家康(阿部サダヲ)の命を狙った間者が嫡男・徳川信康(平埜生成)の家臣だったことがわかり、岡崎衆らは一斉に罰せられる。さらに家康の側室に新たな男子が誕生し、信康とその母・瀬名(菜々緒)の立場はいっそう弱くなる。焦る瀬名は直虎(柴咲コウ)に書状を出し、信康の嫡男を得るため側室の候補を探して欲しいと依頼する。
しかしその動きは、信康の正室の父にあたる織田信長(市川海老蔵)の知るところとなってしまう。
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)
おんな城主 直虎 第45回「魔王のいけにえ」
歴史の中には、なぜこうなったのか?という事件がたくさんある。
特に親の子殺しや子の親殺しなど、血縁関係のいざこざは、当事者はどんな気持ちだったのかと考えると多方向にドラマが出来上がる。
信康自刃事件
徳川信康が、実の父である家康から切腹申しつけられた一件の「通説」は、こうである。
信康の正室であるお五徳姫は織田信長の娘であった。
このお五徳が、天正7年、実家の父・信長に夫と姑・築山殿に関する愚痴を十二ヶ条もの訴状にして送る。
この内容が、ドラマ中でも出てきた、
訴えによると信康殿は悪行の数々をなさっておいでのようじゃ。
徳姫様に断りもなく側室を置き、ないがしろにしておるそうではないか。
書状によると、信康殿は武田と通じておるとの事じゃが、それはまことか?
こんな事。
生まれた子供が二人とも女児であったことから夫婦仲が冷えた事。
織田出の姫を元々築山殿が良く思っていなかった事。
築山殿が武田の間者と内通している疑いがある事。
信康の性質が荒く、領民を弓矢の的にしたり、僧を殺したり、暴行が激しい事。
どこまで真実かは解らず、夫と姑の愚痴を書きつづっている内にエスカレートして言わなくてもいいようなことまで書いてしまったのか。
姑が夫に側室をあてがうのを見て不愉快な気持ちが止まらなかったのか。
いずれにせよ、まさかこれを見て父が夫を処刑せよと言い出すとは、五徳も思わなかったに違いない。
が、信長が下した決断は信康の処分であった。
使いに出した酒井忠次は信長の言葉に何ら反発もせず信康を庇う事もせず、処分の言い渡しを受けて帰ってきた。
「同盟」とはいえ、織田の意向に逆らう事が出来ない家康は、涙ながらにこれを呑んだ。
そういう話。
事件の諸説
これは、通説であり、信康の人格については大変な人格者で家臣から慕われていたというドラマ通りな説もある。
だから信長も、こんな優秀な跡取りがいる徳川を恐れて芽を摘んだのだとも。(この説は近年、信長の跡取りであった信忠の人格が見直されるにつき、否定されている)
徳川の家臣同志の陰謀に巻き込まれたのだとも。
また、家康と信康の親子関係が上手くいっていなかったので、この期に乗じて家康が信康を処分したのだとも。
私自身は、この説が正しいのではないかと思っている。
正しい……というよりも、その説が一番問題なくシックリくるでしょ。
実の息子だけど、関係性が悪かったから殺した。
その方が救われる。
信長は、信康の処分を言い渡した(と言われている)が、築山殿については実は何も触れていない。
つまり、築山殿は家康の独断で処分したのであって、これはもう……邪魔だったからである(どう考えても)。
その事からも、私は家康が処分したくて2人を処分したのだと思っている。
ドラマ説
しかし、このドラマは救いのない道を走る。
信康は人徳者で、見るたび見るたび、全国の視聴者が自分の子供もこう育てばいいのにと憧れてしまうようなイケメンである。
築山殿は息子思いの母で、夫を信頼して愛しており、離れているとはいえ夫婦仲も親子仲も、とても良い。
こうなったら、当然、悪者は織田である。
今日もリューク感満載。
……からの、レム。
そなた、忠次…!
まさか、この機に乗じて信康を廃してしまおうと思うておるのではあるまいな!
正直、魔王・信長よりも、家康の方が恐かったよね。
息子を斬れという命令をシレっと持って帰ってきた酒井に対する怒り、何も出来ない自分への不甲斐なさ、息子を何とかしなくてはという焦り……
サダヲの演技が素晴らしい。
愛する母・於大からも、
お家を守るためには、己自身、親・兄弟も、子の命さえ、人柱として断たねばならぬ時がある。
その中で生かされてきたのですから、そなただけが逃れたいと言うは、それは通りませぬ。
それは通らぬのです。
竹千代。
と、呪いの言葉を受け、ついに家康は、
分かりました。
信康を斬ります。
と言ってしまうのだった。
今川に離縁され、織田に兄を殺され、戦国に翻弄された母の呪いの言葉に勝てないのだ。
主人公たちは
長丸誕生に沸く浜松で、万千代は、自分が「守り役」になれるかもと浮足立つ。
この子の誕生の光が岡崎の信康に影をもたらしていく様を、その目で見ることになる万千代。
そして、処刑が言い渡される岡崎で、万千代は「守り役」とは、どのようなものか知るのだ。
なんとかなりますまいか!
信康様の落ち度ならば、守り役でございます私の落ち度!
何とぞ私の首で!
と進み出る平岩親吉。
簡単に口にしていた「守り役」の重みを目の前で教えられる万千代である。
おとわは……。
宣告の時、しっかりと岡崎に「たまたま」居た。
男子が出来ぬ信康のために、井伊谷から側室を出したいと瀬名からの知らせを受け、おとわはは側室を出す代わりに子宝祈願をしに来たのであった。
いつも女主人公はこういう場に居るよね!
って話だけれども、あまりにも自然で何とも言えぬ。
なんせ、この行動は英断であった。
「側室候補を」という書に対して「高瀬さまを」と言う方久に考え込んだ おとわは、
お家騒動の臭いのするところに寄っていっても、ろくな事にはならぬ。
と、申し出を断るために来たのだから。
高瀬なんかを送ったら、それこそ武田の間者疑惑で井伊谷ごと焼き討ちである。
私、だいぶ前の、まだ2人が大人役になったばかりの頃に、
きっと、築山殿の最期の時に駆けつけてきて「瀬名殿を助けて」とか大騒ぎするんでしょ。
みたいな事を書いた記憶があるのですが、(たぶん、家康が一人で岡崎に行っちゃって瀬名が幽閉されたころ?)本当に主人公は今、この場にいた。
ただ。
助けてやってくれと騒がず、私が代りに!とも わめかず、蹴鞠勝負に挑んだりもしなかった。
ヒロインは、ただ静かに事の成り行きを見守り、次の一手を考える。
大人になったのだ。
数々の苦難を経て、考えて動く人になった。
さて……
カッコ良く立ちあがった氏真はどう動くのか。
ここ、ちょっと見もの。
※キャスト
井伊直虎(おとわ)… 柴咲コウ(子役期:新井美羽)
井伊直盛 … 杉本哲太
祐椿尼(千賀) … 財前直見
井伊直平 … 前田吟
井伊直満 … 宇梶剛士
井伊直親(亀之丞) … 三浦春馬(子役期:藤本哉汰)
しの … 貫地谷しほり
井伊直政(虎松) … 菅田将暉(子役期:鈴木楽→寺田心)
中野直由 … 筧利夫
中野直之 … 矢本悠馬
中野直久 … 冨田佳輔(子役期:山田瑛瑠)
今村藤七郎 … 芹澤興人
弥吉 … 藤本康文
たけ→梅(二役) … 梅沢昌代
小野政直 … 吹越満
小野政次(鶴丸) … 高橋一生(子役期:小林颯)
小野玄蕃 … 井上芳雄
小野亥之助(万福) … 井之脇海(子役期:荒井雄斗)
なつ … 山口紗弥加
奥山朝利 … でんでん
奥山孫一郎 … 平山祐介
奥山六左衛門 … 田中美央
新野左馬助 … 苅谷俊介
あやめ … 光浦靖子
桔梗 … 吉倉あおい
桜 … 真凛
高瀬姫 … 朝倉あき(少女期:高橋ひかる)
鈴木重時 … 菅原大吉
近藤康用 … 橋本じゅん
菅沼忠久 … 阪田マサノブ
瀬戸方久 … ムロツヨシ
南渓和尚 … 小林薫
傑山 … 市原隼人
昊天 … 小松和重
甚兵衛 … 山本學
八助 … 山中崇
角太郎 … 前原滉
富助 … 木本武宏
福蔵 … 木下隆行
今川義元 … 春風亭昇太
今川氏真(龍王丸) … 尾上松也(子役期:中川翼)
寿桂尼 … 浅丘ルリ子
太原雪斎 … 佐野史郎
関口氏経 … 矢島健一
庵原朝昌 … 山田裕貴
大沢基胤 … 嶋田久作
岩松 … 木村祐一
佐名 … 花總まり
北条氏康 … 鶴田忍
北条幻庵 … 品川徹
佐久間信盛 … 坂西良太
明智光秀 … 光石研
徳川家康 … 阿部サダヲ
瀬名(築山殿) … 菜々緒(子役期:丹羽せいら)
徳川信康(竹千代) … 平埜生成(子役期:吉田海斗)
石川数正 … 中村織央
酒井忠次 … みのすけ
本多忠勝 … 髙嶋政宏
榊原康政 … 尾美としのり
本多正信(ノブ) … 六角精児
松下源太郎 … 古舘寛治
松下常慶 … 和田正人
徳姫 … 植原星空
於大の方 … 栗原小巻
武田義信 … オレノグラフィティ
龍雲丸 … 柳楽優弥
モグラ … マキタスポーツ
力也 … 真壁刀義
カジ … 吉田健悟
ゴクウ … 前田航基
中村与太夫 … 本田博太郎
織田信長 … 市川海老蔵
武田信玄 … 松平健
語り … 中村梅雀
※スタッフ
脚本 … 森下佳子
音楽 … 菅野よう子
テーマ音楽 ピアノソロ … ラン・ラン
題字 … Maaya Wakasugi
制作統括 … 岡本幸江
プロデューサー … 松川博敬
演出 … 渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
時代考証 … 小和田哲男
公式サイト http://www.nhk.or.jp/naotora/
【おんな城主 直虎】
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コメント
巨炎さん
>信長は娘の愚痴を真剣にとりあったりはしないが
考え方、性格、気性が自分に似ている故に危険視して排除という流れ
信康の悲劇は徳川の黒歴史ですから、実は人徳者だった説も多々出ていますが、織田側史料ではほぼ暴君説ですよね。
その映画は見た事がありませんが、面白そう。探してみます。
永井路子先生だったか杉本苑子先生だったか、まさか父が夫を処分しようとは思わず、ただの嫉妬で訴状を書いたらそうなってしまったという御徳の話を書かれていた気がします。
真相は当然解りませんが、解らないからこそ想像力を掻き立てられますよね。
連休中に信康君が主役の「反逆児」(1961年作)という映画を見ました。
この作品では、
「信康の性質が荒く」
「信長も、こんな優秀な跡取りがいる徳川を恐れて芽を摘んだ」
を採用しました。
信長の娘婿というより実子的で
母と嫁の狭間に置かれたイライラから
市井の娘に手を出しておいて責任を取る気はサラサラなし。
この辺りが十二か条の訴状につながり
信長は娘の愚痴を真剣にとりあったりはしないが
考え方、性格、気性が自分に似ている故に危険視して排除という流れ。
観る前は判官贔屓の脚色を予想しましたが
人徳者的という事は無かったです。
また信康の最期は信長の最期とも合わせ鏡的で
英傑はその気性故に周囲と軋轢が生じ自滅していき
時代の勝者となるのは家康のような凡人という流は「直虎」にも通じたでしょうか。
おんな城主 直虎 45話「魔王のいけにえ」
公式サイト 家康(阿部サダヲ)の命を狙った間者が嫡男・徳川信康(平埜生成)の家臣
巨炎さん
>義経とか浅野の殿様も後世から美化された可能性が高い
いわゆる「判官贔屓」が凄いですから(笑)
容姿が美しかったと言われているのも怪しいし、やっている事は団体行動を乱す事ばかり(笑)悲惨な最期は結構な自業自得です。
>直虎と信長が同年に亡くなる事に結び付けていくのか?
正直、信長はほぼほぼ無関係なので出番の多さはサービスですよね(笑)
還俗設定、今回、突然の尼姿にビックリしました。
おんな城主直虎 第45回 魔王のいけにえ
第44回「井伊谷のばら」はこちら。 前回の視聴率は11.4%とむしろ降下。日本シリーズは第6戦でけりがつき(だけどわたしにとってのシリーズMVPはラミレス)、影響はなかったのにイッテQに蹴散らされている。よくわかんない。 さて今回は、例の信長への臣従を示すために家康が本妻と長男を犠牲にするというお話。流行りの…
大河ドラマ『おんな城主直虎』第四十五回
「魔王のいけにえ」内容刺客から家康(阿部サダヲ)の命を救ったことで、一万石の知行を手に入れた万千代(菅田将暉)刺客の一族が処断されるも、それが信康(平埜生成)の家臣だったことから、家康は、他の岡崎衆らに対しても岡崎城下へ入らぬようにと処分を下す。信康ら…
義経とか浅野の殿様も後世から美化された可能性が高い訳ですね。
義経を全く美化しなかったのは手塚治虫の「火の鳥」や大河ドラマ「草燃える」。
「草燃える」と「平清盛」観たら、源平三代の苦労を台無しにする気かよと(笑。
で、その最中で「父の処刑」を命じた因果が回ってきたような阿部氏でした。
前作は新しい家康像(←元主役)ですが本作は正統派でしょうか(←今度主役)。
しかし中盤の悲劇として持ってきそうな、こういうイベント。
直虎と信長が同年に亡くなる事に結び付けていくのか?
脚本家の力量は感じられるだけに還俗設定だけが余計に思えます。
おんな城主直虎 第45回~信康の悲劇を見て、万千代は現実の理不尽さを学んだ
信康(平埜生成)と瀬名(菜々緒)の悲劇。 今回、万千代(菅田将暉)は事件の目撃者である。 万千代が見たものとは<現実社会の理不尽さと怖さ>。 そして<織田にともかく気を遣う徳川>。 織田信長(市川海老蔵)に気を遣い、へりくだる家康(阿部サダヲ)…
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」第45回「魔王のいけにえ」
今週の元ネタは・・悪魔のいけにえ?テキサスチェーンソー!レザーフェイスだ!ギュイイイイイんっ!あ、失敬、ちょいと興奮しすぎてしまいました。あ、鼻血が・・フガフガ。
おんな城主 直虎「魔王のいけにえ」
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