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『バッテリー』第10話「その日を再び」感想 (2016年ノイタミナ枠アニメ)

オレ、今気が付いたわ。

お前、原田巧の球、取った事ないんじゃ。

そうじゃ。
お前だけは絶対ぇにお前の球取ることができんわけじゃ。

気の毒にな。
お前は決定的なことを知らんのんじゃ。

あの一球を取った瞬間、俺だけが感じて知っとることを。

渡さん。
渡してたまるか。

 

バッテリー 第10話「その日を再び」

 

     

 

最終回直前で、突然のレビュー。しかもドラマじゃない(笑)

…といっても簡単に。

 

毎週、入れ込んで泣きながら見てきた。
原作も好きで、NHKのドラマ版も映画も好きで。

いつでも、不器用な少年たちがそこにいた。

野球に「情熱を傾ける」…というよりも、野球がそこにあるから、その才能を自覚しているから、ただ投げ続けるのだという申し子のような巧。

その一直線っぷりは母親を不安にさせ、身体の弱い弟を引きずり込むなと説教させる。

弟は、ただ兄を崇拝している。

崇拝しているだけではなくて、兄の気持ちが読めるのね。
強くて感情が無いようでいて、実は多くのことに思春期らしく傷ついている。

祖父は、コーチであった過去を持ちながら、この孫の才能にやはり不安を持っている。

 

オレが何も出来ないと思ってんの?

何も出来ないんじゃのうて、野球以外の事をやろうとしとらんのじゃねえのか。

他の事なんて必要ないだろ。

 

巧。
野球を選ばれるんじゃのうてな、野球を選ぶぐらいになれや。

お前、世の中にどんなもんがあるか知っとるんか?
自分が何が出来るんか、何ができんのか、何一つ解っとらんじゃろう。

そこをちゃんと知った上で、それでも野球をやろうとする者だけがな、自分で野球選んだ言えるんじゃ。

 

野球の先輩でもあるが、年の功、人生の先輩でもある。
孫の一途さは、それを失った時の大きさを思うと、とても危うく見えるのだろう。

 

王様にも見えるほどの一途さは、周りの人間も巻き込んでいく。

才能があるゆえ、他に興味が向かないがゆえの部活でのルール違反は先輩たちに不快感をもたらせ、内部不和も起こる。

それでも、巧の不遜さは揺らがない。

 

そんな巧を豪は見つけた。
最強のバッテリーとして。

豪は巧の一番の相方で居たい。
それはもう、恋心かと見紛うほどの情熱。

周りも、その危うさに気づく。
守ってくれようとする者、そこを崩そうと画策する者、純粋にただ心配する者。それぞれ。

 

お前でのうても取れるか?
原田の球はお前じゃなくても取れるんか。

お前、原田じゃのうてもキャッチャーできるか。

 

大丈夫です。
オレ、ちゃんとやれますよ。

 

改めて聞くけどな原田以外のピッチャーでも同じ気持ちでやれるか?

それは……。

ひでえこと聞いたな。
悪かった。

 

原田はどうじゃ。
永倉がピッチャーじゃのうても投げられるか?

俺は、そうであってほしいと思うてる。
それが本物のピッチャーじゃ。

永倉、もっと自由にならんと野球なんぞ続けられんのと違うか。

 

今やもう、野球よりも巧に夢中な豪。

 

巧は、人の心が解らない子。
解ろうとしない子。

その不遜さは嫌われても仕方ないと思うほどだが、カリスマだから愛される。

豪は、その不器用な内面を完全に理解してやっているとは言い難い。
今や彼もただの姫さんの虜だからね。

だから、この回のラストシーンにはとても意味がある。

 

お前な、俺でのうても投げれるか?

投げられる。

そうか。

投げられるとか投げられないとかみんな聞いてくるけど、そういうの関係ないんだ。

お前はホンマに何にも関係ないんじゃな。

 

そうじゃない。
俺は、お前がキャッチャーじゃなくても構わない。

お前と同じくらいオレの球を取れるなら、俺は誰であっても投げられる。

…知っとる。

だから、お前がキャッチャーだから一緒にいるわけじゃない。
力さえあれば、キャッチャーなんか誰でもいい。

 

これは、酷いセリフにも聞こえるけれども、不器用な巧にとっては精一杯の愛の告白だったと思うんだよ。

「お前がキャッチャーだから一緒にいるわけじゃない。」

野球以外に無関心なこの少年が、1人の人間としての永倉豪を必要としている…
そういう一世一代の告白に聞こえた。

しかし、豪には豪の逃れられない気持ちがある。
彼は彼だけが巧のキャッチャーで居たいから。

 

キャッチャーなんか…か。

オレ、今気が付いたわ。
お前、原田巧の球、取った事ないんじゃ。

そうじゃ。
お前だけは絶対ぇにお前の球取ることができんわけじゃ。

気の毒にな。
お前は決定的なことを知らんのんじゃ。

あの一球を取った瞬間、俺だけが感じて知っとることを。

渡さん。
渡してたまるか。

 

この噛み合わない切なさ。

噛み合わないけれども、情熱は伝わる。

ずっと、ずっと一緒に居させてあげたい。
そう思ってしまう。

 

オレな、試合が終わったら一度木に登ってみたいんだけど。

ははは…
木登りって案外難しいで。

 

そんな失恋したような笑い方しないで…

と、思いながら、詩のように美しいEDが切なくてまた泣く。

そう。音楽もPOPなのに切なさ募るよね。

 

ドラマ版で巧を演じた中山優馬くん、映画版で演じた林遣都くん。
この2人に感じたデッカイ眼力。

アニメ版でも同じように引き込まれている。

 

一部、ポエムのようなホモホモしさと言われ、中二病アニメと言われるのを横目で見つつ…

それでも、この作品が好きだよ。

 

最終回、楽しみにしている。
2人の繊細な気持ちのオチ。

 

【あらすじ】
門脇と瑞垣の確執、海音寺たち三年生の卒業、
再試合に向けて自発的な練習を続ける新田東の選手たち。
そして豪は巧に、キャッチャーを続ける決意を伝える。
新田東中と横手二中、それぞれのメンバーに春が巡ってきた。
(公式サイトより)

よろしければ→【2016年10月期・秋クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

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※キャスト

原田巧  … 内山昂輝
永倉豪  … 畠中祐

原田青波 …藤巻勇威 
門脇秀吾 …小野友樹 
瑞垣俊二   …木村良平
海音寺一希   …梅原裕一郎
展西詠司   …森嶋秀太
戸村真   …郷田ほづみ
沢口文人  …村瀬歩
吉貞伸弘   …斉藤壮馬
野々村旭良  … 石井マーク
東谷啓太   …石川界人
井岡洋三   …宝亀克寿
原田真紀子  … 乃神亜衣子
永倉節子  …生田善子
校長先生 …西村知道

※スタッフ

監督・脚本 … 望月智充
キャラクター原案 … 志村貴子
キャラクターデザイン・作画監督 … 草間英興
色彩設計 … 古川篤史
美術監督 … 榊枝利行
音楽 … 千住明

原作 … あさのあつこ「バッテリー」シリーズ
主題歌 … anderlust「明日、春が来たら」
エンディングanderlust「いつかの自分」「若者のすべて」

公式サイト http://battery-anime.com

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