日曜劇場【 おやじの背中 】第5話 『ドブコ』 感想 木皿泉×堀北真希×遠藤憲一 の回

何でかな。
何で私がいいって思うことは、ずっとずっと続かないのかな。

 

そりゃお前、生きてるからだよ。
ずーっと子供のままじゃいれないし、人はいずれ死ぬようにできてる。
変わってくんだよ。俺もお前も。
勝も勝と結婚する奴も。
ここに住んでる奴みんなそうだよ。
変わんのが嫌だって怖がっててもしょうがねえよ。

 

おやじの背中 第5話 『ドブコ』

     おやじの背中5

 

『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』『Q10』
恐らく私の最愛の脚本家さん木皿泉さん久々の単発ドラマである。

ドラマに精通している人はやはり解っているらしく…
開始前のドラマ班の皆さんの期待値の高さハンパ無い。 

 

個人的には木皿泉作品は日テレの河野Pとセットで愛しているので、他のスタッフと
組んだものはどうかな、という不安がちょっとあったのだけど…。
(以前BSNHKで放送された単発ドラマはそれほどコツンと来なかったので)

すごく良かった~~。
木皿泉さん独特の希望と温かさと切なさに溢れたドラマだった。

 

堀北真希ちゃんとのタッグは『野ブタ。をプロデュース』以来。

薬師丸さんはもう木皿泉作品の常連だ。
今回は友情出演。

 

まきまきに警官役がとっても合っていた。
女医とか女性パイロットは何だか不安でいっぱいだったけれども警官役の
可愛いけれども凛々しい感じ。

 

エンケンさんの「斬られ役」は、もうエンケンさんの過去作品から見たら適役すぎ。

「悪役」からの「本当は臆病で人間的な父親」も、今までの出演作品から見ると
もうエンケンさんしか考えられない。

 

理想の父娘だったよ。
いつまでも側に居てもらいたい父。
そして切りたくなかった娘。

 

三冬は警察官。
父、正は悪役専門の俳優である。
芸名は「鬼頭勇人」。

 

な~にが鬼頭よ。丸井正のくせに。

三冬は父の仕事がちょっと好きじゃない。
まぁ…悪役専門の俳優さんじゃ、子どもの頃は色々と言われたんだろうな…
というのは深く想像しなくてもよく解る。

 

私は旧姓がとある有名コメディアンと同じで~
別に親戚でも何でもないんだけどね…(第一、字も違うしな)
小学校から中学辺りは、毎週そのコメディアンがテレビでコントやった通りに
からかわれたりしたもんだ。
子どもっていうのは残酷で馬鹿な生き物なのである。

 

三冬は子どもの頃から「ドブコ」と呼ばれてきた。
それは父の当たり役がヤクザ映画の「ドブネズミ」というチンピラの役だったから。

それを笑って受け止めて来たから強くて…ちょっとドライな女に育った。
何だかちょっと解る…この子の気持ち。

 

幼馴染みで一緒に警官として働いているマサルから、三冬は突然言われるのだった。

 

あのさ、結婚式なんだけど。
出ないでほしいんだよね。

 

もう服も買っちゃったと文句言う三冬だが、結婚相手が三冬の出席を嫌がっている、
とマサルは言うのだった。

 

何で? 私、会ったことないよね?

 

そうなんだけど、俺とドブコが仲いいの聞いちゃったらしくってさ。
で、やたらとお前のこと気にし始めてさ…。

 

その事でずっと揉めているという話を聞いて、出席をあきらめる三冬。

しかし、マサルはそれ以上にとんでもないことを言い出す。

 

いいよ。結婚式出なくったって友達は友達なんだからさ。
マサルとは小学校からの腐れ縁だし。

 

その友達っていうのもさ、結婚したら止めてほしいって言われてるんだよね。

 

私達、友達じゃなくなるってこと?

 

まあ、そういうことになるのかな…とにかくさ、来週からそういうことで。

 

なんだそりゃあああ……。

なに、その『家族狩り』の美歩みたいな女は。

で、そんな女の言う通りにシラッと友達を切ろうとしているこの男は

と、この時は本気でハラ立った。

 

テレビで斬られる父を見ながら、友達から今までも切られてきた自分の人生を
思い起こす三冬。

 

父さんはいつもいつも切られ役です。

だからなのか

私は、いつも切られてばかりです。

 

可哀想だよ…。・泣

と、思っていた。

 

けれども、物事には違う側面がある。

その事でちょっと母に愚痴こぼしたから、父はマサルを締め上げた。

恐い顔の人に連れて行かれた!
っていうのに笑った。 

たしかに、あの顔に連れていかれたら何されるか解らないと思うわ。

 

だって、お前、一方的に別れようって言われたんだろ?

 

と、とっても娘思いのお父さん。

 

もういいって言ってるでしょ!
自分の気持ちぶちまけたって何の解決にもならないの。
そんなことしたらみんなから面倒くさい奴って思われて、嫌われるだけじゃない。

何?お前、嫌われたくなくて自分の言いたいこと言わないっていうのか?
それおかしいんじゃ…。

現実の世界はね、嫌われたらそれでおしまいなの!
父さんと違ってみんな嫌われないように必死で生きてるんだからね!

 

「父さん」はいつも斬られている。
けれどもそれはテレビの中の世界だから、物語が終われば立ち上がる。

現実はそうじゃないということを三冬はイヤというほど勉強して生きてきた。
人間誰しも面倒を避けて生きているもんである。

 

けれども、その直後、父は倒れてしまう。

テレビの中の人だから斬られても生きてまた帰ってくる…
そう思っていた三冬に初めて不安が芽生えるのだった。

 

マサルも友達止めて宣言したクセに心配して声を掛けてくる。
父は幸い後遺症も残らない軽症で済んだ。

 

でもよかったよ。
お前の父ちゃんのさ、あれ、告白っていうのかな。
あれが最後の言葉になるんじゃないかって考えちゃったよ、俺。

 

告白?

 

あっ、これは秘密って言われてたんだった。

 

何?

 

男の約束だから。

 

婚約者に言おうか?
私とまだ友達づきあいしてますって。

 

ドブコ、お前、きたねーぞ!

 

父がマサルに明かした「秘密」とは、

「俺は切られる役ばっかりやってきたけど、一度だけ自分から切ったことがある」

 

考えてその答えに到る三冬。

 

覚えてるよ。
切ったの。
私だよね?

 

小学生の時。
父は一緒にお風呂に入ろうとせがむ三冬のおねだりを断ったのだった。
それっきり、三冬は父とお風呂に入っていない。

 

怖かったんだよ。
もう 父さんなんかと一緒にお風呂入んのヤダって言われんのがさ。

 

えっ!そんな理由だったの?

 

お前が生まれたときからいずれその日がくるんだってずっと恐れてたよ。

 

まじ?

 

だからお前に拒絶されるより先に絶対言わなきゃって思ってた。

せこっ!

「せこっ」ってお前…だってな、お前、後ろからバッサリ斬られるようなもんだぜ。

 

切られるの慣れてるじゃん。

 

お前、別だよ。
だって本物だもん。

 

かわいいな…父さん。可愛すぎるよ。
そして、なんて素直なんだろ。
素直で臆病で優しくて…良い人だわ。

 

私さ、父さんとお風呂入るの楽しかったなあ。
怖い話してくれたり一緒に歌 歌ったり。
そんな日がずっと続くんだと思ってた。

でも、いつも 突然終わりって言われるんだよね。
マサルだって、ずっとふざけあって友達のまま年をとるって思ってたのに。
はい、ここまでって。

父さんもさ、殺されても殺されても「ただいま」って家に帰ってくるじゃない。
だからそんな日がずーっと続くんだと思ってた。
でも、この間父さんもいつかは死んじゃうんだなって…。

何でかな。
何で私がいいって思うことは、ずっとずっと続かないのかな。

 

そりゃお前。生きてるからだよ。

ずーっと子供のままじゃいれないし、人はいずれ死ぬようにできてる。
変わってくんだよ。俺もお前も。
勝も勝と結婚する奴も。
ここに住んでる奴みんなそうだよ。
変わんのが嫌だって怖がってても しょうがねえよ。

 

ああ、そっかぁ……って、この時、マサルの事もストンと腑に落ちたの。

確かに嫁になる女は心が狭い。
けれども、例えば仲の良かった姉弟だって結婚するとちょっと疎遠になる。

お互いにお互いの場所が出来て、甘やかな子供時代から遠ざかる。
恋愛や結婚や出産はその大きな切っ掛けになる。

マサルはその事を理解していた。

 

しかも…この後、三冬との剣対決(オモチャ)で本当に三冬を切って、想いも
告白しちゃったもんね。 

切りたかったのは嫁じゃなくてマサル自身でもあったわけだよ。

好きだったんだねぇ…ずっと。

 

私、忘れないから。
マサルと過ごした楽しかった時間。
絶対忘れないから。

 

斬られた父のように地面に転がる。

 

知ってる? 死んだつもりで地べたに寝てるといつもより緑が目にしみるんだよ。
人の走ってる音とか体中に伝わってきて、みんな生きてるってそう思えるの。

 

これは、父の受け売り。

 

バイバイ 。私の友達。

バイバイ。何も変わらないと思ってた私の子供の時間。

 

温かいけれども切ないのは、失った過去を思い起こすから。

いや…実際には失ったわけではなくて「思い出」という名前で私たちの中に残る過去。

人はいつまでも同じではいられない。

友達だったものは形を変え、ころころ一緒に転がっていた時間は元には戻せない。

 

前に進むんだよ。過去を切りながら。

温かいのに泣けてしまうのは、自分の気持ちと同じようにそれが伝わるから。

でも、たぶん変わった自分も悪くない。
悪くない未来がこの先も待っている。

そう思わせてくれる明るさも木皿泉さんの作品ならではだった。

 

今の幸せを続けたくて誰かを切ってしまうんだよ。
人ってそういうもんなんだよ。

 

マサルが嫁を切って三冬とくっつくという結末だって、たぶんあるわけだけれども、
木皿泉さんは切なさと苦さは残す。

この先、三冬が誰かと出会って結婚したら、マサル夫婦とも別の形で友達に
なるかも知れない。

 

でも、役で花嫁の父をやっただけで号泣しているあの父さんを、その時切るのは
大変だろうなぁ……。

 

彼らの将来をそんな風に想像できる清々しいお話だった。

 

大好きな木皿泉さん…。
お身体にさわらないように無理のないように、けれども、できたらまた木皿泉さんの
連ドラをたった1本でもいいから見たいです。

その日が来ることを心からお待ちしております。

 


警察官・三冬(堀北真希)の父・正(遠藤憲一)は悪役専門の役者。
テレビの中で斬られて死ぬ正の姿を、三冬は幼い頃から見てきた。
ある日、同僚で幼馴染のマサル(溝端淳平)から結婚式に出席しないでくれと
言われる三冬。
それを見かねて職場に乗り込んできた正に三冬は激怒する。
その時、通りすがりの子供が正にヒーローごっこを仕掛けてきた。
いつもの様に応えてやられて死んでみせる正。
だが何故か倒れた正が立ち上がらない…。

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

よろしければ→【2014年7月期・夏クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

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※キャスト

丸井 三冬 … 堀北真希
丸井 正 … 遠藤憲一
佐々木 勝 … 溝端 淳平

静香 … 谷村 美月

ヒーロー役 … 小柳 友
三冬の同僚 … 安藤玉恵
三冬の上司 … 河野洋一郎
監督1 … 宮崎吐夢
監督2 … 安井順平
ヤクザ風の男 … 赤星昇一郎
時代劇・斬り役 … 関根大学
殺し屋 … 矢部太郎
小三の三冬 … 須田琥珀
ホナミ … 内田未来
子供1 … 神保龍之介
子供2 … 阿由葉朱凌
看護師1 … 白土直子
看護師2 … 勝平ともこ
花嫁 … 井端珠里
子供の母親 … 羽鳥名美子
AD1 … 龍輝
医者 … 重村佳伸

丸井弓子 … 薬師丸ひろ子

※スタッフ

脚本 … 木皿泉
演出 … 北川雅一
プロデューサー … 八木康夫
  
公式サイト(終了) http://www.tbs.co.jp/

 

 

 

 【 おやじの背中 】第1話 第2話 第3話 第4話 第5話


コメント

  1. 最初は見上げて最後は見下ろすおやじの背中をミニスカポリス・夏服で追いかけちゃった。(堀北真希)

    「日曜劇場」でオムニバスドラマである。 岡田惠和、坂元裕二、倉本聰、鎌田敏夫、木皿泉・・・凄腕の脚本家が・・・田村正和、役所広司、西田敏行、渡瀬恒彦、遠藤憲一・・・おやじ俳優たちの背中を追いかけていくわけである。 豪華絢爛なのである。 谷間の登場で・・・選択が難しいわけだが・・・父親より娘が主役のコ

  2. くう より:

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    お盆はゆっくりお過ごしになれましたでしょうか(^^)/

    >一流脚本家さんそれぞれの父親観が出ており、感慨深く、かつ泣かされます。

    それぞれの味がありますよね。
    すごく特徴が出ていると思います^^
    だから逆に見る人によっては好き嫌いもあるかなぁ。

    >自分的には今のところ初回の岡田さんがベストです。2回目も良かったですが、やはり初回の岡田さんならではの優しい視線が良かったです。

    あれは1時間で描くために余計な物を削ぎ落した感じが素晴らしかったですわ。
    時間経過に不自然さがなく見ていて気持ち良かったです。
    私は元々、松さんの大ファンなのでそれもあって余計に楽しめました^^

  3. 隠れ常連 より:

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    こんにちは
    ご無沙汰しています。
    仕事が忙しくてこのシリーズはなかなか見れずに、お盆に一気に見ましたが、毎回実に丁寧に作られていて良いですね。
    一流脚本家さんそれぞれの父親観が出ており、感慨深く、かつ泣かされます。
    自分的には今のところ初回の岡田さんがベストです。2回目も良かったですが、やはり初回の岡田さんならではの優しい視線が良かったです。田村正和も松たか子もそんなに好きな俳優ではなかったですが、あの作品は引き込まれました。
    たかが1時間、しかし濃密な1時間を毎週楽しみにしています。

  4. 昼寝の時間 より:

    おやじの背中(メモ感想) 第五話「ドブコ」

    公式サイト(終了) 脚本:木皿 泉/演出:北川雅一/プロデューサー:八木康夫、出演:堀北

  5. おやじの背中 「ドブコ」〜斬られたら、地面に倒れて空を見上げよう

     木皿泉さんの脚本。

     テーマは<斬られること>。
     この<斬られること>を言い換えれば<失うこと>でしょうか?
     人は何かを失って生きている。

     たとえば、三冬(堀北真希)と勝(溝端淳平)の友人関係。
     三冬は、勝から「フィアンセが嫌がるから友人関係を…

  6. 【おやじの背中】第5話感想と視聴率「ドブコ」

    「ドブコ」(脚本:木皿 泉) 新聞ラテ「ドブコ・父さんは悪役スター」 第5話の視

  7. おやじの背中 第5話

    第五話 ドブコ  2014年8月10日(日)よる9時放送 ラテ欄「ドブコ・父さんは悪役スター」 丸井三冬 (堀北真希) は悪役専門役者の 正 (遠藤憲一) を父に持つ女性警察官。父の当たり役がきっかけで、三冬は友人たちから 「ドブコ」 と呼ばれている。 ある日、三冬は幼な…

  8. おやじの背中 第5話

    丸井三冬(堀北真希)は、悪役専門の役者・正(遠藤憲一)を父に持つ警察官で、交通違反のキップを切る時はとても潔いです。

    一緒に警察官をやっている幼馴染の佐々木勝(溝端淳平)は、その様子にいつも感心するのでした。

    いつものように三冬は勝とお昼を食べながら、結婚祝いは何が良いのか尋ねると、勝の返事はとんでもないものでした。

    勝のフィアンセ・静香(谷村美月)から、三冬が結婚式に出席…

  9. Akira's VOICE より:

    おやじの背中(5)

    第五話「ドブコ」 

  10. おやじの背中 第5話:ドブコ・父さんは悪役スター/木皿泉

    泣き過ぎっ!(*JIS+7C7D∇JIS+7C7D)ウフフフフ

    お芝居なのに、あんなに泣いちゃって・・・
    ドブコの結婚式の際にはもう号泣も号泣!立っていられないほどの状況になりそう

    悪役専門の俳優で、任侠映画でのドブネズミと呼ばれる役が当たり役だった父のせいで
    小学校時代にドブコというあだ名…

  11. おやじの背中「ドブコ・父さんは悪役スター」

    世間的、評価は、分かれそうですが、個人的には萌え要素テンコ盛りな、愛すべき嬉しい作品でした。堀北真希、制服系(白衣を含む)似合いますよね~っ。彼女が府警さん、ってだけで、大ウケ。しかも、お父さんのエンケンさん(遠藤憲一)が、情にもろい、不器用な悪役スターってのもイイです。ピザーラのお茶目CM並にヤンヤ、だったのでした。さらに、薬師丸ひろ子の姿まで拝めるなんて… 嬉しすぎる。さらに、木皿泉なら…

  12. おやじの背中 (第5話・8/10) 感想

    TBSテレビ系『おやじの背中』(公式)
    第5話『ドブコ』(脚本:木皿泉氏 / 演出:北川雅一氏)の感想。

    三冬(堀北真希)の父親・正(遠藤憲一)は、悪役専門の役者。正の当たり役「ドブネズミ」にちなんで、小学生時代に三冬についたあだ名は「ドブコ」だった。今は警察官として働く三冬は、ある日、幼なじみで同僚の勝(溝端淳平)から、結婚式への出席を遠慮してほしいと言われる。婚約者が…

  13. おやじの背中 #05

    『ドブコ』

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