【この声をきみに】第8話「美しくひびきよく」 感想

2次元多様体の空間は近くで見ると平面にしか見えなかったとしても、宇宙から見たら地球は確かに丸い。

じゃあ、地面は真っ平らにしか見えないじゃないかと言われても、決して平面じゃないんだ。

だから、つまりだな…その…つまり僕が…僕が言いたいのは…。

江崎京子は確かにここにいたという事だ。

先生はここで、この教室で先生として生きた時間は決してうそじゃない。

今でも、それは、これからもだ。

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この声をきみに 第8話「美しくひびきよく」

 
  
  konokoe-op

本を読むのが上手だと、親や先生に言われて嬉しかった、子供の頃を思い出す。

なのに大人になってから、声を出して本を読むなんてことは、ほとんどしていない。

子供への読み聞かせもほとんどやらず。

 

いつしか、読書自体も仕事のための資料ばかりになり、そうしている内に人生で出会ったたくさんの物語を忘れ去っていた。

本の中にあった喜びや悲しみや驚きの世界。
それを思い出させてくれるドラマでもあった。

 

大人になってから仲間が出来る。

というのは、何と微笑ましく豊かな事だろうか。

 

孝さんは、「誰かと」「みんなで」何かをする事を覚えた。

とりあえず、今、「みんなで」する事は京子先生を引きとめる事。
 konokoe-8-かぶ

 

僕らがもう、そんなバカげた事をやるような年ではない事は自覚しているんだ。

しかし、あえて言いたい。
先生に やめないでほしいという気持ちを、思いを、みんなで届けるんだ。

 

穂波ちゃん。

いいじゃない。
そういう青春ドラマ的演出、嫌いじゃないわ。

 

私だって! …ていうか、私、まだ年齢的にも青春ですし。

人間、心さえ躍動していれば、いつだって青春なのよ!

そうだ~!

でも… どうやって?

 

僕らには朗読がある!

 

いや…朗読しかない!

 

「ひきとめ作戦G」の決行は発表会の日。

個人の告白を躊躇しているだけ……にも見えるけれども(笑)、あの孝さんに仲間が出来るなんて。

初回のこの人からは想像も出来ない。

 

今や、孝さんは変わった。

龍太郎くんからのお手紙も音読する。

「お父さん。
こくごのじかんにお手がみをかいているよ。

気もちをこめてていねいにかいているよ。」

「また え本よんでね。

おへんじちょうだい。
りゅうたろう。」

微笑みながら読む。

 

奈緒とは、友達のように笑って話せるようになった。

 

感謝してるよ。

僕の事を愛してるって声を出して言ってくれたのは、きみが初めてだった。

僕は幸せだったよ。 うん。

まあ…こんな結果になってしまったが、僕は全てすべてが過ちだったとは思っていない。

 

コミュニケーションの力を与えてくれたのも、「朗読」の力ね。

 

僕は 家族をボロミアンリングのように思っていた。

僕ときみと子供たち。
3つ集まって初めてつながる事ができる。

 

しかし本当は違っていたんだ。

僕の輪は つながっているように見えて、ただ重なっていただけ。

だから僕だけがこぼれ落ちてしまった。

 

でも、僕は ひょんな切っ掛けで朗読という世界と巡り合う事ができた。

 

そして、そこでいろんなものと交差する事ができたんだ。

 

正直、この夫婦に関しては孝さんが悪いとは思えず、今だに妻の印象は悪いままなんだけど(笑)

子供を2人抱えて大学なんかに行っていられるのも、お母さんがいるからだし、養育費をきちんと払ってくれる孝さんがいるからだよね……という気持ちもぬぐい切れないけど。

 

それでも、孝さんという人が、他人と向き合う空間を楽しむことが出来るようになった……という事に関しては、心から良かったと思うのだ。

 

発表会の日。

京子先生は一人一人にいつものようにアドバイスを与える。

けれども、自分は出場しない。

 

「江崎京子」なんて、本当はどこにも居なかったんです。

いまさら私の声なんて…。

 

しかし、みんなの中に「江崎京子」は確かに存在した。

一人一人の朗読の中に、それは生きて来る。

 

泰代さんの朗読は、京子先生から薦められた寺山修司の「ハート型の思い出」
 

新しい恋のための新境地。

河合くんと喜巳子さんの朗読は新見南吉「手袋を買いに」
 

これは子供の教科書に載っていた記憶がある。懐かしい。

実鈴ちゃんと絵里さんの朗読は、茨木のり子「自分の感受性くらい」
 

 

そして、孝さんは……

予定していた「おじさんのかさ」をやめて、小学生の時に書いた自分の作文を読んだ。

「僕の夢」

「僕の心には、いつもぽっかりした空間がある。

だから僕は、この世に完璧なんてないことを知っている。」

 

「でも、四年生になって僕は少し未来に希望が持てるようになった。

それは「メビウスの輪」を知ったからです。」

「こんな完璧なものが存在するなら、完璧な幸せも、どこかにあるかもしれない。

そう思えるからです。」

 

それから35年。

数学オリンピックもフィールズ賞も、夢はかなわなかった。

でも、世界中を完璧に幸せにする夢だけは、これからも追い続けていくつもりです。

 

そう。
これは、不器用な孝さんが、不器用な人たちが、ぽっかりを埋めていく物語だった。

自分のぽっかりだけではなく、人のぽっかりを埋めてあげる……

今や、孝さんはそこまで成長した。

 

「江崎京子」を舞台に引っ張り出すための「おおきなかぶ」

 

そして、佐久良先生と2人で読む「ことばはやさしく美しくひびきよく―」

 

美しいことばは、相手にキモチよくつたわる。

ひびきのよいことばは、相手のキモチをなごやかにする。

 

これは、きっと言葉だけではなく、声も。

だって、声で出会った人たちの話なのだから。

孝さんは京子先生の柔らかい声と刺刺しい声をよく聞きわけた。

教室の京子先生は「江崎京子」で。
過去に蓋をした京子先生は不器用な「女」だった。

 

結局、京子先生は「灯火親」を辞めて実家に帰ってしまった。

けれども、孝さんたちは、相変わらずそこにいて、あの柔らかなセピア色の明かりの下で朗読を続けている。

笑顔で。
 konokoe-8-灯火親

 

人間はいくつになっても変われること。

顔を見て声を交わして、相手の声を聞いて、合せて……

そうやって繋がっていればぽっかりは埋まること。

繋がることをあきらめなければ、幸せになれる……かもしれないこと。

 

そして、繋がっている人たちを見ることは、こんなにも幸せな気持ちになれるのだと。

そういう事を教えてくれるドラマだった。

 

頑なに自分の好きな事だけを内に内に語っていた孝さんが。

今は、元妻の気持ちを理解しようと努め、子供たちの成長に微笑み、避けていた父との対立を経て仲良く暮らす。

全部、言葉の力。

 

そして、帰ってきた京子先生の誕生日プレゼントに。

 

この声をきみに。

 konokoe-8-この声を

 

「人間は、そんなにいいものかしら」

その答えを大森美香さんは追究し続ける。

 

大人の恋物語であり、もっと大きな人間の愛の物語だった。

俳優さん達の朗読を堪能し、たくさんの表情に笑い、泣き、たくさんの物語を思い出させてもらった。

至福の時間だった。

素敵なドラマに出会えて、素敵な声に出会えて、心からありがとう。

 

心の ぽっかりが、なくなる事は永遠にない。

 

でも…ふいに心が熱くなる瞬間があって。
人生は悪くないよってねそう思えるよって…。

 

むしろ、ぽっかりがあるからこそ、そういう瞬間が訪れるのかもしれない。


孝(竹野内豊)の恋の告白も届かず、京子先生(麻生久美子)の朗読教室をやめる決意は固かった。発表会が近づく中、孝たちは京子の引止め作戦を思いつく。

そんなある日、息子の龍太郎から手紙が届き、孝は大喜び。そして妻・奈緒(ミムラ)と久しぶりの再会を果たす。

教室では泰代(片桐はいり)が発表会に読む本について悩んでいた。片思いのヨガ教室の先生を、会場に誘ってしまったのだ。そんな泰代に京子はある本をすすめる。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

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※キャスト

穂波 孝 – 竹野内豊
江崎京子 – 麻生久美子

佐久良 宗親 – 柴田恭兵
福島邦夫演 – 杉本哲太
磯崎泰代 – 片桐はいり
柏原 喜巳子 – 堀内敬子
稲葉実鈴 – 大原櫻子
河合雄一 – 戸塚祥太
熊川絵里 – 趣里

穂波奈緒 – ミムラ
穂波舞花 – 安藤美優
穂波龍太郎 – 加賀谷光輝

穂波定男 – 平泉成
八坂淳子 – 仁科亜季子

東原正規 – 松岡充
五島由紀夫 – 永瀬匡
山極春信 – 北見敏之
持田暁美 – 山本裕子
北里法子 – 千葉雅子

※スタッフ

脚本 … 大森美香
演出 … 笠浦友愛、樹下直美、上田明子
制作統括 … 磯智明

音楽 … fox capture plan
主題歌 … JUJU「いいわけ」

コメント

  1. くう より:

    ケロヨンさん
    >人生は悪くない 心のぽっかりが少しは癒される呪文でした。

    そうですね。ぽっかりがあってもいいんだ。みんな頑張って埋めてるんだと思わせてもらえるドラマでした。

    >たま~にこーゆードラマに巡り合えるんですね。幸運でした。

    NHKの夜の枠は良い物が多いですね。
    今後も期待していきたいです。

  2. ケロヨン より:

    良いドラマでした。
    登場人物一人ひとりみなやっかいながらもステキでした。
    人生は悪くない 心のぽっかりが少しは癒される呪文でした。
    (自分が応援する某女優の某CMにもでてくるメッセージです。)
    前半に何度かあった朗読に入り込んで、ファンタジーの中で解放されるシーンが自分にもカタルシスでした。
    たま~にこーゆードラマに巡り合えるんですね。幸運でした。

  3. くう より:

    きこりさん
    >恋だけに焦点を合わせなかったのが良かったよね。

    そうそう。
    単なる恋愛ものではなくて、人間の成長物語なんだよね。
    大森さんらしいお話だったなぁ。
    キャラクター1人1人に愛着が沸いたわ。
    またみんなに会いたいわ。

    >来週から寂しくなるな~

    町工場に興味持てなさすぎて、どうしよう^^;

    おとなしく「コウノドリ」を見るわーーー(´д`)

  4. おもしろかったよねぇ・・・録画して見ているとどんなに面白いドラマでも見るのめんどくさくなっちゃうんだけどゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ これは見れば確実に書く気にさせてくれるドラマだったよ。
    恋だけに焦点を合わせなかったのが良かったよね。
    登場人物ひとりひとりがしっかり描かれていたから出番が少なくても残っているよね。
    読みたくなる本や言葉をいっぱい教えてもらったわ。
    来週から寂しくなるな~

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