【カルテット】第9話「最終章・前編」 感想

過去とか…
そういうのなくても音楽やれたし。
道で演奏したら楽しかったでしょ?
真紀さんは奏者でしょ?

音楽は戻らないよ。前に進むだけだよ。
一緒。心が動いたら前に進む。

好きになったとき、人って過去から前に進む。

私は真紀さんが好き!

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火曜ドラマ カルテット 第9話

 
  
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ヤマモトアキコ

切っ掛けは自転車泥棒の逮捕だった。

たかだか自転車泥棒。
大菅刑事の同僚がその調書に手間取っていたのは、女がなかなか自分の名前を言わなかったから。

しかし、「日本では戸籍を売っても罪にならない」そう聞いた途端に女の口は軽くなった。

じゃあ、私、逮捕されないの?
え~!じゃ、TSUTAYAでカードも作れたの!?

 

その女の名は「早乙女真紀」

まきまきさんに名前を売った女。

 

戸籍を購入した女というのもいまして、それが東京で、まあ…息子さんとご結婚されていたと。

え~…彼女の本名は山本…あきこかな「彰子」。

 

犯罪者は自分を被害者と思うことから始まる

富山市出身。
10歳の時に、演歌歌手だった母親を事故で亡くした。
母親の再婚相手だった義理の父から暴力を受けて育った。
平成15年12月19日。
現金300万円で戸籍を購入し、それ以後姿を消した。

 

それが、「山本彰子」の履歴。

この人は義理の父親の暴力から逃げるために戸籍を買ったんですよね?
被害者ですよね?

 

姑であった鏡子は刑事に問う。

まあ、大概の犯罪者は自分を被害者と思うことから始まりますけどね。

大菅刑事はそう前置きしてから、「山本彰子」を追っている理由を話すのだった。

 

買った戸籍で別人の履歴を作り結婚までした真紀さんは 「公正証書原本不実記載」の罪に問われることになる。

が、刑事が追っているのはソレではなかった。

 

その義理のお父さんが亡くなられてるの。

面会でその真実を知らされる幹生。

 

真紀ちゃんが姿を消したのと同じ頃に心不全で。

たまたまでしょ?
心不全でしょ?

母さんが言ってんじゃないんだよ、
警察の人が…真紀ちゃんのこと疑ってるんだよ。

 

「犯罪者は自分を被害者と思うことから始まる」っていうのは、解るなぁ…。

誰だって嘘をつく時は、どんな小さなことでも言い訳したいからだよね。

子供がまだ小さいから今は隠しておきたい、とか。
親がショックだろうから秘密にしておこう、とか。
こんな所に財布があるからいけないのよ、とか。
貧乏だからつい盗ってしまったんだ。悪いのは社会のせいだ、とか。

人間ってそんな風に秘密を作る。

皆さんの「ちゃんとしてないところ」が好きです

実家が別荘を売ろうとしている話をやっとした別府さん。

みんな事情を察して、出て行ってそれぞれが働き、「ちゃんとした大人に」なればいい、と言う。

けれども、別府さんはそれは駄目だと言うのだった。

それじゃ、そっちが本業になっちゃいますよ、
仕事やバイトが優先になって、シフトがあるからって本来やりたかったことができなくなった人、僕はたくさん見てきました。

ちゃんとした結果が僕です。

「ちゃんと練習しようよ」「ちゃんと楽譜見ようよ」子供バイオリン教室の頃から僕まわりの子達に言ってたんです。

その頃ちゃんとしてなかった子達は今、世界中で活躍してます。

僕達の名前は…カルテットドーナツホールですよ。
穴がなかったらドーナツじゃありません。

僕は皆さんのちゃんとしてないところが好きです。
たとえ世界中から責められたとしても、僕は全力でみんなを甘やかしますから。

 

つまり、これからもみんなのためにゴミを捨ててくれるらしい(笑)

いいねぇ。幸せだねぇ。
「ちゃんとしてないところが好きです」
そう言ってくれる人に出会いたいな。

出会ったんだね、この人たちは。

一番「ちゃんとしていた」ように見えた真紀さん。
なのに名前すらちゃんとしていなかった真紀さん。
真紀さんがどんな気持ちでこれを聞いていたか…。

 

普通の人になりたかった

山本彰子の母親を事故死させてしまったのは、たった12歳の少年だった。

彼はその日、生まれてくる弟のために急いでいて事故を起こした。
山本家への賠償額は2億。
少年の家族は家と職を失って離散したという。

それでも彰子の父親は少年の家に賠償金を請求し続けた。

彰子はその金で育ててもらい、バイオリン教室へ通い、大学へ行った。

彰子が蒸発して、賠償金の請求は止まった。

真紀ちゃんが戸籍買ってまで失踪した理由ってそれじゃないですか!
被害者なのに加害者になったような気持ちになって、義理のお父さんの請求止めようとして……。

 

刑事にそう話していて幹生は自分が何をやったか気づいたのであった。

真紀ちゃん、普通の人になりたかったんだ。
ずっとビクビクして生きてきたけど…普通の人になって生きようとして…
これでやっとって思って…。
  quartet9-1

 

そしたら今度はまさか夫が失踪しちゃったと。
離婚して振り出しに戻っちゃったと。

 

結婚してやっと手に入れた「買った名前」ではない名前。

新しいスイッチを押して。
新しい人生をやり直せるはずだった。

なのに新しい生活は、幹生が求めた「恋愛夫婦の理想」や「ロマン」に壊されることになった。

真紀さんはただ「日常」が欲しかった。

 

この発端となった事件がまた最高にみぞみぞするのだ。
私たちは普段、ニュースの表しか見ていない。

10歳で母親を失った少女は確かに可哀想だ。
しかし12歳で人の命を奪い2億を背負い家族を離散させた少年を「悪魔」とは私にはとても言えない。

ずっと真紀さんに暴力を振るっていたという父親も、妻を失い継子を育てることになってどんな心境で生きてきたのか……。

みんなヒドイけれども、みんな運命で。
神様でもない他人が裁ける事ではないと、そんな風にしか言えないの。

 

『STARSHIP VS GHOST』

 

刑事がついにやってきて。

真紀さんは全て打ち明けた。

もう「秘密」はなくなった。

ごめんなさい。
私、早乙女真紀じゃないです。
嘘ついてたんです。

私、嘘だったんです。

 

つらいね。
なんてヒドイ話なんだろう。

「嘘をついていた」よりも「私自身が嘘だった」のは何千倍も辛い。

告白したことによって「私」全否定なのだから。
「私」が無くなるのだから。

けれども、すずめちゃんは、そんな真紀さんに名前なんてどうでもいいと教えてくれるのだった。

 

裏切ってないよ。
人を好きになることって、絶対裏切らないから。

知ってるよ。
真紀さんがみんなのこと好きなことくらい。
絶対それは嘘なはずないよ。だって、こぼれてたもん。
人を好きになるって勝手にこぼれるものでしょ?
こぼれたものが嘘なわけないよ。

 

過去とか…
そういうのなくても音楽やれたし。
道で演奏したら楽しかったでしょ?
真紀さんは奏者でしょ?

音楽は戻らないよ。前に進むだけだよ。
一緒!心が動いたら前に進む。

好きになったとき、人って過去から前に進む。

私は真紀さんが好き!
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「これの名前は」「ステープラー」「バンドエイド」「違う。絆創膏」

冒頭でやっていた会話。
物の「本当の名前」。

本当の名前なんかどうだって使い方は同じだし、同じだけ役に立つんだよね。

名前は大事だよ。
…という話は歴史を語る時にたまにする。

けれども、名前が変わらなければ続けられないなら、それはそれでいいじゃないか。

だって。
「ちゃんとしたこと」だらけでは生きていけないのだから。

 

『STARSHIP VS GHOST』は、

宇宙も幽霊も出てこないんですよ。
フフフ…一度も。ただの一度も。

 

名前通りじゃない映画でも。

 

別府くん。この映画いつ面白くなるの?

宇宙、出てこないですね。

幽霊はどこにいるんですか?

 

だから…そういうのを楽しむ映画なんです。

 

「お薦め」のつまらない映画をつまらないと言える楽しさ。

幹生とは出来なかったその生活を楽しめる場を真紀さんは手に入れた。

 

思い出したい音楽

 

ノクターンで、最後の演奏をした。
「アヴェ・マリア」と「モルダウ」。
初めてここで合わせた曲。
   quartet9

 

ちょっと、お手洗い行ってきますね。

真紀さんはそう言って、普通に控室を出て行った。
いつものように。

すぐ帰ってくる感じで。

 

「任意同行」の道のりは遠い。

ラジオ切ってもらっていいですか?

と、真紀さんは刑事に頼んだ。

 

長旅になりますよ。

 

頭の中に思い出したい音楽がたくさんあるんです。

 

その夜は、4人それぞれが同じ「思い出したい曲」を頭の中で反芻して

翌朝は、たくさん料理を作っていた真紀さんの代わりに、すずめちゃんがご飯を作る。
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食べることは生きていくことだから。

そうやって、変わらない日常を続けながら、待つんだね。
春になって、リスが現れるのを。

 

最終回前にして、最大のショックと切なさと優しさ。

次週の予告が4人が初めて合わせた「ドラゴンクエスト」で。

たぶん、すずめちゃんが言っていたように音楽は戻らないのだから。
「好きな気持ち」は戻らないのだから。

前へ進むのだろう。

EDから巻き戻される週は今週で終りで。
来週はきっと前へ進んでいくのだろうけれども。

それが最終回というのは寂しいな。
置いて行かれないように、しっかり見なきゃ。


大菅(大倉孝二)から真紀(松たか子)が全くの別人だったと告げられた鏡子(もたいまさこ)。
警察が真紀を捜査していると知り、激しく動揺する。

一方、真紀らの元に、別荘の査定見積書を持った不動産鑑定士が現れる。
売却話が出ていたにも関わらず、真紀、すずめ(満島ひかり)、諭高(高橋一生)に黙っていたことを謝罪する司(松田龍平)。
不安に思う3人に対し、司は自分がなんとかするので少し時間をくれと申し出る。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

 

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※キャスト

巻 真紀(早乙女真紀→山本彰子)(第1ヴァイオリン) … 松たか子
世吹すずめ(チェロ) … 満島ひかり
家森諭高(ヴィオラ) … 高橋一生
別府 司(第2ヴァイオリン) … 松田龍平

来杉有朱 … 吉岡里帆
谷村大二郎 … 富澤たけし
谷村多可美 … 八木亜希子
半田温志 … Mummy-D

巻 鏡子 … もたいまさこ
巻 幹生 … 宮藤官九郎

ベンジャミン瀧田 … イッセー尾形
九條結衣 … 菊池亜希子
すずめちゃんの父(綿来 欧太郎) … 高橋源一郎

元同僚(声) … 安藤サクラ

岩瀬 純 … 前田旺志郎

岩瀬寛子 … 中村優子
大橋茶馬子 … 高橋メアリージュン
別府 圭 … 森岡龍
朝木国光 … 浅野和之
大菅直木 … 大倉孝二
早乙女真紀 … 篠原ゆき子
船村仙一 … 木下政治
山本みずえ … 坂本美雨

※スタッフ

脚本 … 坂元裕二
演出 … 土井裕泰
プロデュース … 佐野亜裕美

フードスタイリスト … 飯島奈美、板井うみ、岡本柚紀
音楽 … fox capture plan
主題歌 … Doughnuts Hole(松たか子・満島ひかり・高橋一生・松田龍平)「おとなの掟」(作:椎名林檎)

公式サイト http://www.tbs.co.jp/quartet2017/

コメント

  1. くう より:

    Qさん
    レスが遅くなりましたが最終回が終わってしまいましたね…
    (最終回レビューは1/3くらい書いて止まっているところです(笑))

    ほんと、何という話だーーー!!
    の衝撃的なラストから毎週何とか立ち上がり、また引っ張るという「つづく」の手腕もお見事でした。

    ミステリーとしても人間ドラマとしても楽しめましたわ。
    (あ、〆ようとしているように見えるかも知れないけど(笑)最終回レビューはちゃんと書きます!!)

  2. より:

    前回のラストが衝撃すぎたけど、今回はさらに驚かされました~
    なんていう話だったんだーー、神脚本です!! くうさんのレヴューを読みながらうなづきまくりました。
    そしてそして ドーナツホールが大好きです。
    幸せな結末になるといいな~って思うけど、彼女たちには(私には縁がないけど)音楽への思いってのがあるから、もうひとつ 何かがある気もするし・・・
    最終回なんて淋しいよーー。

    コメント送信に失敗してます。今夜が来てしまうのでもう1回トライしてみました。 

  3. くう より:

    saboさん
    最後まで展開が読めず、役者さんたちに魅了され続けるドラマでしたね~。
    吉岡里帆さんねーー…もう何を見ても目が笑ってないように見えてしまいそう(笑)

  4. sabo より:

    すごいドラマですね!最終回なんて寂しすぎる……
    そしてアリスちゃん怖っ!もうこの役者見るたびにサイコパスにみてしましそう(汗

  5. 火曜ドラマ『カルテット』第9話

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