失いたくないと思った。
夕焼けもQ10のちょっとダサい制服も。
その変な喋り方も。
どこからか聞こえてくる吹奏楽部の音も。
今、偶然ここにある何もかも
失いたくないと思った。
Q10がロボットだと知った中尾は、平太に誰にも言わない代わりに
オレにくれ、と言い出した。
そもそもオレのモンじゃないし。
と答える平太。
オレじゃなくても良かったんだよな。
たまたま自分が見つけて、そして押した、と言うだけのこと。
でも、へいたがおした。
で、へいたとあった。
そして、いま、ここをあるいている。
ちがう、かな?
Q10はクラスみんなの「音」をCDにして配っていた。
「深井平太の音」
「山本民子の音」
それは、1人1人の心臓の音。
Q10は、それで人や動物の識別をしているらしい。
逃げた校長の愛犬チロちゃんも、「音」で探して連れてきたQ10。
しんぞうのおとは、ひとりひとりちがうのだよ。
中尾にQ10を渡すと言ってしまった平太は
起動スイッチはどこ?
と聞かれ、躊躇ったのち、
奥歯、左の奥歯。
と答えてその場を逃げ出した。
うずくまる平太に声を掛ける栗子先生。
ポーカーフェイスできてないよ。
イヤなことはイヤって言えばあ?
言えないでしょ。
バラされたら、とんでもない事になるし。
柳教授だって、そう言ったじゃないですか。
そりゃあ言うよ。
だってそれが私の立場だもん。
でも、君が立っている所は私とは別のところ。
同じところに立つことはない。
中尾がやって来て、平太じゃなければリセットは出来ないらしいと言う。
早くやって。
と、せかす中尾。
Q10の自分を見る目が悲しそうに見えた。
口の中に伸ばした平太の手が止まる。
オレ、何処に立てば良いんですか?
それは自分で決めて良し。
平太はリセットを止める。
Q10は、あげない。
ネットで深井の恋人は人形だって言いふらすぞ!
中尾は半狂乱になって怒った。
平太は自分のした事に戸惑っていた。
どうしよう。
中尾は本気だよ。
だいじょうぶです。
大丈夫じゃないよ。
噂はすぐに広まるんだよ!
ある日からみんなに無視されて、オレはここに居ない事になっちゃうんだ。
Q10は笑って答えた。
でも、へいたはここにいる。
Q10はCDを出して平太に聞かせた。
それは、「深井平太の音。」
へいたはここにいます。
だれがなんといおうと、へいたはここにいます。
Q10は「人を元気にしたい」と栗子先生に相談。
鉄塔の下にいる平太に
たて線マークのシールを顔に貼って見せる。
おちこみ、たりませんか?
今度は「が~ん」と書かれたシールを胸に貼る。
やっと笑った平太。
どこまでも一緒に行けたら良いのに。2人で。
ずっと遠いとこまで。
Q10を手に入れる事が出来なかった中尾は怒り狂っていた。
ネットに「深井平太は変態!恋人は人形!」
と書き込もうとしていた寸前、富士野月子がいつの間にか立っていた。
慌ててパソコンを閉じる中尾。
力って怖いよね。
持った途端に自分の思い通りにしたくなる。
壊すつもりなんでしょ?今ある世界を。
本当に壊しても良い世界なのか、決して壊してはならない世界なのか、
それを見極められないうちは力は使ってはならない。
でも、欲しいんだよ。
ものすごく欲しいんだよ!
そう?
でも、私はもっと物凄い力を持っている。
あんたがネットに書き込んでも、そんな話、誰も通じない力を。
中尾に小さな地球のボールを渡して、月子は去って行った。
あきらめきれない中尾は平太を屋上に呼び出して土下座した。
キュートをオレに下さい!
平太は言う。
もう、物じゃないんだよ。
オレにとってQ10は物じゃなくなっちゃったんだよ。
中尾は
キュートは物だよ!
と叫んで、屋上の塀に駆け上った。
くんないんだったら、こっから飛び降りてやる!
深井は、人間の命とロボットと、どっちが大事なんだよ!
平太は自分の「深井平太の音」を確かめる。
そして言った。
Q10だ!
中尾を中に引き入れようとして、自分が屋上から落ちてしまう平太。
その時、中尾は幻想を見た。
地球ボールが割れて、月子が目の前に立っていた。
あ~あ、割っちゃった。
あんたはこれから、自分が壊した世界を生き続けなければならない。
深井平太を突き落とした現実を背負って。
力を使うって言うのは、つまりそういう事。
頭を抱えて泣き叫ぶ中尾だったが、我に帰ると地球は割れていなかった。
恐る恐る下を覗くと、平太はQ10に抱きとめられていた。
理科室でコーヒーを入れながら話す平太と中尾。
この部屋でさ、Q10を見つけた。
まだスイッチは入ってなくて、そこに座ってた。
たまたまオレが先に見つけたんだ。
だから気持ち解るよ。
それって不公平だもんな。イヤだよな。
何でオレだけ・・・って、恨みばっかり募ってさ。
深井はどうしてたの?
病気のこと。
恨まなかったの?不公平だって・・・
恨んだよ。
でも、恨んでも1つも良い事は無かった。
だから、
「この世は不公平なものだ。それで良いんだ。」
って思うことにしたんだ。
そしたら、そういう目にあっているのはオレだけじゃないんだって事に気づいてさ。
そうやって、オレは恨みとか、嫉妬とか・・・
そういうモンを少しずつ小さく折りたたんでいったんだと思う。
きっと今も自分の中にあるんだと思う。
武彦の病室で平太は
不安な夜は嫌いだ。
と言った。
そんなのいくつも超えてきたじゃん。
検査を終えた夜、手術の前の夜、同じ部屋に居たやつが死んだ夜。
忘れてた?
忘れてたって事は、お前は今は幸せなんだ、と武彦は言う。
もう、ここは、お前の場所じゃないんだな。
じゃあ、オレの場所は何処なんだよ。
それは自分で決めれば?
本当に決めて良いのかな。
武彦は笑って言った。
いいよ。
オレの場所は何処なんだろう。
平太は考える。
鉄塔だ。
Q10が、世界が生まれましたと言った鉄塔。
どこまでも一緒に行けたら良いのにと思った、あの鉄塔だ。
あの鉄塔がオレなら、あれは久保だろうか。
あっちは影山、あれは山本で、藤丘で、中尾で、河合で・・・
どれも空に向かって立っている。
それは、空に向かって声にならない声で叫んでいる。
わけの解らない気持ちを深く根元に沈めて、
互いに手を差し伸べるように
互いに頼りない電線だけで繋がっていて、ぽつんとひとり。
でも、地面に精一杯ふんばって
オレはここにいる
と、立っている。
ああ、そうだ。
オレたちは、ここにいる。
想いが募り過ぎて、書ききれないのです。
「3年B組の音」で号泣した。。。
平太のラストのモノローグは壮大な詩だ。
それだけでも充分。。。
自分の立ち位置は自分で決めて良いと、
だって、何処にいようが何をしようが、自分はこに居るんだから。
そして、私は考える。
私は何処に居るんだろう。
私がここに居ることを誰か解っているんだろうか。
私も空に向かって叫び続ける鉄塔の一つなのです。
だから、今日も泣けてしまうのでした。
キャスト
深井平太 - 佐藤健
久戸花恋(Q10) – 前田敦子
富士野月子 – 福田麻由子
山本民子 – 蓮佛美沙子
影山聡 – 賀来賢人
藤丘誠 – 柄本時生
河合恵美子 – 高畑充希
中尾順 – 細田よしひこ
久保武彦 – 池松壮亮
深井武広 – 光石研
深井ほなみ – 西田尚美
深井千秋 – 松岡璃奈子
小川訪 – 田中裕二
小川しげ – 白石加代子
岸本路郎 – 小野武彦
柳栗子 – 薬師丸ひろ子
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※この記事は2010年に楽天からFC2にお引越ししてきた記事です。
コメントは引っ越せましたがトラバの引っ越しはできませんでした。
ご了承ください。再トラバはいつでもお受けいたします。
コメント
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あのシーンも、このシーンも、
好きなシーンがいっぱいなのに、
いざブログに書こうと思うと何だか書けない・・・
このドラマの世界は、このドラマでしか
やっぱり伝えられないのかなー、と思ってしまいます。
それ位、心に響く世界。
薬師丸先生の言葉も良かったし、月子のセリフも良かったし、
民子が久保に向かって「声を出してなじれよ!」と、
たまった想いをぶつけるシーンも良かったし・・・
もう、思い出すと書ききれないですよねぇ。。
久保くんの、包み込むような温かさも
またいいんですわ。。
そして、最後の平太のセリフに、あの映像・・・。
あぁ、今回もおなか一杯。。
そして、次週が待ち遠しい。
私にとっても、かけがえの無い作品になりそうです。
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誰にも聞こえないけど
本当は一人一人トクントクンと鼓動を打って
「自分は生きている、ここにいる」と訴えている
あの「音」のCDは秀逸でしたね。
自分の現状を省みて
世の中が不公平だと思う
でも、みんな同じ
その不公平に感じる事は人それぞれだけど
同じように自分が求めるものに思い悩んでいる
それが鉄塔でありあの「音」だと感じさせる
見事な構成でした。
ホント毎回やられてしまいますね。
あ、ちなみに全然話は変わりますが
SWITCHで雑誌があってその今回の表紙がこれです↓
<small> <a href=" http://www.switch-pub.co.jp/switch/2010/11/index.html" ; target="_blank"> http://www.switch-pub.co.jp/switch/2010/11/index.html< ;/a></small>
このスリーショットはある意味、強烈です ̄▽ ̄b
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おもしろかった!!
次も楽しみにしています
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>自分の立ち位置は自分で決めて良いと、
>だって、何処にいようが何をしようが、自分はこに居るんだから。
単に、Q10の奪い合いの話かと思ったら、今回も深い話でしたね。
それがこのドラマの魅力ですね(^^)
来週、遂に月子とQ10の関係が分かるか、楽しみです♪(^^)
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>平太のラストのモノローグは壮大な詩だ。
そう。毎回思うけど、今回特にそう思った。
静かに、しっとりとしみてくる優しい詩。
ずっと聞いていたくなるよ。
私は、オープニングの「今、偶然、ここにある何もかも、失いたくないと思った」ってとこがガーーーっときたよ(笑
人によってそれぞれだね~(笑
あと武広のトマトの話もけっこう来たわ~
書いても書いても、書ききれないよね。
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必死で地面に足を踏ん張ってる鉄塔・・・
例え居心地が悪くても、自分が思う場所じゃなくても
今ここに立ってるのが現実だよなぁと
妙に平太の例えが心にしみちゃいましたわー。
物悲しい気持ちと、励まされたような気持ちとで
またまた複雑な余韻に浸ったのでした。
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台詞に泣かされる作品です。
そしてQ10の何気ないしぐさに、ロボットだと分かっていてもなんだかほろっとさせられてしまいます。
鼓動はやられました~(><)
すごい作品ですよね。
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>「3年B組の音」で号泣した。。。
私もこのシーンは好きです♪
小川の表情も良かったですよね。
彼も彼なりの“気持ち”が判明しましたし。
次回はいよいよ月子はQ10のことを平太に話しそうです。
どんなことを話すのか、楽しみです。