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【破裂】土曜ドラマ 第1話 感想

夢が叶ったよ。
15で医者になろうと思ってから、あんたが俺にひざまずいて命乞いする場面を何度も夢みた。
俺やおふくろを蔑んだやつらだってどんな権力者だって命の前では医者にひざまずく。

夢には続きがある。

あんたの命乞いを俺は断るんだ。
助ける義理はない。

 

俺の体を使え。
実験台になろう。

どんな条件でも受け入れる。
死んだとしても文句はない。

 

土曜ドラマ 破裂  第1話

   破裂

 

原作は先週水曜にフジテレビで開始された『無痛』と同じ久坂部羊氏の小説・未読。
あっちも面白かったけれども、いかんせんスペックホルダーだらけの奇想天外な変わり種ストーリーだったので、これもか…と思ってしまっていた。結果、今のところこっちにはスペックホルダーはいなそうである。
硬質な医療ものドラマ…を期待して良さそう…な、気がする。

この秋期の新ドラマ一覧記事にも同じことを書いてしまったけれども、制作の勝田夏子Pは10年前にもこのドラマの企画を出し、その時は没になったのらしい。

10年経ち、綺麗ごとじゃない高齢化社会が本格的に問題になってきた今だからドラマ化された…ということである。

そりゃ不謹慎だよねぇ…「PPP(ぴんぴんぽっくり)」とか。

けれども、10年前だったら目くじら立てる組だったかも知れない私も今や全くそうではなくなった。
2ヶ月前に父が亡くなって介護の現実を見たからだ。

…と言ってもウチの場合は末期がんだったので父が寝たきりになったのは3ヶ月ほど。私自身は片道2時間ほどの場所で別居しているので泊まり込みの介護はしていない。

最期の3日間だけね、実家に泊まり込んで母と妹が父の排泄の処理をしているのを見て、あ~介護の現実はこれなんだと思った。

人間の生って結局は「食べる」と「出す」である。
寝たきりで動かない重たい身体。赤ちゃんのオムツ替えとはワケが違う。

要介護認定は受けたのだから介護士に来てもらえばいい…と、人はた易く考える。
しかし訪問介護士は1日中居てくれるわけではない。来てくれた時間に全てが済むわけじゃない。
介護する人間は夜中に何度も起こされる。要介護者のほとんどが老人であり、介護する側は大抵は配偶者、つまり老々介護だ。

病院は病気を治す所であり、処置できない患者はベッドを空けるために追い出される。ホスピスは一般人には考えられないほど高額だ。介護する人間の方が倒れてしまった時のために安く短期間患者を預かってくれる施設は保育園の空き待ちよりも倍率が高い。

日本ってそんな国である。
父がそうなって私は初めてそれをリアルに見て知ったのだ。
本当に甘かったと思うよ、認識が。

母はそれでも父に生きていてほしかったらしいが…申し訳ないけれども私はそうは思えなかった。だって母の方が死んでしまう。そして母が倒れてしまった場合、自分が母に替わって介護できるとは到底思えなかった。

親不孝だと思われようが人非人だと言われようが、それが私が父の臨終近くに望んでいたことである。現実は全然綺麗ごとでは済まないのだ。

自分もあんな風になりたくない…長生きも特にしたいと思わないが、短く生きようが長く生きようが、とにかく周りに介護させるような最期だけは迎えたくない。

 

そんな風に本気で思っている今だからタイムリーに響くのである。

ピンピンポックリ。

それって人間の理想だよね。

 

「医者は三人殺して一人前になる」

医師国家試験は筆記だけで実技がないだろ。
これから君は患者を練習台にして腕を磨いていくしかない。
不幸な事に治療の失敗は当然起こりうる。
医療ミスじゃない。
システム上避けられないリスク、いわば通過儀礼だ。
だが、その先には何千何万の救うべき命が待ってる。

 

と、笑いながら堂々と言ってのける香村は心臓外科医でありながら有能な研究者でもある。

そんな彼が研究し、動物実験ではすでに成功しているのが心臓を若返らせる治療。

「心筋細胞成長因子」別名・香村因子による夢の治療法「CM-GF療法」

何と手術なし、点滴だけでいいと言うのだから、本当に「夢の治療法」である。
こんなのが実現したら、どれだけ多くの金持ちが救われることだろうね…。

そんな香村に近づいてきたのが国民生活省の佐久間という役人。

 

国内屈指の最先端医療研究施設。
一度はお聞きになった事があるでしょう。
間もなく稼働する「国立ネオ医療センター」の事は。
香村先生にそのプロテオミクス医科学部門の部長に就任して頂きたいんです。

 

フッフッフ…
ご冗談でしょ?

 

本気です。
今どき「白い巨塔」じゃあるまいし教授の椅子にこだわりますか?

 

20年取り組んできた研究のためですよ。
多額の研究費の捻出のためには教授というポスト…。

 

年間7億差し上げます。
センター全体で20億の予算。
プロテオミクス医科学は特に重視されていますので、年間7億の予算配分が決まっています。
教授になってもこれだけの研究費捻出はできませんよ。

 

しかし、香村はその話をあっさり断る。
つまり金は目的ではないのだね。

まさに彼が望んでいるのはその「今時『白い巨塔』」の頂点なのらしい。

地位と名声…。

その理由が後々語られる。

つまり、名優が遊びで寝た女の子供である事を馬鹿にされて育った生立ち。

世間と父親を見返す。
その反骨精神でここまでのし上がってきた。

教授の椅子は目前にあるが、意外と邪魔は入る。

香村が以前執刀した手術に関する医療ミスの怪文書。
これが事実なのか嫌がらせなのかはよく解らないけれども、これって仕組んでるのは佐久間だよね…。

佐久間は「国立ネオ医療センター」にどうしても香村がほしい。
帝都大の教授なんかになってほしくはないわけで。

 

そんなタイミングで自分と母親を捨てた男が弱った心臓を抱えて入院して来る。

 

立派な大先生になったもんだ。はは……。

半年前から心不全で寝たきりになった。

だが、撮影途中の映画をどうしても完成させたい。
それを叶える医師役を引き受けてもらいたい。

 

弱った声で語る老人を目の前にした香村…。
ここのシーンの桔平の表情に魅入ってしまった。

老人を憐れんでいるのか自分を憐れんでいるのか、父親に会えた喜びなのか憎しみなのか寂しさなのか……。

なんて複雑な顔をするんだろ。

しかし、最期を迎えるのかと思われるほど弱った老人は決して牙を抜かれているわけでは無かった。

 

確かに俺は間違いを犯した。
…だが、人は過ちから学ぶ事はできる。

何を学んだっていうんだ。

 

どういう状況であれ、セッ クスをする時は避妊具をつける。

 

薄ら笑いでそう言い、哀れな息子の怒りを掻きたてる…。

そして、息子の研究のために、彼は自分が実験台になると言うのだった。

 

俺の体を使え。
実験台になろう。

どんな条件でも受け入れる。
死んだとしても文句はない。

 

こうして、香村はCM-GF療法の治験を父親で開始するのだった。

 

立ち上がった仲代達矢のシーンが、もうホラー……。なのに、恐いのに感動…。

 

過去を背負っているからこそ憎めないが、完全に悪人顔な香村。
「CM-GF療法」のために香村をどう利用したいのか初めから狙ってるっぽい佐久間。
わざと悪く見せているのかは解らないけれども今のところはクズ親な父。

 

全員悪人!!

(…だから、『アウトレイジ』だってば、それ…)

 

実験に使っていたワンコ・サリーちゃんが心臓破裂で死んでしまったところで初回は終了。

1時間、じっと見守った。
先が解らない緊張感と恐さ。

上質なクラッシックのように響き、ホラーを誘う音楽・はい島邦明さん。
暗く沈み込む病室シーンの恐さ。
役者さんたちの「悪」っぷり。

見応えあり過ぎ…。
この「破裂」がぴんぴんぽっくりに利用されるなら。
心臓の若返りと同じくらい「ぴんぴんぽっくり」も高そうだなぁ。

人の生と死を操る事は不謹慎なのか。
それは神の領域です、なんて綺麗ごとを言っていられる時代は遠い。

展開も結末も楽しみ。

 

※初回の再放送は10月16日金曜 24:10~。NHK地上波です。

 


香村(椎名桔平)は冷徹なエリート医師。
年老いた心臓を若返らせる画期的な新療法で注目を浴びる中、怪しげな官僚・佐久間(滝藤賢一)
から国立ネオ医療センターにスカウトされる。
大学教授選の勝利が確実視されていた香村は誘いを断るが、その直後、過去の医療ミスを
告発する怪文書騒ぎに巻き込まれる。
一方、心不全で引退状態の国民的名優・倉木(仲代達矢)が香村の治験を希望し入院して来る。
香村と倉木には秘密があった…。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

 

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よろしければ→【2015年10月期・秋クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

 


※キャスト

香村鷹一郎 … 椎名桔平

佐久間和尚 … 滝藤賢一

倉木蓮太郎 … 仲代達矢

松野公子 … 坂井真紀
厨忠彦 … 甲本雅裕
伊達伸吾 … 嶋田久作
小池清 … モロ師岡
林田博史 … 佐戸井けん太
城貞彦 … 佐野史郎
須藤彰子 … キムラ緑子
香村朋美 … 黒沢あすか
香村直輝 … 里村洋
鶴田忍
天宮良
水橋研二
松崎謙二
浅香航大
中原果南

※スタッフ

脚本 … 浜田秀哉
演出 … 本木一博、藤並英樹
制作統括 … 勝田夏子
音楽 … 蓜(はい)島邦明

原作 … 久坂部羊「破裂」

公式サイト http://www.nhk.or.jp/dodra/haretsu/

 

 

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【破裂】第1話


コメント

  1. 破裂(椎名桔平)助けてください(仲代達矢)天寿安楽死国民生活財政危機超高齢化禁じ手ぴんぴんぽっくり万歳(滝藤賢一)

    谷間である。 なんだかんだ・・・ドラマが多過ぎると思う。 こんなにコンテンツが多いと・・・視聴率なんて下がって当然だよな。 物凄く駄作で誰が見ても失敗作と超絶的な名作とが混然一体となって流れ去って行く御時勢なのである。 そろそろ・・・観測を続けることも困難になってきたよねえ。 中途半端な感想よりも・

  2. 破裂 TOP

    2015年10月10日より、NHK「土曜ドラマ」枠(毎週土曜22:00~22:45)にて放送中。 原作 『破裂』(はれつ、RUPTURE)は、久坂部羊による小説。 現役の医師でもある作者の2作目の小説。 刊行された際に、帯に『医者は3人殺して一人前になる』などと書かれ、話題を呼んだ。…

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