【家族八景】 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad 第10話 最終回と統括感想

「芝生は緑~高木家編~」

「隣の芝生」は、実態が見えれば意外と青く見えなくなったりする。
ちょっとでもイヤな部分を見れば、それでも愛し続ける事はあまりないという事。

つまり…そんな程度の情熱なのである。

「家族八景 Nanase,Telepathy Girl’s Ballad」第10話

     

簡単感想で。

火田七瀬は、人の心が読めてしまう能力者である。

今回、七瀬が勤めているのは、高木家。
昨日まで働いていた市川家の隣のお宅である。

旦那様は個人病院のお医者様。奥様の直子さんは専業主婦だ。

七瀬は、夫婦揃って隣の市川家の夫婦に興味のあるこの人たちに
情報網として雇われたのである。

旦那さまも奥様もお互いの事を心の中で罵りあっている。

そして、旦那さまは市川家の奥様に、奥様は市川家の旦那さまに妄想を抱いている。

七瀬は思うのだ。

どんな性格の人間にも良い面と悪い面がある
長らく家政婦をやってきたおかげで、私はすでにひとかどの人間学者になった。

だけど、こんな人間は見た事がない。
隣同士に住む夫婦が、お互いに長所と短所をこんなにハッキリ裏返しに見ているなんて。

どんな誤解や錯覚にも、必ず真実は含まれているはず。
だとしたら、この4人が今のままでいる事は、むしろ不道徳な事なんじゃないか。

実験してやろう。
彼らの願望を私の手で実現させてやろう。
それが能力者としての私の倫理だ。

まずは、旦那さまから。

お隣ではずいぶん忙しかったんだろう?

と、声をかけてきた旦那さまに、向こうの旦那さまの忙しさを告げる。

それより大変なのは向こうの奥様です。本当にお気の毒。
全然自分の時間がないんです。

そうかぁ、そんなに忙しいのかぁ。
「そうか それじゃふみこむすきがないじゃないか」

あっ、でも、お昼の買い物のついでに商店街の「ひばり」って喫茶店でコーヒーを飲むのが
唯一の息抜きだと言っていました。

「ひばり」かぁ・・・オムライスとジャジャ麺が美味い所だな。
「ふみこんでやろう ずいずいふみこんでやろう」
「べつに いしゃとかんじゃが たまたまあった きっさてんで はなすだけだ」
「なんのやましいこともない」
「しぜんなことだよ」

奥様の方には、

お隣のご主人、明日から駅前のスーパーの現場入りだそうです。

そういえば、マドレーヌを随分お喜びでした。
また差し入れてみてはどうでしょう。

と、積極的に後押し。
やる気満々の奥様は、これで一気に心が動く。

「げんばのほうが つごうがいいわね ゆっくりはなせるし」
「おはぎ 20にんまえ ななちゃんに つくらせようっと」

翌日、七瀬はそれぞれの心の声を追った。
2人とも、それぞれの心をしっかり掴んだようだった。

ベランダから、市川家の奥様を窺うと、もうすっかり舞い上がっている。

「おしょくじだけして すむなんてこと あるかしら」
「たかぎさんのおくさん あなたいっつも わたしのこと ばかにしてたでしょ」
「いっつも むしして いないことにして」
「わたしのこと あまくみてたようね」
「あなたが しょうごさんを おいまわしているあいだに こっちだって
やることやってやるんだから」

お相撲の姿で息巻いているのだった。

市川家の旦那さまの声も聞こえてくる。

「あしたは なおこさんと ひがしにほんほてるや」

あれっ、と七瀬は思う。
確か旦那さまの方も東日本ホテルだったはずだ。かち合ってしまったらしい。

いや、そうなったらそうなったで構わない。
むしろ、どんな局面になるか見ものだわ。

しかし、翌日、どうも本当に2組はかち合ってしまい、失敗したらしい。

ぷんぷんして帰ってくる奥様の直子さん。

「あのひとったら なに」
「いつも きゅうしんじかんに じょうじに ふけってたんだわ」

旦那さまの初めての浮気を若干誤解しつつ、どういう態度に出るか考え悩んでいる。

「さきに どなったほうが まけなのよ」
「にやにやわらってやる」
「ただ おっとの かおをみて にやにやわらってやるんだから」

そして、市川家の旦那さまに対する毒づきも始まった。

「でもなによ あのひと」
「じぶんのおくさんに あったとたんに ふきげんになって だまりこんで」
「あんな りょうけんのせまい おとこだったとは」

評価は急降下である。

まもなく帰ってきた旦那さまの方は、妻の反応を想像して怯えていた。

「しかし なんて きがおもいんだ」
「なんで こんなことに」

「それにしても あのおんなには げんめつした」
「だんなに あったとたんに こどもみたいに わあわあなきはじめやがって」
「なんで あんな こどもみたいなおんなに ひとときでも 
きをひかれてしまったんだ」

こっちも、お隣に対する評価は急降下だ。

夫婦はソファに座り、お互いにニヤッと笑うとすぐに顔をそらせ・・・

「きんにくしつな おとこは たんぱくなんだ」
「わたしのほうが ねちっこくて いいにきまってる」

お互いに何もできずにホテルを出てきた事を知らずに、誤解したまま…
2人揃って寝室に消えて行った。

その夜、七瀬はすごい雄たけびを聞いていた。

「あの おとこに こうはできまい」
「あの おんなと こうしたのね」
「こうしたのか どうだ どうだ」
「どうよ どうよ」
「こうしたのね! こうしたのね!」

そうか。

これは挑戦。
そして同時に復讐でもある。

互いの肉体に衝撃を与えあう復讐。

嫉妬が、互いへの嫉妬が、激しい高まりを与えて…そして…!

そして・・・・・すべてが終わった時…

「あいしてる おまえは おれのおんなだ」
「あいしてるわ あなたはわたしの おっと」

そこには、今までになく満たされた夫婦がいたのだった。

負けた。
今回ばかりは。

断ち切れそうになった夫婦の絆を守るために互いの過ちを利用してでも
性衝動を高めようとする貪欲さ。

自分にはこの相手しかいないという事をどうにかして自分に納得させようと言う
都合のいいすり替え。

そして何より中年男女のとめどない強欲さに、私は負けたんだ。

まだまだ私には分らないような複雑な心が人間の中にはある。

七瀬は敗北感を感じながら高木家を出た。
「情報網」が必要なくなれば、お払い箱である。

高木家を出るときに、市川家の奥様を見かけた。
こちらも幸せそうに掃除をしていた。

私は人の心を読む家政婦。
心を読む時、その人がどんなふうに見えるのか、それはその家によって様々だ。

家には、家それぞれの空気があるからなのだろう。

この能力が私にとって何の意味を持つのかは解らない。

ただ人の心を覗く時、そこにはいつも驚きがある。

だから、私はこれからも、どこかの家でその家族たちと生きていくのだろう。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ふふふ・・・
と、いう最終回である。

七瀬の実験では、2組の夫婦は鉢合わせてメチャメチャに壊れる予定だったかも知れない。
しかし、それを切っ掛けに燃えてしまう人たちもいるのだという事…。

いくら心が読めても、七瀬にはそこまでの先行きは見えない。
人の気持ちは必ずしもコントロールできるわけではないのであった。

こと、色恋に関してはね。

まぁ…コメディタッチで後味の良い最終回。
ドラマとして、これならば
「今日も七瀬は何処かで家政婦を続けている・・・かも」
という体ができるから、余韻も残る。

実際には「家族八景」の最終話は「亡母渇仰」であり、人の心なんて二度と読みたく
ないほど絶望する七瀬は、今日はもう家政婦はやってないんだけどね。

「もっと人間を知りたい」と思って去っていく七瀬の方が前向きで、ドラマ向き。
これはこれで受け入れたいと思った。

全体的に、美しく恐ろしい映像は原作の世界を上手く再現して、たぶん過去に映像化された
筒井康隆原作の実写版としては、最高の出来だと思う。

登場人物の「心の声」を全話担当した木南晴夏さんの演技も素晴らしい。
映画・「20世紀少年」での原作から抜け出したような小泉響子。
あれで堤監督は木南さんの才能を見出したんでしょうね。

このスタッフで、ぜひぜひ今度は「七瀬ふたたび」を・・・

と熱望しちゃうんだけど…。いかがでしょう。

よろしければ→【2012年4月春期ドラマ一覧】ラインナップとキャスト表

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※キャスト

火田七瀬 … 木南晴夏

第10話

高木 輝彦 (40) … 大河内浩
高木 直子 (37) … 野波麻帆
市川 省吾 (37) … 西村和彦
市川 季子 (34) … 星野真里

※スタッフ

原作:筒井康隆
脚本:上田誠
演出:堤幸彦