NHK朝ドラ【ちりとてちん】(2013年・再放送) 第106・107回 感想

喜代美(貫地谷しほり)ら徒然亭一門全員を前にして、草若(渡瀬恒彦)は
「大阪に落語の常打ち小屋を作りたい」と話す。
師匠のあまりに唐突な発言に、四草(加藤虎ノ介)をはじめ弟子たちはなんとか草若を
いさめようとする。
しかし草若の意志は固く、翌日、天狗芸能の鞍馬会長(竜雷太)を訪ね、常打ち小屋作りへの
協力を頼む。すると鞍馬は、条件として喜代美と草若の師弟落語会を開くよう指示する。(106話)

 

師弟落語会で創作落語をかけるよう命じる草若(渡瀬恒彦)に、ついに喜代美(貫地谷しほり)は
こらえきれず、その真意を問いただす。
「おまえが落語家として、この世界で生き残っていくためのすべを伝えたいのだ」と、初めて
本音を話す草若だが、そのまま突然うずくまってしまう。
糸子(和久井映見)の機転で病院に運び込まれるが、草若の病気はすでに取り返しのつかない
状態にあった…。(107話)

(上記あらすじは「Yahoo!TV」より引用)

連続テレビ小説「ちりとてちん」第106・107話「地獄の沙汰(さた)もネタ次第」
     

      ちりとてちん感想

 

※「ちりとてちん」は、2007年10月期のNHK連続テレビ小説です。
当方は当時の放送をオンタイムで見ているので感想は恐らく回顧目線になりがちです。
ご了承のうえ、ご覧くださいませ。

※レビューでは先のネタバレは控えるよう努力します。
※レビューの更新はイレギュラーで…。書けたり書けなかったりしています。

※再放送時間は月~土・午前7時15分からNHKBSプレミアムにて。

 

常打ち小屋を造る宣言して茫然とする弟子たちを残し、部屋に戻った草若師匠を追う糸子さん。

入院しなれ。
そねして下さい。お願いします!

と、頭を下げます。

奥さん、言いましたやろ。
私やらなあかん事がありますねや。

怖いんですやろ。
何かやっとらんと怖いさけ、そね次々動き回ってんやな。

糸子さんの顔を見て笑う師匠。

かないまへんな。奥さんには。

 

かつて、おかみさんが入院してはった頃、草若師匠は柳宝師匠や尊徳師匠、漢五郎師匠に 
声をかけて常打ち小屋造りに乗り出したんだそうです。

しかし、パートナーにしたファイナンシャルプランナーは悪徳だったらしく、
師匠は銀行から借りた金を持ち逃げされたのだとか…。

そして、鞍馬会長に肩代わりしてもらったのに、おかみさんが亡くなってから
落語を捨て、酒におぼれていたのは喜代美ももう知っているところ。

 

その、徒然亭にとっては鬼門ともいえる常打ち小屋。
みんなには、急にそんな物をまた持ち出した師匠の真意が計れなかったのでした。

 

「その道中の陽気な事」…いうフレーズが、よう出てきますんや。
上方落語には。

それを切っ掛けに陽気なお囃子が入る。
「愛宕山」で野がけに行く時も、貧乏長屋の連中が花見に行く時も、死んで地獄へ行く時も
「その道中の陽気なこと~」て。

おかしおますやろ。

「地獄八景亡者戯」いうのは地獄の鬼やら閻魔はんやらを散々ちゃかした噺でんねや。
昔の人が考えた地獄いうのは、ほんま楽しいとこです。
何でそういうふうに考えたか、今やったらよう分かりますわ。

「死ぬのは怖いこっちゃない。地獄は楽しいとこや」。

そう思わなちょっとこれ…耐えられまへんで。
まともに向き合うたら…。
怖ぁて怖ぁて…。

奥さん…。
「みっともない男や」て思いはりますか?

あの陽気なお囃子に送られて…地獄までの道中笑うて歩きたいんです。

そやさかい…。
思い残す事のあれへんようにしたいんです。

 

とても、とても師匠が小さく見えます。

今まで師匠が出てくるシーンでは、いつも堂々としてて。

お父さんみたいに頼もしくて。
神さまのように輝いていて。
その声には張りがあり、優しくて…。

今の師匠は、先の解らない道行きを陽気に笑って歩いて行くために
真っ暗な道を探って足掻いているようです。

糸子さんがいてくれたのは、本当に良かった…。

 

「寝床」では常打ち小屋はどうして必要なのか談義。

伝えていくためには聴いてくれる人が必要なわけで、生の落語を常に聴ける場がある
という事は伝統を残していくために重要なのだと。

やっぱり分からん。

と、喜代美。

「受け継いでいく。伝えていく」いう事をそね大事に思とんなる師匠が…
何で私にだけ「創作落語せえ」言うのんか。

失敗したと思とんやろか?
「女の弟子なんか取るんやなかった」って。
それも「こんなどんくさい何の芸もない子」て。

 

師匠は常打ち小屋の件で鞍馬会長に頭を下げに行きます。

 

落語の常打ち小屋なんか建てたかて儲からへん!
何べん同じセリフ言わせたらええねん!

当然、反対する会長。

常打ち小屋設立に一番大事なんはけん引力です。
会長が先頭に立って引っ張ってくれはったら…。

そやから。そんな儲かりもせん小屋のために何でわしが動かなあかんねん。

 

土地家屋を売り払って金を出すから、とまで言う草若師匠の執念に、
会長もただならぬ何かを感じたのでしょう。

 

もうなあ…しょうもない事ばっかり考えてんと、天狗座に客を入れる事だけ考えとけ。
「師弟落語会」さしたろ。

はい?

お前のとこにいてるやろ?何ちゅうた?女の…。

わ…若狭…。

若狭。そや。
若狭とお前とで天狗座で師弟落語会さしたる言うてんねん。
「ほほう!女の落語家かおもろいな」客が思たらやまた落語ブームが来るかも
分からへんやないか。

そん時には常打ち小屋の事かて考えたろやないか。

 

師弟落語会の話を聞いて、喜代美も草々さんも喜びます。

 

師匠2人の落語会。天狗座でやんのは5人の弟子の中でもお前が初めてや。

師匠は何をかけはんのですか?

うん。「地獄八景」や。

満面の笑み…の喜代美でしたが、

私は何にしようかな?

と、言うた途端…

 

はよ作らな間に合わへんで。

え?

お前は創作落語せえ。

戸惑う草々さん。
喜代美も、もう今までの不満が爆発してしまうのでした。

 

何でですか?
創作、創作て…そんなに私は古典に向いとらんのですか?
そら、私かて色んな事に挑戦してみたいです。
ほやけど、私があれこれできる人間やないいう事、師匠かて
分かっとんなるんやないですか!

師匠は私に落語辞めさせたいんですか!?

 

半泣きの喜代美を見ながら…顔が歪む師匠。

そして、そのままお腹を押さえて苦しみだしたのでした。

 

師匠?
大丈夫ですか!?

突然の事に、ただオロオロする草々さんと喜代美。

 

ああ…続けさせたいんや。

え?

お前に落語…続けさせたいんや。
若狭、お前も実感してると思うけど、女が落語やっていこう思たら男がやるより大変や。
男と同じ事やってたら食べていかれへん。
特に若狭みたいな不器用な子はな。

他の4人と違うて、古典を教えてやるだけではあかん。
この道で生きていけるすべを身につけさせなあかん。
……そない思てんねや…。

 

苦しそうに言って、床に倒れて転がる師匠の側に糸子さんが駆け寄ってきます。

 

救急車、呼びなれ!
早う!

 

慌てて電話を掛けに行く草々さん。

 

何?どういう事!?

時間がないんや。

え?

草若師匠には、もう…時間がないんや!

 

草々さんからの連絡で、みんなが病院に集まります。

 

治療したら治んのですか?
治んのですよね!?

治療に専念すれば…ある程度の延命は可能です。

延命て…。

最初の段階で手術しても完治はできないと分かりました。

 

医師の言葉に愕然とする徒然亭一門。

 

菊江さんの所で涙をポロポロこぼす小草若。

平兵衛に水やる手が震える四草。

鏡の前で笑顔を作ろうとすればするほど泣き顔になる草原にいさん…。

 

師匠のベッドに付き添って、喜代美は泣いておりました。

 

何、泣いてんねんな…。
笑わんかい。

笑える訳ないやないですか。
師匠かて…おかみさんの病気の事知って…高座すっぽかしたやないですか。
私もう嫌なんです。
小さい時、大好きやったおじいちゃんが亡くなって、もう、ほんまに涙でダムができるぐらい
泣いて泣いて泣き倒したんです。

もう二度とあんな思いしたくないんです。
大事な人が…大好きな人が…遠くへ行ってしまうのは嫌なんです。

しかし、師匠は笑うのです。

 

若狭…。
お前…ほんまにアホやなあ。
どないすんねんな?俺より先に死ぬか?
俺が先に死ぬのがかなわん言うのやったら、お前が先に死ぬしかないやないかい。
残った俺にそんなかなわん思いさせる気ぃか?

こんなもんはな…順番や。
お前より先に俺が死ぬのが道理や。

消えていく命をいとおしむ気持ちが、だんだん今生きてる自分の命をいとおしむ気持ちに
変わっていく。
そしたら今よりもっともっともっと一生懸命に生きられる。
もっと笑うて生きられる。

若狭…。
俺を笑わしてくれ。
お前の創作落語で俺を…笑わしてくれ。

 

死ぬことなんて誰にでも訪れる。
順番や…確かに。

けれども、大切な人が居なくなるのはつらい。
いつもそこにいた人がいなくなるのはつらい。

 

消えていく命をいとおしむ気持ちが、だんだん今生きてる自分の命を
いとおしむ気持ちに変わっていく。
そしたら今よりもっともっともっと一生懸命に生きられる。
もっと笑うて生きられる。

 

こんな風に考えたことはなかった。
人をいとおしいと思う気持ちは、命自体をいとおしく思う気持ちに等しい。
だから、自分も一生懸命生きようと思える。

身近な人の死は、「生」を無駄にしないことのための教訓。

そういう事ですよね。

師匠に死が迫っていることを知って、今嘆き悲しんでいる徒然亭のみんなを見て、
頑張れ、頑張れ…と思いました。

この悲しみが、師匠がやろうとしている「落語を残すこと」に向くように。

師匠の死が、みんなへのエールになる。

人の「死」さえも無駄にしないドラマです。
師匠が笑って道中逝けますように…みんなが生きる。

喜代美も。

 

やってみます。
創作落語、やってみます。

 

やっと、決心がつきました。

 

※告知~~!!
4月からこの「ちりとてちん」のBS再放送枠で「カーネーション」の再放送が
底抜けに~決定いたしました~~~!!

 

よろしければ→【2014年1月期・冬クールドラマ】ラインナップ一覧とキャスト表

 

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※キャスト

和田喜代美→青木喜代美/徒然亭若狭 … 貫地谷しほり(少女時代:桑島真里乃)

徒然亭草若(三代目) … 渡瀬恒彦
徒然亭草々 … 青木崇高(少年時代:森田直幸)
徒然亭草原 … 桂吉弥
徒然亭小草若 … 茂山宗彦(少年時代:榎田貴斗・森川翔太)
徒然亭四草 … 加藤虎ノ介
木曽山勇助/徒然亭小草々 … 辻本祐樹
吉田志保 … 藤吉久美子

和田糸子 … 和久井映見
和田正典 … 松重豊
和田小梅 … 江波杏子
和田小次郎 … 京本政樹
和田正平 … 橋本淳(少年時代:星野亜門)

和田正太郎 … 米倉斉加年

和田清海 … 佐藤めぐみ(少女時代:佐藤初)
和田友春 … 友井雄亮(少年時代:小阪風真)
和田秀臣 … 川平慈英
和田静 … 生稲晃子
野口順子 … 宮嶋麻衣(少女時代:伊藤千由李)
野口幸助 … 久ヶ沢徹
野口松江 … 松永玲子
野口春平 … 斉藤勇人/新岡澪
野口順平 … 斉藤隼人/新岡塁

熊五郎 … 木村祐一
咲 … 田実陽子
磯七 … 松尾貴史
菊江 … キムラ緑子
徳さん … 鍋島浩
お花 … 新海なつ
緒方奈津子 … 原沙知絵
原田緑 … 押元奈緒子

鞍馬太郎 … 竜雷太
万葉亭柳眉 … 桂よね吉
土佐屋尊建 … 波岡一喜
万葉亭柳宝 … 林家染丸
土佐屋尊徳 … 芝本正
柳宝の弟子 … 林家染左、林家染吉
烏山 … チョップリン西野
原田颯太 … 中村大輝(少年時代:河合紫雲)

音大の教授 … キダ・タロー
あわれの田中 … 徳井優
横山たかし・ひろし … 本人
五木ひろし … 本人
ニュースキャスター … 浅越ゴエ

竹谷修 … 渡辺正行
堀田由美子 … 和田はるか
高島恵 … 中井飛香
北川沙織 … 村上佳子

 

語り – 上沼恵美子

 

※スタッフ

脚本 … 藤本有紀
演出 … 伊勢田雅也、勝田夏子、井上剛、菓子浩、三鬼一希、吉田努、櫻井壮一
制作統括 … 遠藤理史
音楽 … 佐橋俊彦

テーマ曲・ピアノ演奏 … 松下奈緒

 

 

 【ちりとてちん】第1週~第3週、
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コメント

  1. くう より:

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    PASS: d0970f9a670a457ba04fd47a84598fe5
    >最悪な状況でも洒落のめす。
    粋ってそういうところから生まれるのかもしれませんね。

    最悪な状況だからこそ前向きに。
    そういう事も教えてくれている気がしますね^^

    >師匠のことを知った小草若が仏壇の菊江さんのところに行くのがいい。

    おかみさんが亡くなってからお母ちゃんのように支えて来てくれた人ですもんね。
    小草若の子供の部分を受け入れてくれる人ですね。

    >糸子さんも自分ちをほおりだして師匠のところに行くの、よく考えたら少し無理があるんだけど、今までの積み重ねがあるから無理が無理に見えない、ありうる、と思えるし、
    おかあちゃんのあたたかさになってます。

    ですよね~。糸子さんが居なかったらどうなっていたか…って思いますもんね。
    自分の家を放ってでも1人の師匠を放っておけない。
    優しさと人の良さが滲み出ています。素敵なお節介です^^

  2. ゆう より:

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    最悪な状況でも洒落のめす。
    粋ってそういうところから生まれるのかもしれませんね。
    師匠のことを知った小草若が仏壇の菊江さんのところに行くのがいい。
    「またそうやって~言うやろ~」って言いながらも話を聞いてやるところが好き。
    弟子それぞれの受け止め方、動揺の仕方に個性がでているし、共感できます。
    糸子さんも自分ちをほおりだして師匠のところに行くの、よく考えたら少し無理があるんだけど、今までの積み重ねがあるから無理が無理に見えない、ありうる、と思えるし、
    おかあちゃんのあたたかさになってます。

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