イタリアの友達に聞いたんだけどさ、労働って罪なんだって。
人は皆罪人で、罪をあがなうために働いているって。だから1分でも早く仕事を終わらせて家に帰る。
何かそれ聞いちゃうと働きたくなくなりますね。
何が幸せか分かんないけどね。
あの、三澄さんはどうして働いてるんですか?
生きるため。
即答っすね。
久部君は?
いや、俺まだ夢とか見つかってないし。
夢なんてそんな大げさなものなくてもいいんじゃない?目標程度で。
給料入ったらあれ買うとか、休みができたらどっか行くとか。
【アンナチュラル】第4話 「誰がために働く」
私は、たぶん、割と働く事が好きだ。
例えば、ただ書けるだけ。打てるだけ。考えるだけ。歩けるだけ。……だとしても、そういう能力がまだ自分にあると解ることが嬉しいし、何よりも、お金が好きだ。
そういう意味でミコトの言う「生きること」に共感する。
「働き方改革」と「ワーキングプア」の狭間。
「社畜」と「仕事愛」の狭間。
やはり、このドラマは、「リーガル・ハイ」に通ずるものがある。(つまり、素晴らしい!)
責任の所在の責任
ミコトの母・夏代が持ってきた案件。
設定が弁護士なのだから、いつか関わってくるとは思っていた。
(まぁ、何のための弁護士設定なのかという話になると、それはミコトの生立ちに関わってくるものだと思うのだけれど)
夏代さんは現在、テレビでも有名な「しあわせの蜂蜜ケーキ」の製造工場で働いていた佐野祐斗さんの遺族の相談に乗っている。
・佐野祐斗さんはバイク事故で3日前に死亡。即死。
・現場にブレーキ痕はなく、居眠り運転の可能性。
・佐野さんは工場の製造責任者として月140時間の残業。
・ところがその残業はタイムカードを切った後の「自主残業」ということになっていて正式な書類には何も残されていない。
・そもそもバイク通勤は禁止されている。
・しかし、残業は常時交通手段がなくなる時間まで行われている。
・1週間前にブレーキの調子が悪くバイク工場で整備を。
・その際、病院にも行っているがCTに異常はなく、検査入院は断った。
残業時間や昼間から連続しての深夜勤務など、例えバイクの整備が悪かろうが、医師の判断が甘かろうが、「会社がブラック」が諸悪の根源だろ……
という話だが、その大残業が正規の書類に記されていなければ無かった事にされてしまうのが大人の世界である。
証拠がない事実は、無かった事実。
これが世の鉄則。
じゃあ、会社の人たちに証人になってもらえば……というのが正しい道だが、「やっと見つけた仕事」に在りついている人たちが多い世界。死者のために会社のご機嫌を損ねたい人間などいない。
佐野さんの遺された家族は妻と子供2人。下は2歳。
生命保険には入っておらず、貯金もなく、バイクの任意保険までもが切れていたという絶望的な状態。
UDIラボに依頼された佐野さんの解剖結果は、「ブラック否定の会社」「ブレーキの整備工場」「検査を断られた医師」の賠償金を払いたくない三銃士への責任の所在を確定する責任重大なものになるのだった。
毎日早朝から深夜まで蜂蜜ケーキがテレビで紹介されて、社長がテレビに出るようになって、製造ラインを止められなくてみんな休めないって……。
と言う妻の可奈子さんに、
仕事だと嘘ついて浮気でもしてたんじゃないですか?
とか言っちゃう工場長の松永。
ごめん。後々、キャラ変されてもね、この一言があるので、私、最後までこの人許せない(苦笑)
汚い大人のやり取りを見てしまった佐野さんの遺児・祐くんは、
あいつら本当のことなんてどうだっていいんだ。
あったことも全部なかったことにされる。
お父さん言ってた。
工場が大変な時だから無理してでも頑張るんだって。
それなのにさ、お父さん、バカみたいだ。
と、すっかりヤサぐれちゃう始末。
解剖検査結果
過労による脳動脈瘤を疑っていたミコトだったが動脈瘤は見つからず。
代りに、動脈の裂け傷が発見される。
つまり外傷外傷ということは。
事故が起きた時の衝撃で、くも膜下出血を起こした。
病死ではなく事故死!
事故死!
そうなんだけど…。
ど?
時期がおかしい。
つまり、その傷はも死亡事故の時に出来た傷ではないというのである。
周辺の組織の再生具合からみて、30日前くらい。
30日前に裂けた動脈がそれからずっと、例えるなら皮一枚でつながってるような状態だったんです。
その動脈がついに破裂してくも膜下出血を起こしたのが運転中だった、それが先日の事故の真相です。
CTには写らないので病院側の責任は問えません。
また事故の前の損傷なのでバイク屋は無関係です。
問題は椎骨動脈の損傷の原因が何なのか、そして亡くなる30日前に一体何があったのかということです。
無給残業に対する匿名密告はあったものの問い詰めてる最中に工場長は倒れてしまうし、証拠は出てこないまま。
一番残業してたの工場長なんですって。
去年から時間外労働の取り締まりが厳しくなったでしょ。
でも残業しなきゃ注文に追いつかない。
それで退勤後のサービス残業が始まった。
それが何カ月も続いて出荷制限をかけるか作業工程を減らすよう社長にじか談判したらしいんだけど…。
当然、受け入れない社長である。
残業は強制ではない。しかし「嫌なら辞めてもらっても構いません」。工場長は社長から指示されて動いていただけの哀しき管理職キャラへと移行。
30日前の真相
30日前、佐野さんは「転んだ」と言って血だらけで帰宅した。
奥さんは病院へ行ってほしいと言ったが、佐野さんは行かなかった。
その日は西武蔵野市で花火大会が行われていて、社長は自分のパーティピーポーを満足させるために「しあわせの蜂蜜ケーキ」を大至急1ダース持って来いとムチャ振りをしてきたわけ。
15連勤で疲れ果てていた佐野さんは配達を引き受けた。
「バイクで行く」と、はっきり社長に言って。
つまり「社長の命令による業務」であり「バイクは許可されていた」のであり「超過勤務の過労による事故」という死亡原因がシッカリと証明できたのだった。
決め手になったのは事故時にバイクに付着したカラーと、滑って転倒したマンホールのカラーの一致。
マンホールカードなんてものがあるんだねぇ。
汚い大人に心を潰されて店に石を投げてしまった祐くんを見たミコトのひと言。
あったことをなかったことにする。
そんな大人の姿を見せられたら、子供は石を投げるしかないですよ。
が響いたらしい工場長はついにラインをストップさせる。
今日明日を休みにして、明後日から再開する。
連続勤務が続いている者は帰って休んでくれ。
何をしてる!?
ラインが止まってるじゃないか!
今日の分の出荷はどうするんだ。
仕事に対するプライドはないのか!
工場長、あなたにプライドはないのか!
あるよ!
プライドならあんたよりある!
商品に愛情だってある!だけどね!
人を死なせてまでやることなのか?
工場長に直接社長が指示するような会社だもの。
小さいんでしょ。
パーティなんかやってないで社長自らが工場のラインに立って、従業員よりも必死に働く後姿を見せておけば……
無給残業でも、この人のために頑張ろうと思える こはぜ屋になれるのに(ぃゃ、※無給残業は違法です)
誰がために働く
家族があれば、家族のために人は働くのだろうけれども、それだけでは働き蜂のようになってしまうから。
人は「社会の役に立っている」「この仕事と会社と仲間を愛している」だから働くのだと考えたい。
けれども、働きすぎて死んでしまった時、社会も会社も仲間も何もしてくれなかったりする。
何も考えていない象徴のように映される「頑張っている佐野さん」のシーンと社長の馬鹿パーティの被せ描写。
死んだ後に悲しむのも困るのも家族だけ。
過労死は闇だよ。
やりがい搾取の闇だよ。
賠償金が取れても死んだ人は帰ってこない。
解剖は真実を語る。
口も真実を語れるのよね。
正しい事をきちんと言える、言っても仕事を奪われない社会であってほしい。
ワーキングプアの実情
ツイッター実況でつぶやいた事に対してリプライを頂戴したので、お答えついでに書かせていただきます。
この人、たぶん、休みが取れていても病院に行かなかっただろうなって気がする。「尽くし型」で働いている人ほど自分を大事にしない。所得が低くても社会の一員であることに満足してしまう。何かのせいって言いづらい環境を自分で作ってしまう #アンナチュラル
— くう@ドラマ実況アカ (@kukucooo) 2018年2月2日
これに対して「今日のドラマと論点がずれているのではないか」というようなリプを頂いたのだけれど。
恐らく、「これじゃ佐野さんが悪いみたいじゃないの!?」と不満に思われたのだろうけれども、「誰が悪いのか」という話だったら当然この会社が悪い。という前提の上でのツイートだということはお断りしておきますね。
このツイは、佐野さんが転倒して血だらけになって帰ってきて、奥さんと、
居眠り運転じゃないよね?
平気平気。
そんなことよりおなかすいたよ。
病院行った方がいいんじゃない?
大丈夫だよ。
というやり取りが出た時につぶやいた感想だ。
もちろん、「仕事が忙しくて休めない」ということはあるだろうが、この仕事は会社が人を増やせば代りは作れる業務内容だと思われる。
けれども、働いている人は「私が居なきゃ!」と思ってしまう。
人間は誰でも「自分の代りは簡単に見つかる」なんて思いたくない。必要とされる自分でいたい。こういう会社は従業員のそういう気持ちを上手く利用する。
「いつでも辞めたら?」なんていう社長に人徳なんてあるわけないし、ここの従業員が何に対して「やりがい搾取」されているのかというと、工場長が言っていた商品へのプライドと愛情だったのだろう。
「蜂蜜ケーキを手にするみんなの笑顔のために」やりがいを持ち、なのに働いても働いても給料は増えなくて、バイクの任意保険も更新せず、生命保険にもお金が回らない始末。
こういう形で貧しくなるのが一番理不尽。
そして人間は生活が貧しくなると、まず身なりに気を配る余裕が無くなり、そして健康に気を配る余裕が無くなる。
私が「もし休みがあっても病院行かなかっただろうな」と、ついつぶやいたのはこの観点からの話。
生活費に余裕があれば、ちょっと具合が悪いと病院行こうかという気持ちになるんだよね。
反対に余裕が無ければ、なるべく行かずに済ませようとしてしまう。
佐野さんたちは、もっと何とか出来たのに現状を受け入れてしまっていた。
私は、こういう企業で残業は絶対悪だとは思っていない。残業代も生活費の一部と当て込んで積極的に稼いでいる人だってたくさんいるからだ。
残業代が無くなったら給料が安くなって生活がままならなくなる人は世の中にたくさんいる。
だから、残業はしたければすればいい。でも無給残業だけは駄目。無給残業が当たり前の会社を当たり前にしては駄目。
月140時間もの、交通手段が無くなるほどの深夜残業、ウチの県の最低時給で換算しても13万以上になる。
恐らく、給料があと13万も高ければ、佐野さんは病院にも行く気になったし生命保険にも入っていただろう。(単なる換算です。労基法ではひと月45時間以上の残業は違反である。)
もちろん、全てIFだけれど。
とりあえず、佐野さんの死は無駄にはならなかった。
この事故のおかげで、みんなが立ち上がる機会が出来たから。
もちろん、140時間もの残業は有りえないから、ケチらずもっと人を増やせばいいよね。夜中に働きたい人だって、たくさんいるのである。
でも、この件で「しあわせの蜂蜜ケーキ」は、もう駄目だろうなぁ。
そうなると、従業員の今後が心配でもあるよね。やっぱり理不尽な話。
裁きを受けろ
さて……
この週のテーマと登場人物のバックボーンが上手く絡まっているのもこのドラマの凄いところ。
「クソが!」の中堂さんには、殺害された自分の恋人を解剖した過去があった。
8年前、一人の女性が殺されました。
そのご遺体は日彰医大の法医学教室に運ばれました。
「被害者は身元不明」「スクラップ置き場に捨てられていました」
その日当番だった中堂さんはそのご遺体を解剖した。
何も言わずに。
何も言わずに?
法医学者としては当然の行為です。ご遺体は毎日のようにやってくる。
でもそのご遺体は…
中堂さんの恋人だった。
運ばれてきた恋人の他殺体を彼は何も言わずに解剖したんです。
捨てられていた女の遺体……ということは。
当然、性暴力の検査もしたわけで。
中堂さんの胸の内を考えると震える。
震えるほど恐い映像だった。
……このことで、中堂さんは何をしているのか。何を疑われているのか。
辛い過去が出てきそう。
ある日、ミコト(石原さとみ)の母:夏代(薬師丸ひろ子)が、バイクで交通事故死した佐野(坪倉由幸)の解剖をUDIに依頼する。不可解な死を遂げた佐野は妻と子供二人がいたが、バイクの任意保険が切れていたうえに生命保険にも入っていなかった。夏代は死因を究明し、子供たちのために賠償責任を問うことを妻の可奈子(戸田菜穂)に提案する。
一方、佐野を解剖したミコトたちは、佐野の意外な死因を発見することに・・・。
さらに、UDIに『お前のしたことは消えない、裁きを受けろ』と書かれた脅迫状が届く。中堂(井浦新)は自分に宛てられたものだと言うが…。
裁きを受けるのは一体だれなのか!?
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
※キャスト
三澄ミコト … 石原さとみ
中堂 系 … 井浦新
久部六郎 … 窪田正孝
東海林 夕子 … 市川実日子
神倉保夫 … 松重豊
坂本 誠 … 飯尾和樹
末次康介 … 池田鉄洋
木林南雲 … 竜星涼
三澄夏代 … 薬師丸ひろ子
三澄秋彦 … 小笠原海
関谷聡史 … 福士誠治
宍戸理一 … 北村有起哉
毛利忠治 … 大倉孝二
向島 進 … 吉田ウーロン太
松村沙友理
※スタッフ
脚本 … 野木亜紀子
演出 … 塚原あゆ子、竹村謙太郎、村尾嘉昭
プロデュース … 新井順子、植田博樹
主題歌 … 米津玄師「Lemon」
音楽 … 得田真裕
コメント
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