NHKミステリースペシャル「満願」 最終夜【満願】感想

天はきっと見ていますよ。

この世はままならぬものです。
泥の中でもがくような苦しい日々に遭う事もあります。

ですが、藤井さん。
矜恃を見失ってはなりません。

誇りさえしっかりと胸に抱いていれば、どんな不幸にも耐えられないという事はありません。

あなたはこれまでよく勉強なさったではないですか。

私はそれを見ていました。
天も見ていたに違いありません。

スポンサーリンク

ミステリースペシャル「満願」 第3夜【満願】

 

 mangan

脚本と演出を熊切和嘉監督に委ねた1時間の小映画。

『私の男』を思い出す。

人の心を気味悪くホラーのように描き出す手腕の素晴らしさ……。

 

あれは……。

 

私の先祖がお殿様から頂いたものです。

お殿様ですか…。

 

先祖は私塾を開き、身分の低い武士を支えて出世を助けたのです。

私塾の出身者は藩を大いに助けたのでその功績が認められてお殿様からこの絵が下されたと聞いています。

はあ~~ 立派な字ですね。

 

賛はお殿様の直筆で大変珍しいものだそうです。

明日はお客様もいらっしゃるので、虫干しも兼ねて飾りました。

実家の家宝だったんですよ。

 

藤井さん、どうぞ大いに勉強なさいね。
学があるというのは素晴らしい事です。

この世はとかく ままならぬもの。

でも学があれば、世が世ならと臍をかむ事もきっと少なくなりましょう。

どうぞ、よくよく勉強なさいね。

 

こういう言葉づかいや着物姿がキリッと決まるところ、市川実日子さんは本当に素敵だ。
 満願3

 

茨城県水戸市の出身。
水戸藩は徳川御三家。
「お殿様」はどの時代もど偉い人である。
それはもう、家宝に違いない。誇りに違いない。

そんな誇りと共に「ままならぬ」人生を生きてきた妻を夫は「立派」だと思っている。

女房が立派に見えれば見えるほど、畳屋の夫は所在無くなっていく。

酒に強いのも不幸だが。
女房が立派なのはなお悪いってな。

 

不味い酒で酔う人生で身体を壊す夫。
誇りを支えに生きてきた妻。

たぶん。

私には主人の墓参りをする資格はないんです。

は、自己卑下でも謙遜でもなく真実の言葉で。

女房には夫に対する愛なんてなかった。

畳屋の暖簾もどうでも良かった。

 

守りたかったのは、ただ、誇りの象徴である掛け軸だけ。

 

そんなことで、人は人を殺すのか

というのは三夜に共通する話で。

でも、そうだろうなと思う。

人が人を排除する理由はいつだって他人にとっては「そんなこと」なのだ。

 

大切な掛け軸を借金の形に取られないようにする。

その為に、殺人事件の重要証拠品として検察に押さえられるように仕組む。

かくして、自分が育てた「優秀な学生」は、裁判で立派に自分のために闘う学を身につけてくれた。

 

全て計画通り。

「満願」。

 満願

 

誇りさえしっかりと胸に抱いていれば、どんな不幸にも耐えられないという事はありません。

あなたはこれまでよく勉強なさったではないですか。

私はそれを見ていました。
天も見ていたに違いありません。

 

出所して会いに来る妙子を、藤井はどう迎えるのだろう。

真実を知った事は話すのだろうか。
それとも、背負い続けるのだろうか。

全て見ていた天は、彼女の行いを良しとするのか。

なにも語らぬまま。
妙子の美しい横顔で締める。

 

最高にモヤモヤした。

そして、最高に面白い。


鵜川妙子(市川実日子)が、殺人事件の裁判の控訴を取り下げる。弁護士の藤井(高良健吾)は控訴を主張していたのに。

妙子は、藤井が学生時代に世話になった下宿の女将(おかみ)であった。苦学生であった藤井が弁護士になれたのは、優しい妙子の支えがあったからである。

しかし彼女の夫・重治(寺島進)の借金のため家計は苦しく、ある日妙子は、返済を強要する金貸しを殺害した。いったい、なぜ?

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

PVアクセスランキング にほんブログ村  にほんブログ村 テレビブログへ
にほんブログ村


 


※キャスト

藤井 … 高良健吾
鵜川妙子 … 市川実日子
鵜川重治 … 寺島進

※スタッフ

脚本・演出 … 熊切和嘉
制作統括 … 出水有三、仲野尚之
原作 … 米澤穂信『満願』
音楽 … ジム・オルーク

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

満願 (新潮文庫) [ 米澤 穂信 ]
価格:723円(税込、送料無料) (2018/8/15時点)

コメント

  1. くう より:

    ジェシカさん

    遅くなってすいません。
    時計も含めてジックリ見直してみました。

    「1時間ほどで着くと思います」
    と電話でやり取したのが12時ころ。

    それからだいぶ色々仕事してから、事務所の女性が「じゃあ、地裁に行ってきます」と出かけて、まだ来ないので、あれ、やっぱり1時間なんてもんじゃない待ち方ですよね(笑)

    しかし、彼女は来るのでしょうね。
    どういう話をするのか聞いてみたい!

  2. ジェシカ より:

    返信ありがとうございます^^

    >部屋の影は濃かったですが、窓の外を歩く人たちの様子は昼間っぽかったです。(今、見直してみました(笑))

    あ、そうでしたか(^^;?
    自分録画したのを消しちゃったので見直せないのですけど、
    事務所の時計が進んでたような…気のせいだったらすみません。

    1時間だとちょっと物足りなくて2時間、せめて1時間半ドラマで観たかったです。

  3. くう より:

    ジェシカさん
    >待っている藤井が外を眺めていたのは夕方だったような。。

    部屋の影は濃かったですが、窓の外を歩く人たちの様子は昼間っぽかったです。(今、見直してみました(笑))

    なので時間軸は妙子が歩くシーンと同じかと。

    >実日子さんが凛として素敵すぎて

    本当に。「ザ・和」が似合う方です。素敵です。

  4. ジェシカ より:

    こんにちは。
    最後、ちょっとよく分からなかったのですが、
    妙子が「1時間ほどで伺います」と言っていたのはお昼頃だったと思いますが、
    待っている藤井が外を眺めていたのは夕方だったような。。
    あれは妙子が来ないまま待ちぼうけだったのか、それとも会った後だったのか…?

    モヤモヤでしたが、実日子さんが凛として素敵すぎてそれだけで満足です(^^;

  5. くう より:

    -d-さん
    >大きな仕掛けではなく、心の襞の闇をふと垣間見た薄気味悪さ

    まさにそれですね!そして、どの話も真相は「推理」に過ぎないんですよね。だから余計にゾッとする。

    >3話目の満願は、杉浦日向子作品を重ねて

    あーーわかります!市川さんに杉浦日向子味があるよなぁ!

  6. くう より:

    ケロヨンさん
    >掛け軸を守るためでしたか

    家よりも夫よりも何よりも大事ってことですよねぇ。あの家じゃあ、解る気もします。

    >ドラマや映画なんて劇中に説明的な表現は必要ないよね

    行間を読ませる作品の素晴らしき、ですね。

  7. -d- より:

    ≻最高にモヤモヤした。そして、最高に面白い。

    そんな夏の3夜でしたね。良かったです。
    大きな仕掛けではなく、心の襞の闇をふと垣間見た薄気味悪さみたいな
    3話目の満願は、杉浦日向子作品を重ねて観てしまいました。

  8. ケロヨン より:

    あ、間違えた、ケロヨンです、ケロヨン。

  9. 万年カメ より:

    いやあ~、面白かった。
    最後意味がわからなかったのでここで確認。
    掛け軸を守るためでしたか、なるほどなあ。。

    ドラマや映画なんて劇中に説明的な表現は必要ないよね。
    その方がおもしろいです。

    かしこ。

タイトルとURLをコピーしました