浜松城では家康(阿部サダヲ)の臨席の元、万千代(菅田将暉)と万福(井之脇海)の「甲冑着初め式」が執り行われていた。一方井伊谷では祐椿尼(財前直見)に病の影が忍び寄る。母の身を案じる直虎(柴咲コウ)は周りに声をかけ、病床の祐椿尼がさみしくないよう会いに来て欲しいと願い出る。
家康の小姓として田中城攻めに同行することになった万千代は、家康の寝所の近くで異変を察知する。
(あらすじは Yahoo!テレビより引用)
おんな城主 直虎 第44回「井伊谷のばら」
設楽原の決戦を経て、徳川は次々と遠江を攻略していった。
田中城攻めもそのひとつ。
万千代はここで初陣を飾る事となったが、「色小姓」として見られているので軍議に入る事も出来ず、仕事は身の回りの世話を準備するのみ。
戻ったら殿に元服を願い出た方がよいかもしれぬ。
このまま色小姓扱いされておっては寝所に閉じ込められ、俺の徳川勤めが終わる気がする。
身を助けた「色小姓」の身分だったが、こうなってくるとむしろ障害になってくる。
万千代は手柄に焦っていた。
そんな折、信康が田中攻めのために駆けつけてきた。
喜び迎える家康。
信康は近藤武助と名乗る若い武士を連れていた。
ついこの間、元服を済ませたばかりらしい若武者っぷりに嫉妬する万千代。
何とぞ。
若様から殿にそろそろ元服をとお口添え頂きたく存じまする。
父上はおぬしらを戦に出したくないのかもしれんがのう。
!!
ご存じかと思いますが、まことのところは色小姓でも何でもなく…。
慌てて言い訳をすると、信康は涼しく笑う。
さような意味ではない。
戦に長けた者はほかにもおるゆえ、おぬしにはそれ以外を求めておるのではないかという事じゃ。
しかし、万千代は納得がいかない。
武功を立ててこその武士である。
その晩、万千代は、殿の寝所に忍ぼうとする人影を見た。
……が、姿は無く。
酒井や本多に話したところで、では捕まえれば大手柄じゃと笑いものにされるばかり。
戦場には連れて行ってもらえぬので、くせ者を捕まえるためにあちこち見回り疲れ果てて寝ている所に家康が戻ってくる。
薬を作ってくれと起こされるのにピクリとも動かぬ万千代。
家康は仕方なく、名乗り出た近藤に薬を煎じさせることにした。
しかし。
近藤が殿に薬湯を差し出そうとしたその時。
万千代はいつの間にか近藤ににじり寄っていた。
そなた、毒味をしてみよ。
え…。
万千代。何を言いだす。
ただの養生薬じゃ。
よいではないか。
ほれ毒味してみよ。
どうした。
何故できぬ。
すると、近藤は薬湯を投げ捨て、斬りかかる。
殿を庇った万千代は肩に傷を負い、万事休す……。
……の、シーンの大迫力。
初めは、殿に薬湯を渡す新参者いじめを始めたのかと思って「大奥や!!」とか言ってたんだけど違った(爆)
菅田将暉は本当に上手いな……。
表情の一つ一つに魅入ってしまう。
あの者のたくらみにどうやって気付いた。
薬箱の留め紐の結び方が違っておりました。
留め紐は、必ず蝶結びにしておりまして、それが、なぜが片結びになっておりました。
誰かが薬箱に触れたのだと。
調べてみましたところ、やはり混ぜ物がしてあり、これは何者かが私が殿を殺したという事にして殿を亡き者にしてしまおうとしておるのだと気付きました。
万千代の仕事に対する細かさと、観察眼がよく見える話。
ただ手柄に拘り立身出世に逸っているだけではない。
仕事に対する姿勢がまっすぐで、殿に対する忠誠心もずば抜けている。
こりゃ……可愛がられて当然よね。
榊原様。あの者は何故かような事を…。
と、訊くところがちょっとした子供っぽさ。
もしかしたら、まだ、大奥的に自分に罪を着せて殿のご寵愛を取ろうとするライバルの仕業……という頭があったのかも知れない。
間者だとは……思ってもいなかったみたいだし。
そして、ここで、近藤武助は武田の間者らしいと解るのだった。
殿のお命をお救いした!
この件で、万千代は何と一万石の知行を下される事になる。
何じゃ。不服か。
あ…めっそうもない事にございます!
井伊万千代! ますますのご奉公に励みまする!
この時の顔が、子役の心ちゃんにそっくりでビックリしたわ。
子役にまで戻れる菅田将暉、なんて恐ろしい子。
こうして万千代が出世の栄光を掴んでいく切っ掛けを作ったこの時。
「武田の陰謀」……
で、信康と、歴史はついに繋がってしまった。
武田の間者を直政が討ち取ったという逸話は実際にあるらしいが(「逸話」であって実話かどうかは謎よ(笑))、毒薬を煎じたというのはオリジナルストーリーだし、その間者を信康が連れていたというのもフィクション。
しかし、ドラマ上では、直政の栄光の影に信康の悲運があるという作りになってしまった。
この辺の作り方、凄いと思うのだ。
何だってそうだよね……。
光と影は表裏である。
万千代は信康を好ましく見ていたし、将来的にはお仕え出来るとすら思っていた。
なのに、全く意図せず、万千代自身が信康の悲劇の入り口を作ったのである。
切ない……。
今回は、もう1エピソード。
祐椿尼の臨終。
反発され、相容れない様相を見せつつも、養子である虎松と繋がってきたおとわである。
祐椿尼は、母となれなかった娘のために、この養子と話す機会を作ってやる。
が、
おとわは、家名に拘り、井伊谷をどうしたいか指針もないのに再興させたい虎松を叱る。
殿には誇りというものがござらぬのか!
近藤は但馬を殺し、ここをかすめ取った当の本人ではないか!
井伊のものであったものを井伊が取り戻して何が悪い!
悪うはないが、くだらぬ。
そのくだらぬ事すらできなかったのはどこのどなたじゃ!
まるでくだらぬ事からあえて自らは身を引いたようなおっしゃりようじゃが、殿は出来ぬ事から逃げ出しただけではないか!
戦いから降りたものが戦いに口を出すなどもっての外!
逃げて初めて見えるものもあるのだ!
負け犬がたわ言をほざくな!
さような考えなら家督は決して譲らぬぞ。
望むところです。
ならば力ずくで引き剥がすまで。
私には虎松の気持ちも解るけどねぇ。
家や名を「くだらぬ」「要らぬ」と言ってしまったら、アイデンティティが崩壊する寂しさや悔しさを感じる。
おとわは一歩先へ行ったのかもしれない。
つまり、それは一戸の「家族愛」ではなくて、全人類的な地域愛や民への愛である。
けれども、そこへ到達するのは人間なかなか難しいもので。
まずは家名や土地や先祖の心を守りたい。
それだって立派な君主の心なのよね。
私は幸せにございますよ。母上。
母上のたった一人の娘に生まれ、この年まで叱られ、支えられ慈しまれ…母上の優しさを独り占めしてまいりました。
これほどの果報者はそうそうおりますまい。
母上。
私を一人娘に産んで下さって、この人生をお与え下さり、かたじけのう存じます。
親が居なくなるということは、自己から解放されることなのかも知れないな、と。
父が亡くなった時に私はそう思った。
おとわは親を亡くし、実家を失くし、子も持たず、夫も持たず、これで完全に「みんなのためだけの人」になる。
次郎法師をやめて久しいけれども、これこそ「出家」に一番近い状態なのではなかろうか。
ずっと案じていたいですね。
ずっと、ずっと、そなたの身を。
一人っ子とはなんて幸せな存在。
死してなお、母は自分の事だけを見守り続けてくれるのだから。
浜松市の龍潭寺には松岳院跡が残されており、祐椿尼はここで晩年を暮したといわれている。
http://www.ryotanji.com/annai/keidai.html#syogakuinato
https://dramablog.cinemarev.net/blog-entry-5403.html
※キャスト
井伊直虎(おとわ)… 柴咲コウ(子役期:新井美羽)
井伊直盛 … 杉本哲太
祐椿尼(千賀) … 財前直見
井伊直平 … 前田吟
井伊直満 … 宇梶剛士
井伊直親(亀之丞) … 三浦春馬(子役期:藤本哉汰)
しの … 貫地谷しほり
井伊直政(虎松) … 菅田将暉(子役期:鈴木楽→寺田心)
中野直由 … 筧利夫
中野直之 … 矢本悠馬
中野直久 … 冨田佳輔(子役期:山田瑛瑠)
今村藤七郎 … 芹澤興人
弥吉 … 藤本康文
たけ→梅(二役) … 梅沢昌代
小野政直 … 吹越満
小野政次(鶴丸) … 高橋一生(子役期:小林颯)
小野玄蕃 … 井上芳雄
小野亥之助(万福) … 井之脇海(子役期:荒井雄斗)
なつ … 山口紗弥加
奥山朝利 … でんでん
奥山孫一郎 … 平山祐介
奥山六左衛門 … 田中美央
新野左馬助 … 苅谷俊介
あやめ … 光浦靖子
桔梗 … 吉倉あおい
桜 … 真凛
高瀬姫 … 朝倉あき(少女期:高橋ひかる)
鈴木重時 … 菅原大吉
近藤康用 … 橋本じゅん
菅沼忠久 … 阪田マサノブ
瀬戸方久 … ムロツヨシ
南渓和尚 … 小林薫
傑山 … 市原隼人
昊天 … 小松和重
甚兵衛 … 山本學
八助 … 山中崇
角太郎 … 前原滉
富助 … 木本武宏
福蔵 … 木下隆行
今川義元 … 春風亭昇太
今川氏真(龍王丸) … 尾上松也(子役期:中川翼)
寿桂尼 … 浅丘ルリ子
太原雪斎 … 佐野史郎
関口氏経 … 矢島健一
庵原朝昌 … 山田裕貴
大沢基胤 … 嶋田久作
岩松 … 木村祐一
佐名 … 花總まり
北条氏康 … 鶴田忍
北条幻庵 … 品川徹
佐久間信盛 … 坂西良太
明智光秀 … 光石研
徳川家康 … 阿部サダヲ
瀬名(築山殿) … 菜々緒(子役期:丹羽せいら)
徳川信康(竹千代) … 平埜生成(子役期:吉田海斗)
石川数正 … 中村織央
酒井忠次 … みのすけ
本多忠勝 … 髙嶋政宏
榊原康政 … 尾美としのり
本多正信(ノブ) … 六角精児
松下源太郎 … 古舘寛治
松下常慶 … 和田正人
徳姫 … 植原星空
於大の方 … 栗原小巻
武田義信 … オレノグラフィティ
龍雲丸 … 柳楽優弥
モグラ … マキタスポーツ
力也 … 真壁刀義
カジ … 吉田健悟
ゴクウ … 前田航基
中村与太夫 … 本田博太郎
織田信長 … 市川海老蔵
武田信玄 … 松平健
語り … 中村梅雀
※スタッフ
脚本 … 森下佳子
音楽 … 菅野よう子
テーマ音楽 ピアノソロ … ラン・ラン
題字 … Maaya Wakasugi
制作統括 … 岡本幸江
プロデューサー … 松川博敬
演出 … 渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
時代考証 … 小和田哲男
公式サイト http://www.nhk.or.jp/naotora/
【おんな城主 直虎】
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コメント
『おんな城主直虎』、終盤でやっと面白くなってきた(第41~45回)
皆さんこんばんは。今回は去年の大河ドラマ『おんな城主直虎』の感想シリーズということで、第41~45回までの感想を書きます。今日はエイプリル・フールですが、興味がないので無視します 笑まずはあらすじ。草履番として徳川家中で働く井伊万千代(菅田将暉)と小野万福(井
おんな城主 直虎 44話「井伊谷のばら」
公式サイト 浜松城では家康(阿部サダヲ)の臨席の元、万千代(菅田将暉)と万福(井
巨炎さん
>序盤で「ナウシカ?」と言っていたのが本当になりました
というか、スタッフは明確に狙ってやってるらしいですから(笑)
>アニメのナウシカは自分の故郷が守られたら、それで良くて外部の人達の何の指針も示していない
一応、おとわも自分の郷だけを守った事になるんでしょうね。まさに井伊谷の郷。
>そもそも何故、還俗させたのでしょうね。
僧なら言動に観念的な所があっても納得できるし近藤に対するアドバイザーの立場も明確になるのに。
それですよね!
今の…というか、ただの民になって以来、おとわの位置は完全に僧ならシックリ来る位置ですよね(笑)
>龍雲丸とラブストーリーやりたかっただけならサイテー。
そんな気はします。
本当に、この大河においてヒロインの個人的なラブストーリーは直親に留めておいて欲しかった。
>大河ドラマでは「徳川家康」(1983年)で当然、描かれたでしょうが
「徳川家康」ですか。
私、何か他の大河ドラマで割とガッツリ見た記憶があるのですが、何だっただろう?思い出せなくて。
大河ドラマ『おんな城主直虎』第四十四回
「井伊谷のばら」内容ついに初陣を迎えることになった万千代(菅田将暉)万福(井之脇海)を井伊谷の直虎(柴咲コウ)は、心配する。そんな直虎に、祐椿尼(財前直見)は家康(阿部サダヲ)の小姓なのだから、心配する必要は無いというが。直虎は、そう語る母・祐椿尼に衰えを気遣う。 そして万千代に初陣となる。攻めるは、駿河の田中城。小姓として家康に同行するも、軍議にも参加出来ず。今のままでは、寝所に押し込められてしまうと、万千代は、戦が終わった後、元服を申し出ようと決意する。そんな万千代に、家康嫡男・信康(平埜生成)…
おんな城主 直虎 第44回「井伊谷のばら」
大河ドラマ『おんな城主直虎』のお時間です。 BSを録画で鑑賞。 第四十四回「井伊谷のばら」 あらすじ・・・・・・・
序盤で「ナウシカ?」と言っていたのが本当になりました。でもアニメのナウシカは
自分の故郷が守られたら、それで良くて外部の人達の何の指針も示していない。
それでもヒロインが小娘で周囲が大人だから良かったですが、こちらはねぇ…。
但馬の名を出したり自分を鍛えてくれた人達の薫陶の深さが万千代に見られるだけに
彼にすれば直虎は「自分の都合で言う事をコロコロ変えるズルい大人」的。
「逃げたからこそ、見える物もある」とか、そういう手合いが言う常套句です。
私怨を抑えて近藤を立てているからこそ、民の暮らしが豊かになり
送っている薬も、その産物である事や力で当主の座を取り戻しても
民心を得られなければ意味が無い現実を説明せずに
頭ごなしに価値観を否定されても火に油を注ぐようなもの。
万千代は駄々っ子的リアクションはあっても筋の通らない事はしていないし
筋道立てた説明もしない奥歯に物が挟まったような直虎の言動の方が引っかかる。
そもそも何故、還俗させたのでしょうね。
僧なら言動に観念的な所があっても納得できるし
近藤に対するアドバイザーの立場も明確になるのに。
龍雲丸とラブストーリーやりたかっただけならサイテー。
このモヤモヤは最後まで続くのでしょうか。
>信康
この人の切腹は昔、単発で映画にもなった事があるようですね。
大河ドラマでは「徳川家康」(1983年)で当然、描かれたでしょうがどんなのだったでしょう。
当時の信長は足袋屋の四代目。
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」第44回「井伊谷のばら」
離婚して娘を連れて帰った実家は美容院、哀しくも可笑しい女たちのたまり場・・ではなく?パーマネントではなくベルサイユの方ですか!やっぱり!女にこそあれ次郎法師、か~。
おんな城主直虎 第44回~現実と戦う万千代と、戦うことから降りたおとわ
万千代(菅田将暉)とおとわ(柴咲コウ)の対立が面白い。 ・万千代は〝現実と戦っている者〟、おとわは〝戦いから降りた者〟 ・万千代は〝武家〟であり、おとわは〝武家を捨てた者〟 価値観が合わないのは当然だ。 まして万千代は若い。 血気盛んで、人生の戦い…
おんな城主 直虎「井伊谷のばら」
初陣を迎えることになり、手柄を焦る万千代(菅田将暉)万福(井之脇海)を、井伊谷の直虎(柴咲コウ)は、心配するものの、これまでは小姓の噂を逆手にとり、優位にあったものの、今度は、小姓ゆえに戦に混ぜてもらえず、万千代は悔しいがります。思わず、先に元服した相手を羨ましがる万千代。自らも元服したい、と臨みます。そんな折、機転でもって、家康(阿部サダヲ)の命を救い、彼を助けて刀傷を負いますが、それが評価され、一万石を与えられることに。井伊谷では祐椿尼(財前直見)に病の影が忍び寄りますが、元服を焦り、井伊谷を再…
おんな城主直虎 第44回 井伊谷のばら
第43回「恩賞の彼方に」はこちら。 前回の視聴率は12.9%となお上昇。ゆるい感じの方がアップするのかな。日本シリーズの影響もほとんどないあたりで、この大河の視聴者層もうかがい知れる。わたしはきのう油断して7回あたりで寝てしまい、おかげで応援していた(ソフトバンクのファンなのに)DeNAの敗戦にショック。すみませんわたしのせいです。 今回のタイトルは「井伊谷のばら」。薔薇がひらがな表記なので、これはベルサイユ関係のもじりかと。今さら女性の城主であることをオスカルで例えられても…