【走馬灯株式会社】第8話「Disc8 笠木修道 42歳」堀部圭亮ゲスト回

作家にとって最も大切なものは大空を羽ばたくような自由な心です。

鎖につながれて生きることほど哀れなことはない。

 

「走馬灯株式会社」第8話:Disc8 笠木修道 42歳

 

        走馬灯株式会社

 

※以下の感想はネタバレしています。ネタバレはしないで見た方が面白い内容なので、
知りたくない方は視聴後の閲覧をお薦めいたします。

  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

すいませんね。急にお呼びたてして。

笠木修道の妻、陽子は、いつものように愛想よく迎え入れてくれた。
長澤は、恐る恐る笠木に話しかけた。

先生、大丈夫ですか?

大丈夫なように見えるか?

すいません…。

まあ、授賞式の後だったのがせめてもの救いだ。
こんな顔で新聞に載らずにすんだからな。

なんであんな所から落ちたのか…よく思い出せないんだよ。

笠木は、長澤の声がする方を見ているが、視線は合っていない。

先日、笠木が橋から落下し、失明するという大事故が起きた。

笠木は大きな文学賞を受賞したばかりの大物作家。
長澤は笠木の清書などを手伝っているアシスタントだ。

表向きは……。

 

笠木は自分が落下した事故現場に行きたいと言い出した。

ホントに行くんですか?

あそこへ行けば何か思い出せるかもしれない。
でも…大丈夫だ。役立たずだが長澤に案内してもらうよ。

えっ?!

まさか嫌だとでもいうのか?

いえ…

長澤は本当は二度とあんな所に行きたくはなかった。

 

あっ、こっちです。

引っ張るな!

すいません。

手綱を持つのは私だ。お前はただ歩くだけでいい。
バカなお前でも、それぐらいならできるだろう。

笠木は白い杖をついて、足元の悪い山道を器用に歩いた。
まるで見えているように。

この辺りに立ち入り禁止の看板があるはずだ。

立ち入り禁止のロープを乗り越えると、何か小屋のような物があり、扉に掛かった
木製の飾りが風で揺れて音を立てている。

なんだ?

小屋です。看板みたいなものが…。

連れて行け。

あっ… はい…。

「走馬灯株式会社」。

笠木はドアを開け、長澤も吸い込まれるように中に入った。

 

そして、エレベーターに乗って気が付くと…

ホテルのドアのような物の前に人形のような女が立っていた。

ようこそお越しくださいました。
私、走馬灯株式会社の神沼と申します。

神沼?
何かの会社だと…。

ここは人生をかえりみていただく場所でございます。どうぞ。

出ませんか? 怪しいですよ。

好奇心こそ作家の命だろ。
そんなことだから見習いのままなんだよ。

部屋の中に入ると、大きなテレビが1台あり、DVDが並んでた。

なんだ何がある?

DVDが並んでます…先生と僕の名前が書いた…。

そちらのディスクにあなた方の人生がおさめられております。

人生?面白そうだな。

それでは、笠木修道様、長澤比佐志様。
お二人の人生を心ゆくまでかえりみてください。

笠木にせかされて再生する長澤。

 

「いらっしゃいましたよ」

「清書係をさせていただく長澤です。ずっと前から先生の大ファンです。
 よろしくお願いします」

これ… 僕が先生のところに来たときの映像ですよ!

声を聞けば分かる。キャンキャンほえるな。

すいません…。

進んでいくと、DVDは、長澤がやらされていた「仕事」の辛さと嫌さを
まざまざと再現するようになってきた。

「書き直せ!これが私の文体か?調子に乗って自分の色を出すな!
 どうした? 早く書き直せ!」

「やっぱり… 先生の作品は先生が書かれた方が…
 読者を欺くことにもなりますし…僕もそろそろ…」

「そろそろ?そろそろなんだ?」
「お前、自分の名前だけでやっていけるとでも思ってるのか?
 お前の駄文が評価されるのも、私の実績があってこそだ。」

「無名の長澤比佐志が書いた本なんか誰も読まない。
 この世にそれ1冊しか本がなかったとしてもな!ふふふふ…はははは…」

笠木は自分の暴言をニヤニヤと聞いている。

ホンットいいこと言うよな。なんだ悔しいのか?

そんなことは…

私の名前で小説を書けるだけでもありがたいと思えよ。

長澤はいたたまれなくなってトイレへ立った。
部屋の外には神沼が立っている。

どうかされましたか?

いえ、別に。

そうですか。ではごゆっくりどうぞ。
人生は生まれてから現在まで、すべて記録されておりますので。

すべて?
…それって、最近のことも?

はい。曖昧な記憶なども、ハッキリご覧いただくことができます。

 

長澤の顔色が変わった。
アレを見られるわけにはいかないんだ・・・

大体、先生は本当に失明しているのだろうか、と長澤は勘ぐった。

そっと部屋に戻り、ナイフを手にして笠木の目の位置まで近付けてみた。

無反応だ……。

 

戻ったんならついでに飲み物ぐらい持ってこいよ。
どこまで気が利かないんだ。

すいません。

あと42巻だ。最新のものが見たい。セットしろ。

最新のディスクには、あの日の出来事が全て納まっている。

橋が近づくにつれて、長澤の鼓動は大きく波打っていった。

 

あの時、笠木は橋にもたれかかって携帯で電話を受けていた。

「いいよ。適当に待たしておいてくれ…今?息抜きの散歩中だ」
「うん。大丈夫だ。すぐに戻る…」

 

この後に橋から落ちたはずだ。長澤。何が起きたか確認しろ。

何が起きたかは長澤には充分解っている。

テレビの中から腕時計のアラーム音が聞こえる。
そして、足音が響き……

とめろ!!

静止する画面。

何が映ってる?

何も… 映ってませんけど…。

本当に何も映ってないのか?

はい。

 

なるべく冷静にそう答える。

静止した画面には、笠木を突き落す長澤のアップが映っていた。

 

だから、もう戻りませんか?
霧のことも心配だし。

もう、立っているのもやっとなくらいの緊張の中で、長澤は話していた。
しかし、笠木はあきらめない。

もう一度だ。音量を上げてもう一度再生しろ。
かすかに足音が聞こえた気がする。貸せ!
誰かに突き落とされたのかもしれない。

もう、長澤の鼓動は心臓が止まりそうなほどだった。

今の音、聞こえたよな?
あのアラームの音は聞いたことがある。…この時計の音だ!

笠木は長澤の腕をつかんだ。

私のおさがりだからよく覚えてるよ。

 

その時、ちょうど腕時計がアラームを鳴らし始めた。

笠木は面白そうに笑う。

なんでお前があそこにいたんだ?長澤。
今度は、お前の人生を見せてもらおうか。

 

長澤は腕を振り切って部屋から飛び出した。
走馬灯株式会社から外に出て、夢中で走った。

 

まさか…飼い犬に手をかまれるとは。

どんな方にもそれぞれの人生がございます。
ただ、1つの目線からだけでは、それを知ることもできません。

長澤比佐志様の人生、ご覧になられますか?

神沼に言われて、笠木は長澤の人生のディスクを見始めた。

笠木にどれだけ罵倒されても献身的に仕事し続ける長澤の姿がディスクの中にあった。

 

「また徹夜ですか?あまり無理をしない方が…」

「大丈夫です。先生には今度こそ直木賞を取ってもらいたいんです。」

「でも、お体も大事ですよ。」

「大丈夫です」

 

ディスクを見続けていると、車のブレーキ音と、何かにぶつかった衝撃音が聞こえた。

何が起こった?!

車にはねられたようです。

車に?この映像は?

長澤様が現在リアルタイムでご覧になられている人生です。

 

長澤は車にひき逃げされて、道路を這っていた。

・・・う・・・たすけて・・・。

 

そこに、杖の音が聞こえてきた。先生だ!
憎しみが募り過ぎて…突き落してしまった先生だ。

殺される…と長澤は思った。

 

殺すなら殺せよ!
いっつもバカにしやがって…あんたの下でどんな思いしてきたか分かるか!?

ずっと、あんたのファンだった。
あんたの作品を手伝えてホントに嬉しかった。

でも…僕だって小説家になりたい。
あんたの犬なんかで終わりたくない!

泣きわめく長澤に笠木が掛けた言葉は意外な物だった。

つかまれ。

笠木は長澤に向かって手を差し伸べてきたのだ。

お前の人生見させてもらった。
お前の気持ちは、よ~く分かったよ。

長澤は心から嬉しかった。
涙がとめどなく頬を伝った。

やっと、気持ちが伝わった……。

先生…このご恩は忘れません…。

ありがとうございます。
ありがとうございます…

長澤に肩を貸して歩く笠木の足が止まった。

 

おい。勘違いするなよ。

えっ?

 

笠木は笑っていた。
見えない目で長澤を見つめながら笑っていた。

視線は長澤に合っていた。

 

私は「分かった」と言っただけだ。

お前の人生は、何も変わらないし…

変えさせない。

 

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2人でディスクを見ながら、1人は目が見えない主人、1人は内容を伝える犬。という関係。

犬には主人に負い目があって、ディスクを見られるのはとってもマズイ…。
2人で見ている間の緊張感が面白い。

犬が出て行ってからも主人は犬のリアルタイムを見続け、
助けに来たのかと思ったら……

という展開。

私はまた、橋の上から長澤を突き落すのかと思った。
失明したというのも実は嘘だったと言う設定で…。

笠木を突き落したという犯罪行為の真実を握られてしまったために、
もうこの先は逆らう事もできず、飼殺されるしかないって事ですね。

解放されたかったら死んでもらうしかないけど……
もう、一回失敗しちゃったら、なかなかまたやろうとは思えないよね。 

 

あんな時計のアラーム音はどれでも一緒だぜ…とか…車にはねられたのに
病院に行かないの?とか…

ツッコミ所は多々あれど、面白かったです。

飄々として見えるほど冷淡な男と抜け出せない焦燥感あらわな犬と…
堀部圭亮さんと郭智博さんの演技が素晴らしい。

 

「走馬灯株式会社」は、放送地域によって放映日時が違うのでチェックを。

TBSテレビ(TBS)・静岡放送(SBS)…月曜 24:20 – 24:59
中部日本放送(CBC)…(7日遅れ)月曜 24:50 – 25:30
毎日放送(MBS)…(8日遅れ)火曜 26:40 – 27:20
山陽放送(RSK)…(14日遅れ)月曜 23:50 – 24:30
南日本放送(MBC)…(14日遅れ)月曜 24:10 – 24:50
北陸放送(MRO)…(14日遅れ)月曜 24:25 – 25:10

 

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よろしければ→【2012年7月期・夏クールドラマ何見ます?】ラインナップ一覧とキャスト表と展望

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【キャスト】

神沼…香椎由宇

・Disc8ゲスト

笠木 修道(第136回直木賞作家・著書「夜に哭く」) – 堀部圭亮
長澤 比佐志(笠木のアシスタント) – 郭智博
笠木 陽子(修道の妻) – 濱田万葉

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コメント

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