友達を作る場所か。
それは面白い。
ならば、なぜそなたたちは私を無視したりして冷遇するのだ。
私はそなたらと友達になる必要はないが、そなたらの言っていることは
矛盾だらけで意味不明だ。
なぞの転校生 第8話
D12世界の紫外線はD8世界よりも遥かに強い。
面倒だな。
と言いながら、典夫に日焼け止めを塗らせる姫。
はい。これから転校生を紹介します。
大谷先生の声と共に前に現れたのは典夫…。
なんだよ、あいつ…もう1回転校してきたのかよ。
馬鹿にしたように笑う健次郎。
あっけにとられる広一…。
…が、当然、転校生は典夫ではなかった。
典夫の隣にピッタリと付く背の小さい女子。
僕のいとこです。よろしくお願いします。
大谷先生が護衛のように側にいる典夫を席に着かせる。
はい。じゃあ、自己紹介をお願いします。
先生にそう言われて、微笑みながら前列の男子を指し示す転校生。
えっ?
お名前は?
な…中村友也です。
続けて、隣りの女子……慌てて止める大谷先生。
「自分の」自己紹介をしろと言われて、転校生は不思議そうにほほ笑んだ。
九条アスカと申します。
不思議な転校生・アスカは、自己紹介の場からみんなの注目を必要以上に浴びた。
注目というよりも、嫌悪感…。
無言で人を指し示し、名乗らせようとした。
最前列…よりも前の黒板の横に1つだけ置いてある机に勝手に座る。
エスコートされるように典夫とずっと腕を組んでいる。
授業に文句を付ける…。
あの者は何を説明しておる?
波動についての初歩的な説明です。
説明などなくてもここに式が書いてあるではないか。
ここの者たちは式を見ただけでは理解できないのです。
不便な者たちだ。
古文の時間に、みどりに質問してきた。
そなたは 『源氏物語』を読んだことはあるのか?
いいえ。
全文を読まずしてこんなわずかな一節だけを学習して何か意味があるのか?
今は『源氏物語』がどういうものかを習ってるの。
まずは読めばいい。
そして興味があったら自分の好きなようにあれこれ調べてもっと楽しみたかったら
また読めばいいのだ。
そんな時間ないよ。
私たち受験のために勉強してるんだもん。
受験が関係なかったら『源氏物語』なんて勉強しないし。
言葉づかいもおかしい。偉そうだ。
元より「変わり者」の典夫のいとこだ。
クラス中にすぐに「シカトしますか?」という空気が出来た。
いじめとかよくないよ。
みどりは言う。
けれども、仲良く出来そうもないという意見には反論できない。
典夫がピッタリと彼女に張り付いているのも、みどりにとっては気になる事だ。
豚のようによく食べる。
席を寄せ合って弁当を食べる生徒たちを見て、姫は驚いていた。
この世界はそんなに食料が余っているのか?
世界的には飢餓に苦しむ国も多くあります。
世界を学ぶべき場所がこれではな…。
想像していたものとはだいぶ違った。
「学校」について、姫の期待していた物と現実はだいぶ違ったようだ。
箱のような校舎を見上げて彼女はぼやく。
見よ。この建物のありようを。
まるで家畜を飼育する施設のようではないか。
なんとも息苦しい。
きっと良いところもあるのでしょう。
良いところ?
わかりませんが…ただ、皆、楽しそうです。
いかなる環境であっても子供たちは楽しそうにしておるものだ。
子供たちは戦場でも遊び場を見つけるものだ。
はい。
…うん…負け犬の遠吠えだな。
我らの世界は滅んだのだ。
我らが愚かであったがゆえに。
何とか上手くやっているこの世界の者たちを我らが批判すること自体、
愚の骨頂ではないのか。
昼休みが終わって教室へ戻ると、みんな典夫と姫の方を全く見ようとしない。
みんなでキミたちのことシカトしてるんだよ。
説明する広一。
このままだとクラスで孤立すると…。
このクラスで孤立する…。それがどうした?
人間はそもそも孤立した存在ではないか。
目を丸くして姫を見る広一。
それでいいのだ。
ここに来る前にある程度の勉強もしたが、そなたらは同じコロニーの中で「家族」という
単位で孤立して生きている。
他人同士は会話をしないのがそなたらの社会であろう。
そなたらもこのクラスで授業中に会話などしないだろう。
それでいいのではないか?
学校は友達を作る場所だから。
みどりが抑揚なく反論する。
友達をつくる場所?学校が?
ここは勉強する場所ではないのか。
それだけじゃないわ。
友達を作る場所か。
それは面白い。
ならば、なぜそなたたちは私を無視したりして冷遇するのだ。
私はそなたらと友達になる必要はないが、そなたらの言っていることは
矛盾だらけで意味不明だ。
まぁよい。教師が来た。さぁ、教師よ。授業を始めよ。
間もなく、典夫はD8世界からの生存信号を受け、姫と共に突然帰ってしまう。
祖母が危篤でこれから大きな手術をするのです。
ますますあっけにとられるクラスメイト…。
そんな自由な転校生たちに教室中が不満を持つ中、みどりは2人の祖母の手術を心配する。
広一にとってはどうでもいい事だった。
そんな事よりも、隣りの家がおかしすぎる事の方が気になる。
江原の爺さんが殺されそうに見えた事の方が気になる。
自分が拉致されかけた事の方が気になる。
山沢が初めて学校に来た日、自己紹介で何て言ったか覚えてる?
えっ?何か言った?
「こっちの世界のことを色々教えてくれ」って言ったんだ。
…こっちの世界って何だよ?
じゃ、あいつはどの世界から来たんだよ?えっ?
さあ…何か言い間違えたんじゃない?
今日、九条さんはこんなことを言ってた。
「ここに来る前にある程度の勉強はした」って。
つまり、それはどこからか来たってことだろ。
転校生だもん。当たり前じゃない。
問題はどこから来たのかってことだよ。
あいつらは宇宙人じゃないのかな…。
みどりにはSF好きの「ムーくん」の戯言にしか思えない。
しかし、広一には妙な確信があった。
だって…
夢に出てくる妹は、アスカにそっくりだったから…。
そのアスカは、その日、広一の家に突然やってきた。
父が広一の亡くなった妹の話をすると、妹と同じ年だと言う。
同学年なのにおかしいじゃないかと言うと、やっぱり17歳だと言う。
外国から来たと言う。
「カナ…カナダ…ってある?バンクーバーってある?そこです。」
言っている事はおかしすぎるが、態度は「アスカ姫」のようではなく、可愛かった。
キャラが全然違う!
笑う広一。
広一は夢の中の成長した妹がアスカにそっくりだという話をした。
私たち運命の出会いだったりして。
さぁ…どうだろう?わかんないけど…。
私には許婚がいたの。
ナギサっていうの。
許婚?
でも死んじゃった。
病気?
戦争。
戦争?
ゴリアドの紛争…知らないよね。
カナダの前にいたの?
カナダは嘘。ゴリアドにいたの。
ゴリアドってどこ?
どこだろう?JPの…ちょうど…ここらへん?
JP?
旧日本よ。
え? 旧……?
じいっ…っと、広一を見つめていたアスカが、パッと距離を置く。
冗談よ!
SF好きなんでしょ?SF風にしゃべってみました!
その頃…。
隣りの江原家では王妃の手術が行われている。
D8世界から生存者がDRSのデータを持ってきてくれたのだ。
屋上にゾーンを開き、飛びこむようにやって来たソノダツトムと名乗る青年は、
ちょうど高校生くらい。
薄汚れて傷だらけで疲れ果て…ボロボロだった。
政府が遺伝子操作で量産した天才的な頭脳を持った子供…。
その秘密組織のメンバーだというツトム。
ツトムは疲れ果てていたが、王妃の手術を急がなければならなかった。
疲れをねぎらってやる間もなかった。
…すまない。…どうにも歩くのが億劫なんだ。
僕はここで待たせてもらうことはできないかい?
と、ツトムは屋上に仰向けに倒れた。
わかった。
何かあったら聞きにくるよ。
典夫はデータを受け取って、屋上の出入り口に急ぐ。
よく晴れていた。
夕暮れ間近か。
グレーやピンクの雲が線状に浮かぶ青い空。
…これがD12世界か…。
空がきれいだな。
…星も見えるのかい?
ツトムの声を背中に聞いて、典夫は一瞬振り返り…そのまま無言で下へ降りて行った。
※※※
ツトムがD12世界の星空を見ることはなかった。
それでも、この世界で青い空を見られた事…青い空の下で死んだこと。
それは彼にとって幸せだったのかも知れない。
ヒューマノイドがデータを同期して「手術」する。
まるでゲームみたい。
いつか…いつかこの世界でも、こんなに医療技術が発展する日が来るだろうか。
けれども、それと同時に青い空さえ破壊する戦争もやってくるのだね…。
もう大よそ解ってはいたけれども、典夫はヒューマノイドだった。
感情が何処にあるのかよく解らない奏多くんの演技が凄い。
けれども、彼にとって姫を愛する気持ちはプログラム以上の物に見える。
モノリスは、すでに数が足らず、王妃の手術さえ完全ではない。
アゼガミもスズシロもプロメテウスの火を見たと言う。
そして、姫も。
みんな、この地で死んでしまうんだ。
主人たちが居なくなった後、自分の世界から遠く離れたこの地で、ヒューマノイドは
涙を流すのだろうか。
姫モード全開のアスカは確かに団体生活に馴染まないけれども、アスカの目に映る
この世界の教室の異様さもよく理解できる。
「友達」を作ると言えば聞こえはいいけれども、みんな同じじゃなければ安心できない、
皆が同じ方向を向かなければ外される。
それは「友達」ではない。
典夫はそんな世界を「楽しそうだ」と言う。
ヒューマノイドである彼には、みんな一緒である事が楽しそうに映るのかもしれない。
1人だけが違う者である孤独がそこに見えるような気がする。
アスカの自由さは、固まった教室の中では清々しくさえ見えてしまう。
お姫様な杉咲花ちゃんは高貴な雰囲気が今までのどんな役よりも合っている。
「ナギサ」を自分の物にしたい姫がいて…みどりを好きな広一がいて…。
みどりは邪魔者として排除される事にはならないだろうか。
みどりの位置づけがD8世界でどうなっているのか…それが知りたい。
※7話の記事を上げられないまま週が回ってしまって。
後で追記する予定……ではあります。
あと、コメントレス、遅れています。すいません。
岩田広一(中村蒼)のクラスに山沢典夫(本郷奏多)のいとこ・アスカ(杉咲花)が
転校生としてやってくる。
女王様のような振る舞いのアスカに反発するクラスメートは、典夫とアスカを
無視することに。
そんな中、典夫は王妃のDNAを修復できるデータを取りに行くため、広一にアスカの
ことを頼む。
アスカは広一の家に泊まることになるが、家で見せるアスカの明るい様子に広一は戸惑う。
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
よろしければ→【2014年1月期・冬クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表
※キャスト
岩田広一 … 中村蒼
なぞの少年 … 本郷奏多
香川みどり … 桜井美南
江原正三 … ミッキー・カーチス
大谷先生 … 京野ことみ
岩田君子 … 濱田マリ
岩田亨 … 高野浩幸
大森健次郎 … 宮里駿
春日愛 … 宇野愛海
鈴木拓郎 … 戸塚純貴
太田くみ … 椎名琴音
小川玲子 … 福地亜紗美
和田えみか … 岩崎優里菜
戸塚肇 … 川籠石駿平
丸山隼人 … 黒木辰哉
鎌仲才蔵 … 葉山奨之
冴木小次郎 … 碓井将大
咲和子 … 樋井明日香
前川克也 … 芹澤興人
岩田あすか … 立川杏湖
伊達坂医師 … 並樹史朗
坂井銀次 … 金山一彦
鎌仲龍三郎 … 河原さぶ
笹井常務 … 野口雅弘
受付嬢 … 皆川舞
王女 … 杉咲花
王妃 … りりィ
なぞの男 … 中野裕太
なぞの女 … 佐藤乃莉
みどりの姉 … 市川沙谷香
高校の警備員 … 清水洋介
体育・二階堂先生 … 加藤玲子
寺岡理事長 … 斉木しげる
※スタッフ
企画プロデュース・脚本 … 岩井俊二
監督 … 長澤雅彦
音楽 … 桑原まこ
原作 … 「なぞの転校生」眉村卓
主題歌 … 「今かわるとき」桜井美南・ED「DREAM」清水翔太
公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/nazono_tenkosei/
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コメント
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レスが劇遅で申し訳ありません(>_<)
Re: 隠れ常連さん
>ソノダツトム君 泣けました。満天の夜空、見せてあげたかったです。
ですよね(;_:)
このドラマで戦争で傷ついた人たちはそれでも王家や世界のために戦っていて、平和ボケの
戦争を描いている他の…Nh…のドラマよりも遥かに真に迫っています。
>しかし、もっとも哀しいのはモノリオですね。王家の側近は指示するだけで役に立ちそうもない。
どうにもできないですからね。
やはり彼が一番人間らしいと感じます。
Re: 紫花浜匙さん
>そなたらの言っていることは
矛盾だらけで意味不明だ。
には完敗。
豚の様に食べてるには、ぐうの音も出ませんーー;。
全くだわ…。
他の世界から見たら、なんて滑稽なんだろうね。私たちの世界は。
死ぬか生きるかの中を生き抜こうとしている人たちがいるのにさ…平和だよ。ほんと。
ミッキーカーチスに受賞するの忘れた!!@@;;
SECRET: 0
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更に段々面白くなって来ました。
そなたらの言っていることは
矛盾だらけで意味不明だ。
には完敗。
豚の様に食べてるには、ぐうの音も出ませんーー;。
食べられない世界もあるのにね。
何を学んでるんだろう、私達は。
岩井俊二さん、やっぱり凄いよ。
何所となく古くさ〜い昭和くさ〜い感じが漂ってるのも憎めない。
ミッキーカーチスにも、くうさん、是非とも賞をやってあげて下さい。
なぞの転校生 各話あらすじ
#01 2014.01.10 放送 高校2年の岩田広一(中村蒼)は、幼馴染で同級生の香川みどり(桜井美南)と不思議な流れ星を見る。 その夜、広一は隣に住む一人暮らしの江原正三(ミッキー・カーチス)から「部屋に見知らぬ誰かが何人もいる」など奇妙なことを言われ戸惑う。翌日体…
異次元よりの使者と第二のなぞの転校生はじめての登校そして幻の妹の余命宣告(杉咲花)
次から次へと繰り出されるSFジュヴナイル的官能の宴。 妄想を好むものには限りない恩恵が与えられ、そうでない人にはなんのこっちゃの連続。 仕方ないのだ・・・体育館よりも図書館に棲息するもののための祭典なのである。 受験に必要な知識にはなじめないのに妙なことに興味を持つもののための副読本なのだ。 まさに
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こんにちは
もう8回なんですね。このままで話をまとめられるのか?
と思ったら、全部で12回らしいですね。もうしばらく楽しめそうです。
D8世界の人間は、すごく哀しいですね。まるで掌の蝶のようです。掌の上でかすかに羽ばたくだけで、もう二度と空に羽ばたくことはできない。夢の中に出てきた蝶のように滅びるのを待つしかない人々。
お兄ちゃんは蝶が見えちゃだめ・・・あの夢はそんな世界に巻き込まれないでという妹からの啓示だったのでしょうか。
ソノダツトム君 泣けました。満天の夜空、見せてあげたかったです。
しかし、もっとも哀しいのはモノリオですね。王家の側近は指示するだけで役に立ちそうもない。頼みのモノリスはなくなってしまった。見ている方が息苦しくなりそうな展開で、孤軍奮闘しなければならない。
次回を見るのが、少し辛いです。
なぞの転校生 (第8話・2/28) 感想
テレビ東京ドラマ24『なぞの転校生』(公式)
第8話『もうひとりの転校生~眉村卓の傑作SFを岩井俊二がドラマ化』の感想。
なお、眉村卓氏の原作小説は40年近く前に既読。また、NHK『少年ドラマシリーズ』版(1975年放送)も鑑賞済み。
広一(中村蒼)のクラスに典夫(本郷奏多)のいとこ・アスカ(杉咲花)が転校生としてやって来る。女王のような振る舞いのアスカに反発するクラス…