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【なぞの転校生】 第2話 感想

空を見ろ。

満天の星空だ。

満天の星空だ。

なんて美しいんだ…この世界は。

 

なぞの転校生 第2話

  なぞの転校生

 

隣りの江原さんの認知症は進んでいるらしい。
高校生である広一に、どこか相談窓口へ連絡しろという両親。

いや、俺がすんの?
そういうのは大人がするもんだろ。
俺はまだ子供だぜ!

何が「子供だぜ!」だ。
お前、小学生か!

 

草野球の助っ人も頼まれている。
高校生だってそれなりに忙しいんだ。
広一は頼まれると断れない。
断れない事はそれなりに気にはなる。

 

外へ出ると、隣室のドアの前に若い男が立っていた。

 

こんにちは。
あの…江原さんちのご関係ですか?

え?江原さん?

 

男は何だかカクカクと首を動かしている。
正面をジッと見据えている。
キョロキョロしているのとはまた何か違う…。

 

あの……この家のおじいちゃん。

あ~。

 

広一の問いに対する受け答えも何か変だ。
妙に間がある。

それに…広一の事を一切見ない。

 

あの… 福祉の方ですか?

あなたは誰ですか?

質問返し。

 

僕は隣の人間です。

人間なのは見てわかります!

怒ったように言われてちょっと引く広一。

 

隣に住んでいる方ですか。

はい。岩田といいます。
おじいちゃんのことが心配で。認知症なんでしょ?

認知症?

 

江原さんの事を知らない人なのかな…。

 

あの… おじいちゃんとはどういうご関係で?
あ…!ひょっとして借金取り?

ちょっと間が開いて…
男は突然ちょっと笑みを浮かべた。

孫です!
山沢典夫です。はじめまして。

あ… はじめまして…。

 

孫が来たなら安心だ。
認知症の相談窓口を調べたり連絡したり、もう広一の仕事ではなくなった。
ちょっと解放感。

 

起動して間もないので2時間くらいで全てのファイルのインストールが終わります。その間はあまり動いてはいけないことになっています。動作が不完全になりますし喋ってはいけない話をうっかり喋ったりしてしまうこともあったりすることもあります。ホントは数時間の安静が必要なんですが僕にはあまり時間がないのです。

山沢典夫は突然、あさっての方向を見ながらベラベラ喋り出した。
相変わらず首がカクカク動いている。

ギョッとする広一。

誰としゃべってるんですか?

あなたですよ。

僕ですか?

そうですよ。

あ、そうですか…。

えっ、何ですか?

ちょっと難しい話だったので僕に話してるんじゃないのかなと思って。

あなた以外に誰がいるんですか?

あっ、ケータイでしゃべってる?

あなた以外に誰がいるんですか?

 

何だか会話が成り立たない。

広一は草野球に向かった。

 

インストール、まだかかりそうだな。

山沢典夫は街を歩いていた。

色とりどりの花に惹かれて花屋へ入る。

 

これは本物の花ですか?

もちろんですよ。

店員の女の子が笑って花を見繕ってくれた。
広一の友達のみどり。

ピンクの薔薇、カーネーション、白いガーベラ……。

 

お金は持っていません。

えっ?

なので結構です。

あ…はい。

ご迷惑をおかけしました。

あ…いえいえいいんですよ。お花、好きなんですね。

初めて見ました。

えっ?どれを?

花をです。
本物の花は初めてです。

 

みどりはガーベラを1本、彼に渡した。

ひとつどうぞ。差し上げます。

ありがとう。

 

人数が集まらないまま始めた草野球の試合。
広一は野球が得意ではない。

気づいたらグラウンドの真ん中を白い花を持った男が歩いていた。
山沢典夫だ。

慌ててベンチに典夫を引っ張る広一。

 

ミサイルではないようだが…。

えっ?

何をしているんだ?

野球です。

野球…。

はい。

なるほど。楽しそうだね。

 

草野球の参加は自由…ということで、みんなは典夫を引っ張り込もうとする。
9人目の救世主。

キミの友達か知り合い?

友達っていうか…。
何してるんでしたっけ?借金取りでしたっけ?

孫です。

あっ、孫か。…お隣のおじいさんちのお孫さんです。

野球経験は?

ありません。

ないんじゃん!
マジかよ。

ですがルールは解ります。ボールを打ち返せばいいんですよね。
この先の丸いところで。

えっ、そこ?
逆、逆、逆…!

 

バットを逆に持とうとする…本当にルールが解るのか

しかし……

 

彼が打ったボールは青い空に上がって飛んで行った。遠くへ。遠くへ。

 

おい!突っ立ってねえでベースを回るんだよ!
ベース!

ああわかった。

俺についてきて。

 

広一が手を引いてベースを回る…子どもか年寄りを連れて歩くように。

 

2点を取ってチームは大喜び。

なぜキミは喜んでいるんだ?

真剣な顔で大森に訊ねる典夫。

 

野球というものは難しい。
喜んでいる者も悔しがっている者もいた。
いったい何がしたいゲームなんだ?

並んで土手を歩きながら、やっぱり変わってると広一は思う。

悔しい思いをするなら始めからやらなければいいのに。

勝ったら嬉しいからでしょ。

勝ったら嬉しい?
自分さえ勝てれば相手はどうなってもいいのか?

負けたら頑張って次勝てばいいのでは?

そんなことをしていたらどんどんエスカレートして最後には戦争だ。

戦争? 極端ですよ。それは。

 

典夫は隣の部屋に引っ越してきたのだと言う。「孫だから」。

変わった隣人だが、認知症の江原さんにとっては良い事だ。
広一ももう心配せずに済む。

変わった奴だが悪くはなさそうだ。
しかも、広一と同じ、17歳だという。

 

で、学校はどこ行くの?

学校?学校があるのか?

えっ、まだ決まってないの?
俺は東西山高校ってところに通ってて、家からは結構近い。

東西山高校。
そこには女子も通えるのか?

もちろん。共学だから。
どうして…えっ?まさか、キミ、女の子?

僕に男も女もないが。

 

言う事がいちいち解らないが…「姫」を学校に行かせてあげたいと言う典夫。

姫は学校に行ったことがないから。

姫?

教えてくれてありがとう。
僕もそこに行くことにするよ。

 

転校のためには試験があるだろう。
突然の転校はムリだろう。
「姫」ってなんだ…。
変わったスマホで学校の事を調べてる。
「モノリス」というメーカーの物らしい。

典夫という謎の男が時々フラついたり首をガクガクしたり変わった事を言い出すのを
広一はただ見ていた。

 

突然ピタッと止まる典夫。

あっ、インストールが完了する。…あ…した…。

 

典夫は初めて広一の顔を真っ直ぐ見た。
笑顔を向ける。

「普通」の人間になったみたいに。笑う。

 

ごめん。
なんか僕、変なこと口走ってなかったかい?

え…ああ…まあ…。

ごめん!全部忘れて。

全部って…何をどこまで?

まあいいや。

 

典夫は広一に右手を差し出した。

 

山沢典夫です。岩田広一くんだね?はじめまして。
これからもよろしく。

 

 ※※※

 

山沢典夫が、たぶん初めて見る地球。初めて見る世界。

初めて見る空。街、車、花……

白いガーベラ。

『リリィ・シュシュ』に映し出された世界だ。美しい。なんて繊細な美しさ。
地球って、日本って、こんなに美しかったか

典夫の目線で見る世界は、私が初めて岩井俊二の世界を見て感動した美しさだった。

現実ではないようなピュアすぎる美しさ…

こんな世界がこんな風に美しく見えるなんて…
典夫が知っている世界は、一体どんなに酷い所なんだろう。

そう考えただけで悲しくなる。

 

インストール中の典夫の焦点が合わない目の動き。
中身が空っぽの様子。
チカチカチカチカ…目が光る。赤く白く。

本郷奏多くんの滑稽な演技が面白い。素晴らしい。やっぱり上手いね。

 

「孫」になるのは簡単だった。
江原さんの洗脳。

転校するのも簡単だった。

「孫」の転校のために、足取り軽く出かけていく江原さん。

 

帰り道。
真っ暗な空に満天の輝く星。

典夫は、江原さんの目を通して、部屋から同じ風景を見る。

宙に浮くモノリス。
部屋中に点滅する赤い光。

 

空を見ろ。

部屋から命令する。
江原さんが空を仰ぐ。

満天の星空だ。

満天の星空だ。
なんて美しいんだ この世界は。

 

なんて美しいんだ この世界は。

 

ポケットに手を突っ込んで夜道を闊歩するじいさん。
スキップしそうなほど軽く軽く飛ぶ…。

白い星が空いっぱいに光る中。

ただ、おじいさんが歩いたり笑ったり軽やかに走っている…それだけのこの映像に

ものすごく感動した。

 

こうして、山沢典夫は転校生になった。

こんなに簡単に洗脳できるという事は、侵略も簡単に出来るわけで…。

けれども、こんなにこの世界を美しいと思ってくれる人がここに住んだ方が、
世界を大切にしてくれそうだとも思うわけで…。

そんな風に思ってしまえるほどのこの映像力に、たぶん自分ももう洗脳されているんだろうなぁ。

 


ある朝、家を出た岩田広一(中村蒼)は隣の家から出てくる青年と出会う。
青年は江原正三(ミッキー・カーチス)の孫の山沢典夫(本郷奏多)と名乗り、
隣に引っ越してきたという。
二人はエレベーターに乗り合わせるが、奇妙な行動を見せる典夫を広一は不審がる。
するとそこに光る何かが現れ…!?

その後、野球の試合をしていた広一の前に再び典夫が出現。
野球の意味すら知らない典夫がピンチヒッターをすることになるが…。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

よろしければ→【2014年1月期・冬クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

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※キャスト

岩田広一…中村蒼
なぞの少年…本郷奏多

香川みどり…桜井美南
江原正三…ミッキー・カーチス
大谷先生…京野ことみ
岩田君子…濱田マリ

岩田亨…高野浩幸
大森健次郎…宮里駿
春日愛…宇野愛海
鈴木拓郎…戸塚純貴
太田くみ…椎名琴音
小川玲子…福地亜紗美
和田えみか…岩崎優里菜
戸塚肇…川籠石駿平
丸山隼人…黒木辰哉

みどりの姉…市川沙谷香
高校の警備員…清水洋介
体育・二階堂先生…加藤玲子

 

※スタッフ

企画プロデュース・脚本 … 岩井俊二
監督 … 長澤雅彦
音楽 … 桑原まこ

原作 … 「なぞの転校生」眉村卓

主題歌 … 「今かわるとき」桜井美南・ED「DREAM」清水翔太
      

公式サイト http://www.tv-tokyo.co.jp/nazono_tenkosei/

 

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 【 なぞの転校生 】第1話 2話


コメント

  1. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    >おじいさんが空を見上げるシーン、良かったです。

    何かワーーっと高揚する気持ちと切なさが同時に来るシーンだったわ~。良かった。

    >本当の花がない世界。
    出来れば迎えたくない。
    この当たり前の世界が、愛おしくなる話、映像。

    典夫がいた世界には花も星空もないのよね。
    寂しいだろうな。
    そう考えると切ない。

    >でも、あのオープニング苦手なの〜....。

    Twitterにもそう言っている人がいた!
    そうか~!恐いからなのか^^;

  2. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    >初回見損ねて、今回からです。

    それでも平気だったかもしれないです^^
    先週は広一の学校での生活や典夫が出て来る前までの触りの部分が描かれました。

    >いや、素晴らしいですね。この世界観。繊細で美しい。期待以上でした。

    ファンタジックですよね~入り込んじゃいますわ~。

    >本郷君の演技素晴らしかった。これまで妄想探偵おさむくらしか見てなくて、その時の評価はいま一つだったんですが、今回のキャラにはピッタリでした。

    私はかなり前の子役と言える時期から応援しているので今回の出演は嬉しいです^^

    >初めて見る花、満天の星を美しいと思い感動する心。その背景に流れる静かなピアノ。なんか切なくなっちゃいました。

    そうですよね!
    何が起きているわけでもないのに切ない。
    映像が語る力がスゴイです。

  3. 紫花浜匙 より:

    SECRET: 0
    PASS: 984e0037bc680040c3165a33fc64e091
    おじいさんが空を見上げるシーン、良かったです。

    本当の花がない世界。
    出来れば迎えたくない。
    この当たり前の世界が、愛おしくなる話、映像。

    でも、あのオープニング苦手なの〜....。
    夜中一人で見ると恐い。

  4. なぞの転校生 (第2話・1/17) 感想

    テレビ東京ドラマ24『なぞの転校生』(公式)
    第2話の感想。
    なお、眉村卓氏の原作小説は40年近く前に既読。また、NHK『少年ドラマシリーズ』版(1975年放送)も鑑賞済み。

    江原(ミッキー・カーチス)は「部屋に誰かいる」と助けを求めて隣の岩田家に駆け込み、広一(中村蒼)の母・君子(濱田マリ)に訴える。だが、江原の認知症を疑う君子はまともに取り合わない。一方、大森(宮里…

  5. 隠れ常連 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    初回見損ねて、今回からです。
    いや、素晴らしいですね。この世界観。繊細で美しい。期待以上でした。
    本郷君の演技素晴らしかった。これまで妄想探偵おさむくらしか見てなくて、その時の評価はいま一つだったんですが、今回のキャラにはピッタリでした。
    初めて見る花、満天の星を美しいと思い感動する心。その背景に流れる静かなピアノ。なんか切なくなっちゃいました。
    来週も楽しみです。

  6. はじめての花と草野球と満天の星空(宇野愛海)

    世の中には争いごとが嫌いな人がいるらしい。 そういう人には穏やかな日々が何よりなのだ。 世の中には争いごとが好きな人がいるらしい。 そういう人には穏やかな日々は退屈なもの。 だけど・・・勝ったり負けたりしても穏やかに過ごせるし、毎日が戦争でも退屈は感じるのかもしれない。 世の中が間違っていると決めつ

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