分かります。
みんな「前へ進め」って言うけど、とどまるのってそんなに駄目な事なのかな?
まだ前になんて行きたくないのさ。
昨夜のカレー、明日のパン 第1話
木皿泉脚本、久々の連ドラ。
木皿泉さんのドラマはほとんどが日テレで制作されており、日テレの河野プロデューサー
との相性が一番だと思っている。
だから、ちょっと不安があった…。
けれども、初回からそれは吹き飛んだよ。
泣いた。
可笑しくて温かくて切なくて…間違いなくこれは木皿さんの描く世界。
冒頭はテツコとギフの朝食風景。
フライパンで音立てるハムエッグ。
隣りには鍋で炊いたご飯。
炊きたてご飯に目を輝かせるギフの茶碗にテツコはさっさと仏壇から
下ろしてきたカチカチの古いご飯をぶっ込む。
ねえ、これ食うの今日も俺なの?
えっ?だって奇数の日でしょ。
俺、昨日食ったような気がするんだけど。
だって昨日が31、今日が1日でしょ。
俺、何かすごく損してない?
だって最初に決める時、「おれ、絶対奇数ね」って言ったじゃん。
まあ…そうだけどさ。
そんなに食べるの嫌だったらこれから捨てる事にしましょうか?
捨てるの?
いや、捨てるのはな~。
万が一捨てる事にした場合、罰が当たるのは俺でしょ?
まあ、そりゃ、言いだしっぺですからね。
だな?
しぶしぶ、茶碗大盛りのカチカチご飯に箸を付けるギフだった。
なぜ、そこまでして仏壇のご飯を食べるのか?
テツコは覚えていない。
それを食べるとカッパと相撲した時に勝てるらしい。
ウチの実家では頭が良くなると言われていたけどね。
ないよね、そんなシチュエーション。
じゃあ食べなくていいんじゃない?そのまずいごはん。
事もなげにそういう会社の同僚・岩井さん。
岩井さんはテツコの今カレだ。
私もそう思うんだけどさ、習慣づいてるっていうの?
何か止める理由もないし、まあ、何となく、ズルズル。
義理のお父さんと住んでるのもそうなんだ?
えっ?ちょっと…。
いや、だって旦那が死んだら普通実家に戻るでしょう。
岩井さんは、若い嫁がダンナが亡くなってから義父と2人で住んでいるなんて
世間から見たら変だと言う。
ここまで見て、初めて実の父娘ではないと知った。
原作知らずで情報も何もなく見ているから。
確かに…私だったら絶対にダンナが居ない家で義父と2人暮らしなんて
想像できない。絶対に出るわ、と思う。
岩井さんは、義父がテツコに面倒見させて甘えていると言うのだった。
ここで、テツコは思う。
思い出した。
何で私たちが硬いごはんを食べるのか。
どんなに悲しい時も何かを食べなきゃ生きていけないという事を思い出すためだ。
多分、その事は岩井さんには一生かかっても分からない事だと思う。
「あの日」、テツコとギフは喪服で具のないラーメンを作って食べた。
岩井さんのプロポーズはテツコの耳には入らず、お喋りな同僚の耳に入る。
あっという間に会社に知れ渡り、パソコンのメーラーは「おめでとう」で
いっぱいになり、くす玉まで作られちゃう始末…。
極めつけに、一番知られたくないギフにまで知られてしまう。
噂話を聞きつけて平然とした顔をしながら実はショックなギフ。
結婚なんかしないっつうの!
ぶっきら棒に誤解を解いて、ギフと2人で夜食のシュウマイをつつく。
あっ、知ってます?あのパン屋さん、無くなったの。
あのパン屋さんって?
ほら、一樹が入院してた時よく行った。
あっ、夜開いてるパン屋さん。
うん。
何か帰り道、貼り紙が。
そうか無くなったのか…。
あのころ病院でよく待たされてたじゃないですか。
うん。検査とか会計とか詰め所とかずっと待ってたよな~。
待つだけで別に何もしないのに…帰り道ヘトヘトでしたよね。
二人とも口も利けないほど疲れてたよな。
病院の帰り、2人でヘトヘトになりながら寒い夜道を歩いて。
灯りに誘われて店に入った。
焼きたてのパンの匂いに思わず顔がほころんで。
温かい食パンの袋を交互に持って、笑いながら歩いた。
「あったかい…。猫抱いてるみたい…。」
「ほんとだ。生きてるみたいだ…。」
「何だ、私、笑えるんだ」ってあの時思った。
「何だ、悲しくても幸せな気持ちになれるんだ」って。
何でもない事のようにしみじみと振り返る。
ああ、そっか…と思った。
この2人はこういう思い出をずっと語りあってやってきたんだ。
息子を失くした父。
夫を失くした妻。
1人の人間の闘病生活を辛い思いで看取り、喪失感を共有し、
そんな中でも生きていけることを再確認した。
もう、家族というよりも共通の思いを抱えた「同志」であり、それは他人には
絶対に理解できない事なんだ。
この家は2人にとって共通の思いで溢れた箱庭であり、ここにいる事は
悲しみと言う名の癒しなんだ。
そりゃ居心地いいだろう…。
悲しい思い出はいつか郷愁に変わり、その中にいる事は何よりも気持ちいい。
つまり…ここから出なければ2人は前へは進めない。
みんな「前へ進め」って言うけど、とどまるのってそんなに駄目な事なのかな?
まだ前になんて行きたくないのさ。
隣りに住む引きこもり元・CAのムムムさんにテツコは言う。
とりあえず、ギフもテツコも仕事に出ている。
思い出世界に引きこもっているわけではない。
ちゃんと友達もいて、外と接して生きている。
こういう、ちょっと見平気そうな人の方が傷が見えない分、重いのかも知れない。
たぶん、生きていけるのはお互いがいるからで、それは依存なんだ。
でも、それじゃどうしてダメなの?
と、私も思うのだ。
どんな生活体系でも、どんな内面を抱えていても、とりあえず今、生きている。
気持ちよく幸せに生きている。
傷は失くさなければならない物だろうか。
ムムムさんの父・小田さんは娘の引きこもりを直視しない自分は卑怯だと言う。
だってほら…痛いの。痛すぎて直視できないの。
私だってね、最低の男ですよ。うちの嫁…。
テツコさん?
そう。それがね…まだ死んだ一樹の事を思ってるんだな~。
口じゃ言わないよ。言わないけど分かるんだ。
だからテツコさんはうちから出ていかない。
でね…俺は、それを利用してんの。
心のどっかでしめしめって思ってるんだな~。
最低の男でしょ?
最低。
俺たちもう終わってるよね?
終わってる。
酔って嘆くおじさん2人が可愛い。
ギフはテツコを出さなきゃならないと思っている。
けれども、テツコは出て行こうとは思わない。
誤解の「結婚おめでとう」くす玉が、小田さん家の「定年退職お疲れ様」くす玉に
変わった所に、笑いながら泣いた。
そうやって傷を抱えながらも、お互いに思っているんだよね、ちゃんと。
仏壇の固いご飯を食べるのは、どんなに悲しい時も何かを食べなきゃ
生きていけないという事を思い出すため。
具のないラーメン…それは2人が乗り越えて来た虚無感そのものだった。
たぶん、テツコがギフの元から去る事が最終的に辿り着く結末なんだろうな…
と、思いつつ、この2人にいつまでも一緒に居てほしいという複雑な気持ち。
これが切なさになって初回から襲い掛かってくる…
木皿さんの作品はいつもそうだよ。
結果、それは切なくても温かい思い出に変わるんだけどね。
でも、寂しいんだよ。・泣
しかも、キャスティングがずるい……
見てる方だって、源ちゃんのこと、忘れないでーーーって思うじゃんーー!!・泣
温かいご飯は、具のないラーメンでも美味しそうで…
2人が紡いできた思い出の7年間は食事でも語られる。
切なすぎる展開が予想されても見ずにいられないのも木皿作品の魔法。
今期、日曜日は混み混みなんだけど…
出来る限り簡単でもレビューはしたいと思ってます。
それは、作品自体がたぶん私の人生の出られない箱庭になるからだ。
『セクロボ』や『野ブタ』や『Q10』みたいに。
寺山テツコ(仲里依紗)は7年前に夫・一樹(星野源)をガンで亡くし、ギフ(義父)の
連太郎(鹿賀丈史)と二人暮らし。
ある日、テツコは恋人の岩井さん(溝端淳平)からプロポーズされる。
そのことをギフは、義理の妹・朝子(片桐はいり)から聞き、なぜか動揺してしまう。
テツコとギフには忘れられない思い出があった。
それは一樹が入院していた頃、病院からの帰り道、焼き立てのパンを抱いて
帰った時のことだった…。
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
よろしければ→【2014年10月期・秋クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表
※キャスト
テツコ/寺山徹子 … 仲里依紗
ギフ/寺山連太郎 … 鹿賀丈史
岩井さん/岩井正春 … 溝端淳平
寺山一樹 … 星野源
ムムム/小田 宝 … ミムラ
小田和正 … 小倉一郎
小田みゆき … 筒井真理子
秋山朝子 … 片桐はいり
寺山夕子 … 美保純
ギダリエ/柳田理恵子 … 小野ゆり子
竹内虎尾 … 賀来賢人
山ガール/小川里子 … 吉田羊
サカイ君/坂井良一 … 福士誠治
※スタッフ
制作統括 … 磯智明
脚本 … 木皿泉
演出 … 茂原雄二、阿部雅和、佐々木詳太
音楽 … 阿南亮子
料理監修 … 高山なおみ
原作 … 木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』
主題歌 … プリンセス プリンセス「M」
公式サイト(終了) http://www.nhk.or.jp
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【 昨夜のカレー、明日のパン 】第1話
コメント
「昨夜のカレー、明日のパン」1 ☆☆☆
どんなに哀しくても、食べないと生きていられない。
そんな日々を共有した義父(鹿賀丈史)と、夫の死後も同居し続け7年になる主人公テツコ(仲里依紗)さん。 同僚岩井(溝端 …
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TBさせていただきました(^^)
笑わせながらも、切ない木皿ドラマ。この先もっと切なくなりそうなのに、目が離せないですよね
ところで
>>ここまで見て、初めて実の父娘だと知った。
これ、実の父娘ではないと…ですよね? こっそりお知らせまで。
「昨日のカレー、明日のパン」1 ☆☆☆
どんなに哀しくても、食べないと生きていられない。
そんな日々を共有した義父(鹿賀丈史)と、夫の死後も同居し続け7年になる主人公テツコ(仲里依紗)さん。 同僚井上(溝端 …
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すっかり忘れていたので、再放送を録画予約しておきました(涙)。
原作を読んだ時「ギフ」は小林薫さんでイメージしてました。
多分、あのドラマのせい。なんだっけ、満島ひかりが出てた。
タイトル浮かばない・・・。
鹿賀丈史さんなんだ。
それもいいな〜。早く観たいです。
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>くぅさん、「ムムム」さんですよ。
ほんとだぁ…(爆)ももも…なんかカワイイ…、じゃなくて、ありがとうございました^^;
とりいそぎ、お礼を~~!
いいドラマでしたね!
ほんと、泣かせようとせずに泣かされる…それが木皿泉脚本ですわ。
しばらく幸せな時間を過ごせそうです!
プレミアムドラマ『昨夜のカレー、明日のパン』第1回
「台風とくす玉」
内容
7年前に、夫・一樹(星野源)を亡くした寺山テツコ(仲里依紗)は、
今でも“義父(ギフ)”の連太郎(鹿賀丈史)とひとつ屋根の下で暮らしていた。
ある思い出が2人を結びつけていたのだが。。。。
ある日、会社の同僚で恋人の岩井(溝端淳平)…
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>もももさんの父
くぅさん、「ムムム」さんですよ。
よかった。昨日から何回繰り返して観たことか。泣かんとこおもうても泣けてくる。
じーんとして、いい。と思い、好きだなーっと貯め込んだ息をはきだすように思う。
思いをぎゅっとだきしめるような感じ。音楽がまたよさをひきたててる。
切なくて。やさしくて。温かくて。キャスティングがニクイよね。一樹が源ちゃんなんだもの。