【家族八景】感想 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad 第8話

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「亡母渇仰」

死んでいく人間の断末魔の叫び…

能力がなければ聞こえなかったはずの声を聞いて
自分を呪う七瀬…

「家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad」第8話 感想

【家族八景】感想 Nanase,Telepathy Girl's Ballad

 

 

簡単感想で。

 

火田七瀬は、人の心が読めてしまう能力者である。

今回、七瀬が勤めているのは、清水家。
今日は清水家の大奥様・恒子さんが亡くなり葬儀の日だ。

旦那様である信太郎はずっと泣きっぱなし。恒子さんの一人息子だ。
それを困ったように見る奥様の幸江さん。

「このなみだは いったい いつまでつづくのかしら」
「このひとのからだは ぜんぶ なみだで できているんじゃないのかしら」

参列者の親戚たちも、みんな信太郎の異様なまでの泣き方に注目している。

「すごいこえだなぁ」
「まだ こどもなんだよ」
「もう32でしょ」
「つねこさん むすこには あまいひとだったから」
「よめのさちえさんには きつかったから」
「これで さちえさんも ようやく かいほうされるだろう」

解放されたなんて、とんでもない。
幸江さんが辛いのはこれからだ。

 

「なぜしんだ」
「ぼくを のこして」
「まま まま まま……」
「ぼくを ひとりのこしてしぬなんて ぼくにたいするうらぎりだ」

信太郎のこの嘆きよう。
母親を失って、これから一体どんな生活になるか、七瀬には思いやられるのだった。

 

七瀬はさっきからずっと、葬列者の人ごみの中に奇妙な声を聞いていた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・」

 

誰?誰なの?

しかし、その声は、すぐに信太郎の泣き声と、それを嘲笑する人たちの声に
かき消されてしまう。

 

ひとり息子を溺愛する恒子の、嫁・幸江に対する態度は酷かった。

「ばとうされた にくまれた どなられた」
「きんじょに きこえるぐらいの おおごえで」

 

貴女の看病には真心がこもってないんですよ!
私は寿命が来る前に殺されてしまいますよ。

家の中に人殺しがいるよぉ!

恒子はよくそんな風に幸江を怒鳴った。

「あれだけうらまれて あれだけにくまれて」
「まだ まごころをもてなんて むりよ むりだわ」

「なんで このひとと けっこんしちゃったんだろう」
「れいせいに かんがえれば きづいたはず」
「いえ ちがうわ わたしはだまされたのよ」

恨むなら見抜けなかった自分を恨みなさい。

そう思って、七瀬ははっとする。

私、何様のつもりなの?

恐い、自分が恐い。
神にでもなったつもりでいるの?

やっぱり、私は人里離れたところでひっそりと暮らすべきなんだ。

 

数年前、七瀬はパート先の叔母さん2人を完全に掌握していた。

お客の心を読み、次々と売上を上げていく七瀬を2人は畏怖の目で見ていた。

1人は金もうけのために七瀬を利用しようと考え、もう1人はひたすら恐れた。

 

私は半ば自暴自棄になっていたのかもしれない。
切り立った崖の上に立って、底を覗いているみたいだった。

底に飛び込んでしまいたいような、吸い込まれるような、そんな気持ちだった

私は自分の能力を晒したい欲望に駆られていた。
子どもっぽい欲望。

私の能力を使えば、人を支配できる。
だからこそ、私は傍観者でいなくてはいけない。

 

厨房で、七瀬の身体目当ての伯父さんにしつこく誘われ、七瀬は困った。


あの、辞めるんです。

そうか。だったら家に来なさい。

…家政婦を辞めるんです。

同じ給料で雇ってあげるから家に来なさい。

 

そこへ幸江が入ってきて、七瀬を救ってくれた。

やっぱり何か変な事言われた?
あの人は駄目なの。すごく、しつこいから。

「あのひと ななちゃんにまで ちょっかいだしてたのかしら」
「あんなひとに わかいこがだまされたら たいへん」

幸江は七瀬を心から心配してくれているようだ。

七瀬は、幸江から火葬場までついてきて欲しいと頼まれ、請け負った。
幸江一人では、身も世もなく泣き崩れている信太郎の世話は大変そうだった。

安心したわ…。
家でまともなの…家で話が通じるのは、ななちゃんだけだったから。

心から安心したように笑う幸江。

そう。この家でまともなのは、貴女だけだった。

私はまともなんかじゃない。
だって、私は心の中で貴女の事を馬鹿にしていた。

 

出棺の時も、車に乗り込むときも、七瀬はかすかな変な声と視線を感じ続けた。

そして、火葬場でその声は確実に七瀬を掴んだのだった。

焼き場で棺桶を収め、読経が始まった時、七瀬はハッキリと聞いたのだ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・・」
「どこ ここは どこ…」

まさか・・・そんな事があるはずがない。

「さちえ わたしを いきたまま こんなところへ」

 

七瀬は周囲を見回した。

幸江は、この後も夜まで客や信太郎の世話をする心配ばかりしていた。
信太郎は相変わらず「ママ」を思って泣くばかりだ。
葬列者たちも悼んでいるようだ。

誰かに騙されたんじゃない。
恒子さん、棺桶の中で息を吹き返したんだ!

 

七瀬は焼き場をじっと見る。
この中で今、生きている恒子さんが焼かれようとしている。

「たすけてーー たすけてーー だれかーーーー」

あああ・・・・うるさいうるさいうるさい・・・

お経が終わったら焼かれる。

どうしよう。
何て言えばいい?
言っちゃだめだ。
言ったらばれてしまう、私の能力。

数珠と一緒に両手をぎゅうっと握りしめる・・・

みんな気付いてない。誰か気づいて気づいてくれれば・・・

誰も思わない。
この中で恒子さんが蘇生するなんて。

こんな能力が無ければ私も気づかなかった。

これは事故よ。私には関係ない。私には関係ない!

 

七瀬はたまらずに火葬場を出て駆け出した。

走っても走っても恒子の声が聞こえてくる。

 

お願い許して。恒子さん。許して・・・・・!

こんな力、いらない・・・!いらない・・・!

・・・いらない・・・!

 

灰色の空、色を失くした木々、断末魔の叫び声・・・

 

やがて、頭の中に響き続けていた叫び声は止まり

 

七瀬は声を振り絞って叫ぶ…

声なき叫び…


 

痛みと憎しみの声をあげながら死んでいく人の最期の叫びを聞く七瀬。

聞こえなければ知らずに済む世界を七瀬は今までいくつも見てきた。
しかし、この声は一生忘れられない声だ。

一生、頭に響き続ける叫び。

耳を塞いでも両手を血が出るほど握りしめても消える事はない。

叫んでも叫んでもかき消されない。声は頭の中にあるからだ。

 

叫び続ける恒子と、叫び声から逃げ続ける七瀬と、色のない風景。叫び。

飲み込まれそうな演出が秀逸。
木南さんのラストの表情が秀逸。

 

原作では、七瀬はこれで家政婦を・・・人の近くで声を聞きながら生きる事を辞める。
「家族八景」最後の章。

ドラマでは、あと2話かな…。

ここで終わっても良かった気がするんだけど…。
こんな神回を作った後で、どう続けるのか、別の意味で楽しみ。

次回(第9話)のゲスト出演者は、西村和彦、星野真里、大河内浩、野波麻帆

 

よろしければ→【2012年4月春期ドラマ一覧】ラインナップとキャスト表

 

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※キャスト

火田七瀬 … 木南晴夏

第8話

清水信太郎 (36) … 黄川田将也
清水幸江 (30) … 東風万智子
清水恒子 (55) … 宍戸美和公
清水茂蔵 (50) … 佐藤二朗
飯田幸弘 (35) … 骨川道夫
清水重良 (30) … 和知大祐
葬儀屋 … 松岡哲永
怪しい男 … 入月謙一
里山 … 種子
小森 … おのさなえ
坊主 … 池内直樹
スーパーの客 … 勝平ともこ

※スタッフ

原作:筒井康隆
脚本:前田司郎
演出:藤原知之

 

コメント

  1. 家族八景 最終回

    家族八景も、23日が最終回。
                         JUGEMテーマ:日本のTVドラマ2012年 冬ドラマは軒並み最終回を迎えています。人気シリーズの七瀬3部作のひとつ、家族八景も終っちゃいます。 ◆ 七瀬3部作 :『七瀬ふたたび改版』『エディプス?…

  2. 家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad TOP

    2012年1月24日から同年3月27日まで、毎日放送(MBS)制作・TBS系列の深夜ドラマ枠にて『家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad』(かぞくはっけい ナナセ・テレパシー・ガールズ・バラッド)のタイトルで放送中。木南晴夏は本作が連続ドラマ初主演となる。全10話。 原…

  3. キッド より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつの間にやら
    勧善懲悪に支配されてしまったフィクションの世界。
    「それでも生きていく」的な
    グレーゾーンがなかなか表現しにくいわけでございます。

    深夜でなかったら・・・
    七瀬が恒子を助けてしまいかねない
    ご時世ですからねえ。
    今回・・・原作通りのドラマ化は
    大喝采で迎えたいところです。

    そうでないと悪魔の生存するエリアが
    消滅してしまいますからな。

    「頭蓋の内部いっぱいにがんがん」
    この文章を忠実に再現できるとは・・・
    木南晴夏おそるべし・・・でございましたよねえ。

  4. 早すぎた火葬に沈黙した乙女(木南晴夏)

    原作「家族八景」のクライマックスである。 おいおい、これをここでやっちゃっていいのかよっ・・・と七瀬(木南晴夏)とともに声なき絶叫をあげたわけだが・・・まあ、ドラマ化だからな・・・いろいろあっていいのである。 少なくとも・・・ここまで、実に原作に忠実にAV化…

  5. 家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad 第8話 亡母渇仰

    『亡母渇仰』

    内容
    七瀬(木南晴夏)の勤めていた清水家。
    その女主人・恒子(宍戸美和公)が死んだ。
    葬式で、泣き崩れる息子・信太郎(黄川田将也)
    それを見て呆れる妻・幸江(東風万智子)や、参列者たち。

    七瀬は、そんな状態の家族たちを、ヒゲがついた姿で見え…

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