この先の人生も色んな壁にぶつかるはずだ。
でもな、何回壁にぶつかっても絶対諦めるな。
次の1回で、きっと何かが変わる。
「走馬灯株式会社」第6話:Disc6 雪村静香 32歳
※以下の感想はネタバレしています。ネタバレはしないで見た方が面白い内容なので、
知りたくない方は視聴後の閲覧をお薦めいたします。
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じゃあ始める?
もうですか?
あんまり遅くなってもしょうがないし。
その日、雪村静香はネットで知りあった「みーやん」と一緒に人気のない小屋に来ていた。
用意してあるのは火鉢と練炭。
2人は、これから一緒に死ぬのだ。
その時計…
これ?いいでしょ。気に入ってるの。
すごくカワイイです。それにその服も。
まあ…最期ぐらいは着飾って終わりたいじゃん。
最期くらいは…。
練炭は苦しむ事もなく死ぬことが出来て、遺体も綺麗だと聞く。
それで選んだ自殺方法だった。
「スノー」さんと知り合えてホントによかったです。
私も「みーやん」と会えてよかったと思ってる。
私、元々暗い性格で…就職とかも全然うまくいかなくて。
ようやく雇ってもらえるところがあったんですけど、大した理由もなくクビにされて…
「スノー」さんは、どうして?
昔のことはやめにしない?
思い出したくないことばっかだから…。
本当に思い出したくないようなイヤな事ばかり!
静香は火鉢を取りに外へ出た。
すると、そこには不思議なドアがあった。
「走馬灯株式会社」
静香は吸いこまれるようにそのドアの中に入り…
気づくと、ホテルの部屋のような場所に人形のような女が立っていた。
ようこそお越しくださいました。
私、走馬灯株式会社の神沼と申します。
すいません。
誰かいると思わなくて…。
ご安心ください。
あなたがどのような道を選ばれようと、私は一切関与いたしません。
ただ、こちらで人生の最期にふさわしい体験をお約束いたします。
えっ?
ここは人生をかえりみていただく場所でございます。
こちらのディスクにあなたの人生が収められております。
それでは「スノー」こと雪村静香様。
あなたの32年の人生を心ゆくまでかえりみてください。
部屋の中には大きなテレビがあり、ディスクを入れると見覚えのある情景が映し出された。
私の仕事部屋?
静香は忙しく電話を取っていた。
「10万部ですか?ありがとうございます。
次の原稿も期待してください。失礼します。」
一番成功していた頃だ。
静香の目が思わず潤む。
私、頑張ったよね。
しかし、それから映し出されていく映像は悲惨だった。
静香は人気エッセイストだった。
だが気付くとタレントとの噂話を週刊誌に載せられ、ワイドショーの
ネタにされ、バッシングを受け…
運営していたブログは見たくもない書き込みで炎上した。
「何なの?私があんた達に何かした?
何でこんなこと言われなきゃいけないの?」
「これで何回目ですか?写真撮られすぎですって!」
「ただの友達だって…」
「そんなの関係ないんですよ。女の自立で売ってる人が一体何やってんですか。
イメージガタ落ちですよ。連載だって全部打ち切りですよ」
「もう終わりです。」
こんな人生、顧みたいわけないでしょ!
静香はディスクを出した。
30歳の時のディスクを入れてみる。
私が一番、輝いていた時……。
その日は、静香が「ベストエッセイストアワード」で大賞を受賞した日だった。
大勢の記者が集まって口々に祝福の言葉をかけてくれた。
「大賞受賞の秘訣を教えてください」
「何回壁にぶつかっても絶対諦めるな。次の1回で、きっと何かが変わる。」
「誰の言葉かは忘れましたが、その言葉があったからこれまでやってこれました」
静香はテレビの中の自分の言葉にはっとした。
何回壁にぶつかっても、絶対諦めるな。
何でこんな大事なこと忘れてたんだろう…。
静香は立ち上がった。
こんな計画は取りやめにしなくては!
テレビには続きの映像が流れている。
「これからも自分に素直に執筆していこうと思います。
これからも応援してください。本当にありがとうございました。」
「では続いて個別の取材に移ります。
雑誌社さんごと、事前にお伝えした順番でお願いします。」
「芸団社の風間美沙子です。よろしくお願いします。」
・・・・・・
映像をそのままにして、静香は部屋を出た。
小屋に戻ると「みーやん」が待っていた。
今さらって思うかもだけど、もう止めない?
別に怖くなったとかそういうんじゃないの。
けど、何も死ぬことないんじゃないかって。
けど…。
私、エッセイストだったの。
割と大きなエッセイ賞とか取って結構有名になったんだけど、結局うまくいかなくて…。
生きてるのもつらくなってもう死ぬしかないって思った。
でも気づいたの。
何回壁にぶつかっても絶対諦めちゃいけないって。
確かにそうかもしれません…。
でも、何もかも上手く行かない人生だってある、と後ろ向きな「みーやん」を
静香は走馬灯株式会社に連れて行った。
お待ちしておりました。
またのお越しありがとうございます。
神沼を見て驚く「みーやん」に静香は説明した。
大丈夫。悪い人じゃないから。
ここってこの人の人生も見られますよね?
もちろん、ご用意しております。
静香は「みーやん」にディスクを見せた。
これ、「みーやん」のことだよね?
信じられないかもしれないけど、このディスクの中にあなたの人生が記録されてるの。
人生…。
だから、これまでの人生で楽しかった時とか嬉しかった時とか…
一番見たい時を選んでみて。
「みーやん」は、迷わず1枚ディスクを選んで入れた。
すると、そこには意外な情景が映し出された。
「雪村さんベストエッセイストアワード大賞受賞の秘訣を教えてください。」
「何回壁にぶつかっても絶対諦めるな。次の1回できっと何かが変わる…」
そこに映っていたのは自分だった。
何で私がみーやんの人生に?
前にも会ったことが?
無言でテレビを凝視する「みーやん」。
「では、続いて個別の取材に移ります。雑誌社さんごと事前にお伝えした順番でお願いします」
「こちらへ」
「芸団社の風間美沙子です。よろしくお願いします。」
名刺を差し出す相手に、今まで笑顔だった静香は露骨に不機嫌な表情に変わる。
「悪いけど、この取材は中止してくれる?」
「えっ?」
「すぐ芸団社に電話して、この記者をクビにするように言ってくれる?
クビにしないなら、そっちの取材は受けないって」
「そんな…」
「雪村さん。いくら何でも…。」
「こんな貧相な女のくせに、私と同じ時計してるなんて!信じられる?
早く。電話!」
「分かりました。申し訳ありませんが…」
「次、集文社さんどうぞ……」
テレビの中の静香は次の記者に向かって笑顔を作り直して取材を受け、
「風間美沙子」は部屋の隅に追いやられた……
映像を見て愕然とする静香。
やっと思い出した?人気エッセイストさん!
無表情に画面を見ていた風間美沙子は、自分がしていたストールをスルスルと外した。
そして、それを静香の首に巻き、首を絞め続けた……。
気が付くと、静香はあの小屋に寝ていた。
手足が縛られて身動きが取れない。
何? 何なの?これ!
死にたかったんでしょ?
だから望みどおりにしてあげようと思って。
風間美沙子は冷たく笑った。
あの時の時計、お父さんが死ぬ前に就職のお祝いで買ってくれたものなの。
…でも、私みたいな女がつけちゃいけないんだよね?
セレブじゃなきゃつけちゃダメなんだよね!?
違う!そんなつもりは…。
やっと見つけた仕事なのに、あんたのせいでクビになった。
彼氏にもフラれて、家族にまで情けないってバカにされた。
どうしてくれんの?
全部私のせいってわけじゃ…。
それなのに自分はセレブ気取りでブログなんかやっちゃって。
炎上するのも当たり前でしょ。
ひょっとして…。
美沙子は笑った。
タレントと会っている写真を雑誌社に送ったのも、ブログを炎上させたのも、
全部美沙子の仕業…。
あの時から、美沙子は静香に恨みを抱き続けて生きてきたのだった。
そして、自殺サークルのサイトに静香を誘った。
あっ、でも勘違いしないで。
あんたの人気がなくなったのは、あんたの性格がクソだから!
死のうとしたのだって、ホントはみんなに注目してほしかったんでしょ。
やめて!
人の人生狂わせといて、勝手に死のうなんて絶対に許さない。
あんたのやろうとしてることなんて、ぜ~んぶ知ってるんだから。
まだ分かんないの?
あんたの人生、見てたの。
もしかして…。
静香はやっと気づいた。
自分はこの女にずっと見られていたのだと。
そう。前に行ったことあるの。
走馬灯株式会社に。
ごゆっくり。
もって、2時間くらいかな。
と言って、美沙子は部屋を出て行った。
部屋にはすでに練炭が焚かれている。
やだ!死にたくない!
待って!ちょっと待って!
ドアに外から釘を打つ音が聞こえてくる。
手足が自由にならないまま、静香はドアの前に座り、何度も背中でドアを叩き続けた。
開いてよ!開いてよ!
何度も何度も…背中が痛くなるほどにドアに体当たりを繰り返した。
やがて意識が朦朧として…
静香は、いつの間にか走馬灯株式会社のあのテレビの前にいた。
画面には男の人が映し出されている。
お父さん…
静香は逆上がりの練習をしているようだった。
「ほら静香、もう1回やってごらん。」
「もういい!静香、逆上がりできなくてもいい!」
「静香。この先の人生も色んな壁にぶつかるはずだ。
でもな、何回壁にぶつかっても絶対諦めるな。
次の1回で、きっと何かが変わる。」
「分かったか?」
「うん」
「よし。いい子だ。じゃあ、もう1回だけ……」
まさか 、これって…。
本物の走馬灯か…
気づくと、静香はやはり手足を縛られてあの部屋に座っていた。
「次の1回で、きっと何かが変わる」
次の1回で、きっと何かが変わる。
静香は、思いっきり背中でドアに体当たりし……
ドアは壊れて静香ごと外へ倒れた!
あははは・・・・・
はははははは…はははは…ははは…
静香は笑った。泣きながら笑った。
仰向けに寝転がって、空を見ながら、いつまでも笑った。
私、何で自殺なんてしようとしたんだろう…。
そんな静香を見ている人物がいる。
「私、何で自殺なんてしようとしたんだろう…。」
「もう二度とこんなこと……」
画面の中で縛っていた手足の紐を自力でほどき始めた静香…
ねえ。
この映像、雪村静香が今、実際にリアルタイムで見てる人生だよね?
はい。
美沙子は神沼にそう聞くと、荒々しく部屋を出て行った…
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決して意外性があるとは言い切れないものの……。
佐藤仁美さんの演技の怖さで見切った回。
さすがですね。(さすがBBA力…)
まぁ、全ては静香の自業自得であり、他人にした仕打ちが復讐となって
我が身に返ってきたというところ。
同じ時計だから何だって言うの?
あんなことで他人をクビにしたりするその傲慢さが元凶なんだよ。
あの後、きっと、また美沙子は静香の元へ戻って、今度こそ完全に沈めるんだろうなぁ…
と、想像力の働く終り方は好き。
美沙子も走馬灯株式会社をすでに体験済みだったってところが、
今回は仕組みとしては面白かったところですね。
すいません…2週間遅れレビューでした。
「走馬灯株式会社」は、放送地域によって放映日時が違うのでチェックを。
TBSテレビ(TBS)・静岡放送(SBS)…月曜 24:20 – 24:59
中部日本放送(CBC)…(7日遅れ)月曜 24:50 – 25:30
毎日放送(MBS)…(8日遅れ)火曜 26:40 – 27:20
山陽放送(RSK)…(14日遅れ)月曜 23:50 – 24:30
南日本放送(MBC)…(14日遅れ)月曜 24:10 – 24:50
北陸放送(MRO)…(14日遅れ)月曜 24:25 – 25:10
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【キャスト】
神沼…香椎由宇
・Disc6ゲスト
雪村 静香(エッセイスト) – 佐藤江梨子(幼少期:野村ゆあ)
風間 美沙子(出版社記者) – 佐藤仁美
土井 和孝(雪村のマネージャー) – 小村裕次郎
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走馬灯株式会社 各話あらすじ
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