【息もできない夏】第1話

あなたが当たり前だと思っていること、当たり前に持っているもの、
それを手に入れられない人たちがいます。

その人たちにとってあなたの当たり前の生活はとても幸せな日々に見える。

あなたが生まれてこの世に存在すること。
それだけで、可能性や未来はどこまでも広がっている。

だからこそもっと欲張っていい。
もっとやりたいことをやればいい。

もし、あなたに今生きているという実感がないなら、それは生きているとは言えない。
当たり前がどんなに幸せなことなのかどうか気付いてください。
そして、いつまでも未来を見て歩いてください。

「息もできない夏」第1話

    息もできない夏

玲は高校生の時から、この洋菓子店でアルバイトをしていた。

来月から正社員として登用する、と言われた時は、息が止まるくらい嬉しかった。

どうしたの? 玲。うれしくないの?

あっ、いやちょっと突然でびっくりしちゃって。

バイトも高校生のころから4年目でしょ。
この間、本社の部長があなたの作ったアップルパイを試食して推薦してくれたんだよ。

店のみんなが喜んでくれた。玲は幸せだった。

正社員登用のための必要書類。
住民票記載事項証明書。

住民票がありますという証明書。区役所でもらってきなさい。

店長の安倍川は、パリ留学にも挑戦できると言ってくれた。

パテシィエになるのは玲の夢だった。

昼間は仕事なので夜間受付に行った。

受付にいたのは無愛想な中年の男。

住民票記載事項証明書。ご本人確認の身分証明書をお願いします。

身分証明書?

運転免許証か健康…。

あっ私、運転免許取ってないんです。

健康保険証で構いません。

健康保険証…

レンタルショップの会員証を出してみたが、それでは受け付けてもらえなかった。

すいません。私、急いでるんです。
早く欲しいんですけど。

昼間に来ていただければ一度で済みます。

昼間は無理です。仕事だから。

とりあえず、何とか申請書を置いて行って手続してもらい、後から保険証を
持ってくることを了承してもらった。

何度も頭を下げて、帰っていく玲。

家に帰って保険証を探したが、母と妹の分しかなかった。

妹も、たまたま遊びに来た祖母も、社員になる事を喜んでくれた。

しかし、仕事から帰ってきた母は疲れてすぐ寝てしまい、話す事が出来なかった…。

翌日、昨夜玲から申請書を預かった受付の樹山は、上司の田所に渡した。

パソコンを叩いた田所は、手を止めた。

谷崎 玲さん。…この住所に住民登録がないわね。

えっ?

登録されているのは世帯主の「谷崎 葉子」さんと「谷崎 麻央」さんの2人だけね。

どういうことですか?

うん…。引っ越しのときの手続きミスか?
え~…谷崎さんちは14年前にうちの区に引っ越してきて、すぐに葉子さんの夫の
「谷崎 啓介」さんが除票になってる。
転出か亡くなったか。

こりゃ訳ありかもね。

訳あり。

母親が誰かの子供を預かってるなんてこともあるからね。
本人、知らないだけで。

夜になると、また受付に玲がやってきた。

職場から出してもらった在籍証明を出して

身分証明ってこれで大丈夫ですか?

と、にこやかに言う。

証明書は確かにそれでも良かったのだが…

住民票の書類ってできてますか?

この氏名とご住所で間違いないですか?

はい。

世帯主は「谷崎 葉子」さん。

はい。

あのお父さんは?

父ですか?
事故で14年前に亡くなりましたけど。
何かあったんですか?

あっ、いえ。このご住所には住民登録がされていないらしくて。

えっ!それってどういうことですか?
住民票がないってことですか?

ええ。

何でだろう。
ちっちゃいころからずっと住んでるのに。

小さいころからずっとこの町に住んできた。
小学校にも中学校にも通っている。妹も一緒だ。

なのに、母と妹の住民票はあるのに、自分の住民票だけがない。

結局、住民票は発行されなかった。

不安を抱えながら、玲は母が働く病院へ行った。

ねえ、まさか私って。
お母さんの本当の子供じゃないとか…。


何バカなこと言ってるの!
玲はお母さんの子よ。
お母さんが産んでお母さんがずっと育ててきたの。
もう!変なこと言わないでよ。
びっくりするじゃない。

母はどこか慌てているように見えた。

うん…そうだよね。

母とはよく似ていると周りから言われてきた。

留学のためにフランス語のテキストもプレゼントしてくれた。
母はいつも味方だった。

区役所では、玲から調べてほしいと頼まれた樹山が田所と玲の母
「谷崎葉子」の戸籍を調べていた。

母親の戸籍には…やっぱり玲さんの名前はないわね。
子供は麻央さんだけよ。

え~…谷崎葉子さんは平成5年6月に谷崎啓介さんと入籍。あら、直前に離婚してる。

おかしいわね。

玲さんが生まれたのは谷崎 啓介さんと入籍3カ月後の9月。

これ300日問題の可能性が高いわね。

樹山君、これ慎重にいかないと。
本人に伝えるのも酷だけど。

玲は、次の日もまた区役所に行った。母の誕生会。その前に済ませたかった。

受付で母と生まれたばかりの自分が写っている写真を見せた。
自分は確かに母の子どもで…だから、これは役所のミスで…
住民票は早く出してもらわなければ困ると訴えた。

すると、奥から女性が対応に出てきた。

私、戸籍係の田所といいます。

お願いします。

樹山君、君、担当でしょ。

住民票記載事項証明書の申請の件ですけれども…。

はい。早めに欲しいんです。

色々と手続きが必要なんですよ。

じゃあ、私すぐに手続きします。

それにはまず戸籍がなければいけないんです。

戸籍。

お調べしましたところ、玲さんには戸籍がないことが分かったんです。

えっ?

ですから、まずその手続きをしないとね。

私、戸籍がないんですか?

ええ。

あの…それって…。

今後のことも含めてお母さまとよくご相談してね。
それから戸籍係へいらしてくださいね。

女性はそう言うと帰って行った。

玲は頭が真っ白になった。
役所のミスだとばかり思って、逸って来たのに……。

自分で手続きはするから、と玲は言ったが、そんな簡単な事ではない、と樹山は言う。

ただ提出する住民票の書類が欲しいだけなのに、どうしてこんなことになっちゃうんだろ。
社員になれるって私にとってはすっごく大きなことなのに、どうして分かってくれないの!?

これから先困らないためにも、一度ちゃんとしておくことが必要で…。

大事なのは先のことより今なんです!
戸籍なんて後でいいです。
だから提出しなきゃいけない書類だけ出してください。

戸籍がなければ住民票なんてないし、留学なんて言ってもパスポートも取れないんです。

じゃあ、私はどうしたらいいんですか?
せっかく社員になれるのに!

身分証明の保険証もなかったじゃないですか。
保険証がないってことはケガしても病気になっても医療サービスを受けられない。

身分証明がなければ家を借りることもできない。
就職のときも 結局こうして困る。
結婚したくても入籍する籍もないし、子供を産んでも入れる戸籍がないんだ。

そんなこと言われても、私はお母さんの子供です。
お母さんの子供なんだから!

出生届が出されてないんです。
出生届が出されてなければ亡くなっても死亡届を出すことができないんです。

私、死んでなんかいません。
生きてますから!

戸籍がないってことは存在してないってことなんだ!

樹山は茫然とする玲に、戸籍を作る方法はある、と言った。
母にも事情があったのだろう、と言ってくれた。

しかし、玲の頭は真っ白だった。

ネットで検索してみると、自分と同じように何かの手続きをしに役所に行って
初めて戸籍が無い事を知ったという人がいっぱいいた。

たくさんの書き込みの中に樹山が言った通りの事が書かれていた。

「どんなケースでもやっぱり親が協力してくれるかどうかが鍵だと思う」

翌日、玲は母に聞いた。

なぜ妹には戸籍があって自分にはないのか。
母は本当に自分の誕生を望んでいたのか。

玲、お母さんね…母さん、お父さんと結婚する前。
別の人と結婚してたの。
で、その人と別れてお父さんと結婚して玲ができた。
でも、法律が…法律のせいで…お父さんの戸籍に入れてあげることができなくて…。

法律なんて関係ない!
私のこと考えてくれなかったの?

いつか、こういう日が来るって何で今まで考えてくれなかったの?

ごめん。

何で私のこと考えてくれなかった…。

玲のこと守るためだったの!

じゃあ守ってよ!

戸籍をつくる方法があるって。
明日、一緒に区役所に来て。

しかし、母は無反応だった。
涙を目に溜めるだけで、一緒に行こうとは言ってくれなかった。

お母さん?
ねえ…協力してくれないの?

ねえ。

玲は母から貰ったフランス語の本を投げつけた。

じゃあ何でこんな物くれたのよ!?

ごめん。

それでも親なの?
…苦しめるために私を産んだの?

もう信じられない!

家を飛び出して、職場に行った。

戸籍が無い。

ただそれだけの事で、自分はこの国で何もできないのだと言う事を知った。

存在すらしていない存在。

夢など見る事の方が間違えだった…。

玲は道で倒れた。
人がたくさん集まってくる…。

誰かが救急車を呼ぼうとしていた。

救急車…呼ばないで……

声を振り絞って玲は言った。

だって…自分は存在しないのだから。

  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

「リーガル・ハイ」なみに長くなった…。
見ながら解らない事だらけだったので…確認しながら書いています。

たぶん、次回からはこんなに長くならない…予定。

私はよく、新しいドラマが始まるたびに「目新しさが無い」と書いてしまうのですが…

これは、ある意味目新しかった。

そして、重くて辛い。

「泣かないと決めた日」「名前をなくした女神」の脚本家・渡辺千穂さん。

今までも社会問題を取り入れつつ、多方向に問題を散らしつつ、面白いとは
思いつつも、エグイ展開にどちらかと言うと激しくツッコみながら見ていた
感じだったんだけど…いや、これもツッコんでるけど。

でも、1話目はかなり内容的にもグッと引き込まれて見ていました。

「300日問題」とは…こまごまと書くと、もっとレビューが長くなるので、
詳しく知りたい方はWikiをご覧ください

・離婚後300日問題 by Wikipedia

簡単に言うと、こういう事です。

日本には、「女性が離婚後300日以内に出産した子供に関しては、前夫の子どもである。」
という法律があります。

で、前夫の戸籍に入れたくないために子どもの出生届を出さない親がいる。
これが「300日問題」なのです。

このドラマでの「母」である谷崎葉子@木村佳乃さんが、なぜ玲の出生届を
出さなかったのか、それは今回は語られていません。

ただ、300日問題を避けるために前夫自身が自分の嫡子である事を認めなければ覆すことが
出来るらしいので、たぶん、前夫は玲の存在を知っていれば認めたのだろう。

つまり、葉子さんは玲の存在を前夫に知られたくなかったのだろう…という事は
容易に想像できます。

そして、たぶん、今でも知られたくないのだろう…。

そこに、あのチラっと出てきた北大路欣也さん(夏目周作というらしい)とかが
どう関わっているのか…それは今はまだ解りません。

中村蒼くんも何者なのか、さっぱり解らないのでした。

中村蒼くんは、玲と同じ立場の人なのかも。つまり「300日問題」の子供。

しかし、私、恥ずかしながらこんな問題に悩んでいる人が世の中にたくさん居る事も、
戸籍がそれほど重要だと言う事も、今まで全く知りませんでした。

まさに、「当たり前」の中でのほほんと生きている。
私はそんな人だったのです。

区役所で受付に向かってクレーマーのように騒ぐ玲は見苦しくも見えたかも知れませんが、
まぁ…当たり前だと思います。

だって、突然、

あんたは日本人じゃない。
あんたは生きてない。
あんたは存在してない。

そう言われたら…。
今までの自分って何だったんだろう。って思う。

やりたかったことを何もできず、そして死ぬまで名前のない人なんだね。

母は、なぜそんな人生を娘に与えたんだろう。

玲が区役所で騒ぐことになったのも、全部母のせいだし。
なぜ、せめて住民票を取りに行くと聞いた時点で教えてあげないの

泣いてるだけじゃ何も解決しない。

せめて、納得できる答えを子供に授けてあげてくれ…。

生まれてから今まで1度も病院行かなかったのかなぁ、とか、予防接種も受けてないの?
とか、色々と疑問は湧きましたが…。

葉子はそのために病院に勤めているのかなぁ、とも思いました。

従業員だから適当に細工してカルテを作ってもらってた

小中学校は特別措置で入ったとしても…高校はどうしたんだろう。
高校は公立でも入学時に住民票がいるような気がするけど……。

このモヤモヤたちを…なるべく早く解消してほしい~…

という思いと共に、来週も見る!

だけど、この流れから恋愛ものっていうのが、ちと解らない……。

どうくっつくんだろう
これだけで、もう充分にドラマだと思うけど。

全部偽物だった。これまでの全てが。
今まで生きてきた世界が違う世界に見えた。

私のこれまでが、私のこれからが、奪われた気がした。

でも、そうじゃない。
奪われたんじゃない。

もともと何にもなかった。

私は、この世界に存在していなかったんだ。

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

谷崎玲(武井咲)は、洋菓子店でアルバイトをする明るくて元気な18歳の女の子。
パティシエになるという夢を持ち、高校時代からアルバイトを続けてきた玲は、真面目な
勤務態度や菓子作りのセンスが評価されて、来月から正社員に途用されることになる。

樹山龍一郎(江口洋介)は、区役所の時間外受付を担当する臨時職員。
かつて大手新聞社の社会部記者として活躍していた樹山は、数々のスクープをものにして
出世街道を突き進んでいた。
だが、ある事件がきっかけで新聞社を去ることになり、以来、誰の邪魔にもならないよう
ひっそりと暮らしていた。

玲は、店長の衣里(橋本麗香)から、住民票記載事項証明書など、必要書類を提出するよう指示される。
仕事を終えた玲は、さっそく区役所夜間受付を訪ね、書類の申請をする。
応対したのは樹山だった・・・。

玲は、介護士をしている母・葉子(木村佳乃)と、14歳の妹・麻央(小芝風花)と3人暮らし。
父親の啓介は14年前に事故で他界していた。
帰宅した玲は、健康保険証を探した。だが、見つかったのは葉子と麻央のものだけだった。
翌朝、玲は、夜勤明けの葉子に、健康保険証のことを聞こうとする。
しかし葉子は仕事の疲れか、目を覚まさなかった。

その夜、玲は、健康保険証の代わりに、衣里から受け取った在籍証明書を樹山に提出した。
そこで樹山は、住民登録がされていないことを玲に告げる・・・。

(上記あらすじはYahoo!TVより引用)

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【キャスト】

谷崎玲 – 武井咲
樹山龍一郎 – 江口洋介
谷崎葉子 – 木村佳乃
草野広太 – 中村蒼

井川さつき – 原幹恵
亜沙美 – 霧島れいか
谷崎麻央 – 小芝風花
田所光子 – 濱田マリ

鮎川宏基 – 要潤
中津大輔 – RIKIYA
安倍川衣里 – 橋本麗香
西川純 – 清水一希
筒井宗太郎 – 勝 信

谷崎香緒里 – 浅田美代子

夏目周作 – 北大路欣也

  

 
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