【天皇の料理番】第11話 感想

あの…「ジュテーム」って何ですか?
昔、お手紙に書いてあった…。

 

食ういうことや。

今日も 明日もあさっても…
私はあなたより長生きします、って。

そういう意味や。

 

天皇の料理番 第11話

 

レビューが遅くなり(もう今日最終回だし)今から書いたからって誰か読みに来てくれる人も
いるとは思えないので、本当に自分のためだけの覚書き。
全てはデスノートのせいだ…… ←人のせいかよ…しかも人じゃないし~~。

 

第11回は俊子さんが亡くなる回だった。
史実のモデルの人が妻を失う事は知っていたが、そもそも結婚の経緯も違うし
別にモデル通りにしなくてもいいじゃん…しないでくれーーとずっと祈っていた…
けれども、やっぱりやるよね。

そしてその内容は単なる泣かせのための内容ではなかった。

臨終を看取るということ、人が最後まで誰かを思い、尽くすということ、続いていた夫婦の愛、
残された者が生きていくために美しい思い出が必要だということ。

そして、「医療と食」。
これはこのドラマならではのテーマ。

私ごとですが、現在まさに臨終の時を控えている身内が居て、日々食べられなくなっているので…
途中からはお勉強のような気持ちで見ていた。

篤蔵が作る見た目にも美しい食事を初めは喜んでいた俊子さんが、次第に口を少し付ける
くらいのことしか出来なくなる。

作る人間にとって、それは本当に辛いことだ。

それでも篤蔵は俊子さんのために作る。

料理を作る。
今の篤やんにはそれしか出来る事がないからだ。

 

1926年(大正15年)。
元々お身体が丈夫ではなかった大正天皇が年の瀬にお隠れになった。

年明け、篤やんは沈み込む厨房の面々に向かって精一杯明るい新年の挨拶をする。

 

昨年はお食事をお作りしていた我々としては、ふがいないことこの上ない
年の瀬となってしまいました。
この悔しさを忘れずに、今上陛下のお食事について健康の面からももっともっと
考えていきましょう。

 

食だけで健康を管理する事は出来ず、ましてや病を治すことはできない。
けれども「食」を考える事は人間の生の一端を担う重要な行いである。

その悔しさを厨房の全員が噛みしめる。

そして、今、その時の悔しさを篤蔵は家でも噛みしめている。

震災のあと、しばらくは桐塚先生の家にお世話になり書生さんたちの世話も手伝い、
産婆の仕事も相変わらずして、忙しそうにしていた俊子を篤蔵は労わらなかった。

妻はいつも笑って家の事をやっていた。健康だと思い込んでいた。

 

兆候があったと思いますが。

兆候なんて全然…ずっと元気に動き回ってて。

では相当我慢をされていたんでしょう。

 

初めはちょっと目を離すとすぐに動き回ろうとする俊子だったが、次第に動けなくなっていく。

それに従って篤蔵も次第に荒れてくる。
職場でもちょっとしたことで怒鳴ってしまったりする。

3月に辞職すると言う宮前や、厨房のみんなの心配りがありがたい。

昼間はパリから戻ってきた新太郎が子どもたちの面倒を見てくれた。
厨房には辰吉も来て手伝ってくれた。

人の縁は、本当にありがたい。

 

その年の暮れ、俊子はもうほとんど食べられないようになっていたが、家族と一緒に
除夜の鐘を聞くことが出来た。

今まで一度も泣かず、病気の事もほとんど口にしなかった子どもたちが初めて
涙を見せる。

お母さん…
明けましておめでとうございます。

おめでとう、お母さん。

お母さん。
…お母さん。

 

俊子は微笑んだ。

はい。
今年もよろしくお願いします。

 

篤蔵が打った野菜を練りこんだ特製の蕎麦も、俊子はほとんど口に出来なかった。

が、いつものように微笑む。

私は幸せですね。
陛下のお料理番に、こんな工夫までしていただいて。

 

食卓の上に置かれた古い鈴を手にする篤蔵。

 

何や、取れてしまったんか?

何の鈴か分かりますか?

うん? 財布の鈴やろ?

篤蔵さんが昔くれたお守りについていた鈴です。

えっ!?…ほうやったんか…。

どうしても捨てられなくって…ずっと つけていて、もう私の一部みたいなものです。

…財布の一部やろ。
よし、いい具合になった。

 

蕎麦を冷ますことに熱中しているように見せる篤蔵。

あのころ。
俊子を実家に置いたまま辛い寂しい思いをさせていたころ。
自分が送ったお守りの鈴をずっと持っていた俊子。

聞きたくない言葉が俊子の口から出てくる予感があったのだろう。

そして、それは俊子の口から静かに語られた。

 

篤蔵さん。
私、ひとつだけ心配なことがあるんです。

食べてからでいいやろ。

私…
篤蔵さんが癇癪持ちなことが心配なんです。
篤蔵さんの場合、お仕事上それが とんでもない事態に繋がることがあるかもしれません。
ほやから、どうかこれからこの鈴をポケットにでも。
鈴が鳴ったら、あいつがほんなこと言ってたなって思い出して……。

 

いい加減食べえ!冷めるやろ!
これ作るのどれだけ手間やと思ってるんや!!

 

思わず怒鳴ってしまった。
俊子が居なくなった後の話なんて…。

 

あの…。
「ジュテーム」って何ですか?
昔、お手紙に書いてあった…。

 

俊子は知らなかったのだ。
今までずっと。

篤蔵は言葉に詰まる。

その思いは妻が臨終を迎えた今、あの頃の想いのまま自分の前にあった。

篤蔵よりも長生きすると言ってくれた俊子。
この妻を見送ることが今、自分に出来る一番の愛の証しだった。

 

食ういうことや。
今日も明日もあさっても。

「私はあなたより長生きします」って。
そういう意味や。

 

はい。

 

この余韻のままで、つらつらと枕元で遺族が泣きわめいたりする臨終シーンを見せずに
誰も居なくなった部屋だけを映して俊子の死を描く。

寂しさが伝わる。

たった3か月間の連続ドラマなのに、何十年も見守ってきたように2人の歴史が蘇る。
放送時間の長さじゃないね…質量だね。ずっしり伝わる物語の重み。

 

引き籠った篤やんは、新太郎が描いた俊子の絵を見ない。
冒頭にお梅さんのために亡くなった親父さんの絵を描いてくれないかと頼んだ篤やん。

大切な人の死を迎えた者は、失くしてすぐにそんなものは見る気にならないのだと…
しかしそこから立ち直っていく時には、それが力になるのだと。
自らが気付く回収となっている。

妻を亡くした篤蔵に大宮様が下されたのは子どもの人形だった。

亡くなったのは妻ですが…。

と、不思議そうに受け取った篤蔵は、子どもたちを見て、妻が遺してくれた一番の
宝物の存在に気づく。

 

あの人形は、残された子供を大切にしなさいってお心ですよね。

 

大宮ご自身も先の天皇を失った身である。
直接お訊ねする事は出来なかったけれども、そのお心は篤蔵の胸に響く。

生きている者は、何を失っても生き続けなければならないのだから。

 


大震災をなんとか逃れた篤蔵(佐藤健)たち。俊子(黒木華)は身体に異変を
感じながらも一家でたくましく暮らしていた。
年も明け、大膳も落ち着きを取り戻しつつあった、そんなある日、篤蔵の前に
意外な人物が姿を現す・・・


時は流れ、「昭和」という新時代が幕を開ける。
大膳も新しい形に生まれ変わろうとしていた。
一方、変わらず平穏な日々を過ごしていた篤蔵たちだったが・・・

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

 

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よろしければ→【2015年7月期・夏クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

 


※キャスト

秋山 篤蔵 … 佐藤健

秋山(高浜) 俊子 … 黒木華

宇佐美 鎌市 … 小林薫

松井 新太郎 … 桐谷健太
山上 辰吉 … 柄本佑

秋山 周太郎 … 鈴木亮平
秋山 周蔵 … 杉本哲太
秋山 ふき … 美保純
秋山 蔵三郎 … 森岡龍
秋山 耕四郎 … 瀬戸利樹(子役期: 佐藤和太)
秋山 一太郎 … 藤本飛龍
秋山 初江 … 須田理央
高浜 金之介 … 日野陽仁
高浜 ハル江 … 大島さと子
高浜 光子 … 石橋杏奈
高浜 鈴子 … 田中芽衣
高浜 静子 … 山田紗椰

福羽 逸人 … 浅野和之
宮前 達之助 … 木場勝己
入沼 … 天野義之
黒川 … 林泰文
杉村参事官 … 大鷹明良
城田 … 森田哲矢
町山 … 東口宜隆

桐塚 尚吾 … 武田鉄矢
田辺 祐吉 … 伊藤英明

森田 梅 … 高岡早紀
森田 仙之介 … 佐藤蛾次郎
茅野 … 芦名星

お吉 … 麻生祐未
五百木 竹四郎 … 加藤雅也

奥村 … 坪倉由幸
佐々木 正志 … 西沢仁太
荒木 … 黒田大輔
関口 … 大西武志
杉山 … 渡邊衛
藤田 … 大熊ひろたか
鈴木 … 城戸裕次

大正皇后 … 和久井映見
皇后付き女官 … 伊藤かずえ

フランソワーズ … サフィラ・ヴァン・ドーン
オーギュスト・エスコフィエ … レベル・アントン
アルベール … ロイック・ガルニエ
ジャン・パトゥル … グレッグ・デール

粟野 慎一郎 … 郷ひろみ

※スタッフ

脚本 … 森下佳子
演出 … 平川雄一朗
プロデュース … 石丸彰彦
音楽 … 羽毛田丈史、やまだ豊

原作 … 杉森久英『天皇の料理番』
主題歌 … さだまさし「夢見る人」

公式サイト(終了) http://www.tbs.co.jp/

 

 

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【天皇の料理番】 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話

コメント

  1. 巨炎 より:

    正章版はここで19話。後は寅さんナレが戦中・戦後の篤蔵の後半生を語って幕引き。
    篤やんを主役に据えて時代を描いた物語的で佐藤版の方が篤蔵の物語的でしょうか。
    新作も決して甘い物語では無かったけど、まだ互いを思いやる気持ちがあるのに対し、
    旧作は根が善良な人達も他者を省みる余裕がなかなか持てない厳しい時代を描いた感。

    辰吉は事業家として成功し豊かな暮らしをするも幸福感を得る事が出来ずに
    妻との関係がこじれ、ちゃんと話し合おうとするも震災でうやむら。
    妻は療養先の医師と、自分も付従ってくれた若い女中と再婚して別の人生を歩みだす。
    この辺りは実話の秋山氏の結婚歴がベースになっているでしょうか。

    新太郎は料理人としても画家としても大成せず、徴兵されて片脚を失う。
    しかし篤やんに捨てられた(!)フランソワーズとささやかな洋食屋を営み
    妻に先立たれた篤蔵は彼のヒレカツで初心を忘れていた事に気づき涙する。
    三人で匙加減は異なりますが社会的成功と家庭的幸せが反比例している様が共通している。

    森下センセー、これは21世紀に救いが無さ過ぎると考えたのでしょうね。
    震災が家族の絆の再生になっていたし、篤蔵は初心を忘れないし
    一太郎は父の気持ちを理解し最後は出征先から戻ってきた。
    三人は立場、違えど友情は変わらず飲み歩いているカットも入ったし。
    帰国後の新太郎の扱いが微妙だったり宇佐美の現役が長過ぎるという難もありますが。
    (最後の御奉公の感覚でも終戦直後で70歳は過ぎていただろう)

    ただ新作で宇佐美を最終回まで引っ張った理由は旧作を観れば解ります。
    旧作の宇佐美は目を患い体調も崩して大正時代の内に現役を退きますが
    篤蔵を日本一の料理人にしようとする焦りからパリ編前後で人が変わったようになる。
    真心を篤蔵に教えたはずの宇佐美が篤蔵を野心の道具にしてしまった側面がありました。
    新作では自分の息子のように気にかけ続ける訳ですし。

  2. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    最終回が終わっちゃってからのレスで申し訳ありませんーー(;_:)

    >ジュテームの意味を愛しているという漠然とした言葉でなく、実感を持って腹に落ちる様に説明し、それを表情だけで納得するあの場面は秀逸でした。

    今日も明日も愛する人より長生きする、そのための「食」。
    全てが愛と繋がっていましたね。
    あーーなんかまた泣けてきました…

    コンパクトにまとまった全12話、納得でした。
    本当にいいドラマでした。

  3. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    レスが遅くてすいませんーー!

    >うん、ドラマってどれだけ視聴者の心に余韻を残すかだよね…見てる時より後で思い出した時にどれだけ感情が湧くか。
    毎回深い深い余韻が残るドラマでしたね。

    終っちゃったねぇ……
    そう、その「余韻」確かに貰ったわ。
    こうやっていただいたコメント読み直しても思い出して泣ける(´;ω;`)

  4. くう より:

    SECRET: 0
    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    レスが遅くて申し訳ありません~!
    コメントありがとうございました^^
    そう言っていただけるとありがたいです。
    良いドラマでしたね!

  5. 天皇の料理番「皇居編~最愛の人と最後の晩餐」

    震災で家を失った篤蔵(佐藤健)たちは、桐塚(武田鉄矢)の家で、しばしお世話に。「篤蔵 (佐藤健)さんより長生きします」と言ってた俊子 (黒木華) だけど、子宝と仕事に恵まれ、多忙な日々に病魔が襲ってきて、ついに、倒れてしまいました。病名は心不全自宅での療養生活が続き、安静の生活、どんどん弱ってくるのですが、篤蔵ファミリーの結束はより固まり、篤蔵の愛に満ちた介護料理。俊子は幸せそうに感じられま…

  6. 天皇の料理番 episode11

    「皇居編〜最愛の人と最後の晩餐」

    内容
    大正12年、9月末。
    震災を乗り切った篤蔵(佐藤健)たちは、桐塚(武田鉄矢)の世話になっていた。
    篤蔵は、通常の業務だけでなく、震災の救護活動も続け。
    俊子(黒木華)も、新居探しや、産婆の手伝いで忙しかった。

    そし…

  7. 天皇の料理番 第11話

    「皇居編〜最愛の人と最後の晩餐」2015年7月5日 日曜よる9時 大震災から逃れた 篤蔵 (佐藤健) たち。俊子 (黒木華) の体調はまだ回復していないものの、一家でたくましく暮らしていた。 年も明け、大膳も落ち着きを取り戻してきたある日、篤蔵の前に意外な人物が姿を現す…

  8. 天皇の料理番 #11

    『皇居編~最愛の人と最後の晩餐』

  9. 昼寝の時間 より:

    天皇の料理番 第11話

    公式サイト(終了) 大震災から逃れた 篤蔵 (佐藤健) たち。俊子 (黒木華) の体調は

  10. りんりん より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつも楽しみに読ませていただいてます。
    本当に無駄なセリフの一行もない回でした。改めて思い出して私もちょっとウルウル。ジュテームの意味を愛しているという漠然とした言葉でなく、実感を持って腹に落ちる様に説明し、それを表情だけで納得するあの場面は秀逸でした。
    今日で終わるのは勿体無いですが、このコンパクトさが、この濃さを生んだのだとも思うので、想像力を存分に働かせながら最後のドラマを楽しみたいと思います。

  11. JUP より:

    SECRET: 0
    PASS: c0bb460be2c4772c42583507b90b443c
    レビュー読んで、まさに今私も涙が出かかってる( ; ; )
    うん、ドラマってどれだけ視聴者の心に余韻を残すかだよね…見てる時より後で思い出した時にどれだけ感情が湧くか。
    毎回深い深い余韻が残るドラマでしたね。
    今夜も楽しみ。
    終わってしまうのは寂しいけど(/ _ ; )

  12. Happy☆Lucky より:

    天皇の料理番 第11話

    第11話

    JUGEMテーマ:エンターテイメント

  13. より:

    SECRET: 0
    PASS: acddcd1be50e65459940b991c4480e9a
    はじめまして。このブログは私がドラマを見るときの大事な参考書なので遅くとも必ず読みます。料理番は大好きなドラマなので更新してくださって嬉しいです。

    もちろん好みが完全に同じな訳ではなく読み飛ばすこともありますけれど、新たな発見があって好きでないものを見はじめることもあります。これからも更新の度嬉しく読ませていただきます。一度お礼を申し上げたかったので、この機会に。

    今夜も楽しみですね。癇癪は抑えられるようになってるかしら。

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