すると、我々が疫病の神という訳ですか。
いや。
それは私たちじゃないでしょう。
神の名は、きっと、「資源」です。
これから起きる事は止まらぬ神の歩みの一部だ。
私はその神の尖兵にすぎない。
ミステリースペシャル「満願」 第1夜【万灯】
『TAROの塔』統括のお仕事である。素晴らしい。
話の発端自体は、なぜもっと調査しない?なぜそんなに自信満々?なぜ一人で行く?……
と、ツッコミつつ前半を見る感じだけれども、後半はもうドップリ。
資源開発のエキスパートと褒め称えられ、リスペクトする若い社員も多く、独身貴族で自由に海外へ飛び回れ……
自分の仕事は自分にしか出来ず、また、会社のためだけではなく世のため人のためになると思っている伊丹。
自分が神のように思える時もあっただろう。
実際は使われているのだけど。
社畜というよりも、世畜。
失敗と孤独が恐く、人の役に立っていることで生きている。
そんな伊丹が任されたのが「資源の神の村」。
若い部下は腕を失くされ、次の部下は腕を折られて辞めていった。
この十数年、俺はひたすら資源開発で成果を上げてきた。
俺の開拓した資源が日本を豊かにしてきたんだ。
自分が国を作ってきたという自負。
負けることは出来ず、だから気持ちを逸らせた。
というよりも、やはりアレに何か入っていたよね。
指ーーー指指指……。
天然ガスは村の大切な資源。
強行反対派のアラムは確かに邪魔ものだ。
かと言って、殺してしまう提案に乗るとは……。
神の名はきっと「資源」です。
これから起きる事は止まらぬ神の歩みの一部だ。
私はその神の尖兵にすぎない。
アラムは私たちが殺すんじゃない。
神が殺すんです。
人間は神になんかなれないし、神の代理にもなれない。
人を裁く事が出来るのは人間ではないものだけ。
車にハネられる瞬間のアラムの呪いがトラウマなみだ……。
一緒にアラムを始末した森下さんを始末する。
綻びはどこにもあってはならないからだ。
だから、
森下さんから貰った疫病のことを伊丹は誰にも言えない。
もちろん、救急車など呼べない。
ただ死を待つのみである。
アラムを殺したのも森下を殺したのも全ては必要な事だ。
私は自分の仕事を全うしたかったのだ。
あの国に眠る天然ガスを日本に運び、街の明かりにしたかった。
そんな禍々しい灯りは要らないし。
灯りの代わりに伊丹はもっと禍々しいものを街に広めてくれた。
疫病の神、パンデミック。
横浜でペストの患者が出たらしいですよ。
と、初めは言われていたのに、報道は「コレラ」。
さあ、どちらなのだろう。
もしかしたら、誰も発見していないあの村で発生した新たな疫病かも知れず。
自分が資源の神になりたいがために資源の神の村を冒した男が、資源の代わりに滅びを国にもたらせたのかも。
なのに、まだ自分の死だけが裁きだと思っている男。
人間ってほんと勝手。
勝手で卑怯で醜くて哀れだ。
万灯の前で私は今、裁きを待っている。
いつもは正義の真実を求めて奔走している西島さんが、明らかに正義ではない方向に目の色変えて動いて行く姿は新鮮だった。
ホラーのように張りつく緊張感と恐怖。
日本の終戦の日の前日に。人間は、思い込んでやりすぎると呪いを撒き続けるというメッセージ。
第二夜も楽しみ。
東南アジアでガス油田開発に携わる商社マン・伊丹(西島秀俊)は窮地に追い込まれていた。土地の買収が地元民の反対で頓挫していたのだ。そんな伊丹のもとに地元民から手紙が来る。地元民の中でも意見が分かれていて、長老たちは金が欲しかったのだ。
長老たちは伊丹とそのライバル会社の森下(近藤公園)の二人に反対派のリーダーを殺すことを要求する。
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
※キャスト
伊丹修平 … 西島秀俊
森下聖司 … 近藤公園
高野 … 窪塚俊介
斎藤 … 駒木根隆介
木田 … モロ師岡
※スタッフ
脚本 … 大石哲也
制作統括 … 出水有三、仲野尚之
演出 … 萩生田宏治
原作 … 米澤穂信『満願』
音楽 … 神前暁
満願 (新潮文庫) [ 米澤 穂信 ]
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