。
それをみんな広めた。
みんなに味わってほしくて。
そのフィナーレがここにあり、今、みんなが「走る」を楽しんでいる。
体育は「目的」や「手段」だけではなく、喜びをくれるものだと。悲しみに沈む世界で今こそ証明する。
ストックホルムから12年か。
彼はず~っと走り続けておる。
彼が走るとみんなが笑顔になる。
まさに韋駄天ですな。
そぎゃん、よかもんじゃなかです。
ああ、バカだ。
バカの走りよるて、みな笑っとるだけたい。
そのバカを一番近くで見守ってきた人たちの物語が終わった。
もちろん、シマちゃんも。
ずっと行く末を見守り続ける。
だって「噺」ですから
そして、ドラマの最後は志ん生で〆るのである。
だって、このドラマはただの「大河ドラマ 韋駄天」、ではなくて、『東京オリムピック噺』なのですから。
こうして復興運動会は幕引きとなりました。
その晩、外苑バラックから泣き声は一切聞こえませんでしたよ。
ええ……みんな疲れてとっとと寝ちゃったんでしょう。
おあとがよろしいようで。
後篇は、まあくん主体の戦後へ向かうオリムピック噺。
またよろしくお付き合いのほど。
※キャスト
金栗四三 … 中村勘九郎
田畑政治 … 阿部サダヲ
嘉納治五郎 … 役所広司
永井道明 … 杉本哲太
大森兵蔵 … 竹野内豊
大森安仁子 … シャーロット・ケイト・フォックス
野口源三郎 … 永山絢斗
黒坂辛作 … ピエール瀧
可児徳 … 古舘寛治
田島錦治 … ベンガル
内田定槌 … 井上肇
岸清一 … 岩松了
武田千代三郎 … 永島敏行
二階堂トクヨ … 寺島しのぶ
春野スヤ … 綾瀬はるか
池部幾江 … 大竹しのぶ
金栗実次 … 中村獅童
金栗信彦 … 田口トモロヲ
金栗シエ … 宮崎美子
金栗スマ … 大方斐紗子
春野先生 … 佐戸井けん太
美川秀信 … 勝地涼
池部重行 … 髙橋洋
三島弥彦 … 生田斗真
シマ … 杉咲花
三島弥太郎 … 小澤征悦
三島和歌子 … 白石加代子
吉岡信敬 … 満島真之介
中沢臨川 … 近藤公園
押川春浪 … 武井壮
本庄 … 山本美月
美濃部孝蔵 … 森山未來
橘家圓喬 … 松尾スズキ
万朝 … 柄本時生
小梅 … 橋本愛
清さん … 峯田和伸
平沢和重 … 星野源
岩田幸彰 … 松坂桃李
東龍太郎 … 松重豊
古今亭志ん生 … ビートたけし
おりん … 池波志乃
美津子 … 小泉今日子
五りん … 神木隆之介
知恵 … 川栄李奈
今松 … 荒川良々
大隈重信 … 平泉成
田畑うら … 根岸季衣
慶 … 深沢敦
村田富江 … 黒島結菜
村田大作 … 板尾創路
人見絹枝 … 菅原小春
高石勝男 … 斎藤工
大横田勉 … 林遣都
野田一雄 … 三浦貴大
鶴田義行 … 大東駿介
前畑秀子 … 上白石萌歌
松沢一鶴 … 皆川猿時
河西三省 … トータス松本
噺 … ビートたけし
※スタッフ
脚本 … 宮藤官九郎
原作 …
音楽 … 大友良英
題字 … 横尾忠則
制作統括 … 訓覇圭、清水拓哉
プロデューサー … 岡本伸三、吉岡和彦
演出 … 井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
時代考証 … 古川隆久
スポーツ史考証 … 真田久、大林太朗
落語・江戸ことば指導 … 古今亭菊之丞
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【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】
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コメント
-d- さん
>シマという名もない民草の憧れそして思いが
人見絹枝という次の時代を創っていったことが伝わって一部が完結しました
初めはこんなに重要なキャラクターだとは思いませんでしたね。振り返れば、前半はシマちゃんの物語でした。W主演だったのはシマちゃんだったのですね。
>森山未來 菅原小春 ダンサーっていい表現するなあと
森山くんの演技力は今までの出演ドラマや映画でも充分に見てきましたが、菅原小春さんはホント意外でしたわ。さすがの表現力と跳躍力!
巨炎さん
>女子体育の辺りは題材云々より人物描写がアレでしたが
最後は大河らしさとクドカンらしさが良い形で結実。
フェミニズムに話が寄り過ぎると、個人的にはウヘーーってなっちゃうのですが、全体的にはイイ話でしたよね。素晴らしい四三最終回でした!
>片や二度目の橋本愛はタフになっています。
自分も苦しい中で気遣いの言葉が自然体で出てくるのは強さの証。
中の人の演技も格段上がったと思います。女将らしい声の出し方、凄いですねぇ。
振り返るとあっという間 やはり面白かったです!
シマという名もない民草の憧れそして思いが
人見絹枝という次の時代を創っていったことが伝わって一部が完結しました。
やはりうまいわ~ (シマは五りんまで関わるのだろうけど)
森山未來 菅原小春 ダンサーっていい表現するなあと
使い方もうまかったんだろうと思いました。
大河ドラマ「いだてん」 #24 「種まく人」
四三編クライマックス!
いだてん 第24回「種まく人」
大河ドラマ『いだてん』のお時間です。 BSを録画にて鑑賞。 第24回「種まく人」 あらすじ・・・・・・・
いい最終回(?)でした。
女子体育の辺りは題材云々より人物描写がアレでしたが
最後は大河らしさとクドカンらしさが良い形で結実。
主人公の知人が全員無事では噓くさく杉咲花がババを引きましたが
前回の語りで視聴者に変な期待を持たせなかったのは制作側の良心でしょうか。
片や二度目の橋本愛はタフになっています。
自分も苦しい中で気遣いの言葉が自然体で出てくるのは強さの証。
ここから大竹しのぶへのリレーも良しと。
高橋是清が第二部キャラというのは意外。
治五郎先生は続けて登場するようなので時系列を少し巻き戻して
大正を別の側面から描くのか昭和メインからの回想という形か。
何はともあれ次週に期待。
NHK大河ドラマ「いだてん」第24回「種まく人」
種まく人!大震災の大災害の只中にあっても、希望の鐘を鳴らして種をまく人のおるとば~~い!はいはい、そうそう、カラ元気の!ヤセ我慢の!ヘラズ口ば~~い!んだけど、立てるモノ、走れるモノは精いっぱい力を出して、弱いモンを助けるった~~~い!
大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』第24回
「種まく人」内容地震により壊滅状態となった東京。四三(中村勘九郎)は、行方不明のシマ(杉咲花)を捜し続けていた。そんななか、嘉納治五郎(役所広司)は、建設中の神宮競技場付近を、避難所として解放することを永田秀次郎(イッセー尾形)東京市長に申し入れた。混乱する中、友人たちに勧められ、四三は熊本に帰郷する。四三の無事に、喜ぶスヤ(綾瀬はるか)実次(中村獅童)すると幾江(大竹しのぶ)が、思わぬ言葉…