「お前の創作落語でおれを笑わせてくれ」病身の草若(渡瀬恒彦)の頼みに、喜代美
(貫地谷しほり)はついに創作落語に取り組む決心をする。
だが、いざ準備にとりかかると、いったいどうしたらよいのか見当もつかない。
奈津子(原沙知絵)に相談してみるが「おもしろいと思うものを書いたらいいのでは?」と
言われてしまう。
そんな中、師弟落語会に出演しようとして、草若が病院を抜け出してしまう。(108話)
病室の草若(渡瀬恒彦)の前で喜代美(貫地谷しほり)は、自分の家族の失敗談を話す。
そのあまりの面白さに思わず笑みがこぼれる草若。
「お前は落語の世界から抜け出してきたような子や」という師匠のひと言に糸口を見つけた
喜代美は、自分の家族をモチーフにした創作落語を生み出す。
数日後、草若が1日だけ外泊を許され家に帰ってきた。
けいこ場で弟子全員が見守る中、草若は全身全霊で「地獄八景」を演じきる。(109話)
(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)
連続テレビ小説「ちりとてちん」第108・109話「地獄の沙汰(さた)もネタ次第」
※「ちりとてちん」は、2007年10月期のNHK連続テレビ小説です。
当方は当時の放送をオンタイムで見ているので感想は恐らく回顧目線になりがちです。
ご了承のうえ、ご覧くださいませ。
※レビューでは先のネタバレは控えるよう努力します。
※レビューの更新はイレギュラーで…。書けたり書けなかったりしています。
※再放送時間は月~土・午前7時15分からNHKBSプレミアムにて。
できん…。
創作落語やれ言われたかて、何をどうしたらええか分からん。分からん!
どねしよう。どねしよう~…。
ペンとノートを持って頭を抱える喜代美をなだめる奈津子さん。
前に土佐屋尊建の創作落語聴かしてもろたんでしょ?
へえ。ほやけど私…SFも流行りもんも得意やないし、奇想天外な発想なんか
持っとらんでぇ。
いやいや…ただUFOがチラっと出て来ただけで、別にSFってほどのもんではないで。
自分には面白いもんなんて書けないと言う喜代美に奈津子さんはひと言。
そうかなあ?
喜代美ちゃんには才能あると思うけどな。
そう…。
喜代美が、そして和田家の人たちが。
まるで落語の中から出てきたような喜代美たちの日常をそのまんま語ればええだけ
なんですけどね…。
病院ではきかん気な患者が勝手に抜け出そうと着替え始めてます。
それを見つけて慌てる草々さん。
師匠!何をしてはんのですか!?
稽古すんのや。
師弟落語会で若狭に負けられへんさかいな。
落語会は中止です!
弟子が決めんな。
弟子やから言うてんのです!
まだまだ修業の途中やのに、師匠を今…失う訳にはいかへんのです!
すったもんだしている内に倒れてしまう草若師匠。
何考えてんねん!
怒りを抑えきれない小草若。
こんなん言いたないけど、一体何見とったんじゃ!
お前も若狭も!
ずっと師匠と一緒に住んでたんやろ!
何で師匠の病気に気ぃつかへんかったんや!?
うわぁぁぁ…小草若、なんて事言うのや…。
でも、気持ちは解る…。
師匠のもう一人の息子「はじめ」にずっと嫉妬してきた「ひとし」だからこそ、
こんな言葉が出てきてしまうんよね…。・泣
家を出たのだって帰らなかったのだって、草々さんへの何かしらのわだかまりが
あってこそだろうから。
小草若やめとけ。
と、冷静に諭す草原にいさん。
…すいません。
誰のせいでもない。
言いたなる気持ちは分かる。けど今はそんな場合やない。
これからの事考えな。
俺かて師匠には一日でも長う生きててもらいたい。
一つでもようけ師匠から受け継ぎたい。
そないして…師匠の事、安心さしたい。
草々さんも喜代美も言葉が出ない…。
ご飯を作りながらボーっとする喜代美を注意する糸子さん。
お母ちゃん…。
私、やっぱりできん。
こんな時に落語作るやなんて。笑える噺、作るやなんて…。
みんなが草若師匠の病気を嘆いています。
そんな状態の所に、場違いに賑やかな来客が…。
正典さんと正平が小浜から出てきたのでした。
どねしたん?定期便は明日やな。
うん。そこを無理やり今日出させてな。
え?
何や電話の様子が気になったで。何かあったんけ?
たぶん、私、書いていなかったと思うで今書きますが~。
糸子さんがなかなか大阪から戻ってこないので、しびれを切らせた小梅さんが糸子さんに
電話をし、小梅さんも大阪に来ちゃったのでそれを追って2人も来ちゃった。
そして、そのタイミングで小次郎さんも来ちゃった。
病室では倒れた草若師匠の付き添いに小梅さんがおりました。
目を覚ます師匠。
起こしてしまいましたか?
いや…きれいな人が来たな思たら勝手に目が開きますねん。
微笑む2人。
草若師匠。
うちの、のうなった主人正太郎ちゃんいいますねんけどな。
正太郎ちゃんですか?
はい。
正太郎ちゃんは若狭塗箸の職人でした。
存じてます。
小浜は塗箸の町やいうても昔ながらの伝統塗箸作る職人はだんだん減っとります。
正典ももう一人おった弟子も離れてしもて。
ほやさけ、あの人は一人で伝統若狭塗箸を背負っとる気になっとった思います。
朝から晩まで塗箸作っとって。ある日、突然倒れました。
すぐに病院運ばれていっぺんは目ぇ覚ましてくれましたけど…その日のうちにのうなって
しまいました。
何で気ぃついてやれんかったんやろともう…。
長い事後悔しました。
師匠。
男いうもんはそれぞれ譲れんもん抱えて生きてますねんやろなあ。
ほやけど…
たまには気にかけたって下さい。
何よりも師匠の命を大事や思てるもんらの事。
小梅さんの話が効いているのか無理して倒れたから気が小さくなったのか、
おとなしく話に耳を傾ける師匠です。
何や。うち…正太郎ちゃんに言えんかった事、今更ぶちまけてるみたいやな。
と、笑う小梅さん。
正太郎ちゃんは知らんままでしたけど、結局、正典が塗箸継いでくれました。
そね躍起にならんでも、師匠が伝えたいもんは師匠を大事に思てるもんらがちゃんと
受け継ぎますやな。
立派な弟子が5人もおるんやでぇ。
たぶん…最後の時を自分の思い通りに、後悔しないように…そればかり考えて
これまで走ってきた草若師匠。
小梅さんの言葉に考える所があったようです。
残された者の言葉は死んでしまったら聞けません。
残される者が自分が死んだ後にどんな風に考えるか。どんな傷が残るか。
小梅さんの言葉が師匠の心にほんのちょっと染みたのだと思います。
そのタイミングで…
ドタドタ病室にやって来た和田家の人々。
正典。正平も何ですのや、あんたらは…もう。
お見舞いは、そねぞろぞろ来るもんやないで。
分かっとんのやけど、つい、心配で。
叱る母に言い訳する大きな息子。
どうぞどうぞ。入って下さい。
いや、でも…。
寝とっても退屈なだけですさかい。
ほうですか?ほな!
「どうぞ」って言っちゃったらもう遠慮ありません。
広い個室やのう!
料金の計算すんなよ。
せえへんわ。
もう叔父ちゃん、お父ちゃん!
すいません、師匠。すぐ帰りますで。
かまへんかまへん。
師匠、ちょっと楽しそう。
ここまで来る間も大変やったんです!
いきなりお父ちゃんと正平が来てぇ、「何なん?」聞いたら、今度は叔父ちゃんが来てえ。
叔父ちゃん、師匠が入院しとる事今さっき奈津子さんから聞いたとこなんです。
何でかいうたらよう当たる宝くじ売り場求めて泊まりがけで出かけとったからです。
「ほんな事より師匠のお見舞いや」いう話になってえ。
でも「いっぺんに行ったら邪魔になるさけ、二手に分かれよ」
そういうふうに言うたんですけど。
今度はどっちが先に行くかで揉めて…。
ひとまず、わし一人で行く言うたのに小次郎がついてくる言うて。
違うわな!
兄ちゃんが横入りしたんやな!
ちゃうやろ!
ちゃんと…下手上手見ながら噺とるで、喜代美。
にやにやしながら、喜代美を見る師匠。
若狭…。
はい。
お前、ほんまにおもろいな。
お前と話してるとおもろい。
おじいちゃんに言われた事、思い出す喜代美です。
私、何もおもろい事なんか…。
おかしな人間が一生懸命生きとる姿はほんまにおもろい。
落語と同じや。
若狭…
お前は落語の世界から抜け出してきたような子や。
おもろい家族に囲まれてバタバタバタバタ生きてきた子や。
そんな子のおしゃべりはおもろい。
お前がちっちゃい時から見てきた事、聞いてきた事、お前、しょうもないて
思てるかもしらんけど、それはおもろいねんて。
それは、ほんまにおもろいんやで。
喜代美は、きちんと座り直して噺始めます。
「こんにちは!」
「ああ喜代美ちゃんかいな。こっち入り。えらい長い事見んかったな。どこ行ってたん?」
「はい。ちょっと宝くじを買いに」
「宝くじ?」
「はい。よう当たる宝くじ売り場を求めて北海道まで」
「北海道?」
「はい」
「はあ~。で、当たりそうな宝くじ買えたんかいな?」
「汽車と飛行機とバス乗り継いで、やっと売り場へ着いたと思たらちょうど財布がすっからかん」
「あかんがな!」
笑う家族。
みんな、思い出すのです。
おじいちゃんの臨終の時…みんなで病室で笑った事。
草若師匠の落語をラジカセで流して、みんなで笑って見送ったこと。
師匠は喜代美を手招きします。
若狭…。
それがお前の創作落語やな。
なあ…。
お前の宝もんや。
大事にしいや。
喜代美の頭を撫でる、大きな温かい手。
師匠は医師に許可を取って1日だけ退院させてもらいます。
1日だけ。
徒然亭ではその日、みんなで集まって師匠の「地獄八景亡者戯」を聞いたのでした。
え~相も変わらず古いお噺でおつきあいをお願いいたします。
地獄。
私もまだ行った事はないんですが、古い人が色々とこしらえといてくれました。
いろんな人に話伺いますと、どうも極楽よりも地獄の方がおもろいような具合でして。
いや、どっちゃみち皆さん方もお出かけにならなならんのですさかい、ほんまに行く前に
ひとつ落語の方でご案内しとこうという訳でございます。
え~ここにございましたんが、我々同様というか一人の気楽な男。
よそから鯖もらいましてそれを手料理でこう…2枚におろして骨付きの方を戸棚に直して
片身を自分で料理して、それを肴に一杯飲んでゴロンと横になって寝てしまいますと、
夢ともなく現ともなく空々寂々として暗~い所に出てまいります。
先を行く者後から来る者、銘々額にすんぼうしと呼ばれる三角の布を当て…。
「何をあほな事言うてんねん。こんなとこへ来る人はもっと大きな心残りがあんねんで!」
いっその事今度はあの世でも行って遊ぼやないか言うのでどないして死のう?
いっぺん何かおもろい事して死のう。
供するやつはおらんか。
へい!是非お供さしてもらいま。
…てな訳で、なじみの舞妓はんやら芸妓はんお茶屋のおかみさんから仲居さん、
太鼓持ち連中は若旦那あの世へ遊びに行かはるそうで。
是非お供さしてもらいま。
いや~どないして死のう?
何かうまいもん食うて死のう。
そや。今まで命が惜しいさかいフグをよう食べなんだ。
フグにあたって死んだらよかろう。
それがよかろうっちゅうんでフグにフグを買いにやりましてフグに料理してフグに食べて
フグにあたってフグに冥土に来てしまいました。
女の方はフグの紋付きにねぶかや水菜が裾模様になったはるという格好で、やかましゅう
言うてやって参ります。
その連中の陽気な事!
見せることで聴かせることで、お弟子さん達に最後の稽古をつけ、今まで聴いてくれた人たちに
感謝の気持ちを表し、落語をこの世に残す覚悟と共に1時間以上もの大ネタを噺す。
草若師匠の気持ちが全部こもった「地獄八景」。
「その道中の陽気な事」
そういう風に逝きたいと言っていた師匠。
和田家の家族の明るい騒がしさが、ガヤガヤと地獄見物に行く「地獄八景」のお供の人たち
と被って見えます。
賑やかに明るく送ってあげる。
たぶん、今の師匠は癒されるのでしょう。この温かくておもろい家族に。
師匠は喜代美の中に落語を見ていた。
和田家の中に落語を見ていた。
師匠は若狭を本当に愛してくれていたのだと…
しみじみと感じる病室のシーンでした。
泣きました。
それが、実質、草若師匠の最後の高座になりました。
つらいです…。
心残りなく旅立たれるんやろと解っていても、つらいです。
来週もまた、お付き合いくださいませ。
※告知~~!!
4月からこの「ちりとてちん」のBS再放送枠で「カーネーション」の再放送が
底抜けに~決定いたしました~~~!!
よろしければ→【2014年1月期・冬クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表
※キャスト
和田喜代美→青木喜代美/徒然亭若狭 … 貫地谷しほり(少女時代:桑島真里乃)
徒然亭草若(三代目) … 渡瀬恒彦
徒然亭草々 … 青木崇高(少年時代:森田直幸)
徒然亭草原 … 桂吉弥
徒然亭小草若 … 茂山宗彦(少年時代:榎田貴斗・森川翔太)
徒然亭四草 … 加藤虎ノ介
木曽山勇助/徒然亭小草々 … 辻本祐樹
吉田志保 … 藤吉久美子
和田糸子 … 和久井映見
和田正典 … 松重豊
和田小梅 … 江波杏子
和田小次郎 … 京本政樹
和田正平 … 橋本淳(少年時代:星野亜門)
和田正太郎 … 米倉斉加年
和田清海 … 佐藤めぐみ(少女時代:佐藤初)
和田友春 … 友井雄亮(少年時代:小阪風真)
和田秀臣 … 川平慈英
和田静 … 生稲晃子
野口順子 … 宮嶋麻衣(少女時代:伊藤千由李)
野口幸助 … 久ヶ沢徹
野口松江 … 松永玲子
野口春平 … 斉藤勇人/新岡澪
野口順平 … 斉藤隼人/新岡塁
熊五郎 … 木村祐一
咲 … 田実陽子
磯七 … 松尾貴史
菊江 … キムラ緑子
徳さん … 鍋島浩
お花 … 新海なつ
緒方奈津子 … 原沙知絵
原田緑 … 押元奈緒子
鞍馬太郎 … 竜雷太
万葉亭柳眉 … 桂よね吉
土佐屋尊建 … 波岡一喜
万葉亭柳宝 … 林家染丸
土佐屋尊徳 … 芝本正
柳宝の弟子 … 林家染左、林家染吉
烏山 … チョップリン西野
原田颯太 … 中村大輝(少年時代:河合紫雲)
音大の教授 … キダ・タロー
あわれの田中 … 徳井優
横山たかし・ひろし … 本人
五木ひろし … 本人
ニュースキャスター … 浅越ゴエ
竹谷修 … 渡辺正行
堀田由美子 … 和田はるか
高島恵 … 中井飛香
北川沙織 … 村上佳子
語り – 上沼恵美子
※スタッフ
脚本 … 藤本有紀
演出 … 伊勢田雅也、勝田夏子、井上剛、菓子浩、三鬼一希、吉田努、櫻井壮一
制作統括 … 遠藤理史
音楽 … 佐橋俊彦
テーマ曲・ピアノ演奏 … 松下奈緒
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【ちりとてちん】第1週~第3週、
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コメント
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>この週は私の中で秀逸です(*´∇`*)
神回、神週は何度も訪れる神ドラマですが、ここは忘れられないところですよね~。
>視聴者がそれを感じるのは、わかるんだけど、それを敢えて師匠目線から描いて今後につながってくのがなんとも(o^_^o)
素晴らしいですよね。
脚本の凄さに鳥肌立ちます。
>単純なわたしは、小梅さんもコジロウさん、ナレーションも中の人が苦手やったのに、このドラマでちょっと好きになりました。。。
あ~わかります!
好きなドラマで好きな役をやっていると好きになっちゃうってありますよね~^^
私も小次郎さんの中の人はあんまり…なんですが、このドラマではみんな愛おしいですわ。
>愛のあるレビュー好きですわー。
ありがとうございます~(#^.^#)
だって本当に愛してるから~(*´艸`*)
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私は本当にちりとてが好きなんだなーと思いました。
この週は私の中で秀逸です(*´∇`*)
若狭の実家、父、母、コジロウおじちゃん、小梅ばあちゃん、しょうへい…。
落語の世界から抜け出た子…。
視聴者がそれを感じるのは、わかるんだけど、それを敢えて師匠目線から描いて今後につながってくのがなんとも(o^_^o)
単純なわたしは、小梅さんもコジロウさん、ナレーションも中の人が苦手やったのに、このドラマでちょっと好きになりました。。。
愛のあるレビュー好きですわー。