【息もできない夏】第4話

私たちは戸籍がないし、確かに普通じゃないかも知れない。
だけど、それに負けちゃいけないと思ったんだ。

私、ある人にね 「もっともっと欲張っていいんじゃないか」って言われたの。
そのとき思ったんだ。
これから先、「人の優しさも実力も、全部戸籍がないからだって思うの?」
「できないことも戸籍がないからしょうがないって言い訳するの?」って。

そんなの嫌だなって思った。
今、どうしようもない状況でも自分次第で未来は変わっていくと思う。

 

「息もできない夏」第4話

    「息もできない夏」感想

フリーペーパー「CITY WATCHER」の取材の日。
玲は記者に言われるままに写真を撮られ、インタビューに答えた。

 

谷崎さんの宝物は何ですか?

このフランス語のテキストです。母からのプレゼントなんです。

パリに行かれたことは?

ありません。
でも、いつか行きたい。
向こうで勉強するのが私の夢なんです。

パティシエの仕事は体力的にも時間的にも大変厳しいと思いますが、
どうしてこのお仕事を選んだのですか?

子供のころ、母と一緒に初めて作ったスイーツがアップルパイなんです。
甘くて酸っぱくてあったかくて。

一口食べて幸せだなあって思いました。
スイーツって人を幸せにするんだなって、そのとき初めて知りました。

 

その日の閉店間際、ネットで相談に乗ってくれた「ウィスキーボンボン」さんが店に来た。

彼には、ここで働いている事も本名も、すでに教え合っていた。

草野広太という21歳の青年。
それがウィスキーボンボンさんの素の顔。

戸籍のない者同士…。
妙な連帯感は玲にもあった。

 

俺、友達いないからさ。

誰かと親しくなるとき…っていうか、仲良くなるときっていうか、そういう時って
やっぱり必ず自分のこと話すよね。

俺、それができないからさ。

谷崎さんとは同じ境遇ってこともあるし、色々やりとりして身近に感じてさ。

 

友達になろうよ。

えっ?

私たち、そういう、草野君が誰かに話せないようなことも話せるし、私も草野君には
何でも話せるし、こうして楽しいし。

 

草野は、肉体労働のバイトをしているのだという。
書類が用意できないから、ちゃんと就職できないというのは玲と同じだった。

私が自分に戸籍がないことを知ったのは、正社員になるための
書類を用意するときだったの。

事情を話したら分かってもらえたけど。

話したの?

うん。話した。
いつまでも誤魔化すわけにはいかないし。

草野は驚いたようだった。

そっか…話したんだ。

 

草野は義務教育もまともに受けていないのだと言う。

物心付いた子供のころからず~っと独りで、何か…何ていうか、ギリギリのとこで
生きてるって感じかな。

だって、普通にしてたらさ、家を借りることもできないしネットもできないし、
まともに就職もできないでしょ。

それじゃあ、草野君はどうしてるの?

嫌いなやつに頭下げて名義を貸してもらってるよ。

相手の顔色うかがいながら、自分の感情隠してへこへこして。
何でもしないと食べていけないし。でも やっぱり情けないなって思う。

草野は玲の顔を覗く。

今、俺のこと可哀想だって思ったでしょ?

えっ? いや、そんなこと…。

私の方がましだ、って思ったでしょ?
それが普通だよ。

みんな思うんだ可哀想だって。
…ごめん、ついこういう言い方になっちゃって。

 

家に帰ると、妹の麻央が帰ってきていた。

もう隠し事はイヤだから、母から来た手紙を見せてくれという麻央。

玲は手紙を出した。

 

これを読む前に話しておくことがあるの。

麻央。
私には戸籍がないの。

お母さんと麻央が入っている戸籍に私は入ってないの。

玲は何もかも話した。
母に離婚経験がある事。相手からDVを受けていた事。

そして、自分が戸籍に入れなかった理由。

麻央は、お姉ちゃん、ごめん。と泣きながら謝った。

お姉ちゃん、かわいそう。
かわいそう過ぎるよ。

と、泣く麻央。

玲は軽い違和感を覚えた。

 

翌日、店に「CITY WATCHER」が届いた。

取材を受けたのはさつきと玲だったが、玲の記事はさつきよりも
遥かに大きく幅を取っていた。

店長が来て、玲の記事を見て本社がアップルパイに興味を持ったので、
本社に送るアップルパイをつ焼くように、と言う。

しかし、さつきには、

井川さん。
来週分の発注チェックよろしくね。

と言うのみ。

さつきの顔色が変わるのを、玲も同僚の純も明らかに見た。

 

それから数日、フリーペーパーを見て来店した客は多く、アップルパイはよく売れた。

本社では秋からの林檎を使ったプロジェクトに玲を入れたいと言って来たらしい。

その頃には、色々落ち着いて、きっと社員になれてるんじゃない?
せっかくのチャンスなんだから、何も気にせずに頑張りなさい。

…井川さんたちにもシフトの件で協力してもらうことがあると思うけどよろしくね。

 

店長のこの言葉に、さつきはついに爆発した。

 

ちょっと待ってください。

年だって若くて、バイトでアップルパイを担当させてもらってるってだけでも注目されるのに
お母さんとのあんないい話までされたら記者の人だって良く書きたくなりますよね?

アップルパイがこんなに売れてるのだって、お客さんがあの記事見たからです。
味じゃないと思います!

玲を社員にしようとしたり、バイトなのにお菓子の担当持たせたり、プロジェクトチームに
入れようとしたり、それってただの同情じゃないですか。

あなた、谷崎さんが苦しんできたのを見てきたのにそういうこと言うの?
そういう考え方ってパティシエとして以前に人としてどうかと思う!

 

さつきだって解っている。

玲がアップルパイの担当になったのも、社員に採用されることが決まったのも、
全部、戸籍の事が分る前だった。

 

分かってるよ!…分かってても…。

 

フリーペーパーがこんなに波紋を呼ぶとは、玲本人も思ってはいなかった。

樹山からフリーペーパーの話を出された玲は言う。

 

何か自信なくなっちゃって。

私、かわいそうなんですって。
戸籍がないから同情されてるって。

だから店長が推薦してくれて、特別に記事も大きかったみたい。
だからアップルパイも売れてるって。

やっぱり普通じゃないんだな私。

自分次第で未来は変わるなんて思ってたんですけど。
間違いだったのかな。

樹山は言ってくれた。

俺は、同情なんてもんにそんなに力はないと思うよ。
何かのせいにするのは簡単な話だけど、もっともっと欲張っていいんじゃないかな。

食べてもらう相手は俺じゃないだろ。

欲張っていいって。

 

玲は翌日、さつきに自分のアップルパイを試食してもらった。
売れているのは同情からなのか否か。

さつきは言った。


アップルパイおいしかった。

だからって私があなたに負けてるとは思ってない。
この先も負けるとは思ってないから。

 

その日、玲は草野を呼びだした。

 

この間、草野君の話聞いて、私、かわいそうだって思った。
でも間違えてた。

私たちは戸籍がないし、確かに普通じゃないかもしれない。
だけどそれに負けちゃいけないと思ったんだ。

ある人にね、「もっともっと欲張っていいんじゃないか」って言われたの。
そのとき思ったんだ。
これから先、「人の優しさも実力も全部 戸籍がないからだって思うの?」
「できないことも戸籍がないから しょうがないって言い訳するの?」って。

そんなの嫌だなって思った。

今、どうしようもない状況でも自分しだいで未来は変わっていくと思う。
だから草野君ももっと欲張っていいんだよ。

 

家に帰って麻央にも告げる。

どんなことがあっても、私は麻央のお姉ちゃん。麻央は私の妹。

私たちはお母さんの娘。
私は谷崎 玲。
私は私。

ちゃんとここにいる。
かわいそうなんかじゃない。

だから、今までどおり普通でいいの。

 

母が申述書を作って帰ってきてくれた。

何もかもが上手くいっているように玲には思えた。

 

その頃、男は「谷崎玲」の記事が載ったフリーペーパーを見ていた。

写っていたのは、先日自転車を倒したあの少女。
男は自転車を起こしてくれたあの男。

葉子の前夫・鮎川だった。

 

  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

先週までは、玲が勤めている店の店長・衣里は心が広くて良い人だと思っていた。

いや、今でも良い人には違いないのだけど、玲を推す心の根底には「同情」がある。
「同情」という心は、自分と違う、みんなと違う、と思うから出てくるのであって、
つまりは偏見と紙一重なんですよね。

その点、自分の感情も玲への嫉妬もバリバリ見せているさつきの方が、玲を見る目が
公平で平等。偏見がないという事が解りました。

さつきにとって、玲は戸籍があろうがなかろうが、ライバルで嫉妬の対象なんだよね。
こういう人の方が、いざという時には頼りになるような気がする。

いずれにせよ、良い職場です。

 

こうやって、自分が草野に向けた「同情の目」が自分にも注がれている事を知った玲。

それでも、前を向いて、あきらめないで生きていこうという気持ちは尊い。

 

草野は、玲よりももっと色々な物を捨ててあきらめて生きてきたんだ。
親は戸籍取得に協力どころか、葉子よりももっと悩みもしないで逃げてきた
人なんだろうな…。

以前の記事にも書きましたが、実際にこの300日問題に該当する人の親は、
そういう人の方が多い気がします。

教育を受ける事も、就職も、住む場所も他人の名義でしか作れなかった草野は…
今も、とんでもない「肉体労働」をしているよう。

彼が今の生活から抜け出すためには、玲よりももっともっと決心する事が多くて…
玲のように本当に自分の名前で堂々と生きられる人は、憧れに近いかも知れない。

玲のようになりたいと願うあまりに、草野がもっと危うい道に行かなければいいのだけど。

 

玲の本当の意味でのDNA上の父親は、私は鮎川なのだと思っていた。
しかし、今のところは亡くなった父・谷崎啓介(神尾さんたら初めから遺影・泣)という事に
なっているみたいですね。

少なくとも、玲はそう信じている様子。

これが引っくり返る事も今後はありそう……。

だって、離婚届を出してくれと頼みに行ったあの段階でやられちゃってるんじゃ~。

そもそも、どうしてああいう話し合いの時、第三者を中に入れないんだ。
そして部屋とかで会っちゃうんだ。

どういう男か知ってて会うのに、あれじゃやられちゃっても仕方ないよね。
(やるやるってオイ…ぇ…)

そして、玲の父親が誰かと言う事は、葉子はもちろん解っている気がするよ。

その時は、玲がまた深く傷つくことになるんでしょうね。可哀想に。

 

まぁ…
どっちのDNAだろうが、玲が入る戸籍は300日の法律だと鮎川の戸籍なのだから、
まずはその手続きをきちんとしないとね。

私、こういう手続きの書類とかメッチャ苦手なんですよね…。
いっぱい書かされるんだろうな。無理。

 

樹山の周囲に関しては、私は今のところはまるで興味ないんですが…
あの一緒に暮らしている昔報道対象にした相手の奥さんみたいな人は、
何であんなに玲に対して敵意剥き出しなの
たかが小娘なのに。

このドラマ、とりあえず病院行った方が良い人だらけだ……。
戸籍があって保険証がある人は、病院に行こう。

 

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

谷崎玲(武井咲)は、母・葉子(木村佳乃)から届いた手紙を樹山龍一郎(江口洋介)に見せた。
その手紙で葉子は、申述書を書いて必ず玲のもとに戻る、と綴っていた。

区役所からの帰り、自転車で自宅へと急いでいた玲は、曲がり角で人影に気づき、
バランスを崩して転倒してしまう。
そんな玲に手を差しのべたのは鮎川(要潤)だった。
鮎川は、散らばった拍子に破れてしまったフランス語のテキストなどを拾ってやり、玲に謝った。

玲が自宅に戻ると、ネットで知り合った“ウイスキーボンボン”こと草野広太(中村蒼)から
メッセージが届いていた。
玲は、心配してくれている広太に、母を待つことにしたと報告し、感謝の気持ちを伝えた。
ふたりは、改めて自己紹介し、お互いの名前や年齢などを教え合った。

あくる日、玲は、先輩の井川さつき(原幹恵)とともに、フリーペーパーの取材を受ける。
そこで玲は、初めて母と一緒に作ったアップルパイの思い出を話した。
閉店間際、店に広太がやってきた。仕事を終え、彼と一緒にカフェを訪れた玲は、広太が
子どものころからひとりで生きてきて、義務教育も受けていないことを知る。

同じころ、葉子は、港町のホテルで申述書を書いていた。
だが、DVの記憶がフラッシュバックし、書き続けることができず…。

(上記あらすじはYahoo!TVより引用)

 

よろしければ→【2012年7月期・夏クールドラマ何見ます?】ラインナップ一覧とキャスト表と展望

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【キャスト】

谷崎玲 – 武井咲
樹山龍一郎 – 江口洋介
谷崎葉子 – 木村佳乃
草野広太 – 中村蒼

井川さつき – 原幹恵
亜沙美 – 霧島れいか
谷崎麻央 – 小芝風花
田所光子 – 濱田マリ

鮎川宏基 – 要潤
中津大輔 – RIKIYA
安倍川衣里 – 橋本麗香
西川純 – 清水一希
筒井宗太郎 – 勝 信

(谷崎啓介 – 神尾佑)

谷崎香緒里 – 浅田美代子

夏目周作 – 北大路欣也

 

  

 
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【息もできない夏】第1話 第2話 第3話 第4話


コメント

  1. 【息もできない夏】第4話感想と視聴率&各種…

    「直接対決!いま襲いかかる同情という名の悪意」今日も、めちゃ暑いです(汗)第4話の視聴率は、前回の11.0%より下がって、9.3%(関東)でした。遂に、10%を切ってし…

  2. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    >鮎川が、なぜ、谷崎の苗字を知ってたの??とかいろいろ気になることが山積み・・・・。

    それ不思議よねーー。
    葉子の苗字を知っていたなら、居場所も突き止めていて、とっくに
    付きまとっていても良いような気がするし…。
    ってか、もう何年も経ってるのに要は今でも元奥に付きまといたいのかなぁ。
    他のターゲットは見つからなかったのかな^^;

    >最初、イライラしてたお母さんだけど、今は見てると息がつまる。。
    誰か病院連れてって!!という気持ち。

    あれは心因性何とか…ですよね。
    絶対に手当てが必要なレベルだと思う。
    もっと早くから病院行って欲しかったなぁ。

  3. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    >そして玲の父親が誰かとか、樹山は何であの女性と
    暮らしてるのかとか、葉子の父は上京したにも関わらず
    何故娘に会いに行くより先に嫁ぎ先の姑に面会を?とか
    不可解な事だらけで、しかも全て小出しにしてもったいぶるこの展開!

    引っ張りが多いよね^^;
    少しずつ解けてはいるんだけど、解ければ次の疑問が湧いてくるし。
    まぁ…上手いとも言える^^;

    >見てるこっちも頭が混乱して病院行きになりそうデス←うそぴょん

    まこしゃん、しっかりっっ!
    そういう私も夏バテで病院行きになりそうだにゃん…

  4. 息もできない夏 第4話

    『直接対決!いま襲い掛かる同情という名の悪意』

    内容
    失踪した母・葉子(木村佳乃)から手紙が届き、
    そのことを樹山(江口洋介)に伝えに行った玲(武井咲)
    手紙には、前夫を見

  5. 息もできない夏 第4話

    04「直接対決!いま襲い掛かる同情という名の悪意」7月31日火曜夜10時 谷崎玲(武井咲)は、母・葉子(木村佳乃)から届いた手紙を樹山龍一郎(江口洋介)に見せた。その手紙で葉子…

  6. まゅげ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    すっごいいろんなことが展開してった濃ゆい4話でしたね。

    鮎川が、なぜ、谷崎の苗字を知ってたの??とかいろいろ気になることが山積み・・・・。

    >このドラマ、とりあえず病院行った方が良い人だらけだ……。
    本当にそう。。

    最初、イライラしてたお母さんだけど、今は見てると息がつまる。。
    誰か病院連れてって!!という気持ち。

  7. 息もできない夏 #04

    『直接対決!いま襲い掛かる同情という名の悪意』

  8. まこ より:

    SECRET: 0
    PASS: 07af5b8e07a195e1e93130d7617e5041
    >戸籍があって保険証がある人は、病院に行こう。

    それぞれの立場があるんだろうけど、「何で」と疑問に思う
    言動だらけのこのドラマの登場人物達・・・

    そして玲の父親が誰かとか、樹山は何であの女性と
    暮らしてるのかとか、葉子の父は上京したにも関わらず
    何故娘に会いに行くより先に嫁ぎ先の姑に面会を?とか
    不可解な事だらけで、しかも全て小出しにしてもったいぶるこの展開!

    見てるこっちも頭が混乱して病院行きになりそうデス←うそぴょん[絵文字:i-235]

  9. 息もできない夏 第4話:直接対決!いま襲い掛かる同情という名の悪意

    キャナメ、悪そうな顔や〜!{{{( ▽|||)}}}ぞぉ〜〜〜
    ニヤリ顔がきょわい!

    冒頭というか、前回の終わりに自転車に乗った玲とぶつかるシーンがあったけど、
    とっくに玲の正体を知って…

  10. ドラマ「息もできない夏」 第4話 あらすじ感想「直接対決!いま襲い掛かる同情という名の悪意」

    ついに鮎川と接触してしまった玲。

    その際に母からもらったフランス語の教本の一部分が破れてしまう。

    弁償するという鮎川に、これは母からのプレゼントなのでいいとお互い様だ

  11. ドラマ「息もできない夏」 第4話 あらす…

    ついに鮎川と接触してしまった玲。その際に母からもらったフランス語の教本の一部分が破れてしまう。弁償するという鮎川に、これは母からのプレゼントなのでいいとお互い様だと別れ…

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