生きるってことが肥やしよ。
とは、何という素敵な考えなのだろう。
芸人さんなどは昔から様々な悪体験も「芸の肥やし」というけれど、私たちもそう思っていいのね……。
昭和14年、戦争が始まろうとしており、劇団でも時局に合わせた演出をしていくとの方針が示されていた。スズ子(趣里)は、あまり派手にならなないようにと言われ戸惑う。羽鳥善一(草彅剛)もジャズができなくなるのではと心配する。一方、はな湯ではツヤ(水川あさみ)が体調を崩しており、大きな病院で見てもらったほうが良いと言われていた。そんな時、六郎(黒崎煌代)を役場の職員が訪ねてくる…
あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
連続テレビ小説「ブギウギ」第8週「ワテのお母ちゃん」第36話
感想
ついにドラマの中に戦争が入り込んできた。
個人的には、あの賑やかなOPを戦時中どうするのかが気になります……。
愛国精神
昭和14年9月。ナチス・ドイツがポーランドに侵攻したことをきっかけに第二次世界大戦が始まろうとしていました。
ということで……。
昭和14年……日本はまだ直接大戦には関わらず、この2年後の太平洋戦争開始をもって本格参戦となる。
もちろん、その前から日本は兵役制を施行していたし、日露の時などは9万もの犠牲を出している。が、なんせここまでの戦争には「すんなり」「勝った」ことになっているし、この頃はまだ働き盛りの男も青少年も兵隊に取られ、自分たちの頭上にも爆弾が落ちて来るとは思ってもいない。
だから、兵隊さんたちのために頑張れば勝てる……そう思ってしまっていたんだよね。
食糧難に対しても、
兵隊さんに不自由なく食べてもらいたいから我慢しなきゃね。
と言うチズさんのように、みんなが黙って我慢していた。
我慢していれば勝つと信じていたので。
洗脳は恐い。
日宝へ去ってしまった松永さんに替わって竹田という演出家がやってきた。
物腰は穏やかでとても静かなのだけれど、すでに統制が始まっているような指導っぷり。
今後は、より時局に合わせた舞台にしていくことによって梅丸楽劇団もお国のため庶民のための劇団になれると私は思うのですね。
国民の方々に力を与える劇団になるために皆さん、ひとつどうかよろしくお願いいたします。
そして、スズ子は特に声をかけられる。
福来君は、化粧なりをもう少し地味にしてもいいと思うんですね。それであなたの魅力が損なわれることはないと、私は思うんですね。
不快に思われるお客様もあるかもしれませんし、私はお客様全員に安心して舞台を楽しんでほしいと思うんですね。
こういう人が作る舞台というのはどんなもんなのか、逆に興味がある。
ただの合唱祭ではないのだから、いくら「地味に」といっても限界はあるだろう。お客はお金を払って見に来るのだし。
世の中の空気はどんどん悪くなってる気がするな。
そのうち、ジャズは愛国精神が足りないなんて全面禁止になってしまうんじゃない?
羽鳥先生は大阪にいる時に、ダンスホールが厳しい取り締まりに遭ったという話をする。
ワテ、ジャズ歌っとっても日本は大好きでっけど……松永さんの時みたいな楽しい舞台はでけんいうことでっか?
まあ、だから……あんまり目立たずにっていうか……。
竹田さんも、ああ見えてずっとオペラをやってきた人だし、そっち方面に一家言ある人だから、そんなに不安にならなくても大丈夫ですよ。
息子さんが戦地にいるし、いろんな思いもあるんでしょう。
ああ、なるほど。
息子が戦地に居るとなると、やはり「日本(息子)を勝たせたい」思いは強くなるだろう。
親だからこそ、生きて帰ってきてもらうためにも応援しなければならない。
その気持ちは……
たぶん、いずれスズ子にも分かる。
全くおかしな話だよ!
おかしな話だけど、これっぽっちも笑えないよ。
僕はメッテル先生のおかげで音楽の楽しさを知ったんですよ?
遠くウクライナのキエフなんてところから大阪くんだりまで音楽の楽しさを教えに来てくれたんです。
それを何だ!
ちょっと「ニッポンジン、おバカさんね」って言っただけで国外退去って。
何やねん!どっちがおバカさんやねん!
荒れる羽鳥先生を呆れたように宥める麻里さん。
エマヌエル・メッテル氏は羽鳥先生のモデル・服部良一が師事したウクライナ出身の音楽家。
このご時世のトラブルによって昭和14年、長らく務めた京都帝国大学音楽部のオケを退き渡米することになる。
【朝比奈隆】バイオリンと同時にサッカーにも熱中蹴球部に入った。当時の仲間に後の西独大使でピアニスト内田光子の父、内田藤雄がいた。大学はエマヌエル・メッテルが音楽部の指導をしていることで京大に進学。メッテルは“辛抱の難しい人”だったが、音楽人生を選択するときにも助言を受けた。
— 東京文化会館音楽資料室 (@tbkmlibrary) July 9, 2014
しかし、メッテル先生、ユダヤ教徒の家の人らしいので。後々から考えれば、良い時に良い国へ渡ったといえるよね。
酔っぱらって先に寝てしまった羽鳥先生を見て、スズ子に謝る麻里さん。
先生でも酔っ払いはることあるんですね。
ワテ、先生は普通の人とはちゃう思てました。
あの人も普通なとこは普通よ。
笑いながらプロポーズの話をしてくれた。
麻里さんは劇場近くの喫茶、バルボラで働いていたらしい。
あの人、毎日お店に来ては楽譜を書いてたの。
注文するのは決まってアイスコーヒーだったのよ。
それがある日ね…。
ナイスコーヒー。
ナイス?ははは……
うちのコーヒーはいつでもナイスですわ。
あの~、突然ですが、僕とおつきあいしていただけませんか?
え?
決めてたんです。
30日間毎日アイスコーヒーを頼んで、31日目に「ナイスコーヒー」って冗談を言ってみる。
その時あなたが笑ってくれたら僕はあなたに告白するって。
全然、「普通」じゃない(笑)
その1週間後に麻里さんは羽鳥先生からプロポーズされたのだという。
さすがにあたしもびっくりしちゃったけど、あのさっきの、メッテル先生。が、早く結婚して身を固めることが音楽のためだって言ったんですって。
何でっかそれ!自分勝手や!
ねえ。腹立っちゃうやらうれしいやらでしょ?
笑いながら、そういう羽鳥先生の素直なところが好きになったのだと語る麻里さん。良い夫婦。
スズ子には恋人はいないのかと聞かれ、「失恋したばかり」と答えると、
あらそうなの?じゃあ、その失恋を肥やしにしなくちゃね。
と、麻里さんは言う。
そんなもんがなりまっか?肥やしに。
何でもなるんじゃないかしら。
生きるってことが肥やしよ。
そうか……。
スズ子は気づいていないんだ。
先週終わりのあの情熱的な『センチメンタル・ダイナ』。
あれは失恋の悲しさや秋山が居なくなった寂しさ、そういった切なさを十分に感じさせる歌声だったのに。
もう充分、「肥やし」になっているんだよね。
生きることは肥やし。
素敵な考えね。
せっせと肥やしを作って、成長しなければ……。
赤紙がきた
大阪では、ツヤさんの状態は相当悪く、しかも、きちんとした検査も受けずに寝ているだけらしい。
やっぱり一度大きな病院で診てもろた方がええ。
熱々先生にそう言われているのに、
大丈夫や。病院好かんし、熱々先生が治してください。
何を言うてんねん。好かん言うてる場合ちゃうで。
とりあえずな、今度ワシの同期の医者連れてくるわ。
それまで冷やしたらあかん。あんじょう熱々や。なあ。
梅吉さんがなぁ……後悔しなくて済むように動いてくれればいいと思うんだけれど……。
こういう人っているんだよなぁ。
スズ子を里から連れて帰ってきた時、「双子だったかの。まぁええわ。」とすぐに受け入れる大らかさとノンキさは救いだったけれど……。
こういう人は深く考えることが苦手なので、「病気は重いんかの。……まぁもっと重くなったら考えよう…」になってしまうのよね、思考が。
それは六郎も同じで。
お母ちゃ~ん!赤紙、来たで~!
来たで!やっと来たで!
何やどないしたんや?
赤紙や!
ワイにもちゃんと来たで!
甲種合格しても鈍くさいお前には赤紙来えへん言うやつおったけど、ちゃんと来たわ!すごいやろ?なあ!ワイ、すごいやろ!
興奮してはしゃぐ息子を見ながら、
…すごいなあ。……さすが六郎や。
つぶやくように言うツヤさんの表情がもう……。
ただの、人が良いだけの、義理と人情を大切に生きて来たこの家族に、不幸が訪れるのはイヤだなぁ……。
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ブギウギ キャストとスタッフ
キャスト
花田鈴子 – 趣里(子役時代:澤井梨丘)
花田梅吉 – 柳葉敏郎
花田ツヤ – 水川あさみ
花田六郎 – 黒崎煌代
橘アオイ – 翼和希
大和礼子 – 蒼井優
白川幸子/ リリー白川 – 清水くるみ
桜庭辰美 / 桜庭和希 – 片山友希
秋山美月 – 伊原六花
股野義夫 – 森永悠希
林 – 橋本じゅん
大熊 – 升毅
易者 – なだぎ武
アホのおっちゃん – 岡部たかし
アサ – 楠見薫
熱々先生 – 妹尾和夫
ゴンベエ – 宇野祥平
三沢光子 – 本上まなみ
タイ子 – 藤間爽子
ハット – 福徳秀介
コック – 後藤淳平
茨田りつ子 – 菊地凛子
羽鳥善一 – 草彅剛
羽鳥麻里 – 市川実和子
小村チズ – ふせえり
小村吾郎 – 隈本晃俊
伝蔵 – 坂田聡
松永大星 – 新納慎也
辛島一平 – 安井順平
中山史郎 – 小栗基裕
一井 – 陰山泰
小林小夜 – 富田望生
大林林太郎 – 利重剛
藤村薫 – 宮本亞門
二村 – えなりかずき
五木ひろき – 村上新悟
山下達夫 – 近藤芳正
佐原 – 夙川アトム
田中鷹雄 – 高阪勝之
棚橋健二 – 生瀬勝久
東 – 友近
鮫島鳥夫 – みのすけ
村山愛助 – 水上恒司
村山トミ – 小雪
坂口 – 黒田有
大西トシ – 三林京子
大西タカ – 西村亜矢子
大西ヒデオ – 湯浅崇
治郎丸和一 – 石倉三郎
治郎丸ミネ – 湖条千秋
西野キヌ – 中越典子
語り – 高瀬耕造
ブギウギ スタッフ
◆制作 : NHK(BK)
◆制作統括 : 福岡利武,櫻井壮一
◆プロデューサー : 橋爪國臣
◆演出 : 福井充広,二見大輔,泉並敬眞,鈴木航,盆子原誠
◆脚本 : 足立紳,櫻井剛
◆音楽 : 服部隆之
◆主題歌 : 中納良恵・さかいゆう・趣里「ハッピー☆ブギ」
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