BS時代劇 薄桜記 第11回「雪の墓」
まさに、サブタイトル通り「雪の墓」でした。
予想はしていたものの…切ないです。
討ち入りの噂だけは広がり続けていたものの、赤穂藩はちっとも攻め入ってきません。
吉良家の内部はどんどんダレた空気でいっぱいになってきます。
見張り番の者たちは夜に酒を飲むようになったり、苦言を呈す典膳さんは
馬鹿にされる始末。
もう、これなら吉良家、やられちゃっても仕方ないよね。という状態。
さて、来る12月6日。吉良邸では年納めのお茶会が予定されていましたが、
諸般の事情でこれを14日に延期します。
忠臣蔵に詳しい人は「茶会」と聞いたらおおーっと思う所です。
実は、浅野方は茶会の日を討ち入りに、と狙っていたのです。
なぜ茶会の日を狙ったかというと、単純に吉良上野介が在宅しているかどうかという事です。
自邸で行う茶会の日に主人が居らぬわけがなく、討ち入りに絶好の日だったのです。
相変わらず風流好きな吉良さまは、茶会の準備に余念がありません。
席次を決め、障子を開けさせ、討ち入り警備のために継ぎ足した塀が邪魔で月見が出来ぬ、
無風流な塀はとっぱらう。
と、塀を取り払う事まで決めてしまいます。
当然、典膳さんは、塀をとっぱらうのは止めましょう。
年納めのお茶会はどうぞご遠慮くださいませ。
と進言します。
しかし、吉良さまは、命が惜しいからと言って無粋に生きるのはイヤだ。
やるかやられるかで怯えて暮らすのは愚の骨頂じゃ、と言われるのです。
楽しみさえあれば、人はあくせくすることもなく、ゆとりを持ってやっていける。
もう、それ以上何も言えない典膳さん…。
こうして、吉良家は茶会の月見のために塀を取っ払ってしまったのでした。
満月のせいじゃ。
月は浅野の回し者かも知れない。
虚しくそうつぶやく典膳さんは、吉良家の暢気さにもう付いて行けません。
一方、浅野方の方も、突然塀を取っ払った吉良家の行動に首をかしげていました。
これでは、あそこから入れと言わんばかりではないか。
何か罠が仕掛けてあるのでは…。
14日に茶会が行われるという情報は、潜り込ませた者から入ってきています。
しかし、それさえ罠かも知れぬと試行錯誤の上、やはりここしかない…と、
14日に決行する事を決めたのでした。
それに先立ち、典膳さんを密かに斬れと、義父・弥兵衛から言われていた安兵衛も、
いよいよ覚悟を固めます。
12月14日。
この日は寒く、雪がちらつく日になりました。
夜には本格的に降り始め、足元も危ない状態になります。
典膳さんは、安兵衛から谷中の七面社に呼びだされ、もう何が起こるか大よそ
承知の上で身支度をします。
支度をしながら、典膳さんは千春に語ります。
わしは、だんだん浅野家の残党が羨ましくなってきた。
あの者たちには生き甲斐がある。
死に場所のことだ。
千春は悲しげに顔をしかめます。
しかし、まぁ典膳さんの気持ちも解らなくはありません。
いつ討ち入られるかという緊張感もなく酒を飲み、茶会を催し、
風流命と塀を取っ払ってしまう。
苦言を呈すれば邪魔者扱い。
それに比べて浅野は一枚岩。命賭けてる空気が伝わってきます。
武士だというのに、汲み取り屋やら青物屋やらに化け、奥女中として潜り込み、
ばれれば舌を噛み切って自害する…
あの者たちは死に場所を見つけたのじゃ。
死ぬることが生きがいなのだ。
その生き甲斐を潰そうとしているのは誰だ?
邪魔者はこの儂じゃ。
丹下典膳に他ならぬ!
珍しく憤慨しているような典膳さんを見て、千春は不安に襲われます。
しかし、またすぐに典膳さんは冷静さを取り戻し、
心の内の雑念をちと言うてみただけじゃ。
いかなる時もお前を見捨てることはない。
千春は丹下典膳の妻じゃ。
いつ死ぬるかは解らぬが、例え死んでも、
お前の心の中で生きていく。
と、微笑むのでした。
その後、千春がご主人さまに呼ばれて部屋を出た隙に、典膳さんは
籠の内のあのつがいの文鳥を外に放ちます。
そして1人、安兵衛と待ち合わせた谷中の七面社に向かうのでした。
七面社の入り口で、典膳さんの草履は鼻緒が切れます。
久しぶりに会った安兵衛は、それを笑顔で直してくれます。
場所を変えたいから籠に乗ってくれという安兵衛の申し出を典膳さんは断ります。
堀部安兵衛ともあろう者が、わしを捉えて押しこめようとはな。
これから討ち入りがある事を完全に察した典膳さん。
安兵衛は、典膳さんを斬ろうとしたのではなくて、斬りあわなくて済むように一晩
閉じ込めようとしていたんですね。
ならば、吉良屋敷で会おうではないか。
わしが邪魔か。
いかにも。
わしの面目はどうなる!
逃亡したと思われるではないか。
典膳さんは剣を抜き、安兵衛も剣を抜きます。
もはや、それは止める事が出来ない運命でした。
安兵衛と共に来ていた近松、片岡に見せつけるように激しく剣を交えた後、
いつもと違って典膳さんが大きく振りかぶった隙に安兵衛は下から
剣を突き上げます。
剣は典膳さんの腹に深く突き刺さり……
崩れる典膳さんを支える安兵衛。
…これでよかったか。
わしにも、死に場所があったな。
心置きなく本懐を遂げよ。
浅野の三人は典膳さんを横たわらせ、胸の上に刀を置き、
傘を差し掛けて去って行きます。
義父から丹下典膳を斬れと言われた安兵衛は、何とか典膳を斬らずに済む
方法を模索していた。
典膳が安兵衛を討ち入らせたくなかったように、安兵衛もまた、
討ち入りの場に典膳にいてほしくは無かったのです。
お互いにお互いを助けたいと思いつつ、また、お互いに死に場所を
得たいと願ってきた2人。
そして最期にはお互いがお互いの死に場所を作ってやる。
武士だからこその友情と理解です。
現代的な目で見れば、討ち入りなんて良い事何にもありません。
確かに、四十七士は吉良上野介を討ってヒーローになります。
しかし、ヒーローになったからって何があるのでしょう。
お馬鹿な将軍は何も変わらず、幕府の財政難も続きます。
討ち入りを果たした四十七士の親族は、その後結構大変な目に遭っています。
上野介の跡取りであった義周は討ち入りの際助かったものの大けが。
そして改易の上、幽閉されて病死……21歳です。
何にも良いことないのにな……
それでも、武士は死に場所を得ることが夢なのか…
女の身から考えると、生きのびる幸せよりも死に場所を求める
男のロマンが自分勝手に見えてしまいます。
まぁ…それを潔いと思ってこその時代劇なわけですが。
堀部安兵衛が本懐を遂げて切腹するのは翌年2月。
空の上で典膳さんと安兵衛が再び笑いあえるには、もう少し時間が必要です。
さて…
千春は、部屋に戻り、文鳥が逃がされているのを発見、勘蔵を問いただして
典膳さんの行き先を知ります。
籠を出させて慌てて七面社に駆けつけると、冷たい雪の中、仰向けに寝かされた
典膳さんは、もっと冷たくなっていました。
抱きしめてもさすっても、もう温かさの戻らないその身体を抱きしめ、
千春も雪の中に横たわります。
あなたが死ぬなら、私も生きてはいけません。
そう言っていた言葉通りに…
白い雪が2人の上に降り積もり、包み込んでいくのでした。
***********************************
素晴らしく練られた脚本でセリフにはその時代の息吹があり、
後になるほど面白さが増したドラマでした。
「忠臣蔵」を題材にしつつ、吉良家目線である事。全11話という事で、主人公周り以外の
余計な登場人物やエピソードをバッサリと切り、解りやすくしたこと。
など、目からうろこの新鮮さも味わえました。
久々に骨のある時代劇を見たかな…
BS時代劇の中で、たぶん一番好き…だと思います。
次期の「BS時代劇」は「猿飛三世」。
主演は伊藤淳史さんです。
予告見た限りでは、西遊記かよって気もしましたが…(堺正章も出てたし~)
CGとかワイヤーとか、いっぱい使いそう…平気かな。
※見逃した方は、9月23日(日)午後6時45分からBSプレミアムで再放送があります。
また、BSの入らない方!
10月18日(木)からNHK地上波総合にて再放送が始まります!
時間は毎週木曜日8時から。お楽しみに!
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
丹下典膳(山本耕史)は、警護の士気の低下を危惧し、吉良上野介(長塚京三)に直訴する。
だが、上野介は月見の茶会を催すため、警備強化のために増築した高塀を無粋だと
壊してしまう。
茶会の夜、典膳は、ひそかに堀部安兵衛(高橋和也)に会うため、雪が降り始めた谷中に出向く。
安兵衛は「一晩だけ身を隠してほしい」と懇願するが、典膳は太刀を抜き、安兵衛たちと
刃(やいば)を交わすことに。
刻々と打ち入りの時は迫っていた。
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
よろしければ→【2012年10月秋期ドラマ一覧】ラインナップとキャスト表
【キャスト】
丹下典膳 – 山本耕史
長尾千春 – 柴本幸
堀部安兵衛 – 高橋和也
お三 – ともさかりえ
丹下ぬひ – 檀ふみ
白竿屋長兵衛 – 高嶋政伸
千坂兵部 – 草刈正雄
高木敬之進 – 葛山信吾
富樫頼母 – 石丸幹二
お豊 – 藤本泉
瀬川三之丞 – 石垣佑磨
後藤七左衛門 – 徳井優
長尾龍之進 – 忍成修吾
長尾権兵衛 – 辰巳琢郎
お菊 – かとうかず子
富子 – 萬田久子
浅野内匠頭 – 春日俊彰
瑤泉院 – 小島慶子
吉良義周 – 市川知宏
小林平八郎 – 矢島健一
紀伊国屋文左衛門 – 江守徹
堀部弥兵衛 – 津川雅彦
吉良上野介 – 長塚京三
新潮文庫 こ−4−5薄桜記/五味康祐 |
市川雷蔵/薄桜記 |
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【関連記事】・陽だまりの樹- BS時代劇 – 第8回
コメント
薄桜記
惜しむらくは初回を見逃したのが悔やまれますが、忠臣蔵の裏舞台を描いた「薄桜記」が、いかにも時代劇らしくて、なかなかに味わい深かったです。
調べてみると、産経新聞夕刊に19…
薄桜記 TOP
『薄桜記』(はくおうき)は、産経新聞夕刊に1958年7月から1959年4月にかけて連載された五味康祐の時代小説。また、それを原作とした映画、舞台、テレビドラマ。 小説 1959年に新潮社
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>ラストに向けて、静かに盛り上がって行く感じも素晴らしかったです。
私も見てきたBS時代劇の中では、一番好きかも。。
そうなんですよねーー。
初回はそれほどでもなかったんです、個人的には^^;
でも、どんどん面白くなっていきました。
久々に良い時代劇でした^^
>「猿飛三世」…予告編を見る限りでは、アクション多めで楽しそうでした。
BS時代劇って奇をてらった物が多いですよね^^;
こういう正統派の後に、またこういうのが来るか…と、ちょっと引いたものの…
楽しみではあります。見ます!
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>吉良家は結局ねぇ・・・。
上杉家を継いだ綱憲も早くに亡くなりましたし。
吉良家は本当に不運を抱える事になっちゃいますよね(;_:)
本来の忠臣蔵なら「いい気味だ」って気分にもなりますが、こうやって
吉良家側から見るともう哀れさばかり感じてしまいます。
義周さんは市川知宏くんが演じていただけに余計悲しくなっちゃいました。
>あの時は武士として千春を庇うという目的があったけれども、今回はその武士としての生き様に関わることだから、というようなことは何となくわかるのですが。
それが美徳…なんでしょうね。
現代人でましてや女の身の上だと理解に苦しむ点が多いです。
死に急いでいるように見えましたもんね。
生き延びて千春と末永く暮らせる平穏な世の中のはずなのに…。
>元禄時代のファッションやデザインが珍しかったです。
そうですね!大河「元禄繚乱」も、もう記憶に遠く、この時代は珍しいかも。
きちんと細かい所も描き出してくれるドラマでした。
堪能しました^^
薄桜記 第11回 「雪の墓」
タイトル通りの結末… や~~ 救われなかったなぁー(´ヘ`;) 典膳かわいそすぎ。 山本耕史さんて、敗者側について一緒に滅んでいく役、似合うね! あんな死に方で良かった
BS時代劇『簿桜記』 第十一回(最終回)雪の墓
『雪の墓』
内容
義父・弥兵衛(津川雅彦)から、
吉良家を警護する典膳(山本耕史)の始末を命じられた安兵衛(高橋和也)
親友であり、剣術の師匠であると、安兵衛は戸惑うしかな
BS時代劇「薄桜記」第11回(終)雪の墓〜山本耕史と柴本幸に泣けた!!
BS時代劇「薄桜記(はくおうき)」
第11回「雪の墓」
谷中・七面社での丹下典膳(山本耕史)と堀部安兵衛(高橋和也)の心と心の対決。
雪に横たわる典膳と千春(柴本幸)・・・。
…
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ついに終わってしまいました…(涙)
もっと見ていたかった…そんな気がする時代劇でしたね♪
ラストに向けて、静かに盛り上がって行く感じも素晴らしかったです。
私も見てきたBS時代劇の中では、一番好きかも。。
「猿飛三世」…予告編を見る限りでは、アクション多めで楽しそうでした。
ちょっと期待しています。
BS時代劇「薄桜記」最終回
二人に、雪が降り積もる…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201209210003/
NHK-BS時代劇「 薄桜記 」オリジナル・サウンドトラック濱田貴司 ポニーキャニオン…
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>上野介の跡取りであった義周は討ち入りの際助かったものの大けが。
吉良家は結局ねぇ・・・。
上杉家を継いだ綱憲も早くに亡くなりましたし。
>何にも良いことないのにな……
>それでも、武士は死に場所を得ることが夢なのか…
安兵衛の気持ちはまだしも、典膳の気持ちは私もよくわからないんです。
片腕を落とされた時より追い詰められていました。
あの時は武士として千春を庇うという目的があったけれども、今回はその武士としての生き様に関わることだから、というようなことは何となくわかるのですが。
・・・なんてね、色々余韻の残るドラマでした。(^^;;
>素晴らしく練られた脚本でセリフにはその時代の息吹があり、
元禄時代のファッションやデザインが珍しかったです。最近の時代劇の設定はもっと後の時代が多いので。
あと、この人、腰高!なんてこともなかったのも安心して見れました(汗)
久しぶりに堪能できた時代劇でした。
薄桜記 第11回 最終回「雪の墓」
公式サイト吉良邸の警護が長引き、士気の低下を目の当たりにした丹下典膳(山本耕史)。<続きは本家記事でご覧ください。>※本家の記事のURLhttp://miru-yomu-kiku.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/1…