【走馬灯株式会社】第9話「Disc9 杉浦克巳 40歳」橋本さとしゲスト回

記憶をなくされたのはそのときのショックが原因かと思います。

記憶というのは不思議なもので、思い出したくない情報を
心の奥に封じ込めたりするんです。

 

「走馬灯株式会社」9話:Disc9 杉浦克巳 40歳

 

        走馬灯株式会社

 

※以下の感想はネタバレしています。ネタバレはしないで見た方が面白い内容なので、
知りたくない方は視聴後の閲覧をお薦めいたします。

  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

杉浦克巳は救急隊員に声を掛けられて意識を取り戻した。

大丈夫ですか!?救急車が来ましたよ。もう大丈夫ですからね!
大丈夫ですか!?
声、聞こえますか?
名前を教えてもらえますか?

名前…

あなたの名前です。

 

精神科の医師が教えてくれた「杉浦克巳」それが自分の名前らしい。
怪我をして倒れ、病院に運ばれたその経緯も杉浦には全く記憶になかった。

自分の家だというマンションに連れて行かれたが、そこも全く見覚えがない。

この部屋、見覚えないですか?
免許証の裏に書いてあった住所がここなんですけどね。

いえ、まったく。

そうですか。

あの、どういうことなんですか?

まあ、いわゆる心因性の健忘症でしょう。

健忘症?

いわゆる記憶喪失です。

頭部に外傷もなく、検査の結果も何も異常はない。
医師は心因性の物だろうと言う。

脳から情報が消えたわけではないと思いますし、ゆっくり思い出しましょう。

医師はそう言って帰って行った。

部屋の中を見渡す。
何一つ記憶にない。

洗面所で鏡の中の自分に話しかけてみる。

杉浦…克巳…。

洗面所にはブルーとピンクの歯ブラシが1本ずつ。
誰かと住んでいたのか。
しかし、部屋の中に人気はない。

綺麗に片づけられた台所。
そこにもプルーとピンクのカップが1つずつ。

ダイニングの椅子に掛かっていた上着のポケットの中に携帯が入っていた。

携帯の住所録を見てみる。
知らない名前が並んでいた。

杉浦は思わず舌打ちした。ため息しか出ない。

 

翌朝、杉浦は近所を歩いてみた。
何か思い出せるかもしれない。

奇妙な扉を見つけ、思わずドアを開けてみた。看板には、「走馬灯株式会社」

入った途端にエレベーターに吸い込まれ…
気が付くと目の前に髪の長い人形のような女が立っていた。

 

ようこそお越しくださいました。
私、走馬灯株式会社の神沼と申します。

あの…変に思わないでほしいんですけど…
実は、その…記憶をなくしてて…。

それでしたら、ご期待に沿うことができると思います。

えッ!?あの…

こちらは 人生をかえりみていただく場所です。

こちらのディスクにあなたの人生が収められております。

人生って…ホントですか?だったら 記憶が…

 

早送りやチャプター再生も可能ですし、興味が湧かなければ
最後まで見ていただく必要はございません。

それでは、杉浦克巳様。
あなたの40年の人生を心行くまで かえりみてください。

 

ディスクをセットすると再生が始まった。

 

電車の音…

自分がここに来るまで、線路沿いに歩いてきた。

そして、さっきまでいた自分の家だというマンションが映る。

「ただいま~」

「お帰り。出張どうだった?」

「もう最悪だったよ。旅館の飯が超まずくてさあ。」

「やっぱり妻の手料理が一番でしょ?」

「もちろん。そのとおり。」

 

結婚…してたのか。

明るいチャーミングな女性がそこには映っていた。
幸せな夫婦の会話。

「はい。お土産~」

「え~っ、またこれ?」

「だって、由実、それ好きじゃん」

「そりゃ好きだけどさあ」

由実!?
由実…

妻の名前は「ゆみ」というらしい。

飲み物を飲みながらしばらく見ていると、映像は朝になった。

「ちょっと、ちょっと!ゴミ捨ててってよ」

ゴミを渡される。

「行ってらっしゃい。今日は早く帰ってきてよ」

「うん。じゃあ行ってくる」

ゴミの集積所で、同じマンションの住民らしい主婦に挨拶。

「おはようございます」

「おはようございます」

ゴミを置いて歩き出すとすぐに、グシャ!…という奇妙な音が響いた。

「きゃーーーーーっっっ!!」

さっきの主婦だ。
ゴミ集積所の方を振り返ると…

そこには、由実が倒れていた。

血の海の中に……

「あッ!ああ~!」
「あっ…誰かぁぁぁ!」
「由実!わぁぁぁぁぁぁ」

何だこれは……

杉浦はディスクの中の映像を見て茫然と立ち尽くした。

…何でだよ……!
さっきまで普通だったのに…!!

 

杉浦は走馬灯株式会社を出てマンションに戻り、医師に連絡した。
医師はそれまでの杉浦の事を警察に聞いてくれたようだった。

 

残念ですが、やはり奥様は1週間前にこのマンションから……。
遺骨のほうは、奥様の実家が引き取られたと…。

そうですか…。

記憶をなくされたのは、そのときのショックが原因かと思います。
記憶というのは不思議なもので、思い出したくない情報を心の奥に
封じ込めたりするんです。

どうやら、引っ越したばかりだったようです。

 

…だから部屋の中にダンボール箱がたくさんあったわけだ…。
杉浦は、まだ荷物が出ていないダンボールの1つを開けてみた。

フレームの中に、由実の肩を抱いた笑顔の自分の写真が入っている。

記憶には全くないのに、杉浦は悲しかった。

…妻は、どうして…。

そんな事は、医師に聞いても解るはずがない。
夫である自分さえ解らないのだから……。

 

翌日、杉浦は手掛かりになりそうな事を探そうと、ダンボールや自分のバッグを漁った。

スケジュールが書かれた手帳を見つけ、開いてみる。

仕事のスケジュールや、この家に引っ越す予定が書かれていた。

ふと目に留まった日付。
「Fri 24 玲子 10:00~」

玲子……。

 

走馬灯株式会社に足を運んでみる。

もう少し遡ったところから見てみることにした。

映像は会社の中のようだった。
清楚だが、地味目の若い女性が映っている。

「今日から働くことになりました野々村玲子です。
 よろしくお願いします」

「ああ、よろしくね」

これが、玲子か…。

映像が玲子の後ろ姿のウェストや尻ばかり映しているのが少し恥ずかしい。
これは、自分自身の目線だった。

 

飲み物を飲みながらソファに寝転がって見ていた杉浦は、やがて、自分自身の
イライラした口調に驚いて起き上がった。

モニターの中の自分は電話をしていた。

「ああ…だから仕事がまだ終わんないんだよ。
 晩飯のことは悪かったよ。これからちゃんと連絡するから!」
「うん… 分かった?…うん…はい、じゃあ」

かなりイラついている様子で電話を切る自分。

そこへ、玲子が入ってきた。

「お疲れ様です」

と、健康ドリンクを差し入れてくれる。

「ああ、ありがとう」

と言いながら、またも画面の中の自分の目線は玲子の胸や尻を見ている。

社内は遅い時間で、玲子と自分しか残っていないようだった。

ずっと見ていると、映像の中の自分はデスクでパソコンに向かう玲子の
後ろ姿にどんどん近づいていた。

「杉浦さん!?」

驚いて振り向く玲子。
自分は玲子を襲っているようだった。

「野々村君…いいだろ? …1回ぐらい」

「でも…やめてください!あッ…あ」

玲子の制服のボタンを外す自分の手……。

杉浦は画面を見て思わず乗り出した。

「いいのか?…いいのか…」

さらに、胸のボタンを外す……。

自分の事なのに、もう見ていられない。

浮気ぐらい誰だってするだろう!!

杉浦は、誰にともなく自分を弁護した。

 

忌々しい気持ちで、しばらく画面に背を向けて飲んでいた。
画面の中は何日か経って夜になっているようだ。

会社帰りらしい自分の目の前の暗闇から、突然女が出てきた。
玲子だ!しかし、様子が何だかおかしい。

またも、画面にくぎ付けになる。

「杉浦さん。どうして逃げるの?」
「杉浦さんは軽い気持ちだったのかもしれないけど、私は本気です
 奥さんにもちゃんと話そうと思ってます」

「ちょ…ちょっと待ってよ!」

「私は…かっちゃんと、ずっと一緒にいたい」

目に涙をためてやつれた様子の玲子。
画面の中の杉浦はそのまま逃げだしたようだ。

なんだ…この女…。

 

しばらく進めると、急に明るい景色が映し出された。

画面いっぱいに広がる梅の景色。
そして、白いワンピースを着た玲子。玲子ははゃいでいた。

「2人で旅行できるなんて夢みたい!ありがとね、かっちゃん」

「ああ」

「これからは、ずっと一緒にいられるんだよね?」

 

玲子は幸せそうに微笑んで、隣りにいる自分を見上げている。

不倫旅行に来ているんだな……。

と、その時、急に玲子の顔が苦しそうに歪んだ。

「ああッ…ヤダ…ううっ…う」

杉浦は立ち上がって画面を凝視した。
自分は一体何をやっているんだ……

玲子のうめき声と、どすっっっ!という衝撃音…。

画面の中の自分は足元から下を見ている。高い。

さらに下を覗きこむと……そこには、白いワンピースの女がうつ伏せで倒れていた。

血まみれになって……

「ああ…ああ…!ごめん…ごめん…うわ~っ!」

海から離れていく風景と走り去る自分の足音………。

ちが…違う!違う!違う!

何て事をしたんだ…本当に俺はこんなことしたのだろうか!
走馬灯株式会社から走り出る。

見た物が信じられなかった。

マンションに戻る途中で携帯に着信音が鳴った。
記憶を失くしてから初めての事だ。

杉浦は混乱していた。恐る恐る取ってみる。

「……かっ…ちゃん…」

ぞっとして電話を切った。

誰だ今のは……

自分を「かっちゃん」と呼んでいた女だ。

しかし、女は確かに崖下に…。

 

元来た道を戻り、再び走馬灯株式会社に入る杉浦。

野々村玲子っていう女の人生を見せてくれ!

 

恐いが、あの旅行の日の玲子のディスクを見てみる。

玲子目線のディスクに当然玲子はおらず、玲子の首を絞めて突き落す自分のアップに
杉浦はゾッとした。

悲鳴と共に画面は真っ暗になり、玲子の人生はそこで終了した…

黒い画面を見ながら、杉浦はガックリとうなだれる…。

 

しばらくそのまま時間は流れ、波の音に気付くと画面は明るさを取り戻していた。

…えっ……?

かすかに動く、玲子の指先。

 

「…いたい…いたいよぉぉ…かっちゃん…なんで……痛いっ…痛い…」

バッグから出した手鏡を覗き、傷だらけの顔を見るとうめき声はますます大きくなる…
そして、玲子の目が映し出す風景は移動していった。

玲子は、死んでいなかった…??!

まさか……

 

玲子が映し出す風景は、いつしか杉浦のマンションにあった。

 

「ちょっとゴミ捨ててってよ。行ってらっしゃい。今日は早く帰ってきてよ」
「うん。じゃあ行ってくる」

あの日の朝だ!
由実だ!

これを…玲子は見ていたのか。

 

インターホンを鳴らす、血が付いた指。

「はーい。」

由実が玄関に姿を表わす。

玄関には誰もいない。インターホンを鳴らした相手を探すために、ちょっと外に出る由実。

 

そして、階下を覗きこむ由実の背中が………

 

「きゃーーーーーっっっ!!」
「あッ!ああ~!」
「あっ…誰かぁぁぁ!」
「由実!わぁぁぁぁぁぁ」

 

杉浦は頭を押さえてうずくまった。
何て事だろう…

由実が死んだのも…記憶がなくなったのも…
全部俺のせいだ……!

いくら後悔してもやり直せない。
なんという人生を送ってしまったんだろう。

 

画面の中の玲子はまだ移動を続けているようだった。

 

やがて、今、自分が入ってきたあの緑の扉が映り……

「…あった……かっちゃん……」

 

今、自分が居るこの部屋のドアが映り……

 

「ようこそお越しくださいました。
 私、走馬灯株式会社の神沼と申します」

 

そして、今、後ろで部屋のドアが開こうとしていた…。

 

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ホラーだ……。

記憶を失くしている人間が人生を振り返るという、本当に記憶喪失の方の治療に
役立ちそうだな、走馬灯株式会社。

しかし、杉浦にとっては役立つどころの騒ぎじゃなかった。

最低男が罰を受けた……と言ってもいい感じの展開ですが…
何にも悪い事してない由実が気の毒。

 

よくあるネタと言ったらあるネタで…どう面白くするかと言ったら
映像と演出と登場人物の演技次第なのですが…。

前半はとってもホラーっぽくて良かったのに。

最後が……

落ちた後は、女優の顔は出さないか、出すならもっとグチャグチャにするのが
ホラーの鉄則でしょ。

あんな岩場に落ちて、顔の傷あれだけかよ…。

ラストも後ろに誰かいる……の段階で切ればいいんじゃないでしょうか。
笑い顔も映像も全く怖くないっす。

顏を汚せない女優はホラーに出すな!

というお話でした。

ガッッッカリです。

 

橋本さとしさんといえば、「平清盛」鎮西八郎が記憶に新しい。

迫力ある俳優さんですよね。
素晴らしかったです。

 

「走馬灯株式会社」は、放送地域によって放映日時が違うのでチェックを。

TBSテレビ(TBS)・静岡放送(SBS)…月曜 24:20 – 24:59
中部日本放送(CBC)…(7日遅れ)月曜 24:50 – 25:30
毎日放送(MBS)…(8日遅れ)火曜 26:40 – 27:20
山陽放送(RSK)…(14日遅れ)月曜 23:50 – 24:30
南日本放送(MBC)…(14日遅れ)月曜 24:10 – 24:50
北陸放送(MRO)…(14日遅れ)月曜 24:25 – 25:10

 

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【キャスト】

神沼…香椎由宇

・Disc9ゲスト

杉浦 克巳(記憶を亡くした男) – 橋本さとし
野々村 玲子(杉浦の部下) – 能世あんな
峯田 耕平(峯田診療クリニック・精神科医) – 田中要次
杉浦 由美(克巳の妻) – 菊池麻衣子

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  1. 走馬灯株式会社 各話あらすじ

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