喜代美(貫地谷しほり)が無意識のうちに三味線で演奏したのは、かつて
高校時代に挫折した曲「ふるさと」だった。
喜代美の歌う「ふるさと」の歌詞にあわせて、草々(青木崇高)は必死に落語を続け、
かえって客の磯七(松尾貴史)たちの笑いをつかむことに成功する。
終了後、草々にどなられることを覚悟する喜代美だが、草々は喜代美をほめたたえ、
礼を言う。
喜代美のなかで、今までと異なる草々への思いが生まれはじめていた…。
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
連続テレビ小説「ちりとてちん」第23話・24話「小さな鯉のメロディ」
※「ちりとてちん」は、2007年10月期のNHK連続テレビ小説です。
当方は当時の放送をオンタイムで見ているので感想は恐らく回顧目線になりがちです。
ご了承のうえ、ご覧くださいませ。
※レビューでは先のネタバレは控えるよう努力します。
※レビューの更新はイレギュラーで…。週まとめは必ず書くようにいたします。
※再放送時間は月~土・午前7時15分からNHKBSプレミアムにて。
昨日更新しなかったので、昨日の分から簡単に。
磯七さんから頼まれた床屋組合の慰安会として高座に上がる事になった草々さん。
喜代美も掛け合いの下座として、演目「辻占茶屋」の稽古に励みます。
なかなか上手く行かない三味線に、ついに訊ねる草々さん。
大体、お前、何が弾けんねん。
何が弾けるか言われたら…。
文化祭で挫折した「故郷」のトラウマしか蘇って来ない喜代美。
「三味線は『ゆかりの月』だけ弾けたらええ」て言われました。
「あとは唄だけで掛け合いする」って。
腑に堕ちぬ顔で草若師匠に報告する喜代美。
指から血が出ているのを見て草々さんが同情してしまったんですね。
優しいです。
しかし師匠の言い分はちょっと厳しめ。
プロの下座さんでも気軽に手出しのできん難しい噺や。
それをド素人のあんたが「でけへんでけへん」てクヨクヨ言うてたら、「当たり前じゃ。
なめとるのか」て、ド突かれるで。
とんでもない事に首ツッコんでしもた……とは、ここで言わないから喜代美も偉い。
草々はああ見えても気の小さい男や。
少々難しいても、今度の高座ははめもの入りで正解や。
「下座さんがいる」。
そう思うだけで安心すると思うで。
でも…私…ほんまに不器用なんですよ。
不器用でええやないかい。
不器用なもんほど、ぎょうさん稽古する。
ぎょうさん稽古したもんは誰よりも上手うまなんのや。
トラウマのある高座に1人で座るよりは…掛け合う人がいる。その存在が心強い。
つまりはお母さんが側に居れば安心する子供の気持ち。
デッカイ草々さんの内面が抱える繊細な心。
師匠はちゃんと解っている。
そんな存在になれるかどうかは解らんけれども…
それから山ほど練習して何とか形になった「辻占茶屋」。
いよいよ慰安会当日。
草々さんは久しぶりに高座に上がるのでした。
「人生において、一ぺん言うてみたい。
でも一生言う事ないやろと思うてたセリフを言うてみました」
私がついてますから。
喜代美!カッケーーーー!!!
これでもうキーコはB子ではない。
生まれ変わったんだ。
人を支える事が出来る主人公に………!
……とは、ならないのが、このドラマなのでございます。
草々さんに座布団出してくるように言われた喜代美は、客席を見て緊張し…拍手に緊張し…
草々さんかて充分緊張が伝わるハラハラ高座だというのに、それすらも見えていない始末…。
そして、ついに下座の出番。「ゆかりの月」の出番……。
~♪ 祭りぃも近いとぉ
汽笛は呼ぶが~~♪
きーこが奏でたのは、まさかの「ふるさと」だったのでした……。
固まる草々さん。
そして、固まっている喜代美。
この間が長いこと……いや、決して長くはないのですが、草々さんの心中を考えると
30分にも1時間にも感じてしまいます。
客席の磯七さんも、突然の事態に驚きの表情。
落語に詳しい人がこの中に何人ほどいるのかは解りませんが、少なくとも数人は「え?」の顔です。
ここで…もうこのまま止まってしまうのかと本当にドキドキしましたが、草々さんは
見事に立ち直します。
ああ…あ~!そうか!
祭りが近いんか!
梅乃を連れてったれいう『辻占』かいな?
~♪洗い~ざらしのぉ~Gパンひとつ~♪
そうそう!Gパンはいてな!
こう…アメリカンな感じで。
自分が「ふるさと」弾いている事にも気づかない喜代美。
もう完全に「ふるさと」しか弾けないロボット状態になってしまっています。
祭りっちゅうよりカーニバルやな。
こう、頭に羽根つけた裸の女子が踊りまくるような。
♪~白い~花咲くぅ~ふるさとが~~♪
ああ…故郷!
故郷を思い出してしもた。
サッカーばっかりやってたもんや。
元気かなあ。ロドリゲス。
もう完全な創作落語。
しかし、心なしか…草々さんの表情が生き生きしてきたように見えるのです。
♪~日暮れりゃ恋しく~なるばかり~~♪
それを言われるとつらいなあ!
そうなんや。地平線に沈む夕日を見る度、梅乃は恋しゅうなるやろな。
あかん!やっぱりここにおろ。
梅乃の心底確かめよ。
「源やん、何、やかましい言うてなはんねん?」
ああ女将。すまんすまん。
ちょっと隣の三味線を辻占にしてるうちに
ブラジル人になった気分で。
笑い声が湧き、盛り上がる会場!
草々さんも手ごたえを感じてか、もう最初の緊張した雰囲気は飛んでいます。
堂々とした高座でした。
この盛り上がる様子に隣室の座敷を取った客が微笑みながら耳を傾けているのでした。
草若師匠。
ちゃんとね…気にしているんですな。
家では稽古の様子に耳を傾け、本番では隣室で耳を傾け、何口出すわけでもなく、
いつもただ微笑む。
この様子を見ているだけで…なぜか泣けてしまうのです。・泣
優しい温かい師匠の気持ちを感じ取ると同時に、この人が抱える寂しさの事も思うから…。
さて…。
掛け合いシーンが
終わった後で、喜代美は魔法が解けたように自分のやらかした事に気づきます。
まさに、まっっっつぁおな状態です。
高座を終え、堂々と挨拶をして、下座を睨んでふすまを閉める…。
もう、喜代美は顔を上げることもできません。
ごめんなさい……。
大事な高座ぶち壊しにしてしもうてごめんなさい!
もう、泣きそうです。
草々さんは無言です。
この人に本気で怒られたらどんなに恐いやろ…。
デカイし。鬼のようなギョロ目だし。
と思たら…ガッシと喜代美の両肩を掴む草々さん。
ようやった!
え?
ようやったぞ!きィ公!お疲れさん!
ははははははっ。
すごい満面の笑顔……。
喜代美の頭をデッカイ手で包み込んでグシャグシャなでる。
これね…この仕草。
もうね~出会った時からこれ何度もやるわけですが、これは反則やろ~~!
だってさ~こんな事やられたら!ほれてまう……。
もちろん…喜代美もホレてまう~~。
磯七さんにお座敷に呼ばれて出ていく草々さんの表情がもう、頼もしくて優しくて。
この時の絵がまた…
振り向いた顔に隣室の窓の光が被ってるんですな。
後光のごとくなってるわけです。少女マンガだったら
。..。.:*・゚ ゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.。:+
こんな感じですやろか…。キラキラですわ。
帰り道。
そない言うたら…お前、弾けたやないか。
え?
「ふるさと」最後まで。
よう稽古したから、よう指が動くようになって。
今まで出来へんかった事ができるようになったんやろ。
微笑み。
よう頑張ったな。
そやから俺も頑張れた。
ありがとう。
この気持ちは何だろう…。
喜代美がそう思った途端に声が聞こえてきます。
「こいや」
なんつータイミングの「辻占」。
なあ、ええ鯉やろ。
ほんなら今日のお造りは鯉の洗いやね。
桶の中で窮屈そうに泳ぐ鯉を見ている居酒屋「寝床」の熊五郎さんと咲さんでした。
恋は盲目で。
今まで鬼のように見えていた大きな風体もデッカイ茶碗もお椀も愛おしく感じ始める
元々妄想癖人間の喜代美。
下座のお礼にと食事に誘われ、ウキウキです。
それでも、妙にめかし込んだりしないで、オーバーオールのままで出てくるのが
また喜代美らしい。
2人でイカ串くわえながら並んで歩く絵が少女漫画の1コマのようで可愛らしい。
連れて行ってもらったレストランで食べる綺麗な綺麗なオムライス。
本当に美味しそう。
そして、幸せそう。
ここでナレーションが入らなくても「幸せの味」が充分伝わる微笑ましいシーン。
これは2番目に美味いオムライスや。
え?じゃあ一番は?
おかみさんのや。
おかみさん?
亡くなりはった師匠の奥さんや。
絵として出ては来ないけれども、仏壇に草若師匠を手を合わせていた姿が蘇ります。
師匠も草々さんも…愛していた人なんだな、と、語られなくても解ります。
そんなシーンもありながら。
とりあえず、この時までは喜代美の心はもう街中がキラキラして見えるほど
浮かれていたのでした。
店を出て、自分の恋がどうなるのか…目を閉じて辻占してみる。
一番初めに耳に入ってきた言葉が占いの答えです。
そして辻占の結果は……。
ビーコ。
…ああ…このシーン…。
オンタイで見ていた時にも息が止まりそうでした。
この人の登場は血の気が引くんですわ。
だって、いつもいつもエーコがいるから。
ビーコのここぞという場面では、いつも目の前にエーコがおって、攫って行ってしまう。
遠足の石のように。エビチリのように。
それは、全くエーコのせいやないけど、運命のように立ちはだかる。
会計して店から出てきた草々さんが、エーコを見ないでほしい。
エーコに気づかないでほしいと、テレビの前で祈った視聴者が山ほどいるはず。
そうした祈りも虚しく…。
「私の辻占は「ビーコ」と出て…」
「そしてエーコと草々さんが出会ってしまいました」
過去を乗り越えるために2人で挑戦した「辻占茶屋」。
色々ありましたが一応成功し、お互いに一歩前へ進んだ。
そして、喜代美の恋。
…からのエーコ…。
上がって~下がって~…
辛くて~嬉しくて~切なくて~ニヤニヤして~血の気引く……。
なんて奥深くて広い世界なんやろ…。
と、しみじみ思うのでした。
ほな、来週。
よろしければ→【2013年10月期・秋クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表
※キャスト
和田喜代美/徒然亭若狭 … 貫地谷しほり(少女時代:桑島真里乃)
徒然亭草若(三代目) … 渡瀬恒彦
徒然亭草々 … 青木崇高(少年時代:森田直幸)
徒然亭草原 … 桂吉弥
徒然亭小草若→徒然亭草若(四代目) … 茂山宗彦(少年時代:榎田貴斗・森川翔太)
徒然亭四草 … 加藤虎ノ介
木曽山勇助/徒然亭小草々 … 辻本祐樹
吉田志保 … 藤吉久美子
和田糸子 … 和久井映見
和田正典 … 松重豊
和田小梅 … 江波杏子
和田小次郎 … 京本政樹
和田正平 … 橋本淳(少年時代:星野亜門)
和田正太郎 … 米倉斉加年
和田清海 … 佐藤めぐみ(少女時代:佐藤初)
和田友春→野口友春 … 友井雄亮(少年時代:小阪風真)
和田秀臣 … 川平慈英
和田静 … 生稲晃子
野口順子 … 宮嶋麻衣(少女時代:伊藤千由李)
野口幸助 … 久ヶ沢徹
野口松江 … 松永玲子
野口春平 … 斉藤勇人/新岡澪
野口順平 … 斉藤隼人/新岡塁
熊五郎 … 木村祐一
咲 … 田実陽子
磯七 … 松尾貴史
菊江 … キムラ緑子
徳さん … 鍋島浩
お花 … 新海なつ
緒方奈津子→和田奈津子 … 原沙知絵
原田緑 … 押元奈緒子
鞍馬太郎 … 竜雷太
万葉亭柳眉 … 桂よね吉
土佐屋尊建 … 波岡一喜
万葉亭柳宝 … 林家染丸
土佐屋尊徳 … 芝本正
柳宝の弟子 … 林家染左、林家染吉
烏山 … チョップリン西野
原田颯太 … 中村大輝(少年時代:河合紫雲)
音大の教授 … キダ・タロー
あわれの田中 … 徳井優
横山たかし・ひろし … 本人
五木ひろし … 本人
ニュースキャスター … 浅越ゴエ
竹谷修 … 渡辺正行
堀田由美子 … 和田はるか
高島恵 … 中井飛香
北川沙織 … 村上佳子
語り – 上沼恵美子
※スタッフ
脚本 … 藤本有紀
演出 … 伊勢田雅也、勝田夏子、井上剛、菓子浩、三鬼一希、吉田努、櫻井壮一
制作統括 … 遠藤理史
音楽 … 佐橋俊彦
テーマ曲・ピアノ演奏 … 松下奈緒
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コメント
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>ちりとてちんの週の終わりは泣きますね…。毎回…。
ですね~。いや、ほとんど毎日のように色々と心動かされています~。
15分間が忙しいですね。
15分ってこんなに豊かな時間なんだと、これを見ていると心から思えます。
>草々さんの笑った顔は何とも言えず…。キュンキュンしてしまいます(*´∇`*)
魅力的ですよねぇ…。
やはりそのドラマが終わった後も長く長く役者さんに役を印象付けるほどのドラマは
素晴らしいと思いますわ。
「ちりとてちん」はそういうドラマでした。
藤本有紀さんは凄い脚本家さんですね。
>関西のローカル番組でお馴染み、上沼さんのナレーションも好きでございます~。
落ち着いてますよね!
どちらかというと好印象のなかった方なので(すいません)このドラマで
ものすごく見る目が変わってしまった事を思い出します~^^←いや、良い方に…
どの役者さんも全て魅力的でしたわ。
この世界をまた見せてくれるこの再放送には感謝しております^^
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ちりとてちんの週の終わりは泣きますね…。毎回…。
草々さんの笑った顔は何とも言えず…。キュンキュンしてしまいます(*´∇`*)
私もあまちゃんが終わってどないしょと思ってるときに、ちりとてちんが始まる!(^○^)と思ってワクワクしたひとりです…。
仕事の都合上、毎回みられるわけじゃないのですが、見るとうるうるしてしまいます~。
今回もビーコのふるさとに泣き、草々兄さんの落語に笑いましたー。
関西のローカル番組でお馴染み、上沼さんのナレーションも好きでございます~。
それにしても、役者さんって脚本とか演出で随分印象が変わるんですね…。
師匠も他ドラマより群を抜いて好きです(^3^)/