六郎の話を聞いている内に、どんどん表情が憐れみと悲しさに変わっていくスズ子。
趣里さんの表情演技が全身に渡って上手い。
六郎(黒崎煌代)は、入隊する前にお世話になった人の元を訪ねていた。そして、東京のスズ子(趣里)のもとにもやってくる。久しぶりに再開した二人は、姉弟水入らずで話をする。スズ子はツヤ(水川あさみ)の病状があまり良くないようだと六郎から聞かされる。そして、六郎自身も戦争に行くのが実は怖いのだと打ち明けられる。そんな六郎を見送ってからしばらくした頃、公演真っ最中のスズ子に、大阪から電報が届く…
あらすじ は Yahoo!テレビ より引用
連続テレビ小説「ブギウギ」第8週「ワテのお母ちゃん」第38話
感想
六郎という人がよく分らない……。
本当は阿呆なふりをして周囲に笑顔振りまいて、何もかも分かって行動している、ものすごく賢い子なのかも知れん。
スズ子の前でだけ出せた本音がつらい
死にとうないわ
六郎は「出征」も「戦争」もよく分っていない状態で招集されていくのかと思っていた。
けれども、そういうわけではないみたい。
きちんと分かっている。分かっていてはしゃいだり騒いだりしていたんだ。
「令状が来て認められて嬉しい」「合格した」
そういう気持ちがあったことは確かなのかもしれない。
けれども六郎の場合は本当に純粋なので……そこに「国のために死のう」「国を守るために働こう」というような洗脳思想はない。
学校に行っていないので……ある意味、ものすごく純粋に自分の意志や願望だけで生きていたのだろう。
そういう人にも漏らさず令状はやってきた。
夜中にスズ子を訪ねて来た六郎は、よく喋り、下宿のご飯をほがらかによく食べた。
久しぶりに2人で布団を並べ、スズ子と話すうちに六郎の本音が溢れ出す。
お母ちゃんの具合があまり良くなさそうな話をする六郎。
せやけど大丈夫や。ワイ、お母ちゃんと約束したんや。
敵ぎょうさんやっつけるから、お母ちゃんもはよ治すんやでって。
分かった言うてたわ。
せやけどな、ワイかて不安やねんで。
軍隊に入ったらまたバカにされるかもしれへんやろ?
あんたのことかいな。
それに死ぬかもしれへんやろ?
ちゃんと分かっている。
死ぬかもしれないことは……。
ワイな、寝る時に考えてまうねん。
死ぬってどんな感じなんやろって。
どないなって死ぬんか思うと頭、おかしなりそうになるんや。
ワイ、死ぬ時に一人は嫌や。
死ぬんやったらみんなでせ~のがええわ。
死ぬ直前いうんはきっとごっつい痛いやろ?
めちゃくちゃ怖いんちゃうか?
目の前が急に真っ暗になるんかな…。
そのあとどうなるんや。
怖いわ。怖いの好かんねん。
聞いているスズ子の表情もどんどん変わってくる。
スズ子自身も戦争に「死」のイメージが薄かったに違いない。
戦争とはただ仕事に影響する面倒なもの。
それだけだった。
姉やん。
何や?
そっち行ってええか?
ええよ。
おいで。
たぶん、大人になってから久しぶりに1つ布団に寝て、弟を抱きしめる。
ワイ 死にとうないわ。
死にとうないわ……。
震える弟をただ抱きしめるしかない。
翌朝。
六郎は旅立って行った。
ほな行ってまいります!
あっ、「まいります」はあかん言われたんや。
生きて帰るみたいやから「行きます」言えて。
ほなら「まいります」でええ。
そやな。「まいります」や。
うん。
ばんざいしよか。
ええわ。こないだしてもろたし。
せっかく東京来たのに姉やんの舞台も見たかったわ。
また見に来てな。必ずや!
必ず来るで。
うん。
ほな行ってまいります!
笑顔で見送り、笑顔で去っていく。
六郎。ちゃんと色々理解した状態で行くのは、何も分からない人よりも辛いかもしれない。
せめて、隊が楽しくあれ……と願わずにいられない。
辛くて怖くて痛い思いは、せめて戦地だけの方がええやん……。
覚悟
スズ子の周りに「死」が迫っていた。
ワテ……罰でも当たったんやろか。
こんな早よう死ぬなんて思いもせんかったわ…。
やっぱりスズ子をキヌに会わせんかったから、その罰やろな。
ワテ、お願いがあんねん。
梅吉さんに最期の頼みをするツヤさん。
このまま何があってもスズ子をキヌに会わせんといてほしいねん。
これから生きていくワテの知らんスズ子を…キヌが知るんは耐えられへん。
ワテが死んでも生みの母に会わせるなという呪い。
スズ子をずっと自分だけの娘でいさせたい。
妄愛。
性格悪いやろ。
ふふ……醜いやろ。
醜いことあらへん。
ツヤちゃんはやっぱり最高の母親や。
そこまで愛せるのは、最高の母親だよ。
そして、六郎の素直なところは、やはりツヤさん譲り。
翌朝にはスズ子の元に「ハハキトク」の電報が入る。
チズさんには、すぐ帰るように言われたが、スズ子は劇場へ向かう。
竹田さんには、当然ステージに上がるように言われた。
酷なようですが、舞台を生業にしている者は親の死に目に会えないと思っていただきたいのですね。
何よりお客様にとって福来君の代わりはいないと思うのですね。
会社的には当然だし、それでお給料を貰っている身なのだから仕方ないのだろうと思う。
令和だったら、もう少し柔軟だろうけれど。
僕は帰ってもいいと思うけどね、大阪に。
羽鳥先生の言葉は、よりキツい。
お母さんの病気に弟さんの出征も重なったんじゃ正気でいられないのは尤もだ。
ただ、お客さんはそんなことは知る由もない。
ステージに立つ以上はそれは関係ないんだ。むしろ自分の苦しい心持ちを味方にして、いつもよりいい歌だなんて言われるぐらいじゃなきゃ、僕は駄目だと思う。
僕の言ってることはおかしなことかもしれないけど、それができないなら福来君、すぐに大阪に帰ってあげなさい。
それで君の価値が下がるなんてことはないさ。
ただここに残るなら、それぐらいの覚悟で歌ってほしいということです。
スズ子は母の言葉を思い出す。
これからは、ウチだけやのうてお客さんにもぎょうさん福を届けたり。
母はきっと分かってくれるし、それを望んでいる。
だから、スズ子はステージに立つ。
お母ちゃん、ワテは…歌手としてもっと大きなりたいんや。
もっと……。
渾身のセンチメンタル・ダイナ。
麻里さんが言っていた
「生きるってことが肥やしよ。」
それを溜めていくスズ子。
それは、人間力を溜めるということでもあるのね。
?本日放送の「センチメンタル・ダイナ」フルバージョンを公開!
— 朝ドラ「ブギウギ」公式 (@asadora_bk_nhk) November 21, 2023
放送では未公開のカットも含む特別編集版です。
きっとお母ちゃんもわかってくれる…
スズちゃんはそんな思いで歌い切ったに違いありません。
歌い終わりのこわばった笑顔が胸を打ちます。#趣里#ブギウギ #ブギウギオンステージ pic.twitter.com/Fx3LAb7sVY
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ブギウギ キャストとスタッフ
キャスト
花田鈴子 – 趣里(子役時代:澤井梨丘)
花田梅吉 – 柳葉敏郎
花田ツヤ – 水川あさみ
花田六郎 – 黒崎煌代
橘アオイ – 翼和希
大和礼子 – 蒼井優
白川幸子/ リリー白川 – 清水くるみ
桜庭辰美 / 桜庭和希 – 片山友希
秋山美月 – 伊原六花
股野義夫 – 森永悠希
林 – 橋本じゅん
大熊 – 升毅
易者 – なだぎ武
アホのおっちゃん – 岡部たかし
アサ – 楠見薫
熱々先生 – 妹尾和夫
ゴンベエ – 宇野祥平
三沢光子 – 本上まなみ
タイ子 – 藤間爽子
ハット – 福徳秀介
コック – 後藤淳平
茨田りつ子 – 菊地凛子
羽鳥善一 – 草彅剛
羽鳥麻里 – 市川実和子
小村チズ – ふせえり
小村吾郎 – 隈本晃俊
伝蔵 – 坂田聡
松永大星 – 新納慎也
辛島一平 – 安井順平
中山史郎 – 小栗基裕
一井 – 陰山泰
小林小夜 – 富田望生
大林林太郎 – 利重剛
藤村薫 – 宮本亞門
二村 – えなりかずき
五木ひろき – 村上新悟
山下達夫 – 近藤芳正
佐原 – 夙川アトム
田中鷹雄 – 高阪勝之
棚橋健二 – 生瀬勝久
東 – 友近
鮫島鳥夫 – みのすけ
村山愛助 – 水上恒司
村山トミ – 小雪
坂口 – 黒田有
大西トシ – 三林京子
大西タカ – 西村亜矢子
大西ヒデオ – 湯浅崇
治郎丸和一 – 石倉三郎
治郎丸ミネ – 湖条千秋
西野キヌ – 中越典子
語り – 高瀬耕造
ブギウギ スタッフ
◆制作 : NHK(BK)
◆制作統括 : 福岡利武,櫻井壮一
◆プロデューサー : 橋爪國臣
◆演出 : 福井充広,二見大輔,泉並敬眞,鈴木航,盆子原誠
◆脚本 : 足立紳,櫻井剛
◆音楽 : 服部隆之
◆主題歌 : 中納良恵・さかいゆう・趣里「ハッピー☆ブギ」
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