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【家族八景】 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad 第7話

「知と欲」

 

芸術家の心の中は屈折している。

満足できる作品を作るためには、常に飢えていなければならないのだった…

 

「家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad」第7話

 

     

 

簡単感想で。

 

火田七瀬は、人の心が読めてしまう能力者である。

今回、七瀬が勤めることになったのは、山崎家。
家族構成は、77歳の旦那様と42歳の長男・洋司さま。

旦那様は有名な脚本家らしい。業界では巨匠と呼ばれているようだ。

山崎家には、最近、テレビ局の女性がよく訪ねてくる。
遠藤恵理さんというその女性が来ると、旦那様は嬉しそうなのだった。

七瀬が人の心を読む時、その人の姿は普段と違うように見える。
この家では、どうやら体操着に見えるようだ。

「こいぶみかぁ さいしょが かんじんだからなぁ」

旦那様は七瀬の視線に気づくと笑顔を作った。

「どうだ」
「おれは このかくどが いちばんかっこいいのだ」

君も山崎潤三郎の名前ぐらいは知っているだろう?
「犬をけしかける少女」くらいは知っているだろう?

名前は聞いたことがあるような・・・。

いいよ。無理に思い出されると悲しくなるから
それも若さなのかなぁ。その物言いとか…。

「わかさ かぁ」
「わかさ と ばかさ」
「ばかさ… おれはもう かけないのか」
「なにも あいであが うかばん」

洋司さまが帰ってくると、旦那様と会話する。
その様子はますます変わって見えた。

最近、あの人、良く来るね。

あの人?

女性で若い人。遠藤さんだっけ。
オヤジにしては珍しいね。同じ担当者がずっと来るなんて。

「すけべじじいめ おれのおやじだな まったく」
「どうだ おれも まだまだ もてる」
「おれのほうが もてるに きまってる」

 

遠藤さんが来ると、旦那様の心はいっぱいになっているようだ。

いや・・・、あれは凄かったなぁ。これくらいの犬がさ。

「どうだ しょうねんっぽいだろう」
「しょうねんのこころを うしなっていないかんじだろう」

「だいじょうぶかしら このひと しなりお かけるのかしら」

一生懸命話しながら、遠藤さんの事を考える旦那様。

「いいなぁ わかいこと はなすのは いいなぁ」
「このこと けっこんして よせいをすごすのも いいなぁ」

「おれが?のんびりくらす?」

「だめだ」
「こんなことじゃ だめだ」
「うえだよ かわきだよ」
「かかないおれなんて くそだ しんだほうが ましだ」
「この かんじょうを しなりおに りようできないのか」

作品に煮詰まっている感じの旦那様を心配する七瀬。

 

夜、旦那様と洋司さまと遠藤さんで鍋を囲んだ。
七瀬もご一緒させていただく。

時間は、ただ真っ直ぐに流れるだけじゃなくてだよ、つまり、過去も未来も現在も、
ただ一点にあるんじゃないかって…。

われわれの欲望も実態がないんじゃないかって…。

一生懸命話す旦那様の話を遠藤も熱心そうに聞く。

山崎先生のその感覚を、シナリオにできたらいいと思います。

そう言いながら、テーブルの下で遠藤と洋司は手をつないでいた。

書けばいいよ。

書けたらね。

そうおっしゃらずにぃ。

 

話を聞いている内に、酒のせいか七瀬はだんだん気分が悪くなってくる。

この2人の感覚、恋愛に似てるんだ。
それで気持ち悪いんだ。

3人の色々な欲望が流れてきて、七瀬は酔ったようになってきた。

「おれのおんなだ」
「このおとこ わたしとねようとしてる」
「わたしが ほしいんでしょ」

「しにたくない」

ちょっと気分が・・・!
すいません・・・

七瀬は立ち上がり、部屋を出た。

あの酔ったような感覚を思い出すと気持ちが悪い。

もし、人の感情を無抵抗に受け入れていたら、私は消えてしまう気がする。

恐い。

 

その夜、洋司さまと遠藤さんが、ベッドを共にしているのを七瀬は見た。

そして、その2人を旦那様が覗いているのも見た。

「ようじめ… ようじめ~」
「これだよ このかわきだ もっと もっと」

旦那様はそれから一晩中机に向かった。

 

「これだ」「この かんじょうの たかまりだ」
「これこそ うえ と よくぼうだ」
「もっとだ もっと」

「にんげんを つきうごかすのは よくぼうなんだ」
「わたしのよくぼうは ほこりをかぶって しまってるだけなんだ」
「ちしきや ぎじゅつが よくぼうのうえに ふりつもって 
かたまってしまったんだ」
「そうだ」「そんなもの けずりとって すててしまえ」

 

あんなオヤジ、何年かぶりに見る。

いつの間にか洋司さんが七瀬の隣で旦那様を嬉しそうに見ていた。

 

俺たち、寝たんだ昨日。

それは、報告してくれなくても知っていた。

どうしてだと思う?

愛し合ってたから?

親父が仕組んだんだよ。
ラブレターを書いて、俺たちがそうするように仕組んだんだよ。

どうして?

おれにも解らないよ。

 

貪り食うように原稿に向かう旦那様。
その様子は鬼気迫っていた。
しかし、喜びに溢れているようにも見えた。

 

必要だったんだ。

欲望にくべる薪のようなものが。

これが芸術家…。
これが芸術に身をささげた人の姿。

何だか神々しくも見える。

 

芸術ってどういう物だか七瀬にはまだ理解不能だけれども…
どんなシナリオが出来上がるのか見たい、と七瀬は密かに思うのだった。

 

・・・例え、その原稿が難解すぎて没だと言われようとも。

 

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

まぁ・・・確かに芸術家は解らない部分が多いかも。

先週も芸術家の話だったが、こっちは息子の覗きなどネチネチとやっているわりには、
意外とサラッと描かれた。

息子も息子で、覗かれている事は了承済み。
性の描き方もやけにオープンなのだった。

ストーリーにあまり毒はなく…
「澱の呪縛」よりも裏表の少ないオープンな父子だ。

息子はオヤジの「飢えと渇き」を作るために協力している…
名プロデューサーだともマネージャーだとも言える。
(せっかくの作品は没だったけど)

 

毒がないので、七瀬も出ていく必要がなく…
これじゃ、次の家に移れませんが。 

 

まぁ、これはドラマオリジナルストーリーなので…
ちょっと色は違うけど、中休み的に軽くて、まぁ…いいのでは~。

本田博太郎さんと、鈴木一真さんが、不思議な父子をユーモラスに演じておられて…
それだけでも見ごたえあったかな。

 


次回(第8話)のゲスト出演者は、黄川田将也、東風万智子、宍戸美和公、佐藤二朗、骨川道夫、
和知大祐、松岡哲永、入月謙一、種子、おのさなえ、池内直樹、勝平ともこ。

(「澱の呪縛」以来の大人数キャスト)

 

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※キャスト

火田七瀬 … 木南晴夏

第7話

山崎 潤三郎 (77) … 本田博太郎
山崎 洋司 (42) … 鈴木一真
遠藤 恵理 (31) … 阿部真里
大藪 満寿夫 (48) … 徳井優

※スタッフ

原作:
脚本:前田司郎
演出:深迫康之

 

 

 

 

コメント

  1. 家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad 第7話 知と欲

    『知と欲』

    内容
    山崎家で働くようになった七瀬(木南晴夏)
    この家では体操着になって見えるようだった。
    主は、“巨匠”と呼ばれる人気脚本家での山崎潤三郎(本田博太郎)で、
    息子・洋司(鈴木一真)と2人暮らし。
    かつてのヒットメーカーも、最近、筆が進まず苦し?…

  2. 家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad TOP

    2012年1月より、毎日放送(MBS)制作・TBS系列の深夜ドラマ枠にて『家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad』(かぞくはっけい ナナセ・テレパシー・ガールズ・バラッド)のタイトルで放送中。木南晴夏は本作が連続ドラマ初主演となる。 原作 『家族八景』(かぞくはっ…

  3. キッド より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    「イヌをけしかける少女」という軽いもじりに
    象徴されるようにいかにも小劇場演劇のりの
    軽いもうひとつ、別の七瀬のエピソード。
    これはこれで楽しかったというしかございませんよね。

    ストーリー的には七瀬がテレパシストである必要は全くなく、
    ある意味、文豪の芸術に対する軽い揶揄ともとれる
    底の浅いカルチャーの匂いが感じられました。
    でも、若い方にも愛されるというのは大切なことですからな。

    こういうふつうの女の子の七瀬も貴重かもしれません。
    この親子の家庭でのほほんと暮らし
    年老いていく七瀬は幸せなのかもしれませんしな・・・。

    とにかく、出演者の濃さはかなりだったので
    それだけで充分に楽しめましたぞ~。

  4. 「家族九景」の乙女(木南晴夏)

    今回はドラマ版のオリジナル脚本である。 次回予告では「亡母渇仰」が放映されるようなのでまたもやシャッフルである。 とにかく・・・全10回なら2話不足だが・・・最後がオリジナルなのか、「芝生は緑」かで大分、印象は変わるな・・・。 まあ、木南晴夏で「七瀬ふたたび…

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