【闇金ウシジマくん】Season2 最終回と総括感想

オレたちは犯罪者だ。

でも、誰にも金を借りられない債務者が最後に駆け込むのが
ここなんだよ。

 

闇金ウシジマくん Season2

     

 

※このレビューは『闇金ウシジマくん Season2』の結末に触れています。
このドラマはこれから放送される地域もあるので、ネタバレにはご注意ください。

 

ドラマ『闇金ウシジマくん』は、いわゆる「底辺」社会に生きる人間たちの群像劇である。

これをただ笑って見ていられるお金持ち層にはどう映るのか解らない。
個人的には自分だってどうなるのか解らない明日。

「ばかだ~…こいつ」…と失笑しつつも、どこか心がザワザワする。
完全に他人事とは言い切れない人たちがテレビの中で右往左往する姿を見る…

そんな木曜深夜の一時が終わってしまった。
寂しい。ものすごい喪失感。

 

タイトルが「ウシジマくん」なのだからウシジマくんは一応主役なのだろうが、
このシリーズの本当の主役はウシジマくんの会社「カウカウファイナンス」の
債務者たちである。

彼らは底辺でクズでどうしようもない…。
働いても働いても楽にならず金を借りる…という人間はほぼ皆無。

働かずに女や男やギャンブルに狂い犯罪に手を染める。
自分を飾りたてることに必死で「夢」を理由に借金まみれ。
親の年金や家屋まで食いつぶして、それでも前を向けない。
挙句の果てには裏社会……。

ブラックリストでどこからも借金できず、辿り着く最後の砦「闇金」。

 

金、貸すよ。
うちは金利は10日で5割だけど。

 

借りたらその金で立ち直るわけではない。
ますますエスカレートして堕ちていく…。

 

ウシジマくん演じる主役のはずの山田くんには、業務連絡以外ほとんどセリフがない。

決まって毎回出てくるセリフは、

「あ、そう。」
表情もほとんどない。
激しく怒鳴ったりすることもない。

いつも抑揚なくぶっきら棒でいつも無表情で…そして恐い。

こんなに表情が無くてもウシジマくんの心の中にあるものが何となく解る。
その演出力と山田くんの演技力が凄い。

 

今シーズンも様々な債務者がカウカウファイナンスを訪れる。

ホストクラブにハマって子ども置き去りのシングルマザー・ハル子。
そのホストクラブで「雇われ店長」という名の奴隷生活をしていた隼人。
親の年金を当てにして食っている丸山。
読モのランキングを上げたいがために借金がかさんでいくジュリア。
多重債務者のフリーター…というよりパチスロ狂いで引きこもりの宇津井。
芸能界で大成する夢のために金を使いまくる身の程知らずな中田。

今回は隼人に巻き込まれるタカダ、ギャンブルに狂って金の価値を忘れるエザキ…と、
カウカウファイナンス内部にも波乱が訪れる。

 

ウシジマくんは、債務者たちの行動に特に口は出さない。

貸したものがどんな形でも返ってくればそれでいい…というのがウシジマくんの主義である。
基本、客はクズだと思っているし、そう言っている。

けれども、クズに対してとことん堕ちていく事を身を持って覚えさせている…
教育しているようにも見えてしまうんだよね。

つまり…底辺界のアンチヒーローに見える。

 

今回は「繋がり」と「友情」の話がテーマだった…と自分的には思っている。

だから、ウシジマくん自身のお友達である情報屋イヌイも登場。
元々、一緒に温泉行っちゃうような仲良しの綾野くんがキャスティングされているからな。
この2人の駄菓子屋シーンが癒しどころだった。
  闇金ウシジマくん1

 

テーマは『走れメロス』だ。

同級生だったために相保証させられた森下と丸山は、丸山の逃亡によって森下が母親の香典で
返済を終わらせる。友情は借金の重さに勝てない。

同じ方向を向いて生きていたはずの隼人とタカダは、隼人の暴走をウシジマくんが
力でねじ伏せることで終了。それでもタカダは隼人に50万を「やる」。

闇金は犯罪でも「信用」で顧客と繋がっていると言うカウカウファイナンス。

オレたちは犯罪者だ。

でも、誰にも金を借りられない債務者が最後に駆け込むのが
ここなんだよ。

結局…最後に助けてくれるのは架空の繋がりではなく生身の繋がりなのである。

 

長年、ネットの世界に引きこもり、パチスロで憂さを晴らし、親のすねをかじって
生活し、カウカウファイナンスから借金してはまたパチスロしていた宇津井は、
家を失って初めて現実を直視する。

散々、金づるとしてしか扱っていなかった親を失いそうになって、ボロボロに
なるまで走る。

辿り着いた先にあったのは「生きて働いて返す」という現実だった。

パチスロを辞め、親と自分のために働く。
月15万の老人介護の仕事と夜中のバイト。
身体はきついが生きている実感はある。

 

ラストの宇津井のモノローグに泣く。

 

朝起きてやることがある生活は素晴らしい
誰かが俺を必要としてくれている生活は素晴らしい。

俺は最近やっと簡単なことに気付いたんだ。
目の前の現実から逃げれば逃げた分だけ居心地の悪い所へ堕ちていく。
問題と向き合う勇気。その面倒を乗り越えられれば少しずつ解決に向かうはずだ。

出会った全ての人に感謝しよう。
ちょっと遅いけど、自分の力で歩いて行こう。
人生をやり直すために。

 

キレイごとみたいな話だ…と思うかもしれないけれども…
ここまで堕ちてしまった人間が真っ当に生き直そうと頭を切り替えるために
どれだけの体験と時間が必要か。

それが解るやつだけしか感動できないだろうな…。
宇津井のエピソードには現代に生きる孤独な人間が陥ってしまう闇がハッキリと見えた。

先日見てきた映画『東京難民』でも描かれていた事だけれども、1人の人間が
「変わる」ために必要な体験というのは本当に想像を絶するほどのものなのである。

それを得なければ変われないほど…底辺の闇は深い。

 

それを得ても光の中で生きる道を閉ざされた人たちもいる。
堕ちて行った闇が深すぎたからである。

本当に『走れメロス』ばりに親友のために頑張ったキミノリは裏帳簿を盗んだ事で消され、
大きな夢を見過ぎて闇社会に足を突っ込んでいたナカタは口封じのために消された。

中田のやっていた事は全く同情に値しないが、最後だけ友情という繋がりを
守り抜いたことは賛辞に値する。

…でも、お釈迦様がたらした「友情」という蜘蛛の糸は掴み切れなかったわけだ…。

 

元凶のG10がハブによって葬られたからといっても、ちっともスッキリしない
後味悪い結果…自業自得だよ。自業自得なんだけどね…。

 

友達は命がけで庇ったのにな。

 

「客には同情しねえ。」主義のウシジマくんの口から珍しく出た本音。

 

明るい日差しの中、中田をおぶって海まで行こうというキミノリ。
一緒に歩くパピコ。

この穏やかな青春風景が、本当はウシジマくんの理想なのかも知れない。

 

ちなみに、中学生が『走れメロス』の距離と時間を検証した結果、メロスはほとんど
走っておらず歩いていた事が発覚したらしい。←ホントかよ。友情って……友情って……。

 

【関連記事】
・映画『闇金ウシジマくん』感想 映画@見取り八段
・映画『闇金ウシジマくん Part2』感想 映画@見取り八段


ショップの開店に失敗した中田(入江甚儀)をハブ(南優)が拉致。
親友のキミノリ(三澤亮介)は中田を救い出すために、ウシジマ(山田孝之)にある取引を
持ちかける。
ウシジマは取引の場に戌亥(綾野剛)と柄崎(やべきょうすけ)を向かわせ、中田が
監禁されているマンションに向かう。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

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※キャスト

丑嶋馨(ウシジマ)…山田孝之
戌亥(いぬい)…綾野剛
柄崎(えざき)…やべきょうすけ
高田(たかだ)…崎本大海
神戸摩耶…久保寺瑞紀

中田(なかた)…入江甚儀
森田(キミノリ)…三澤亮介
隼人(はやと)…武田航平
ジュリア…佐々木麻衣
太田ハル子…朝日奈あかり
宇津井優一…永野宗典
丸山満男…平田実
森下…金谷マサヨシ
吉永美代子…亀谷さやか

ハブ…南優
G10(ゴトー)…藤本涼
幸…絵美里
パピコ…紗倉まな
葉山朋子…希崎ジェシカ
ユカ…稲川なつめ
ニュー大原ガールズ…池田夏希、鈴木咲、神谷まゆ
さまんさ…内田滋
慶次…徳山秀典
宇津井の父…宮川浩明
宇津井の母…島ひろ子

大原正一…徳井優

 

※スタッフ

脚本 … 福間正浩
演出 … 山口雅俊、白川士、遠藤光貴
企画・プロデュース … 山口雅俊
音楽 … 末廣健一郎、MAYUKO、神坂享輔

原作 … 「闇金ウシジマくん」真鍋昌平

主題歌 … 「巣立ち」鴉(からす)
      

 

 

 

コメント

  1. 脱税も脱税のための裏帳簿を盗み出すのも盗品の売買も持ち主との不正な取引も損壊した遺体を許可なく山中に埋葬するのも犯罪です(山田孝之)

    子供のころは様々な幻想に浸るものだ。 世界の人口の図形を考えてみたりする。 世界を底辺と頂点で考えれば底辺×高さ÷2で三角形となる。 しかし、未だに世界を征服した帝王は地球の歴史に登場していないようなので・・・世界は台形に近いのかもしれない、つまり(上の底辺+下の底辺)×高さ÷2である。 上の底辺が

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