NHKドラマ10【わたしをみつけて】第1・2話 感想 「親がいない」という不安。「親がいる」という不自由。

私の名前は「山本弥生」。

生まれてすぐに捨てられた。

捨てられた場所の 区長さんの名字をとって 「山本」。
そして3月だったから 「弥生」。


いい子じゃないと

捨てられる。



わたしをみつけて

  わたしをみつけて



全4回。
…の、2話目までが現在放送済み。短い連ドラである。


山本弥生は星美ヶ丘病院で5年間勤務している准看護師。
仕事はカッチリこなし、同僚からも患者からも信頼は厚い。

けれども、弥生には人の気持ちに寄り添えないところがあった。
捨て子の生立ちを持つ彼女には、患者の死に悲しむ遺族の心が解らないのである。

そんな弥生の前に事務長がスカウトしてきた藤堂という新看護師長が現れる。
藤堂は、患者だけではなく家族の心情に気を配るような指導をし、人の心を見ないように生きてきた弥生は困惑するのだった。

弥生が当直の日、虫垂炎で手術したばかりの患者・楠山が苦しみだし、ほどなく亡くなった。
そのオペに付いていたのは弥生。

執刀した院長の診断ミスに気づいた藤堂は弥生に言う。

「あなた、何を見てきたの?」


え~…一介の准看護師にこんなこと言われても…。
万一ミスに気づいてすら、看護師はなかなか院長に「ミスですよ。」なんて言えないと思う。

患者や家族への寄り添い方もお節介に見えた。

冒頭の、エンジェルメイクのために病室から出て行ってもらおうとしたら怒鳴り出す遺族もちょっと異常に見えたし…。(ウチなんて言われるがままだった。遺族って動揺しているし、そんなモンかと。)


そんなこんなで元々見るかどうか迷っていて2話溜まった時点で録画を見始めたこのドラマ。

親が居ないトラウマに苦しむ主人公(可哀想だけどウザい)。
何か過去にありそうだけど人の中にズカズカ入っていくのを部下に強要する師長ウザい。

もう2話は見なくていいかな……。

と思い始めた終盤。


横隔膜下に入った空気を見逃した自分の診断ミスを遺族に隠す事を決めた院長が、患者死亡の原因を説明する…その間…


その間、師長がこの部屋へ近づかないようにしてほしい。

君には、ずっと うちで働いてほしいと思ってるんだ。

できるよね?

君は いい子だから。



この「いい子」の呪文に掛かってからの弥生の表情が凄い。

人は自分を守るために嘘をつく。
いや、自分のためだとは思ってないんだね。
院長の信頼を勝ち取るために。
自分の存在意義を教えてくれた「居場所」を失わないために。
弥生はロボットのように芝居する。

他の患者のカルテを隠し、看護師総動員で探させる。
隠していたカルテを引っ張り出したところを藤堂に見つかった時のこの世の終りのような顔。

そして、開き直り。


あなた、院長から頼まれたらどんな事でもするの?

どうして?


ずっと…ここに いたいから。

私、精いっぱい頑張ってきました。

この病院が私を受け入れてくれたから!
私はこれからも ここにいます!

ここに いたいんです!
ずっと ここに…。




あなた、可哀想な人ね。



そう。可哀想な人だよ。この子。
可哀想すぎて頭が真っ白になった。

居場所がいつもある人には解らない。

いや、藤堂のことだから、きっと解っていて言っている。
けれども患者や遺族に対する優しさや気遣いが、弥生に対して向けられないのはどうしてだろう。

この子、病気なのに。
「認められたい」病気なのに。

弥生には捨てられた過去がある。
「いい子」じゃなくても存在していてもいいのかどうか里親で試してみた。
また捨てられた。

病院で誉められると嬉しい。
自分の存在を感じるから。

藤堂がレントゲンで横隔膜下の空気を見つけた時のような「何を見て来たの?」あんな言葉がこういう人を一番傷つける。
患者の死まで自分のせいだと感じてしまうから。

だから、弥生は逃げた。
院長は隠蔽に手を貸せば簡単に弥生の存在を認めてくれるから。

つまり「わたしをみつけて」くれるから。

弥生が院長に手を貸したのは藤堂のせいでもあるんだよ。


初回の終わり、私はこの子にいたく同情した。

同情した…というよりも、自分の一部のように見えた。

捨て子の経験がなくとも、私にも似たような傾向があるから。

頼みごとを断れない。
困っていると言われるとついつい残業や余計な仕事を引き受けてしまう。
失敗すると、たぶん必要以上に慌てる。落ち込む。信頼を失くすことが何よりも恐い。
それは居場所を失う事に繋がるからさ。


この話がお初じゃない方にはしつこくて申し訳ないが、私はこの夏、父親を亡くした。
父のために実家に頻繁に帰ったり、出来る事を手伝ったり、連絡をマメに行ったり…
臨終までのそういう行動の中で、私は自分と妹と弟の間で親の信頼を一番勝ち取るレースのようなものを行っている感覚に陥った。何度も。

それは父が居なくなった今も、今度は母に対して行われている。
遺産の問題も含めてだけれども、何となく思い知ったのである。
私たち姉弟は同じ症状に侵されて育ったんだな、と。

私の両親は、姉弟の誰かが居ない所で居ない子どもの愚痴をこぼす人だ。

私たち姉弟はいつの間にか、悪口言われないように、「いい子」を望んで生きるように育てられたのだった。家に巣食う病。


ドラマの中に弥生以外にもう1人、「認められたい」病の子がいる。
後藤院長の息子・雅之である。

彼も捨てられたわけではないが、親の思うように育たなかった自分を責めて生きている。

2話では、それを弥生に語るシーンがある。
自分なんて親にとって存在価値がないのだと。

院長の息子なのに医者になれなかった雅之は、医者でもないのに病院から逃れられない運命を呪っている。彼にとっては親なんて居ない方がいいのである。


僕には、キミが自由に見えるよ。


親に捨てられた苦しみを背負ってきた弥生にとっては想像できない不自由。
親の存在に苦しむ雅之には弥生の虚無感が想像できない。

解りあう事は出来ない身の上だが、2人の「認めてもらいたい」病は共通しているのである。
可笑しいね、親がいるのに捨てられた子と一緒。
ウチと同じだ。

親という存在が意外と気づいていないのは、「子どもは大人になっても誉められれば嬉しい」という事だ。

そんな風に思う事自体が、精神的に大人になっていないという馬鹿げた事なのかも知れない。
私の父ならきっとそう言った。「大人のくせにバカバカしい」と。

けれども、そういう父も最期まで「私を認めてくれ」と叫びながら死んでいったのである。

結局、アダルトチルドレンがアダルトチルドレンを造るのだ。


2話の一宮シメ・幸子親子がそういう話だった。
よく解らなかったよ。痴呆だから男の子の方に拘るのか。娘が何かしでかしたのか。

昔は優しい母親だったらしいから、やはりボケているせいで…ということなのだろう。
けれども、師長の「娘の方を頼りにしていると言っていた」って嘘には騙されるのね。

でも「最期の思い出がその人に纏わる永遠の印象になる」というのはよく解る。
だから藤堂は良いウソをついたのだろう。
お節介に思えたけれども…。

菊地さんを見ていると、お節介と善意は紙一重だなぁとよく解る。

何の見返りも求めず善行を尽くす菊池さんに、見返りを求めて「いい子」でいたい弥生が触発されて変わっていく。

そういう第2話だった。


藤堂はあまり好きになれない。
けれども、この人のバックボーンが解ってくればもっと印象が変わるかも。

弥生の必死さはよく解り過ぎるだけに痛々しくて…。

自分の存在を訴え続ける美織ちゃんの大きな目。素晴らしく適役。

菊池さんには長生きしていただきたいなぁ…

とか思いつつ、『サイレーン』の裏だからオンタイムでは見られないけれども録画視聴継続で。


※感想のほとんどが自分語りで申し訳ないです。



生後すぐ親に捨てられた孤独な看護師・弥生(瀧本美織)。患者のシメ(佐々木すみ江)が死去し、藤堂(鈴木保奈美)はのこされた娘(根岸季衣)のために「シメさんはあなたに感謝していた」と嘘(うそ)をつくが、弥生は藤堂に「人はそんなに簡単に救われない」と反論する。菊地(古谷一行)は子どもの泣き声と怒声が聞こえたアパートの見知らぬ住人を心配するが、弥生は彼の優しさが理解できない。その菊地が入院してきて…。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)




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※キャスト

山本弥生 … 瀧本美織(子役期:田中里念)

藤堂優子 … 鈴木保奈美
後藤雅之 … 溝端淳平
神田恵美子 … 初音映莉子
五十嵐奈菜 … 奥村佳恵
関美千代 … 野村麻純
飯野七海 … 志保

楠山幸一 … 木内義一
坂本 … 佐川満男
一宮シメ … 佐々木すみ江
一宮幸子 … 根岸季衣

菊地勇 … 古谷一行
後藤啓一郎 … 本田博太郎

※スタッフ

脚本 … 森脇京子、坂口理子
演出 … 野田雄介
制作統括 … 三鬼一希
プロデューサー … 山本晃久
音楽 … 澁江夏奈

原作 … 中脇初枝『わたしをみつけて』
主題歌 … androp「Kokoro」

公式サイト http://www.nhk.or.jp/drama10/watashi/







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コメント

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1件のコメント

  • キッドのブログinココログ
    2015年12月23日 8:22 AM

    わたしをみつけて(瀧本美織)みんないい子になりたかった(溝端淳平)

    この枠の前作である「デザイナーベイビー~速水刑事、産休前の難事件~」が変則的な時期で終了したために・・・キッドの個人的な意図でレギュラー・レビューにはならなかったが・・・見ごたえのあるドラマだった。 なにより・・・女優・瀧本美織に対する評価が跳ね上がったのである。 もちろん・・・はまり役だった・・・