【息もできない夏】第2話

私には社員になる資格がないんです。

出せる書類がないんです。

私は。
私には戸籍がないんです。

私は存在しない人間なんです。
パスポートも取れません。だからパリにも行けません。
それに社員になる手続きもできません。

だけど、時間はかかるけど戸籍をつくるために母と一緒に頑張っていきます。

私は私なんだって、そう思って頑張っていきます。

 

「息もできない夏」第2話

　　　　

 

倒れた玲は救急車で運ばれ、入院になった。

駆けつける母、葉子。

しかし、病室の玲は葉子を拒否した。

 

出てって。

玲？

もういい。出てって。

ごめんね。お母さんね…。

お母さんは…お母さんは私を守ってくれない。
これ以上言い訳なんて聞きたくない！
親だなんて思えない。

出てって。 顔も見たくないの！

 

玲には知らない男が1人付き添っていた。

 

いいんですか？
今回は大事に至らずに済みました。

でも、もし玲さんがもっと大きなケガをしていたら、何か病気にかかったとしても
今のままでは医療サービスも受けることもできません。

就職だって…。

関係ないじゃないですか。

お母さんが頑張らなければ今のまま何も変わらないんじゃないでしょうか。

すいません、あなた何なんですか？

区役所で臨時職員をしています。先日玲さんが…。

あなた方が何をしてくれたっていうんですか！？
無責任に物を言わないでください。
私たちに関わらないでください。

 

葉子は病院の窓口で玲の医療費を自費で清算した。

10万9532円。

今まで丈夫で大きな病気にかからなかったから、保険が利かない事で
こんな思いはしたことが無かった。

ため息をつく葉子。

 

夜、職場の同僚、純が無断欠勤の事を明日店長やみんなに謝れと優しく言いに来てくれた。

職場が温かければ温かいほど申し訳ない気持ちが大きくなる。

 

翌日、店長の衣里には当然欠勤の事を問い詰められた。

怪我しちゃって……。

としか言えない玲。

衣里は、無断欠勤の事も玲が社員になるための書類を用意していない事にも
戸惑っていた。

しっかりした子だから正社員に推薦したのに…。

 

玲は家に帰ってからネットで質問してみた。

「自分で戸籍を作るのに何から始めたらいいか分かりません。
必要なものなど教えてもらえませんか？　:アップルパイ」

 

ほどなく掲示板に回答が入る。

 

「アップルパイさん、こんにちは。
状況が分からないと詳細は分かりませんが、母子手帳などいくつかの書類が必要なようです。

それから出生証明書特別措置で卒業した場合はその学校の証明書。
更に子供の頃の写真そしてあらかじめ事実関係や状況経過を書いたお母さんの申述書があれば、
アップルパイさんの戸籍を申請することができると思います。　:ウイスキーボンボン」

 

翌日の昼、衣里は玲に区役所に行く時間をくれた。
しかし、玲は当然、役所に行かなかった。

休みをあげても手続きをせず、言い訳もしない玲に衣里は苛立った。

もういい。そんなんだったら辞めてもらっても構わないから！

そう言われて、初めて玲は何とかする、と約束した。

 

慌てて家に帰った玲は、母子手帳を無我夢中で探し回った。

葉子は玲を見て慌てた。

 

お母さんが協力してくれないなら私1人で何とかする。
母子手帳持って、戸籍つくりに行く！

私、私、このままだとお店辞めなきゃいけない！

 

泣き出さんばかりに探し回り、母子手帳をついに見つけた玲は、
一緒に落ちてきた写真に驚いた。

 

そこには、明らかにひどい暴行を受けた傷だらけの母の写真がいっぱいあった。

慌てて写真をかき集め、胸に押し抱く葉子。

 

18歳のとき…結婚して。

駆け落ち同然で…北海道から。…でも…。

 

結婚した男は執拗に葉子に暴力をふるい続けた。
DVに耐えられなくなった葉子はシェルターに逃げ込み…そこで父と出会った。

 

離婚届…出したって言ったのに、出されてなくて…。
ずっと追われて、いつか殺されちゃうんじゃないかって。

玲を隠さなきゃ、玲を隠さなきゃって。

崩れそうになって震える母の肩を玲は支えた。

ごめんね。もういいよ。分かった。

 

これが、自分が出生を隠された秘密だったのだ。

出生届を出せば元の夫の戸籍に玲の存在が記され、子供が生まれた事を知られる。
葉子は、暴力から自分と子供を守りたくて逃げていたのだった。

 

ごめんね。
お母さん変わるから。
お母さん、変わるから…。

玲、戸籍、作ろう。
戸籍、ちゃんと作ろうね。

 

母は震えながらそう言ってくれた。

 

翌日、玲は衣里に退職する旨を告げた。

 

どうしてなの？

私には社員になる資格がないんです。

資格？

出せる書類がないんです。

私は…私には戸籍がないんです。

えっ？

色々な事情があって戸籍がないんです。
私は存在しない人間なんです。

パスポートも取れません。だからパリにも行けません。
それに社員になる手続きもできません。

だけど、時間はかかるけど戸籍をつくるために母と一緒に頑張っていきます。

私は私なんだって、そう思って頑張っていきます。

本当にすいませんでした。

 

静まり返る厨房…。

しかし、衣里は言ってくれた。

 

どうして黙ってたの？
そういう事情があるなら早く言いなさいよ。

ぎりぎりまで手続きは待とう。
本社も説得する。店も辞める必要はない、と。

みんなも、そう言ってくれた。温かかった。

 

はい。頑張ります。
ありがとうございます！

玲は心からみんなに頭を下げた。

 

あなたが小学校に入るころまでには何とかしようって。

ここの区だったらね、学校に通えるって分かって引っ越してきたの。
だけど、お父さんが亡くなって私1人であなたを守りきれる自信がなかった。

玲を守らなくちゃいけないのに、親として当たり前の責任を果たすことができなくて、
何が本当にあなたのためなのか正面から向き合おうとしなかった。

幸せになってほしいって。
心から愛してるのに。

こんなにつらい目に遭わせて、苦しめて、親として失格ね。

 

葉子はそう言ってくれた。

やっと前を向いて歩けると玲は思った。

 

翌日、玲は母と区役所に行くために職場を早く上がった。

母とは役所の前で待ち合わせをしていた。

途中で祖母に会って声をかけた。

 

おばあちゃん。

あら玲、どうしたの？

今から区役所に行くの。

 

祖母は何もかも知っているようだった。

 

今まで放っておくなんてね。
いろんな手段や方法もあったのに、一体どうするつもりなんだろうって
ずっと思ってたのよ。

そうだったんだ。

玲は苦笑した。

祖母は母の事をずっと苦々しく思っていたんだ…。

 

お母さんと協力して戸籍をつくることにしたんだよ。

ずっと逃げてきたのよ。あの人は18年も。

逃げ癖って一生直らないのよね。

 

大丈夫だよ。

じゃあ行ってきます。

 

しかし

約束の2時になっても母は現れなかった。

どんなに待っても…。

そして、携帯にも出てくれなかった。

 

葉子の携帯は、パスの中に置き去りにされていた。

葉子はバスの中から見たのだった。

 

ずっと逃げ続けてきた…その男を。

 

　　。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

えっと…「離婚後300日問題」については、第1話の記事の感想欄に詳細があります。

要するに
「女性が離婚後300日以内に産んだ子どもは血の繋がりなど無関係に前夫の戸籍に入る」

という法律に伴なった問題です。

この場合は、大抵においてはこういう…つまりDVに遭って逃げているから出生届を
出せない、というケースは多いらしいです。

つまり…

そこまで解っていて、何でこのままになってるの？この法律！？

というような話ですね。

だからこそのドラマ化なのでしょうが…。

 

いやぁ…しかし、甘いな。

玲には同情する。

きっと、病院に運ばれた当日は自暴自棄になっていて、死んだような気持ちで、
だから欠勤の連絡もしなかったのでしょう。

でもさーーー、結局、職場に戻ったんなら、無断欠勤した言い訳だけはしようよ！

救急車で運ばれて1日入院した…だけで充分じゃないか。

それだけはするのが社会人としてのルールだと思う。

 

戸籍がない事を言い出せない気持ちは何となく解る。

奇異な目で見る人だっているでしょう。
学校だったらイジメに遭う可能性もあるかもね。

職場にも玲に嫉妬してるみたいな先輩もいるしね。

可哀想だけど、全部店長に話したときは、視聴者目線ではスッキリした。　

 

そして…母だよねーーーーー。

 

こっちも気持ちは解るけど……。

戸籍のないまま子供が幸せになれるって本当に思ってた？

先週「応援したいんです」とか言ってたし、フランス語の本とかもあげていた。

でも、それは上辺だけの事だって自分でも解っていたはず。

このままじゃ娘は外の世界に一切出られないじゃないか。

今、バイトだって住民票が要るとこあるよ。

 

それに……

どうやって知ったのか知らんけど、

すでに祖父だって人(北大路欣也さん)にバレてるじゃないかー！

 

要のDVシーンがリアルで恐かった。
いいのかこんな役……

 

そして、ついに本格逃亡しちゃった母。

 

これじゃ戸籍どころじゃない……。

 

これから、意地悪っぽい先輩の嫌がらせとか…
樹山と一緒に暮らしてる謎の女性とか…

色々と絡んでくるんだろうな～。

ドロドロしそう。

 

母～～～…早く帰ってきてあげてーーー！・泣

 

　。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

アルバイト先の洋菓子店『パティスリー・シャルロット』を飛び出した玲(武井咲)は、転倒して
負傷し、救急車で病院に搬送される。
偶然その場に居合わせた樹山(江口洋介)は、救急隊員からの要請で搬送先の病院まで同行した。

ほどなく、玲の母・葉子(木村佳乃)が病院に駆けつける。が、目を覚ました玲は、顔も見たくない、
と葉子に言い放つ。
あくる日、退院した玲は自宅に戻る。
その夜、玲のもとに、アルバイト仲間の純(清水一希)が訪ねてくる。
店を飛び出したまま無断欠勤した玲のことを心配してきたのだ。純に励まされた玲は、翌日、店に
出勤した。
店長の衣里(橋本麗香)は、玲から事情を聞こうとした。しかし玲は、何も答えることができない。
衣里は困惑しながらも、明日の昼に区役所へ行って、正社員採用の手続きに必要な書類をもらって
くるよう玲に命じた。

その夜、玲は、自分と同じように無戸籍に苦しむ人たちが集まるサイト『ひまわり』に、戸籍を
作るために必要なものを教えてほしい、と書き込む。
そこで玲は、母子手帳や、事実関係や状況経過を記した母親の申述書などが必要だと知る。
一方、樹山は、葉子を訪ね、戸籍を作る際の制度が以前とは変わっていることを伝える。
樹山は、申請をすれば知られたくないことは隠すことができることを葉子に告げた。
しかし葉子は、前の夫に玲の存在を知られることを恐れており・・・。

(上記あらすじはYahoo！TVより引用)

 

よろしければ→【2012年7月期・夏クールドラマ何見ます？】ラインナップ一覧とキャスト表と展望

　　
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【キャスト】

谷崎玲 – 武井咲
樹山龍一郎 – 江口洋介
谷崎葉子 – 木村佳乃
草野広太 – 中村蒼

井川さつき – 原幹恵
亜沙美 – 霧島れいか
谷崎麻央 – 小芝風花
田所光子 – 濱田マリ

鮎川宏基 – 要潤
中津大輔 – RIKIYA
安倍川衣里 – 橋本麗香
西川純 – 清水一希
筒井宗太郎 – 勝 信

谷崎香緒里 – 浅田美代子

夏目周作 – 北大路欣也

 

　　

 
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