第1次大戦で数百万人が死んだ。
第2次大戦では数千万人が命を落とした。
生き物の歴史の中で、大量殺戮を繰り返してきたのは人間だけだ。
人間は破壊衝動を持っていると言ったのは、ナチに追われてアメリカに亡命したアインシュタインだ。
普段は心の奥底に眠っているが、何かの拍子にそれが噴出して人を破壊し自分を破滅させる。
これは、遠い国の特別な人間の物語ではない。私の物語だ。
私の心の中の破壊衝動が、一人の女の人生を破滅させた。
逃げる女 第1話「無実の傷あと」
西脇梨江子は児童殺害の容疑で逮捕され、8年間刑務所に収監された末、釈放された。
刑期が終わったということではなく、冤罪が証明されたのである。
西脇梨江子。
はい。
称呼番号、氏名。
5212番。西脇梨江子です。
生年月日は?
昭和50年7月14日です。
本日裁判所から釈放指揮書が送達されたので釈放する。
これから領置調べをします。
茶色のボストンバッグ1。水色のハンカチ1。ベージュの革製ポーチ1。白色のロングTシャツ1。グレーのパーカー1。ベージュのキュロットパンツ1。茶色のローヒール1。
8年間の刑務作業の報奨金24万3421円です。
これだけ?
と、思った。
しかもこの上から目線は一体何だろう。
職場の人間も警察も裁判所も…世の中全てが寄ってたかって無実の罪に陥れ、今ここにいるのに。
エンケンさん演じる刑事・佐久間の冒頭のナレに寄れば、「破壊衝動」のせいらしい。
この女の周りの人間に一斉に起きた破壊衝動が8年間も檻の中に無実の人間を閉じ込める結果を作ったと。
主人公が刑務所から出て、彼女が刑務所暮らしをするハメになった原因を作った刑事が贖罪のために右往左往し、過去の事件が語られる…それだけで充分に人間の醜さを見せられた初回。
死んだのは主人公・西脇梨江子が勤めていた児童養護施設の子どもだ。
事件が子どもに関する事だから、とても辛い。
しかも真犯人が見つかったから釈放されたという話なら死んだ子も関係者もまだ浮かばれるかも知れないが、事実は子ども同士の虐めの果ての事故だったのだ。
園にとっても、自分の施設内の子どもたちが起こした事件なのだから隠し通したかっただろう。
西脇さん。
人を恨むとそのまま自分に降りかかってきますよ。
立派そうな教訓だが、この園長も梨江子を陥れた1人なのである。
実はこの園の職員たちはみんな初めから子ども同士の起こした事件だと知っていたんじゃないの?
佐久間が梨江子を犯人だと思いこんだのは「陥れ」の積み重ねの結果だった。
西脇が勤めていたのは親と一緒に暮らせない子どもたちのための養護施設だった。
東京の一流大学を出た人間が地方の施設に就職するのは珍しい。
若くて綺麗な職員だった西脇は子どもたちに人気があったんだ。
若くてきれいで子どもたちに人気があった。
だから、他の職員たちから妬まれた。
事件後。
梨江子が亡くなった少年を厳しく怒鳴って叱っていたと職員は証言した。
極めつけは、中学からの親友だった同僚・川瀬あずみが事件発生時に駅で梨江子と会ったという証言を否定した。
嘘のアリバイを申し立てた人間には第1級の容疑がかかる。
その瞬間から全員が西脇の犯行だと決めてかかった。
全員が…。
中でも、佐久間自身が。
10年共に暮らした妻が何も言わずに消えた。
その日に起きた事件。
連日続く厳しい取調べに梨江子は落ちた。
私がやりました。
女房が消えてから、ひと月も経ってなかったんだ。
俺の心は訳の分からない怒りでいっぱいになっていた。
女という生き物は信じられない。
シラを切り通すこの女を落とさないと警察官としての正義が貫けない。
そう思い込んでいた。
佐久間は今、梨江子への贖罪に苦しみ、出所後の動向を気に掛けていた。
しかし、梨江子はそれを受け入れない。
当然だ。だって、8年間は大きすぎるよ。
例えば…
当時、ともに働いていた同僚が結婚し、子どもを2人も産んで幸せな家庭を作っている。
8年の間にはそんなことが出来るのだ。
その同僚も梨江子に不利な証言をした同僚だ。
梨江子は、今、川瀬あずみを探している。
事件の日、確かに駅で会ったのに、会っていないと証言した親友。
アリバイを証明してくれるどころか否定した親友。
「逃げる女」とは、主人公ではなくて川瀬あずみの事なのか…。
あんた、人、殺したの?
殺したいの?
そんな目してるよ。
自分を裏切る人間は殺す女と、自分を陥れた人間を追う女が出会う。
初回は、主人公周りの人間に苛立ちしか覚えない印象。
これが、どう変わっていくのか。
本当に梨江子自身は何の罪も犯していないのか。
「殺しそうな目」をしている水野美紀と、ぶっ飛んだ仲里依紗の演技が凄い。
廃墟の施設で、吹き抜けの階段下に泳ぐ魚。
あそこにね、子どもの遺体が横たわる事になるとは。
あっという間の45分間。
最終的には何が「信じられる物」なのか見えるんでしょうね。
実は、本当に梨江子は駅に居なかったって可能性だってあるんだよね?
人を信じるというのはどういう事なんだろう。
人を信じられないから人を疑い、それでも信じられないからまた疑う。
不安が澱のようにたまっていく。
えん罪が晴れて8年ぶりに刑務所を出所した梨江子(水野美紀)。
児童養護施設での殺人事件の犯人とされていたのだ。
梨江子は、アリバイを否定した親友のあずみ(田畑智子)を探しはじめる。
長年苦しんだ梨江子に周囲はなおも冷たい。
苛烈な取調べを行った刑事の佐久間(遠藤憲一)は、償いの気持ちで梨江子を案じる。
が、若い刑事の安藤(賀来賢人)は状況を冷静に見ていた。
そして梨江子の前に謎の若い女・美緒(仲里依紗)が…
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
よろしければ→【2016年1月期・冬クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表
※キャスト
西脇梨江子 … 水野美紀
谷口美緒 … 仲里依紗
佐久間学 … 遠藤憲一
安藤純也 … 賀来賢人
川瀬あずみ … 田畑智子
斉藤浩一 … 高橋克典
天野直将 … 加藤雅也
柏木健作 … でんでん
香村綾乃 … 原田美枝子
深見元 … 高橋努
西脇喬雄 … 古谷一行
松尾結花 … 水崎綾女
山口 … りりィ
季佐 … あめくみちこ
八重 … 安藤玉恵
小倉一郎
梅沢昌代
諏訪太朗
※スタッフ
脚本 … 鎌田敏夫
演出 … 黒崎博、中島由貴
プロデューサー … 中山和記
制作統括 … 内田ゆき、越智篤志
音楽 … 上野耕路
公式サイト http://www.nhk.or.jp/dodra/nigeru/
世界の果てまで [ 鎌田敏夫 ] |
恋の罪 [ 水野美紀 ] |
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【逃げる女】第1話
コメント
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>人生をぶち壊されてやり場のない怒りに包まれた主人公を水野さんが見事に演じてました。見ているこちらもかなり感情移入できました。
そうですね~。
自分の中では水野美紀さんって戦う薄幸女性って感じで。
そのイメージ通りの役かも(笑)
>結局は自己満足のためですもんね。甥を殺されたとなじる叔母も、色々事情はあるにせよ、施設に放り込みっぱなしだったんだし、
「衝動」で済むなら警察はいらないって話ですよねーー!そう、私も思ったんですよ。そんなに可愛い甥ならどうして施設に放りこんでたんだよ、と。あの人、別に伯母でも何でもなくて、ただの嫌がらせ?
そう言えば、マスコミももっと食いつくネタですよね。確かに。
>りりぃの施設長に至っては、侘びの一つもないんかい?と。
侘びどころか、恨んだら良くないよって説教まで…人格疑いますが、だから余計に主人公、ホントに冤罪なの?って思っちゃった。
どういう方向に進むかまだ解らないので楽しみですね。
納得のいく結末を見せていただきたいです^^
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こんばんは。
なかなかに緊迫感のある初回でした。時間経つの忘れましたね。
若い時期の8年を無駄にさせられ、父親は世間の風評に耐えかねて逃げ、実家はなくなり・・・。人生をぶち壊されてやり場のない怒りに包まれた主人公を水野さんが見事に演じてました。見ているこちらもかなり感情移入できました。
それにしても破壊衝動とかきれいごと過ぎますね。あの刑事言い訳ばかりで、結局は自己満足のためですもんね。甥を殺されたとなじる叔母も、色々事情はあるにせよ、施設に放り込みっぱなしだったんだし、りりぃの施設長に至っては、侘びの一つもないんかい?と。しかし、りりぃ、相変わらず演技がよくわからない・・・。
まぁ刑事の告白が事件のすべてではなく、まだまだ裏が出てきそうですけどね。
ただ冤罪事件なら、駄目弁護士は置いておいても、マスコミとかもっと擁護しそうに思います。そこらへんが今一つリアリティに欠けるところでしょうか?
逃げる女 TOP
『逃げる女』は、2016年1月9日から毎週土曜22:00 – 22:44にNHK「土曜ドラマ」枠で放送中。主演は水野美紀。全6話予定。 概要 冤罪(えんざい)が晴れて出所がかない、自分を裏切った親友を探す旅に出る40歳の女性を主人公にした、鎌田敏夫オリジナル脚本のヒューマン…
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モデルの事件があるのですか!?
ドラマ自体は原作は特になく、鎌田敏夫先生のオリジナルらしいです。
>女の子のママが最初優しく接したのは後ろめたさもあったのかなと思いましたが
赤ちゃんのそばに行くのは許せないととんがった声が出ましたね。
私はあの母親には終始後ろめたさの恐怖を感じました。
陥れた自覚があってこそだと思います。
なのに自分は8年間で幸せな家庭を作り上げている。
いたたまれませんよね~。
>冤罪を償うお金、自分から請求しなければ出ない、期限があるというのもひどい話だと思いました。
私も期限にはビックリしましたわ。
黙っていても保障するべきですよね。人の人生ぶっ壊したのだから。
人情のない気即ですね~。
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実際にあった冤罪事件を扱ったドラマかと思いました。
でもモチーフにしているだけでオリジナル脚本のようですね。
ドラマは「正義とは何か」を問う作品で事件後に立ちあがる物語は実際の事件とは別物のようです。
曇りのない女の子の目には「ママのおともだちのおばちゃん」に見え、
だから屈託なく「あかちゃんみる?一緒にくる?」と声をかけた。
それに応えた梨江子の笑顔もあたたかでやわらかいものでした。
冤罪=無実が確定しているのに新聞やニュースをみていないのか、偏見で曇った目で見ているのか、
「となりのおくさん」も「亡くなった子のおばさん」も頭ごなしに決めてかかった態度をとります。
「あのひとは無罪なんだよ」と指摘されても納得しない様子をみせました。
女の子のママが最初優しく接したのは後ろめたさもあったのかなと思いましたが
赤ちゃんのそばに行くのは許せないととんがった声が出ましたね。
世間の冷たさや一度ついてしまった印象をぬぐい去ることのむずかしさ、
本来持っていた温かで優しい笑顔を固く閉ざさせてしまったものが冤罪だということ
失われた年月の残酷さを感じました。
冤罪を償うお金、自分から請求しなければ出ない、期限があるというのもひどい話だと思いました。
佐世保でロケ、最後ふたりは「ちゃんぽん」食べてましたね。
里依紗ちゃんがどうからむのか楽しみです。
逃げる女(水野美紀)謎の女(仲里依紗)二児の母(安藤玉恵)消えた女(田畑智子)
冤罪被害者は・・・犠牲者である。 冤罪という可能性がありながら法治国家を運営する制度そのものの犠牲者である。 たまたま乗っていた飛行機が墜落するようなもので・・・不運な犠牲者なのである。 それで・・・冤罪被害者が納得できるかという話である。 しかし・・・無実の罪で死刑になったものには何もできないが・
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こんにちはーーー!
今年もよろしくお願い致します~^^
>冤罪のスタートでしたから胸が痛くなりそうでしたねえ。
皆で寄ってたかって犯人に仕立て上げてしまったという恐ろしさ。
しかも、亡くなったのが子どもというのが本当に胸が痛い映像でした。
そして、人間、自分が悪くなくても嫌われるとこんな恐ろしい目に遭うんだーーと恐くなりましたわ。
ご近所や職場では「そんな事する人じゃありません」と言ってもらえるように生きて行かなきゃ(泣)
>「逃げる」のは誰がどこにという点で
候補・可能性がたくさんありましたよね。
見る前は「逃げる」のはヒロインだと勝手に思っていたのですが、1話の限りでは雲隠れしているのは親友の方ですよね~。
里依紗ちゃんもどう絡んでくるのか…この子の場合は明確に犯人なのに逃げている雰囲気もないし。
>梨江子は完璧シロという前提ではないということで
ハラハラしつつ今後も楽しみにしています。
それは単なる私の妄想で~^^;
あまりにも周囲が敵すぎる事、親友の嘘に今のところ理由がない事、佐久間刑事の動向を若い刑事が疑問視しているように見える事…などから何となくそう思ったのでした。
まだどう転ぶか解りませんね。
またエリちゃんの所にもお邪魔させていただきます^^
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くうさん、あけましておめでとうございます。
今年もレビュー楽しみにさせていただきます。
よろしくお願いします。
冤罪のスタートでしたから胸が痛くなりそうでしたねえ。
皆で寄ってたかって犯人に仕立て上げてしまったという恐ろしさ。
梨江子のため込んだ憎しみや絶望はどれぐらいの深さだったのか。
ともあれ、復讐に向かうのかしらねえ・・。
「殺しそうな目」をしているというからには。
「逃げる」のは誰がどこにという点で
候補・可能性がたくさんありましたよね。
>実は、本当に梨江子は駅に居なかったって可能性だってあるんだよね?
そうなのでしたか・・。
話が途中から飛び飛びになってしまっていて
だいぶ補填させてもらったのですけど、
実はそういうこともあるのでしたか。
梨江子は完璧シロという前提ではないということで
ハラハラしつつ今後も楽しみにしています。
冬ドラマも間もなく始まりますね。
また遊びにきますね~。
本年もよろしくお願いいたします。